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卒業後
959 星暦557年 黄の月 17日 新しい伝手(23)
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「なんかさぁ、もうこの毒探知用魔具って要は体に悪い物は全て分かるってことで、これが売れまくったら経口の毒殺は諦めましょうって流れになるだけだろ?
だったら抜け道探されたら困るからって国が没収する必要はないって主張できないか?」
口から入れなくても肌に塗るクリームや化粧品に毒を混ぜたり、蝋燭に混ぜ込んで気化させて吸い込ませるって手もあるが・・・暗殺されるような貴族や富豪だったら蝋燭なんて使わずに魔具ランプを使うからそっちは関係ないか。
考えてみたら皮膚から吸収させるタイプの毒も、この魔具の指輪を嵌めた指で触れたら分かるかも?
貴族の女性なんかだったら化粧も侍女かメイドにやらせてるだろうが。
・・・毒物が入った化粧品を塗った後の肌を触れた程度でも、探知出来るのかな?
化粧した顔って、あまり触れると化粧が乱れるからってんで普段は自分の顔でもあまり触れないだろうが。
「う~ん、敵対している貴族の所でお茶を飲まなきゃいけない場合に先に解毒剤を飲んでおくのと反対で、合わせて飲んだら毒になるって組み合わせもあるよね?
どっかで聞いたことがあるよ?
多分そう言うのはこの魔具で発見できないんじゃないかと思うから、そっちの研究が盛んになるから面倒だって言われるかも」
シャルロが指摘する。
まあ、考えてみたらこないだ見つけた毒の精製をしていた薬師だって、単に抽出するだけのタイプもあるがキツくて解毒しにくい毒は幾つかの素材を加工して組み合わせることで合成するって言っていたな。
そう考えると胃の中で幾つかの素材が組み合わされると毒になるものだってあるだろう。
多分。
あまり知られていなくても探せばきっと更に出て来るだろうから、そう言うのの研究が東大陸とかで大人気になったら危険そうだな。
「・・・体質的に合わない食材を見つけるためにご利用をどうぞと言って売り出すとか?
毒探知用魔具と言わなければ国に見つからない可能性があるかも?」
アレクが微妙な顔をして言った。
やっぱ国に召し上げられるのは出来れば避けたいところなんだな。
「ナッツとか卵とかが体に合わない人ってお茶会に招かれても困ることが多いって言っていたしね~。
そう言う人の為ってことで女性メインに売り出したらバレないかも?」
シャルロが賛意を示す。
「特定の食材に過剰《アレルギー》反応する体質の人ってお茶会なんぞに行かない方が良いんじゃないのか?
もしくは外では何も食べないとか」
ナッツや卵なんぞ菓子の製造に使われることが多い。
入っていない茶菓子の方が少ないぐらいだろう。
「貴族女性の付き合いってそれなりに重要だからねぇ。
特に情報を握っている方の人が体質的に問題があると、『料理人にその食材を使わない様に命じますから是非いらしてください』って招かれることが多いんだって。
そうなると断るのも角が立つし、だけど人の家の料理人だとどのくらい気を付けなきゃいけないのか分かっていない人も多くて、料理人が気を付けていても下男とかがうっかりそれを料理で触れた手を洗わずに他の食材に触ったりなんてこともあって、色々大変らしいよ~。
父上の従姉妹が一人卵が駄目なんだけど、流石に露骨に卵が入っている料理は出て来なくても、人の家で何かを口にすると帰ってから蕁麻疹が出たりお腹が痛くなるのはしょっちゅうなんだって」
シャルロが教えてくれた。
うへぇぇ。
卵が実質毒だって言うのに、それを盛られる覚悟で人んちでお茶を飲んで優雅に菓子を食べなきゃいけないなんて、貴族も大変だねぇ。
「意外と体質的に合わない食材があるって言うのを知らない人間もいるし、何が合わないのか正確に分からなくて食事を大幅に制限する羽目になっている人間もいるから、欲しがる人間は多いとは思う。
ただ・・・毒っていうのも絶対的にほぼ全ての人間の体質に合わないのも事実だからなぁ」
溜め息を吐きながらアレクが言った。
確かに。
卵やナッツが体質に合わない人間はそう多くはないが、砒素や毒キノコを食べて平気な人間はほぼ居ないだろう。
ちょっと考えれば『体質に合わない食材が入った料理が分かる』というのは『毒が混ぜられていたら分かる』のと同義だと気付く人間はいても不思議は無い。
「この際もっと大きくて服の下に隠せないサイズにして、体質的に合わない食材がある人が堂々と使える魔具にして売り出したらどうだ?
毒探知ではないから、体質的に合わない食材があるって公言している人しか買わないし使わないって形にしたら利用できる場面も限られるから、没収されないで済まないかな?」
折角色々工夫して小型化したんだが。
売れないよりはマシだろう。
「ふむ。
だったらある意味腕輪部分を指輪につなげて、手の甲まで覆うようなブレスレットの形にしてみるか?
デザインを工夫すればお洒落だし然程邪魔にならないし、隠せないから誰も彼も使うって訳にはいかなくなる」
アレクが頷く。
「男性用はちょっと形を考えなきゃだけど、女性用だったらちょっとおしゃれなデザインで造ったら良いかもね。
それで行ってみようか」
シャルロも合意した。
うっし。
面倒だが、何とかなりそうかな?
だったら抜け道探されたら困るからって国が没収する必要はないって主張できないか?」
口から入れなくても肌に塗るクリームや化粧品に毒を混ぜたり、蝋燭に混ぜ込んで気化させて吸い込ませるって手もあるが・・・暗殺されるような貴族や富豪だったら蝋燭なんて使わずに魔具ランプを使うからそっちは関係ないか。
考えてみたら皮膚から吸収させるタイプの毒も、この魔具の指輪を嵌めた指で触れたら分かるかも?
貴族の女性なんかだったら化粧も侍女かメイドにやらせてるだろうが。
・・・毒物が入った化粧品を塗った後の肌を触れた程度でも、探知出来るのかな?
化粧した顔って、あまり触れると化粧が乱れるからってんで普段は自分の顔でもあまり触れないだろうが。
「う~ん、敵対している貴族の所でお茶を飲まなきゃいけない場合に先に解毒剤を飲んでおくのと反対で、合わせて飲んだら毒になるって組み合わせもあるよね?
どっかで聞いたことがあるよ?
多分そう言うのはこの魔具で発見できないんじゃないかと思うから、そっちの研究が盛んになるから面倒だって言われるかも」
シャルロが指摘する。
まあ、考えてみたらこないだ見つけた毒の精製をしていた薬師だって、単に抽出するだけのタイプもあるがキツくて解毒しにくい毒は幾つかの素材を加工して組み合わせることで合成するって言っていたな。
そう考えると胃の中で幾つかの素材が組み合わされると毒になるものだってあるだろう。
多分。
あまり知られていなくても探せばきっと更に出て来るだろうから、そう言うのの研究が東大陸とかで大人気になったら危険そうだな。
「・・・体質的に合わない食材を見つけるためにご利用をどうぞと言って売り出すとか?
毒探知用魔具と言わなければ国に見つからない可能性があるかも?」
アレクが微妙な顔をして言った。
やっぱ国に召し上げられるのは出来れば避けたいところなんだな。
「ナッツとか卵とかが体に合わない人ってお茶会に招かれても困ることが多いって言っていたしね~。
そう言う人の為ってことで女性メインに売り出したらバレないかも?」
シャルロが賛意を示す。
「特定の食材に過剰《アレルギー》反応する体質の人ってお茶会なんぞに行かない方が良いんじゃないのか?
もしくは外では何も食べないとか」
ナッツや卵なんぞ菓子の製造に使われることが多い。
入っていない茶菓子の方が少ないぐらいだろう。
「貴族女性の付き合いってそれなりに重要だからねぇ。
特に情報を握っている方の人が体質的に問題があると、『料理人にその食材を使わない様に命じますから是非いらしてください』って招かれることが多いんだって。
そうなると断るのも角が立つし、だけど人の家の料理人だとどのくらい気を付けなきゃいけないのか分かっていない人も多くて、料理人が気を付けていても下男とかがうっかりそれを料理で触れた手を洗わずに他の食材に触ったりなんてこともあって、色々大変らしいよ~。
父上の従姉妹が一人卵が駄目なんだけど、流石に露骨に卵が入っている料理は出て来なくても、人の家で何かを口にすると帰ってから蕁麻疹が出たりお腹が痛くなるのはしょっちゅうなんだって」
シャルロが教えてくれた。
うへぇぇ。
卵が実質毒だって言うのに、それを盛られる覚悟で人んちでお茶を飲んで優雅に菓子を食べなきゃいけないなんて、貴族も大変だねぇ。
「意外と体質的に合わない食材があるって言うのを知らない人間もいるし、何が合わないのか正確に分からなくて食事を大幅に制限する羽目になっている人間もいるから、欲しがる人間は多いとは思う。
ただ・・・毒っていうのも絶対的にほぼ全ての人間の体質に合わないのも事実だからなぁ」
溜め息を吐きながらアレクが言った。
確かに。
卵やナッツが体質に合わない人間はそう多くはないが、砒素や毒キノコを食べて平気な人間はほぼ居ないだろう。
ちょっと考えれば『体質に合わない食材が入った料理が分かる』というのは『毒が混ぜられていたら分かる』のと同義だと気付く人間はいても不思議は無い。
「この際もっと大きくて服の下に隠せないサイズにして、体質的に合わない食材がある人が堂々と使える魔具にして売り出したらどうだ?
毒探知ではないから、体質的に合わない食材があるって公言している人しか買わないし使わないって形にしたら利用できる場面も限られるから、没収されないで済まないかな?」
折角色々工夫して小型化したんだが。
売れないよりはマシだろう。
「ふむ。
だったらある意味腕輪部分を指輪につなげて、手の甲まで覆うようなブレスレットの形にしてみるか?
デザインを工夫すればお洒落だし然程邪魔にならないし、隠せないから誰も彼も使うって訳にはいかなくなる」
アレクが頷く。
「男性用はちょっと形を考えなきゃだけど、女性用だったらちょっとおしゃれなデザインで造ったら良いかもね。
それで行ってみようか」
シャルロも合意した。
うっし。
面倒だが、何とかなりそうかな?
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