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卒業後
983 星暦557年 桃の月 11日 家族(?)サービス期間(7)
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「もしかして、ここのフォラスタ文明って精霊に見捨てられたせいで滅びたの?」
シェイラがふと尋ねる。
『さあ?
今でもこの泉や広場の大地は居るんだから、見捨てた訳ではないんじゃない?』
清早が肩を竦めて応じる。
まあ、精霊って時間感覚がいい加減だからな~。
ちょっと遊びに出かけていたとか、飽きたから暫く寝ていたとかで百年程度は全然普通に過ぎるっぽいから、その間に周辺の国とかとの関係が悪化したり、気候や地形に何か変動があったりしたらあっさり集落が滅ぼされたり、離散したりする可能性は十分にあるだろう。
元々、精霊って気に入った個人に対してはそれなりに興味を持つのに、その個人が所属している集団に関しては興味を持たないから、国とか集落がどう栄えたのかとかいつ滅びたのかとか聞いても、全然意味のある答えが返ってこないんだよね。
俺やシャルロも清早や蒼流に遺跡発掘の手伝いがてらに何度か聞いたことがあるが、俺たちが聞いても『さあ?』という感じの返事しか返ってこないから、考古学に関して精霊に知識を求めるのは無駄だろう。
考古学者本人が精霊に好かれて加護持ちになったら、手当たり次第に通り掛かる精霊に話を聞いて回って実際にその遺跡が滅びた時期にその遺跡に興味を持っていた精霊に行き当たる可能性もゼロではないが・・・まずは無理だろうね。
「別にこの遺跡って戦争で滅ぼされたって訳じゃあないんだろ?
人口が減りすぎたとか、不便過ぎたとかで自然減少的に人が居なくなったんじゃないのか?」
戦争で滅ぼされたのだったらもっと人除け結界に使われていた大樹が破損していただろう。
一本が枯れたせいで結界に穴が開くまで、何百年も結界を維持できるほどしっかりした状態だったのだ。
どう考えても戦争で破損していたとは思えない。
「そうよねぇ。
この遺跡ってそれなりに元々あった施設的な物は残っているのに居住区域とかにはあまり何も見つかっていないのよね。慌てて逃げたとかだったらもっと色々と物が残っていたと思うから、戦争や疫病で短期間で一気に滅びたんじゃあないとは思うんだけど。
何分木の上とか地上に木材の家を造って住んでいたっぽいから残っている物が少なくって・・・」
溜め息を吐きながらシェイラが言った。
「あちこち掘り起こしているじゃん?
あそこは何もないのか?」
「地下にあるのは貯蔵庫だった場所っぽいのが多いの。
森の中で大樹を伐採せずに住もうと思ったら、木の枝の上に部屋を設置することが多いみたいなんだけど、どうしてもそう言うのは時間経過で崩壊して地面に落ちて叩きつけられて壊れちゃうからね。
オーバスタ文明の遺跡みたいに全部洞窟内なんていう遺跡は珍しいけど、そうじゃなくても大抵の遺跡って地上に建っていた家が時間経過とともに埋もれていくのに、ここは殆ど地上に建っていた家がないみたいで」
あ~。
ハラファ達は新しい方の遺跡を見た時に滅茶苦茶喜んでいたけど、調べられる物が多すぎて手が足りないって嬉しい悲鳴を上げていたからなぁ。
こことは正反対な感じだな。
ある意味、フォラスタ文明の遺跡は樹に刻まれた形跡を調べる方が地面を掘り起こすよりも発見が多そうだ。
とは言え、心眼《サイト》と魔術に関する知識が無ければ単なる傷なのか魔術回路の痕跡なのか、見分けるのは至難の業だと思うが。
「まあ、それでも誰も入らなかった遺跡だから掘り起こせばそれなりに落ちてきた家屋とかの痕跡が見つかるんだけどね。
ただ、見つかった痕跡にもあまり物が残ってないのよ~。
本当に、なんでここが滅びたのか、知りたい!!」
シェイラがうが~~!と空に向かって叫んだ。
おやぁ?
なんかストレスが溜まっているっぽいな。
「木の上に住むのが面倒だから、若いのとかがもっと便利なところで無難な生き方をしたがるようになって年寄りしかいなくなって寂れたんじゃないのか?
子供とかいたら、木の上で暮らすのは危険そうだ」
樹の上で自然と共生する生き方って要は森の中に息をひそめて生きていたってやつなんじゃないのか?
技術力なり人口なりが上がって周辺の人口と戦っても負けない様になったら、もっと便利な生き方に移行しても不思議は無い。
「確かに、鳥ですら雛が巣から落ちたら死んじゃう事があるんだから、人間が樹の上で暮らしていたら落下事故ってそれなりに起きそうよね。
フォラスタ文明って豊かになってきたから他の生活様式に移行してしまっただけなのではっていう学説は今までにもあったんだけど、何分証拠が何もないからねぇ。
でも、精霊が居る森に住み着いてちょっと助けて貰えていたというのと、今になってもまだ精霊が居るってことを考えると、それが現実的そうな気もするわね」
シェイラが言った。
「残念ながら証拠がない事に変わりはないがな」
証拠なんぞ見つかりようがないとは思うが、まあ頑張ってくれ。
時間がある時は手伝うから。
シェイラがふと尋ねる。
『さあ?
今でもこの泉や広場の大地は居るんだから、見捨てた訳ではないんじゃない?』
清早が肩を竦めて応じる。
まあ、精霊って時間感覚がいい加減だからな~。
ちょっと遊びに出かけていたとか、飽きたから暫く寝ていたとかで百年程度は全然普通に過ぎるっぽいから、その間に周辺の国とかとの関係が悪化したり、気候や地形に何か変動があったりしたらあっさり集落が滅ぼされたり、離散したりする可能性は十分にあるだろう。
元々、精霊って気に入った個人に対してはそれなりに興味を持つのに、その個人が所属している集団に関しては興味を持たないから、国とか集落がどう栄えたのかとかいつ滅びたのかとか聞いても、全然意味のある答えが返ってこないんだよね。
俺やシャルロも清早や蒼流に遺跡発掘の手伝いがてらに何度か聞いたことがあるが、俺たちが聞いても『さあ?』という感じの返事しか返ってこないから、考古学に関して精霊に知識を求めるのは無駄だろう。
考古学者本人が精霊に好かれて加護持ちになったら、手当たり次第に通り掛かる精霊に話を聞いて回って実際にその遺跡が滅びた時期にその遺跡に興味を持っていた精霊に行き当たる可能性もゼロではないが・・・まずは無理だろうね。
「別にこの遺跡って戦争で滅ぼされたって訳じゃあないんだろ?
人口が減りすぎたとか、不便過ぎたとかで自然減少的に人が居なくなったんじゃないのか?」
戦争で滅ぼされたのだったらもっと人除け結界に使われていた大樹が破損していただろう。
一本が枯れたせいで結界に穴が開くまで、何百年も結界を維持できるほどしっかりした状態だったのだ。
どう考えても戦争で破損していたとは思えない。
「そうよねぇ。
この遺跡ってそれなりに元々あった施設的な物は残っているのに居住区域とかにはあまり何も見つかっていないのよね。慌てて逃げたとかだったらもっと色々と物が残っていたと思うから、戦争や疫病で短期間で一気に滅びたんじゃあないとは思うんだけど。
何分木の上とか地上に木材の家を造って住んでいたっぽいから残っている物が少なくって・・・」
溜め息を吐きながらシェイラが言った。
「あちこち掘り起こしているじゃん?
あそこは何もないのか?」
「地下にあるのは貯蔵庫だった場所っぽいのが多いの。
森の中で大樹を伐採せずに住もうと思ったら、木の枝の上に部屋を設置することが多いみたいなんだけど、どうしてもそう言うのは時間経過で崩壊して地面に落ちて叩きつけられて壊れちゃうからね。
オーバスタ文明の遺跡みたいに全部洞窟内なんていう遺跡は珍しいけど、そうじゃなくても大抵の遺跡って地上に建っていた家が時間経過とともに埋もれていくのに、ここは殆ど地上に建っていた家がないみたいで」
あ~。
ハラファ達は新しい方の遺跡を見た時に滅茶苦茶喜んでいたけど、調べられる物が多すぎて手が足りないって嬉しい悲鳴を上げていたからなぁ。
こことは正反対な感じだな。
ある意味、フォラスタ文明の遺跡は樹に刻まれた形跡を調べる方が地面を掘り起こすよりも発見が多そうだ。
とは言え、心眼《サイト》と魔術に関する知識が無ければ単なる傷なのか魔術回路の痕跡なのか、見分けるのは至難の業だと思うが。
「まあ、それでも誰も入らなかった遺跡だから掘り起こせばそれなりに落ちてきた家屋とかの痕跡が見つかるんだけどね。
ただ、見つかった痕跡にもあまり物が残ってないのよ~。
本当に、なんでここが滅びたのか、知りたい!!」
シェイラがうが~~!と空に向かって叫んだ。
おやぁ?
なんかストレスが溜まっているっぽいな。
「木の上に住むのが面倒だから、若いのとかがもっと便利なところで無難な生き方をしたがるようになって年寄りしかいなくなって寂れたんじゃないのか?
子供とかいたら、木の上で暮らすのは危険そうだ」
樹の上で自然と共生する生き方って要は森の中に息をひそめて生きていたってやつなんじゃないのか?
技術力なり人口なりが上がって周辺の人口と戦っても負けない様になったら、もっと便利な生き方に移行しても不思議は無い。
「確かに、鳥ですら雛が巣から落ちたら死んじゃう事があるんだから、人間が樹の上で暮らしていたら落下事故ってそれなりに起きそうよね。
フォラスタ文明って豊かになってきたから他の生活様式に移行してしまっただけなのではっていう学説は今までにもあったんだけど、何分証拠が何もないからねぇ。
でも、精霊が居る森に住み着いてちょっと助けて貰えていたというのと、今になってもまだ精霊が居るってことを考えると、それが現実的そうな気もするわね」
シェイラが言った。
「残念ながら証拠がない事に変わりはないがな」
証拠なんぞ見つかりようがないとは思うが、まあ頑張ってくれ。
時間がある時は手伝うから。
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