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卒業後
963 星暦557年 橙の月 08日 新しい伝手(27)
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ウォレン爺が来た。
過敏《アレルギー》体質安全用魔具をチェルナ子爵夫人の所でお披露目してからまだ13日だぜ?
早いな。
やっと3日前にシェフィート商会の本店の一室を使って過敏《アレルギー》体質判定サービスを始めたところなんだが。
まだまだ製造も追いついていないんだよなぁ。
過敏《アレルギー》体質判定サービスを始めるよう圧力を掛けまくり、開始して直ぐに押し掛けて来て過敏《アレルギー》体質を確認し、是非購入したい!!って物凄い熱意で言って来た客に製造が出来次第順番に納品している所なのに、ここで製造停止なんてことになったら大騒ぎになりそうなんだが。
いつかはバレるだろうとは思っていたが、想定以上に過敏《アレルギー》体質の人が多い上に、その連中の危機感というか苦労具合が俺たちの想像を超えていたのか、マジで凄いんだよ・・・。
あっという間に情報が広まったようだし。
実は、過敏《アレルギー》体質の人たちってどういう状況で危ないとか、何をしたら少しマシとか、常時色々と情報共有しているらしい。
チェルナ子爵夫人もそこんとこ、教えてくれれば良かったのに・・・。
お蔭でシェフィート商会に泣きつかれて、俺たちまで魔具の製造に駆り出される羽目になっている。
「・・・忙しそうじゃの?」
工房で山積みになった素材を順番に手に取りながら黙々と魔術回路を造り上げる俺たちを見て、ウォレン爺があっけに取られたように声を掛けてきた。
「も~、疲れた!!!
お茶にしよう!!!」
丁度取り掛かっていた魔術回路が終わったらしきシャルロが、それを完成部品の箱に入れて大きく背を反らして伸ばし、壁際のお茶セットの方へ向かった。
俺もこの部分が終わったら、休む。
途中で止めると魔術回路に歪みが生じる場合があるから、魔術回路の製作中の中断はお茶とお菓子の為でもしない方が良いんだよなぁ。
ほんの少しの我慢を出来ないことで丸々全部作り直すことになるなんて、馬鹿らしい。
手を付け始めたばかりならまだしも、これはもう少しで終わりそうなのだ。
あとちょっとの辛抱だ。
「俺の分もお茶よろしく~。
ここが終わったら俺も休む!!」
開発とか改造とか魔術回路の解析とかに根を詰めるのはよくやってきたことなんだが、複雑とは言え同じ魔術回路を延々と造り続けるのは、辛い。
あと3日ぐらい頑張ればシェフィート商会が手配した工房の方も稼働できるようになって製造ラインがなんとか販売予約の増加に追い付ける筈。
それまでの辛抱だ。
多分。
「お主たちが工房で魔具を大量生産しているのを見たのは初めてな気がするな」
シャルロが淹れたお茶を受け取りながらウォレン爺が言った。
「そりゃあ、僕たちは設計やアイディアを売っているんであって製造業じゃないからね。
今回はどのくらい需要があるかを判断する為にちょっとお試し披露したら、想定以上に話が広がっちゃって・・・予定が色々狂ったせいで急遽手伝いすることになったんだ」
溜め息を吐き、疲れたように肩を揉みながらシャルロが言った。
折角造った肩こり解消の魔具も、朝から晩まで細かい魔術回路を使うために屈みこんで集中しているとあまり役に立たないんだよなぁ。
今回の山が終わったら、がっつり魔術学院の温泉で休むぞ!!
「アレク、過敏《アレルギー》体質確認サービスの店舗を追加で開くのはもう少し待ってもらわないと、もう一か所開かれたりしたらまた予約の方が製造を大幅に上回る状態になっちまう。
誰かに圧力を掛けられたからってうっかり工房側の準備が出来る前に開いちまっても、もう手伝わないぞってお袋さんに釘を刺しておいてくれ」
作っていた魔術回路をやっと終え、箱に入れてソファに身を投げ出しながらアレクに声を掛ける。
俺より少し早く作業を終わらせてシャルロからお茶を受け取っていたアレクが頷いた。
「勿論だ。
こちらに緊急製造の依頼が来た段階でがっつり釘はさしてある。
元々、販売は工房側の準備が整ってから始めるつもりで、何軒ほど工房に話を付ける必要があるかを見極める為のお試し披露だった筈なんだが・・・思っていた以上に過敏《アレルギー》体質が貴族や富豪層に多かった。
母が極めて健康で体が丈夫な人間なせいで、そう言う体質的に問題がある人の事にちょっと疎かったようだ」
あ~。
健康過ぎる人間って他人の体調不良に関して理解が薄いからなぁ。
そう言う相手にはあまり相談もしにくいだろうから、話の輪に入っていなかったんか。
まあ、それに考えてみたら貧乏人とかカツカツに生きているような職人層の家族だったらうっかり普通の人と同じ物を食べたら死ぬような子供は確実に結婚出来ないし、成人できるかも怪しいからな。
問題がある体質で、成人して子供まで残せるようなのは貴族層や古くから続く裕福な商家の人間だけなのかも知れない。
そうなると過敏《アレルギー》体質安全用魔具を欲しがるのが権力層になるのも当然だな。
高額になる魔具だから購入層は金持ちになるだろうとは思っていたが、必要とする顧客層その物が金持ち層に偏っているんだろう。
お蔭でそう言う体質の人間の多さをシェフィート商会側も読み間違えたのかも。
とは言え、考えてみたらそこまで金持ちな層の数なんぞ限られている。
そうなると、この繁忙期を越えたら売り上げは落ち着くかな?
社交シーズンになったら王都に集まる地方の貴族とかからの需要は新たにあるだろうが。
どの程度継続的な需要があるかは、要観察事項ってとこだな。
過敏《アレルギー》体質安全用魔具をチェルナ子爵夫人の所でお披露目してからまだ13日だぜ?
早いな。
やっと3日前にシェフィート商会の本店の一室を使って過敏《アレルギー》体質判定サービスを始めたところなんだが。
まだまだ製造も追いついていないんだよなぁ。
過敏《アレルギー》体質判定サービスを始めるよう圧力を掛けまくり、開始して直ぐに押し掛けて来て過敏《アレルギー》体質を確認し、是非購入したい!!って物凄い熱意で言って来た客に製造が出来次第順番に納品している所なのに、ここで製造停止なんてことになったら大騒ぎになりそうなんだが。
いつかはバレるだろうとは思っていたが、想定以上に過敏《アレルギー》体質の人が多い上に、その連中の危機感というか苦労具合が俺たちの想像を超えていたのか、マジで凄いんだよ・・・。
あっという間に情報が広まったようだし。
実は、過敏《アレルギー》体質の人たちってどういう状況で危ないとか、何をしたら少しマシとか、常時色々と情報共有しているらしい。
チェルナ子爵夫人もそこんとこ、教えてくれれば良かったのに・・・。
お蔭でシェフィート商会に泣きつかれて、俺たちまで魔具の製造に駆り出される羽目になっている。
「・・・忙しそうじゃの?」
工房で山積みになった素材を順番に手に取りながら黙々と魔術回路を造り上げる俺たちを見て、ウォレン爺があっけに取られたように声を掛けてきた。
「も~、疲れた!!!
お茶にしよう!!!」
丁度取り掛かっていた魔術回路が終わったらしきシャルロが、それを完成部品の箱に入れて大きく背を反らして伸ばし、壁際のお茶セットの方へ向かった。
俺もこの部分が終わったら、休む。
途中で止めると魔術回路に歪みが生じる場合があるから、魔術回路の製作中の中断はお茶とお菓子の為でもしない方が良いんだよなぁ。
ほんの少しの我慢を出来ないことで丸々全部作り直すことになるなんて、馬鹿らしい。
手を付け始めたばかりならまだしも、これはもう少しで終わりそうなのだ。
あとちょっとの辛抱だ。
「俺の分もお茶よろしく~。
ここが終わったら俺も休む!!」
開発とか改造とか魔術回路の解析とかに根を詰めるのはよくやってきたことなんだが、複雑とは言え同じ魔術回路を延々と造り続けるのは、辛い。
あと3日ぐらい頑張ればシェフィート商会が手配した工房の方も稼働できるようになって製造ラインがなんとか販売予約の増加に追い付ける筈。
それまでの辛抱だ。
多分。
「お主たちが工房で魔具を大量生産しているのを見たのは初めてな気がするな」
シャルロが淹れたお茶を受け取りながらウォレン爺が言った。
「そりゃあ、僕たちは設計やアイディアを売っているんであって製造業じゃないからね。
今回はどのくらい需要があるかを判断する為にちょっとお試し披露したら、想定以上に話が広がっちゃって・・・予定が色々狂ったせいで急遽手伝いすることになったんだ」
溜め息を吐き、疲れたように肩を揉みながらシャルロが言った。
折角造った肩こり解消の魔具も、朝から晩まで細かい魔術回路を使うために屈みこんで集中しているとあまり役に立たないんだよなぁ。
今回の山が終わったら、がっつり魔術学院の温泉で休むぞ!!
「アレク、過敏《アレルギー》体質確認サービスの店舗を追加で開くのはもう少し待ってもらわないと、もう一か所開かれたりしたらまた予約の方が製造を大幅に上回る状態になっちまう。
誰かに圧力を掛けられたからってうっかり工房側の準備が出来る前に開いちまっても、もう手伝わないぞってお袋さんに釘を刺しておいてくれ」
作っていた魔術回路をやっと終え、箱に入れてソファに身を投げ出しながらアレクに声を掛ける。
俺より少し早く作業を終わらせてシャルロからお茶を受け取っていたアレクが頷いた。
「勿論だ。
こちらに緊急製造の依頼が来た段階でがっつり釘はさしてある。
元々、販売は工房側の準備が整ってから始めるつもりで、何軒ほど工房に話を付ける必要があるかを見極める為のお試し披露だった筈なんだが・・・思っていた以上に過敏《アレルギー》体質が貴族や富豪層に多かった。
母が極めて健康で体が丈夫な人間なせいで、そう言う体質的に問題がある人の事にちょっと疎かったようだ」
あ~。
健康過ぎる人間って他人の体調不良に関して理解が薄いからなぁ。
そう言う相手にはあまり相談もしにくいだろうから、話の輪に入っていなかったんか。
まあ、それに考えてみたら貧乏人とかカツカツに生きているような職人層の家族だったらうっかり普通の人と同じ物を食べたら死ぬような子供は確実に結婚出来ないし、成人できるかも怪しいからな。
問題がある体質で、成人して子供まで残せるようなのは貴族層や古くから続く裕福な商家の人間だけなのかも知れない。
そうなると過敏《アレルギー》体質安全用魔具を欲しがるのが権力層になるのも当然だな。
高額になる魔具だから購入層は金持ちになるだろうとは思っていたが、必要とする顧客層その物が金持ち層に偏っているんだろう。
お蔭でそう言う体質の人間の多さをシェフィート商会側も読み間違えたのかも。
とは言え、考えてみたらそこまで金持ちな層の数なんぞ限られている。
そうなると、この繁忙期を越えたら売り上げは落ち着くかな?
社交シーズンになったら王都に集まる地方の貴族とかからの需要は新たにあるだろうが。
どの程度継続的な需要があるかは、要観察事項ってとこだな。
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