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卒業後
958 星暦557年 黄の月 17日 新しい伝手(22)
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「ちょっと重いな」
色々と試した魔術回路の素材だが、残念なことに緑砂鉄《チュサスト》入りと同様なレベルまで小さくできる物は見つからなかった。
ちなみに、卵の殻入りも悪くは無かったが、意外にも海水から塩を抽出する時の廃棄物を混ぜたのが緑砂鉄《チュサスト》入り以外では一番良かった。
最終的にケッパッサで入手したのよりも一回り大きくなった。
これでも警告用の雷撃の魔術回路を熱を発するだけのもっと簡単なものに変えたのだが。
二重に重ねて小さくするのではなく、少し腕輪を長くするだけで一応シャツの下に装着していても目立たぬように出来るサイズにまでは出来たのだが、金属のアームガードのような腕輪をするとそれなりに重い。
「金ではなく銅の腕輪にするか?
大分とそれで軽くなるぞ?」
基本的に鍛冶場で俺が個人的に扱うのは剣にする為の鉄だが、金銀銅の加工もさらっとスタルノに教わっている。
剣の刀身は鉄でなければ強度が足りなくて話にならないが、柄や鍔の部分には装飾を加えてそれらを使うこともあるからだ。
まあ、俺にそんな実用だけでなく見栄までも重視したような高級な剣を作れるようになる日が来るとは思わんが。一応知っておいて損は無いだろうという話で叩き込まれたのだ。
で、その時に知ったのだが鉄に比べて貴金属は重い。
特に純金なんぞはバカみたいに重いのだ。
純金の腕輪ではなく銅に金で鍍金《めっき》したを腕輪にすれば大分と軽くなるだろう。
「・・・その方が金額的にも節約できるし、良いな。
うっかり装飾品だからと思って金を使おうなんて考えたのが間違いだった」
アレクが同意する。
「もっと軽い金属ってないのかな?」
「軽金《アルミニウム》が軽いが、あれはそれこそアスカに抽出でもして貰わない限り金属加工できるだけの純度で集めるのは難しいし、加工その物も大変だから現実的じゃあないな」
一応、以前アスカに色々な金属の特徴を教わりながら加工や入手のしやすさなどを確認したことがあるのだが、軽金は圧倒的な軽さが大きな利点だが入手と加工の難易度が高すぎて実用性はないという結論に達した。
「あ~。
抽出だけならまだしも、加工も難しいんじゃあ駄目だね。
素材入手の為に短期的に土竜《ジャイアント・モール》と使い魔契約した魔術師を雇うって言うのも選択肢かな~と思ったんだけど、加工にまで協力してもらうとなるとちょっと拘束時間が長くなりすぎそうだね」
シャルロが残念そうにため息をついた。
そっか、抽出だけだったら短時間だから魔術師を雇うという可能性もあるのか。
パストン島は偶然土竜と使い魔契約した魔術師が移住してきたが、意図的にそう言う人材を探して雇うのだって可能ではあるだろう。
だが、加工までとなるとちょっと拘束時間が長すぎるし・・・多分使い魔に嫌がられるだろう。
アスカを見る限り、土竜《ジャイアント・モール》って土や岩をがばっと動かしたり何かを抽出する作業はそれ程嫌いじゃないが、細かいちまちました加工作業ってあまり好きじゃないっぽいんだよなぁ。
例えそう言う細かい作業が好きな土竜《ジャイアント・モール》がいても、きっと宝石とかのカッティングに取られちまうだろう。
純粋な装飾品の加工の方が時間と収入効率は良い。
「ところで、一応実用レベルまでなんとか魔術回路を落とし込めたが・・・考えてみたら、これって私たちが製造しても良いのか?
例え魔術院に特許登録されていなくても、勝手に魔術回路を複製するのは不味い気がする」
アレクが問題点を指摘してきた。
この毒探知の魔術回路が特許登録されていないのは前回探した時に無かったからほぼ確実だが・・・考えてみたら、これって国に召し上げられちまうから登録できないんだっけ??
国が独占して造っている毒探知の魔具って、結局自分達で開発しても買い上げられちまうのか?
登録しようとしないでこっそり知り合いとかに売る分には暫くは売れるかもしれないが、そうなったら今度は魔術回路を模倣されるだろうし。
ケッパッサのように溶接して腕輪から魔術回路を確認できない様にしたら大丈夫かも知れないが・・・それって実質国に喧嘩を売っている扱いになるのか?
「薬を必要が無い人間に過剰投与して体調不良を引き起こすような状況にもそれなりに対応できるから、この探知用魔具はかなり応用できる範囲が広いと思うんだけどねぇ。
国が売り出すとしたら毒探知の魔具としてだけになっちゃうから、おばあ様みたいに狙われる謂れは無いと思っている人は使わないよね」
シャルロが困った顔をした。
確かに、変な薬が入っているかとか、うっかり毒キノコが入っているとか悪くなった食材が入っているかもと言ったのの確認にも使えるという名目で一般人にも広められるが・・・国が売り出す毒探知の魔具となるとやはり貴族や大きな商家の当主や跡取りしか使わない可能性が高そうな気がする。
というか、国経由になると俺たちから買い上げる時は買い叩かれ、売り出す時は高くなるか・・・売る相手が制限されそうだな。
まあ、それなりに魔術回路が複雑なのでどちらにせよ製造費的にもそこそこ高い物になってしまうのは避けられないが。
どうすっかね。
色々と試した魔術回路の素材だが、残念なことに緑砂鉄《チュサスト》入りと同様なレベルまで小さくできる物は見つからなかった。
ちなみに、卵の殻入りも悪くは無かったが、意外にも海水から塩を抽出する時の廃棄物を混ぜたのが緑砂鉄《チュサスト》入り以外では一番良かった。
最終的にケッパッサで入手したのよりも一回り大きくなった。
これでも警告用の雷撃の魔術回路を熱を発するだけのもっと簡単なものに変えたのだが。
二重に重ねて小さくするのではなく、少し腕輪を長くするだけで一応シャツの下に装着していても目立たぬように出来るサイズにまでは出来たのだが、金属のアームガードのような腕輪をするとそれなりに重い。
「金ではなく銅の腕輪にするか?
大分とそれで軽くなるぞ?」
基本的に鍛冶場で俺が個人的に扱うのは剣にする為の鉄だが、金銀銅の加工もさらっとスタルノに教わっている。
剣の刀身は鉄でなければ強度が足りなくて話にならないが、柄や鍔の部分には装飾を加えてそれらを使うこともあるからだ。
まあ、俺にそんな実用だけでなく見栄までも重視したような高級な剣を作れるようになる日が来るとは思わんが。一応知っておいて損は無いだろうという話で叩き込まれたのだ。
で、その時に知ったのだが鉄に比べて貴金属は重い。
特に純金なんぞはバカみたいに重いのだ。
純金の腕輪ではなく銅に金で鍍金《めっき》したを腕輪にすれば大分と軽くなるだろう。
「・・・その方が金額的にも節約できるし、良いな。
うっかり装飾品だからと思って金を使おうなんて考えたのが間違いだった」
アレクが同意する。
「もっと軽い金属ってないのかな?」
「軽金《アルミニウム》が軽いが、あれはそれこそアスカに抽出でもして貰わない限り金属加工できるだけの純度で集めるのは難しいし、加工その物も大変だから現実的じゃあないな」
一応、以前アスカに色々な金属の特徴を教わりながら加工や入手のしやすさなどを確認したことがあるのだが、軽金は圧倒的な軽さが大きな利点だが入手と加工の難易度が高すぎて実用性はないという結論に達した。
「あ~。
抽出だけならまだしも、加工も難しいんじゃあ駄目だね。
素材入手の為に短期的に土竜《ジャイアント・モール》と使い魔契約した魔術師を雇うって言うのも選択肢かな~と思ったんだけど、加工にまで協力してもらうとなるとちょっと拘束時間が長くなりすぎそうだね」
シャルロが残念そうにため息をついた。
そっか、抽出だけだったら短時間だから魔術師を雇うという可能性もあるのか。
パストン島は偶然土竜と使い魔契約した魔術師が移住してきたが、意図的にそう言う人材を探して雇うのだって可能ではあるだろう。
だが、加工までとなるとちょっと拘束時間が長すぎるし・・・多分使い魔に嫌がられるだろう。
アスカを見る限り、土竜《ジャイアント・モール》って土や岩をがばっと動かしたり何かを抽出する作業はそれ程嫌いじゃないが、細かいちまちました加工作業ってあまり好きじゃないっぽいんだよなぁ。
例えそう言う細かい作業が好きな土竜《ジャイアント・モール》がいても、きっと宝石とかのカッティングに取られちまうだろう。
純粋な装飾品の加工の方が時間と収入効率は良い。
「ところで、一応実用レベルまでなんとか魔術回路を落とし込めたが・・・考えてみたら、これって私たちが製造しても良いのか?
例え魔術院に特許登録されていなくても、勝手に魔術回路を複製するのは不味い気がする」
アレクが問題点を指摘してきた。
この毒探知の魔術回路が特許登録されていないのは前回探した時に無かったからほぼ確実だが・・・考えてみたら、これって国に召し上げられちまうから登録できないんだっけ??
国が独占して造っている毒探知の魔具って、結局自分達で開発しても買い上げられちまうのか?
登録しようとしないでこっそり知り合いとかに売る分には暫くは売れるかもしれないが、そうなったら今度は魔術回路を模倣されるだろうし。
ケッパッサのように溶接して腕輪から魔術回路を確認できない様にしたら大丈夫かも知れないが・・・それって実質国に喧嘩を売っている扱いになるのか?
「薬を必要が無い人間に過剰投与して体調不良を引き起こすような状況にもそれなりに対応できるから、この探知用魔具はかなり応用できる範囲が広いと思うんだけどねぇ。
国が売り出すとしたら毒探知の魔具としてだけになっちゃうから、おばあ様みたいに狙われる謂れは無いと思っている人は使わないよね」
シャルロが困った顔をした。
確かに、変な薬が入っているかとか、うっかり毒キノコが入っているとか悪くなった食材が入っているかもと言ったのの確認にも使えるという名目で一般人にも広められるが・・・国が売り出す毒探知の魔具となるとやはり貴族や大きな商家の当主や跡取りしか使わない可能性が高そうな気がする。
というか、国経由になると俺たちから買い上げる時は買い叩かれ、売り出す時は高くなるか・・・売る相手が制限されそうだな。
まあ、それなりに魔術回路が複雑なのでどちらにせよ製造費的にもそこそこ高い物になってしまうのは避けられないが。
どうすっかね。
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