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卒業後
991 星暦557年 桃の月 17日 家族(?)サービス期間(15)
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「お久しぶり。
ちょっとした式典とか、お偉いさんが出て来る会議で着れる様な服を一着作ってくれ。
出来るだけ目立たないで周囲に溶け込む感じに頼む」
前回連れて来られたシェイラの知り合いの店に連れて来られて、対応に出てきたおっさんにお願いする。
「式典と会議では服の方向性が違いますが・・・」
ちょっと困った顔で言われた。
「それっぽい服だったら誤魔化せるだろ?
飾りとか袖とかを簡単に付け替えたらどっちでも使える様に出来ないか?
どちらの用途でも必要とならない可能性の方が高いと思うから、態々2着は作りたくないんだよね」
シャルロの婚約式で懲りたので礼服を作っておくことは吝かではないが、沢山そろえる必要はないだろう。
式典なんかは場合によってはそれなりに貧乏貴族や軍で活躍した平民とかも出て来るから地味っぽいのでも何とか見逃してもらえる筈。
そして地味だったらお偉いさんが出て来る会議とかでも使えるだろう。
第一、式典にせよお偉いさんとの会議にせよ、俺たちが何か良い事をした褒美なり、お偉いさんが何か頼みごとをしたいからってやることになるんだろ?
なのになんだって俺がお偉いさんの常識に合わせて高くつく服を作らなきゃいけないのか、ちょっと納得がいかないんだ。
とは言え、無理にこちらの主張をごり押しして出席者全般から顰蹙を食らうよりは、影で笑われる程度に収めた地味な服で妥協したい。
「式典用の礼服は特徴的な襟の形がありますので、事業関係の会議では使えませんが・・・式典用の襟をボタンで付けられるようにしておきますか」
ちょっとため息を吐きながらおっさんが言った。
どうやら襟を上にボタン止めして誤魔化すという抜け道は元々あるようだ。
「ああ、それで頼む。
出来るだけ動きやすくて長い間クロゼットに放置しておいても変色とかが目立たないで使えるのが良いな。
男性用の服だったらそれ程露骨に主流なデザインとか色が変わって数年前のは着れないってことは無いだろ?」
盗賊《シーフ》時代に貴族の屋敷でのパーティとかの際に下働きとして紛れ込んでいた時も、女性の服のファッションに関しては色々と煩く誰もが話題にしていたが、男性の服に関しては人を批判するのが好きなタイプ以外はそれ程気にしていないようだった。
つまり、多少服のファッション性が不味くても、男はそこで評価されないのだ!
余りにも酷かったら眉を顰められるようだが、流石にそこまで酷くなる前にシェイラなりアレクなりシャルロなりが指摘してくるだろう。
女性だって綺麗な服を着ることが存在意義じゃあないと思うんだが、何故か女性は服のセンスが悪いとか流行遅れだとかな状態で社交界に顔を出すとほぼ全方面から集中攻撃(裏でだが)を受けるんだよなぁ。
女性に対する価値観がファッション性重視なのが常識なのに、それをちゃんと考慮していないという点で『あの人は他の面でも駄目なんだろう』という評価になっているっぽい。
そうは言っても、アレクの母親のように事業の面でバリバリに働いている女性だっているし、以前王宮で探し物をさせられた時に追い出されて屯していた官僚を見たところそっちにも女性がいたんだから、ファッション第一である必要性はないと思うんだけどなぁ。
まあ、ファッションに関わりたくない人間だったらそういうパーティとか式典に関係ない分野の仕事を選ぶのかな?
でもある程度以上偉くなっちゃったら社交もしろって上から強制されそうだけど。
お洒落に興味がない女性はある程度以上は偉くなれないのかね?
ある意味それって有能な女性より美貌を生かして周囲の男に取り入るのが得意な女が偉くなりそうな気がするが。
まあ、俺は男に生まれて良かったよ、本当に。
そんなことを考えつつ、適当に店員さんの助言を聞き入れながら地味っぽくいざという時に夜の街に紛れ込めるような目立たない色の服をオーダーし終わってシェイラの方へ行った。
「こちらとこちら、どっちがいいと思う?」
シェイラが何やら生地を二つさしながら聞いてきた。
そんなこと分かるかよ・・・。
だけど、ここで『どっちでも良いんじゃない?』は禁句らしい。
以前、ケレナが親族の女性の夫に関して物凄い勢いで話していたのを聞いた限り、『どっちでもいいじゃない?』は『まだ終わらないの?』と同じぐらい許されない罪っぽい。
「・・・生地ってどんな服に使うのかによるんじゃないのか?」
取り敢えず、ちょっと苦しいが判断を下さなくて済む相槌を捻り出す。
「そうなのよね~。
こんなデザインが良いかと思っているんだけど、此方の新しいデザインも今シーズンの流行りらしいからお勧めだと言われて」
スケッチブックっぽいのにある女性の姿を見せられた。
その女性が来ている服がデザインなんだよな?
スカートに長袖、片方の方がちょっとウエスト周りが何か見慣れたラインと違うような気がするが、良く分からない。
「ちなみに、新しいデザインって長く着られるのか?」
なんかこう、女性の流行って一気にばっと広がって何故か翌年にスパッと消えることもあるっぽいんだよなぁ。
新しい流行で古いデザインが駆逐されることもあるが、時折長めに持つのもある気がする。
どっちの方向に流行が流れるのか、俺には分からんぞ。
「どうかしら?
そこら辺はどのくらい名だたる美女が上手に新しいデザインを着こなすかで大分と変わるから、今の時点では何とも言えないわ」
シェイラが肩を竦めながら言った。
「・・・まあ、だったらシェイラがぱっと見て着てみたいと思ったデザインに、そのデザインにあった生地を使えば良いんじゃないか?」
きっとこのデザインならこっちの生地が良いって店員が勧めてくれるだろう。
・・・勧めてくれるよな?!
ちょっとした式典とか、お偉いさんが出て来る会議で着れる様な服を一着作ってくれ。
出来るだけ目立たないで周囲に溶け込む感じに頼む」
前回連れて来られたシェイラの知り合いの店に連れて来られて、対応に出てきたおっさんにお願いする。
「式典と会議では服の方向性が違いますが・・・」
ちょっと困った顔で言われた。
「それっぽい服だったら誤魔化せるだろ?
飾りとか袖とかを簡単に付け替えたらどっちでも使える様に出来ないか?
どちらの用途でも必要とならない可能性の方が高いと思うから、態々2着は作りたくないんだよね」
シャルロの婚約式で懲りたので礼服を作っておくことは吝かではないが、沢山そろえる必要はないだろう。
式典なんかは場合によってはそれなりに貧乏貴族や軍で活躍した平民とかも出て来るから地味っぽいのでも何とか見逃してもらえる筈。
そして地味だったらお偉いさんが出て来る会議とかでも使えるだろう。
第一、式典にせよお偉いさんとの会議にせよ、俺たちが何か良い事をした褒美なり、お偉いさんが何か頼みごとをしたいからってやることになるんだろ?
なのになんだって俺がお偉いさんの常識に合わせて高くつく服を作らなきゃいけないのか、ちょっと納得がいかないんだ。
とは言え、無理にこちらの主張をごり押しして出席者全般から顰蹙を食らうよりは、影で笑われる程度に収めた地味な服で妥協したい。
「式典用の礼服は特徴的な襟の形がありますので、事業関係の会議では使えませんが・・・式典用の襟をボタンで付けられるようにしておきますか」
ちょっとため息を吐きながらおっさんが言った。
どうやら襟を上にボタン止めして誤魔化すという抜け道は元々あるようだ。
「ああ、それで頼む。
出来るだけ動きやすくて長い間クロゼットに放置しておいても変色とかが目立たないで使えるのが良いな。
男性用の服だったらそれ程露骨に主流なデザインとか色が変わって数年前のは着れないってことは無いだろ?」
盗賊《シーフ》時代に貴族の屋敷でのパーティとかの際に下働きとして紛れ込んでいた時も、女性の服のファッションに関しては色々と煩く誰もが話題にしていたが、男性の服に関しては人を批判するのが好きなタイプ以外はそれ程気にしていないようだった。
つまり、多少服のファッション性が不味くても、男はそこで評価されないのだ!
余りにも酷かったら眉を顰められるようだが、流石にそこまで酷くなる前にシェイラなりアレクなりシャルロなりが指摘してくるだろう。
女性だって綺麗な服を着ることが存在意義じゃあないと思うんだが、何故か女性は服のセンスが悪いとか流行遅れだとかな状態で社交界に顔を出すとほぼ全方面から集中攻撃(裏でだが)を受けるんだよなぁ。
女性に対する価値観がファッション性重視なのが常識なのに、それをちゃんと考慮していないという点で『あの人は他の面でも駄目なんだろう』という評価になっているっぽい。
そうは言っても、アレクの母親のように事業の面でバリバリに働いている女性だっているし、以前王宮で探し物をさせられた時に追い出されて屯していた官僚を見たところそっちにも女性がいたんだから、ファッション第一である必要性はないと思うんだけどなぁ。
まあ、ファッションに関わりたくない人間だったらそういうパーティとか式典に関係ない分野の仕事を選ぶのかな?
でもある程度以上偉くなっちゃったら社交もしろって上から強制されそうだけど。
お洒落に興味がない女性はある程度以上は偉くなれないのかね?
ある意味それって有能な女性より美貌を生かして周囲の男に取り入るのが得意な女が偉くなりそうな気がするが。
まあ、俺は男に生まれて良かったよ、本当に。
そんなことを考えつつ、適当に店員さんの助言を聞き入れながら地味っぽくいざという時に夜の街に紛れ込めるような目立たない色の服をオーダーし終わってシェイラの方へ行った。
「こちらとこちら、どっちがいいと思う?」
シェイラが何やら生地を二つさしながら聞いてきた。
そんなこと分かるかよ・・・。
だけど、ここで『どっちでも良いんじゃない?』は禁句らしい。
以前、ケレナが親族の女性の夫に関して物凄い勢いで話していたのを聞いた限り、『どっちでもいいじゃない?』は『まだ終わらないの?』と同じぐらい許されない罪っぽい。
「・・・生地ってどんな服に使うのかによるんじゃないのか?」
取り敢えず、ちょっと苦しいが判断を下さなくて済む相槌を捻り出す。
「そうなのよね~。
こんなデザインが良いかと思っているんだけど、此方の新しいデザインも今シーズンの流行りらしいからお勧めだと言われて」
スケッチブックっぽいのにある女性の姿を見せられた。
その女性が来ている服がデザインなんだよな?
スカートに長袖、片方の方がちょっとウエスト周りが何か見慣れたラインと違うような気がするが、良く分からない。
「ちなみに、新しいデザインって長く着られるのか?」
なんかこう、女性の流行って一気にばっと広がって何故か翌年にスパッと消えることもあるっぽいんだよなぁ。
新しい流行で古いデザインが駆逐されることもあるが、時折長めに持つのもある気がする。
どっちの方向に流行が流れるのか、俺には分からんぞ。
「どうかしら?
そこら辺はどのくらい名だたる美女が上手に新しいデザインを着こなすかで大分と変わるから、今の時点では何とも言えないわ」
シェイラが肩を竦めながら言った。
「・・・まあ、だったらシェイラがぱっと見て着てみたいと思ったデザインに、そのデザインにあった生地を使えば良いんじゃないか?」
きっとこのデザインならこっちの生地が良いって店員が勧めてくれるだろう。
・・・勧めてくれるよな?!
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