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卒業後
999 星暦557年 桃の月 18日 家族(?)サービス期間(23)
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「ここはあんた達の西の国から入って来る香草とこっちの食材や香辛料を合わせて色々試行錯誤した料理人が開いた店なんだ。
格式に煩くないから俺たちみたいのでもゆったり落ち着いて食べられるぜ!」
嬉しそうに港から街の中心地へ続く大通りから一本入ったところにある店にバルダンが案内してくれた。
もっと超高級な所に案内されるかと思ったが、考えてみたらそう言うところは一見さんお断りだったり、服装がそれなりじゃないと入らせてくれないのかも。
まあ、メニューを見たらそれなりに値段は高いが。
だが比較的良いローケーションにあるし、ちょっと昼食には遅い時間帯っぽいのに客が多いから、人気はあるようだ。
とは言え。
メニューを読んでもイマイチどんな料理なのかは想像がつかない。
「何がこの店のお勧めなんだ?」
店に尋ねた。
「この北海魚の蒸し焼きか、こちらのザルベス山羊のもも肉のフライあたりが今日は良い食材が入ってきたと料理長が言っていましたね」
若そうな店員が躊躇せずに教えてくれた。
メニューにはなんか色々と詩的な言葉が書いてあって、そんな『魚の蒸し焼き』とか『もも肉フライ』みたいな分かりやすい言葉は無かったぞ?!
いや、よく見たらあるか。詩に埋もれてた。
もっと分かりやすくメニューは書いてくれよ。
それともこれは店員に質問させてお勧め料理へ誘導させる為の仕組みなのか?
こういう場合って、いい店だったら本当に今日一番に美味しく食べられるモノを勧められるし、いい加減な店だったら常連じゃない場合は適当に余りそうな食材とか、利幅の大きな料理を勧められるんだが、ここはどうなんだろうな?
明らかに俺たちは観光客っぽいからぼったくり目当てな料理を勧められる可能性もそれなりにあると思うが・・・取り敢えず、店員を信頼してみよう。
「じゃあ、おれはその山羊のもも肉のフライって言うのを頼む」
「私はその北海魚の蒸し焼きを頼むわ。
ウィル、ちょっとそっちのもも肉を取り換えっこしましょ?」
シェイラが提案してきた。
「おう、良いぜ」
「俺は白兎の丸焼きを頼むぜ!!」
嬉しそうにバルダンが頼む。
兎一匹全部食べるのは育ち盛りでも流石にきついんじゃないのか?
それとも東大陸の兎って小さいのかね?
小柄なのを飼って増やしている可能性もあるか。
兎って天敵がいなければガンガン増えるらしいから、乾燥して草地が少ないここ等辺だったら牛を育てるよりも兎や山羊の方が向いていそうだ。
飲み物にエールを頼んで、料理を待つ間にバルダンから情報を聞くことにした。
「最近は街で何か新しい事とか変わったことは起きたのか?」
まあ、ヤバ気な新しい魔具や呪具が出来たって言うんじゃない限り俺たちにはそれ程関係ないが。
「なんか、暫く前に南の方から大きな商会とやらの跡取り娘っていうのが船で来てたな。
色々と買い漁ってボスにも会っていたぜ。
何か新しいタイプの香辛料を育てられないかってボスの所で相談したらしいが、畑違いだってんで断ったようだな」
バルダンが教えてくれた。
お?
それってケッパッサのザグルが美顔用魔具で気を引こうとした女のことかな?
大きな商会の跡取り娘だったのか。
じゃあどれだけザグルが関心を引こうとしても一緒になる将来はなさそうだな。
とは言え。
新しい香辛料かぁ。
「結局、誰か街の人間でその栽培をやってみるって言った人間はいたのか?」
新しい香辛料がジルダスの交易品として増えるなら、シェフィート商会なり誰かに知らせておくと良いかも?
「さあ?」
意味深にバルダンが笑いながら応じた。
どうやらこの店のランチ代だけでは足りないらしい。
「誰がやるのかの情報とサンプルとを入手してくれたら相場の報酬を払うよ」
「ついでにどういう料理に向いているのかも聞いておいてくれたら追加報酬を払うわ」
シェイラが付け足した。
確かに。
新しい香辛料って使い方が分からないと必ずしも金を払う価値がある程美味しく感じないもんな。
「任せとけ!
いつまでこっちにいるんだ?」
店員が持ってきた皿へ満面の笑みで手を伸ばしながらバルダンが聞いた。
「最低でもあと3日位は毎日遊びに来る予定だ。
街中で適当に見つけてくれてもいいし、もしくは領事館に夕方ごろに来てくれてもいいぜ」
どの位長くいるかはシェイラ次第だからなぁ。
でも3日は固いから、それまでに情報を集めて来て貰えばいいだろう。
「了解」
バルダンが言いながら大胆に兎をナイフで切り込んだ。
そう言えば昔は殆ど手で千切り取ってがっつく感じだったのが、いつの間にかちゃんとフォークとナイフで食べる様になったんだなぁ。
まあ、金があって育っても来たんだから、当然か。
此奴も更に大成するのかな?
何十年後ぐらいに、『バルダンが成功する第一歩は俺が導いたんだぜ』なんて誰かに自慢できるようになっていたらそれはそれで面白いな。
格式に煩くないから俺たちみたいのでもゆったり落ち着いて食べられるぜ!」
嬉しそうに港から街の中心地へ続く大通りから一本入ったところにある店にバルダンが案内してくれた。
もっと超高級な所に案内されるかと思ったが、考えてみたらそう言うところは一見さんお断りだったり、服装がそれなりじゃないと入らせてくれないのかも。
まあ、メニューを見たらそれなりに値段は高いが。
だが比較的良いローケーションにあるし、ちょっと昼食には遅い時間帯っぽいのに客が多いから、人気はあるようだ。
とは言え。
メニューを読んでもイマイチどんな料理なのかは想像がつかない。
「何がこの店のお勧めなんだ?」
店に尋ねた。
「この北海魚の蒸し焼きか、こちらのザルベス山羊のもも肉のフライあたりが今日は良い食材が入ってきたと料理長が言っていましたね」
若そうな店員が躊躇せずに教えてくれた。
メニューにはなんか色々と詩的な言葉が書いてあって、そんな『魚の蒸し焼き』とか『もも肉フライ』みたいな分かりやすい言葉は無かったぞ?!
いや、よく見たらあるか。詩に埋もれてた。
もっと分かりやすくメニューは書いてくれよ。
それともこれは店員に質問させてお勧め料理へ誘導させる為の仕組みなのか?
こういう場合って、いい店だったら本当に今日一番に美味しく食べられるモノを勧められるし、いい加減な店だったら常連じゃない場合は適当に余りそうな食材とか、利幅の大きな料理を勧められるんだが、ここはどうなんだろうな?
明らかに俺たちは観光客っぽいからぼったくり目当てな料理を勧められる可能性もそれなりにあると思うが・・・取り敢えず、店員を信頼してみよう。
「じゃあ、おれはその山羊のもも肉のフライって言うのを頼む」
「私はその北海魚の蒸し焼きを頼むわ。
ウィル、ちょっとそっちのもも肉を取り換えっこしましょ?」
シェイラが提案してきた。
「おう、良いぜ」
「俺は白兎の丸焼きを頼むぜ!!」
嬉しそうにバルダンが頼む。
兎一匹全部食べるのは育ち盛りでも流石にきついんじゃないのか?
それとも東大陸の兎って小さいのかね?
小柄なのを飼って増やしている可能性もあるか。
兎って天敵がいなければガンガン増えるらしいから、乾燥して草地が少ないここ等辺だったら牛を育てるよりも兎や山羊の方が向いていそうだ。
飲み物にエールを頼んで、料理を待つ間にバルダンから情報を聞くことにした。
「最近は街で何か新しい事とか変わったことは起きたのか?」
まあ、ヤバ気な新しい魔具や呪具が出来たって言うんじゃない限り俺たちにはそれ程関係ないが。
「なんか、暫く前に南の方から大きな商会とやらの跡取り娘っていうのが船で来てたな。
色々と買い漁ってボスにも会っていたぜ。
何か新しいタイプの香辛料を育てられないかってボスの所で相談したらしいが、畑違いだってんで断ったようだな」
バルダンが教えてくれた。
お?
それってケッパッサのザグルが美顔用魔具で気を引こうとした女のことかな?
大きな商会の跡取り娘だったのか。
じゃあどれだけザグルが関心を引こうとしても一緒になる将来はなさそうだな。
とは言え。
新しい香辛料かぁ。
「結局、誰か街の人間でその栽培をやってみるって言った人間はいたのか?」
新しい香辛料がジルダスの交易品として増えるなら、シェフィート商会なり誰かに知らせておくと良いかも?
「さあ?」
意味深にバルダンが笑いながら応じた。
どうやらこの店のランチ代だけでは足りないらしい。
「誰がやるのかの情報とサンプルとを入手してくれたら相場の報酬を払うよ」
「ついでにどういう料理に向いているのかも聞いておいてくれたら追加報酬を払うわ」
シェイラが付け足した。
確かに。
新しい香辛料って使い方が分からないと必ずしも金を払う価値がある程美味しく感じないもんな。
「任せとけ!
いつまでこっちにいるんだ?」
店員が持ってきた皿へ満面の笑みで手を伸ばしながらバルダンが聞いた。
「最低でもあと3日位は毎日遊びに来る予定だ。
街中で適当に見つけてくれてもいいし、もしくは領事館に夕方ごろに来てくれてもいいぜ」
どの位長くいるかはシェイラ次第だからなぁ。
でも3日は固いから、それまでに情報を集めて来て貰えばいいだろう。
「了解」
バルダンが言いながら大胆に兎をナイフで切り込んだ。
そう言えば昔は殆ど手で千切り取ってがっつく感じだったのが、いつの間にかちゃんとフォークとナイフで食べる様になったんだなぁ。
まあ、金があって育っても来たんだから、当然か。
此奴も更に大成するのかな?
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