シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

968 星暦557年 橙の月 21日 次は?(3)

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「とびっきり面白い物ってことは、まだ意思表示が微妙な赤ん坊を宥めて眠らす系じゃなくて、もう少し育った幼児向けか?
それとも学院前ぐらいの生意気盛りなガキ用?」
ある意味、生意気盛りなガキ用だったら俺たちでも遊べるかも?

少なくとも幼児が遊ぶようなお人形遊びよりは楽しそうだ。
・・・お人形遊びは女の子向けか?
だとしたら、男の幼児って何で遊ぶんだろ?

「う~ん、先ずは女の子向けか、男の子向けかを考えないと?
男の子向けだったら幼児でも少年でも極端に変わらないかも。
ちょっと難易度を変える程度で両用出来そうじゃない?」
シャルロがクッキー缶に手を伸ばしながら言った。

しっかし、シャルロってガッツリ普通の食事をバランス良く食べているのに追加でこれだけ甘い物を食べていて、なんで太らないんだろ?
運動だってそれ程している訳じゃあないのに。
もしかして、蒼流が健康管理の一環として余分な栄養を除去していたりしているのかな?
虫歯にならない様に口の中の状態に手を出しているんだろうとは思うが、体重管理もしたりしているのかも。

精霊にそんなことが出来るのか、ちょっと疑問な気もするが・・・毒を消せるんだ。
余分な栄養素を消すのだって出来そう。
まあ、魔術師って魔力を使うことでエネルギーを消費するから太りにくいとは言うけど。
シャルロって俺が気付かないところでも魔力を使っているのか?

・・・もしかしたら、太らない様に体重管理のついでに余剰なエネルギーを魔力にして蒼流がつまみ食いしているのかも。
魔力が美味しいとか不味いって言い方を時々清早とかもするから、精霊って人間の魔力もその気になればつまみ食いできるみたいだし。

「魔具なんだからやはりここは男の子向けの単純に楽しいのが良いんじゃないか?
女の子向けの変に会話するような人形を魔具で造ると、それこそまた盗聴用とか護身用とかいった用途に開発が脱線して変に国から注意を引きそうだ」
アレクがちょっと顔をしかめつつ言った。

そっか。
女の子の人形遊びって良く分からない会話とか日常生活の一場面とかのごっこ遊びをやっている事が多いんだっけ。
何人もいると皆で一役やりながら良く分からない場面を演じてるっぽい感じになるが、一人とか二人しかいないと一人何役やってるんだ??って感じで良く分からない会話を延々と続けてることがあるから、相槌を打てる人形への需要ってあるんだろうな。

そこら辺は確かに手を出したくない。

飲んだくれな夫を叱り飛ばして尻を蹴り上げる下町のお袋の役を演じる人形だったら面白いだろうが、魔具なんて高級品となったら人形遊びの『日常』も貴族とか金持ちな商家になるだろうから会話その物が俺の理解を越えそうだし。

「そうだね~。
お人形遊びはお洒落な服の着替えとかぬいぐるみの手触りとか、魔具で工夫できる範囲と違う部分が重視されることも多いし。
そうなると男の子用のオモチャだよね。
子供の頃ってどんなオモチャで遊んだっけ?」
シャルロが首を傾げながら聞いてきた。

「・・・店の売り上げを集計する計算機の型落ちした古いのとか、行商人の馬車のミニチュアで遊んでいたかな?」
アレクがちょっと目を細めて考えてから応じた。

「俺はちょっと参考にならないからパス」
親が死んで、子供の搾取がヤバい孤児院から逃げ出してからはスリや泥棒の補助とかで忙しかったから、遊んでいる暇はなかったな。
忍び込んだ先で貴族の子供たちが遊んでいるのをちょっと見た事もあるが・・・ガキよりも使用人の動きに注意を払っていたから、あまり何をやっていたかしっかり見た記憶がない。

「僕は・・・馬のオモチャを走らせたりしてたかも?
後は蒼流と一緒に窓から虹を作ったり、庭に小川を造ったりしてたかも」
シャルロが最後に言った。

イマイチどれも参考にならなそうだな。
小川を造るのも、売上集計用の計算機で遊ぶのも、一般的じゃあないだろ。

「そう言えば、ガキって馬車とか馬を動かして遊ぶのが好きなことが多いかも?
動く物体が気になるのかな?」
良い年した大人でも、馬や馬車を飛ばすのが好きな奴はいるし。
あれはまたちょっと違う気もするけど、動く物って言うのは注意を惹きつけやすいのかも?

「何通りか動く物を作って、甥やその遊び仲間に見せて反応を確認してみるか」
アレクが言った。

そうだな。
シェフィート商会の従業員の子供でも集めれば、それなりに身内で反応を確かめられそうだし。
今回は製造準備が整う前に外部に見せるのは止めるよう、強く主張しておこう。


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