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卒業後
988 星暦557年 桃の月 12日 家族(?)サービス期間(12)
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『う~ん、最初にあの子たちがここに迷い込んできた時はかなり皆ボロボロだったからねぇ。
怪我している人とか老人や子供が多かったし。
僕らに魔力を捧げて暫く森に人が出入りできない様にしてくれって年がいった女の人が頼み込んできたんだ。彼女の魔力がそれなりにきらきらだったし人間の出入りを止めるだけだったら別に今までと殆ど変わりがないしで、気が向いた何人かで協力したんだよね』
大地の精霊がノンビリとシェイラの質問に答えた。
ほう。
最初は戦争か何かの争いで負けた集団が逃げ込んできたのかね?
うっかり子供が森の外に出ない様に、入れない様にだけでなく出られない様にしたってことは子供を見張る人員すら十分になかったってことかな。
「今はこの森に人間を襲うような危険な動物は居ないようですが、これは以前からそうだったのですか?」
シェイラが尋ねる。
『いやぁ?
動物の種類の調整は人の子たちが増えてから徐々にやっていったかな?
僕たちは森のバランスが崩れなければ多少の事は文句は言わないけど、理由もなく肉食だからって動物を追い出すつもりもないからね』
大地の精霊が答える。
おやま。
だとしたら結局は子供をしっかり見張っていないと今度は人間じゃなくて狼や熊に襲われちまったんじゃないのか?
「なるほど。
危険な動物から逃れるために樹の上に住み始めたのかしら」
シェイラも同じことを考えたのか、ぼそりと周囲を見回しながら呟く。
『まあ、暫くしたら下草をどけてちょこちょこ食べられる植物を植え始めたから、安全と食糧確保の為だったんじゃない?
草とかを狙ってきた動物は潰して色々と利用していたようだし』
のほほんと精霊が応じる。
でも、意外と良く見てるな。
『出入りを止めて気が付いたら皆居なくなっていた』なんて時間感覚でも不思議は無いと思ったが、まあ考えてみたら『出入りを止めていた』のを『出られる』ように変えて、『広場近辺で草が育ちすぎない』ようにして貰って、『いつの間にか人が居なくなった』って流れがあるからかなり長かったんだろうけど。
やっぱ大地の精霊だと人の暮らしの近くにいるから、もう少し人間の動向も気付いているのかな?
それにしては人間に加護を与える大地の精霊ってあまり聞かないけど。
火とか水とか風の方が多いみたいで、大地ってあまり聞かない。
まあ、加護を与えなくても農家のおっちゃんやガキども達とはそれなりに仲良くしているみたいだし、それ以上の付き合いはしたくないのかな?
人間は増えると他の動物を駆逐することが多いからなぁ。
ある意味、街に住んでいてドブネズミ害虫を駆逐する為に毒入りの餌を撒いたりするのだって人間には十分意味のある行動だが、大地の精霊にとってはあまり嬉しくないのかも。
戦争とかでガンガン殺し合って血を流すのも不快そうだし。
鉱山で山を切り崩して鉱毒とかを広げるのも微妙かもだよなぁ。
まあ、毒だって大地の一部なんだが。
大地の上に生きる諸々をどの程度精霊が可愛がっているかで、どのくらい人間を疎ましく思うかは変わるのかも?
とは言え、樹を切らないとなったら森の中で育てられる食糧の量なんて限られるよな。
一応広場の辺はそれなりに開けているから多少は日照もあっただろうけど。
「一番人が多かった時期ってこの森の中のどのくらいの範囲まで人が暮らしていたのかしら?」
シェイラが尋ねる。
『う~ん?
どうだろ?
ある程度増えたら、森の中だけじゃあ食糧が足りなくなって外に出て行ったからねぇ。
僕たちはこの森が気に入っているから、『間伐するのはまだしも森を切り開いて畑にするのは駄目だよ』って言ったら外で色々と頑張るようになって、いつの間にか外で暮らす人の方が多くなったんじゃないかな?
偶に沢山森に集まっていたけど』
まあ、確かに森で育てられる食糧じゃあ大人数は食っていけないよな。
この文明の人間は木材を使って魔具を造れる様だったから、それを売り払って食糧を買うというのも手だが・・・下手に富を生み出せる存在だと認識されたらまた襲われることになるだろう。
森なんて、油を撒いて火を付ける気があるなら防衛力は余りないのだ。
ちょっとした脅しならまだしも、相手を隷属させようと思うような連中が攻めてきたら色々と難しいだろう。
富を守れるだけの人口を賄おうと思ったらどうしても平地での農作も必要だろうなぁ。
・・・そう考えると、オーバスタ神殿文明なんかはあの洞窟の外にどのくらいの農地があったのか、ちょっと興味が湧くところだな。
農地なんぞ全然跡が残らないから何か納税書類や土地の売買記録でも残っていなきゃ全然分からないだろうし、記録があっても距離の単位とかが分からなきゃ規模も見当がつかなそうだが。
「ここの森まで攻め込まれたことなんかもあるのかしら?」
シェイラが尋ねる。
『あった・・・かも?
血が沢山流れたことがあった気がするね。
でも森は大して破損しなかったから、それ程大掛かりじゃなかったんじゃないかな?』
微妙に不確かそうに精霊が答えた。
まあなぁ。
お気に入りだったらまだしも、それ以外の人間が死んだところで精霊はあまり気にしないだろう。
森の大樹が切り倒されたり火を付けられたりしたら怒るかもだが。
なんと言っても、大樹が育つのにかかる年月の方が人間の生涯よりずっと長いのだ。
精霊との付き合いも大樹の方がそれだけ長いと言ってもいいだろう。
とは言え。
森を焼かれるほどの争いが無かったってことは、フォラスタ文明の連中は富と防衛力のバランスを良い感じに管理出来ていたんだろうな。
怪我している人とか老人や子供が多かったし。
僕らに魔力を捧げて暫く森に人が出入りできない様にしてくれって年がいった女の人が頼み込んできたんだ。彼女の魔力がそれなりにきらきらだったし人間の出入りを止めるだけだったら別に今までと殆ど変わりがないしで、気が向いた何人かで協力したんだよね』
大地の精霊がノンビリとシェイラの質問に答えた。
ほう。
最初は戦争か何かの争いで負けた集団が逃げ込んできたのかね?
うっかり子供が森の外に出ない様に、入れない様にだけでなく出られない様にしたってことは子供を見張る人員すら十分になかったってことかな。
「今はこの森に人間を襲うような危険な動物は居ないようですが、これは以前からそうだったのですか?」
シェイラが尋ねる。
『いやぁ?
動物の種類の調整は人の子たちが増えてから徐々にやっていったかな?
僕たちは森のバランスが崩れなければ多少の事は文句は言わないけど、理由もなく肉食だからって動物を追い出すつもりもないからね』
大地の精霊が答える。
おやま。
だとしたら結局は子供をしっかり見張っていないと今度は人間じゃなくて狼や熊に襲われちまったんじゃないのか?
「なるほど。
危険な動物から逃れるために樹の上に住み始めたのかしら」
シェイラも同じことを考えたのか、ぼそりと周囲を見回しながら呟く。
『まあ、暫くしたら下草をどけてちょこちょこ食べられる植物を植え始めたから、安全と食糧確保の為だったんじゃない?
草とかを狙ってきた動物は潰して色々と利用していたようだし』
のほほんと精霊が応じる。
でも、意外と良く見てるな。
『出入りを止めて気が付いたら皆居なくなっていた』なんて時間感覚でも不思議は無いと思ったが、まあ考えてみたら『出入りを止めていた』のを『出られる』ように変えて、『広場近辺で草が育ちすぎない』ようにして貰って、『いつの間にか人が居なくなった』って流れがあるからかなり長かったんだろうけど。
やっぱ大地の精霊だと人の暮らしの近くにいるから、もう少し人間の動向も気付いているのかな?
それにしては人間に加護を与える大地の精霊ってあまり聞かないけど。
火とか水とか風の方が多いみたいで、大地ってあまり聞かない。
まあ、加護を与えなくても農家のおっちゃんやガキども達とはそれなりに仲良くしているみたいだし、それ以上の付き合いはしたくないのかな?
人間は増えると他の動物を駆逐することが多いからなぁ。
ある意味、街に住んでいてドブネズミ害虫を駆逐する為に毒入りの餌を撒いたりするのだって人間には十分意味のある行動だが、大地の精霊にとってはあまり嬉しくないのかも。
戦争とかでガンガン殺し合って血を流すのも不快そうだし。
鉱山で山を切り崩して鉱毒とかを広げるのも微妙かもだよなぁ。
まあ、毒だって大地の一部なんだが。
大地の上に生きる諸々をどの程度精霊が可愛がっているかで、どのくらい人間を疎ましく思うかは変わるのかも?
とは言え、樹を切らないとなったら森の中で育てられる食糧の量なんて限られるよな。
一応広場の辺はそれなりに開けているから多少は日照もあっただろうけど。
「一番人が多かった時期ってこの森の中のどのくらいの範囲まで人が暮らしていたのかしら?」
シェイラが尋ねる。
『う~ん?
どうだろ?
ある程度増えたら、森の中だけじゃあ食糧が足りなくなって外に出て行ったからねぇ。
僕たちはこの森が気に入っているから、『間伐するのはまだしも森を切り開いて畑にするのは駄目だよ』って言ったら外で色々と頑張るようになって、いつの間にか外で暮らす人の方が多くなったんじゃないかな?
偶に沢山森に集まっていたけど』
まあ、確かに森で育てられる食糧じゃあ大人数は食っていけないよな。
この文明の人間は木材を使って魔具を造れる様だったから、それを売り払って食糧を買うというのも手だが・・・下手に富を生み出せる存在だと認識されたらまた襲われることになるだろう。
森なんて、油を撒いて火を付ける気があるなら防衛力は余りないのだ。
ちょっとした脅しならまだしも、相手を隷属させようと思うような連中が攻めてきたら色々と難しいだろう。
富を守れるだけの人口を賄おうと思ったらどうしても平地での農作も必要だろうなぁ。
・・・そう考えると、オーバスタ神殿文明なんかはあの洞窟の外にどのくらいの農地があったのか、ちょっと興味が湧くところだな。
農地なんぞ全然跡が残らないから何か納税書類や土地の売買記録でも残っていなきゃ全然分からないだろうし、記録があっても距離の単位とかが分からなきゃ規模も見当がつかなそうだが。
「ここの森まで攻め込まれたことなんかもあるのかしら?」
シェイラが尋ねる。
『あった・・・かも?
血が沢山流れたことがあった気がするね。
でも森は大して破損しなかったから、それ程大掛かりじゃなかったんじゃないかな?』
微妙に不確かそうに精霊が答えた。
まあなぁ。
お気に入りだったらまだしも、それ以外の人間が死んだところで精霊はあまり気にしないだろう。
森の大樹が切り倒されたり火を付けられたりしたら怒るかもだが。
なんと言っても、大樹が育つのにかかる年月の方が人間の生涯よりずっと長いのだ。
精霊との付き合いも大樹の方がそれだけ長いと言ってもいいだろう。
とは言え。
森を焼かれるほどの争いが無かったってことは、フォラスタ文明の連中は富と防衛力のバランスを良い感じに管理出来ていたんだろうな。
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