シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

980 星暦557年 桃の月 11日 家族(?)サービス期間(4)

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「へぇぇ、なんかこう、ピクニック用の広場みたいな場所だな」

シェイラが案内してくれた場所は泉が小川に流れ出していく一角で、周囲の大樹が多少下がっているお蔭で明るく、足元にある幾つかの切り株が丁度いい椅子とテーブル代わりになっているピクニックに理想的な空間だった。

「でしょ?
泉のお蔭か夏でもそれなりに涼しいのに、何故か冬でもそれ程寒くないのよね~」
嬉しそうに切り株の上にランチのバスケットを置く様に俺に身振りしながらシェイラが教えてくれた。

へぇぇ?
水と日光があれば、土なんか二の次で植物はバンバン生えてくると村の近所の農家のおっちゃんは言っていたんだけどなぁ。
最初はちょっとした雑草だからと思って放置していたらいつの間にか背の高い雑草に混じって低木が生えていて、それもいつの間にか大きくなって切り倒すのが面倒な位に大きくなり、うっかり放置していたら子供が育つのと同じぐらいの早さで、大人が数人がかりで作業しなければ掘り出せないような切り株が残ってしまう大木に育つのだと。

そう考えると、近くに倒木がある訳でもないこの泉の周りが開けているのってちょっと不思議だな。

「ここら辺の木を切り倒して空間を開いたの?」
ひょろい連中が多い発掘隊のメンバーがこの森の中の大樹・・・とまで行かなくてもそれなりのサイズの木を伐採して撤去できるとは思えないんだが。

木材が欲しいにしても、ここまで態々来るとも思えないし。

「いいえ?
迷いの森はベルダ師が散歩がてらに遺跡を見つけた時から誰も植栽に手を出しては居ないわ」

「え、じゃあ中央部分の作業用テントを幾つか張っている場所は?」
てっきり作業の場所が必要だから何本か大木を伐採したんだと思っていた。
古くて大きな樹だったら金に生るから、ちょうど発掘隊の作業開始費用を賄うのにも役に立つだろうし。

「他の遺跡ならまだしも、ここは大樹に色々とフォラスタ文明の民が術を刻んでそれがまだ残っている奇跡的な遺跡なのよ?
うっかり樹を伐採して考古学的遺産を家具や薪の一部になんてする危険を犯す訳がないじゃない。
あそこは我々が見つけた時から開けていたの。
流石に雑草は刈り取ったけど」
シェイラが言った。

マジか。
「何百年か知らんけど、空き地に木が生えない様にする何らかの術があるんだとしたら、めっちゃ売れるんじゃないか?」

場合によっては農家が鼻血が出るほど欲しがりそうだ。とは言え、一般庶民が大金を払って術を設置するのは無理だろうが。
領主とかだったらあちこちの空き地の管理が楽になるなら欲しがるだろうし、軍部だってそれこそ防衛上の必要から視界を確保しなければいけない土地を定期的に伐採させる手間が省けるとなると喜ぶと思うんだが。

「・・・確かにそうね。
後で戻ったら是非探してみて!」
シェイラが嬉しそうに言った。

遺跡発掘隊の資金源になるかと売り込み先を考えていそうだ。

まあ、良いけど。
というか、先にここを視て回る方が良いかも。
この切り株もだが、ここってピクニックスポットにする為に手を加えてこの状態を維持させているんじゃないか?

というか、何百年も昔のだとしたら、このテーブルとイス代わりにされている切り株だってなんで朽ちていないのか、不思議だ。

水の傍なのだ。
直ぐに腐るなりキノコが生えてぐずぐずになるなり虫に食われてスカスカになるだろうに。

虫が何百年も居つかないような薬(毒?)でもしみ込ませたんだとしたら、昼食の食材をその上に置くのはちょっと不安だ。

思わず毒探知用の指輪をテーブル代わりの切り株に触れさせてみるが、特に反応はない。
毒では無いっぽいな。

「どうしたの?」
布を取り出して切り株の上に敷き、サンドイッチやパイなどを取り出しながらシェイラが尋ねた。

「いや、何百年も朽ちないし虫食いにもならない加工をされた切り株ってよっぽど強力な毒でも染み込ませたのかと思ってちょっと確認してみただけだ」
大体、毒を塗ったら却って素材が弱くなりそうなものか。
どうやってこの切り株をこのまま残しているのか、シェイラが文句を言わなかったら昼食の後にじっくり調べてみよう。

木材の保存技術は、再現できるなら建築業とかで凄い喜ばれそうだ。
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