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卒業後
948 星暦557年 黄の月 5日 新しい伝手(12)
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「分解防止に一部の金属が溶接されているな」
色々と店を見て回り、午後に軽く軽食とお茶とケーキっぽい甘味を食べて屋敷船に戻った俺たちは、工房代わりの部屋で作業机の上に今回入手した毒探知の魔具を置いて覗き込んでいた。
ちなみに、現地の人間でもよっぽどの辛い物好きじゃなきゃ食べないと言われている小さなパイっぽいのと、アファル王国基準で言ったら十分以上に辛いけどこちらでは平均的という辛さのパイも買って来てみた。
あの痛いぐらいの辛さは弱毒だろ!と俺が主張したのだ。
「魔術回路だけだったら心眼《サイト》で視て描き出せば良いさ。
素材や回路の組み込み方か何かに工夫がある場合だったら厳しいが」
金属の中にある細かい仕組みとかってアスカに見て取れるのかな?
地中の鉱石とかの位置関係とかだったら感じ取れるって話だが、金属の内部の位置関係とかも分かるのか、ちょっと気になる。
あと、精度も。
アスカってそこそこ大雑把だからなぁ。
土竜《ジャイアント・モール》って皆そうなのかと思っていたんだが、以前パストン島で会った奴は契約している魔術師の話ではもっと細かい性格らしい。
まあ、そいつが特に細かかったのかもだが。
まあ、取り敢えずは心眼《サイト》で魔術回路をパクらせて貰って色々と実験してみよう。
「ふ~ん、これを腕に嵌めて指輪を付けた指で触れば良いんだ」
興味深げに覗き込んでいたシャルロが腕輪を手に取って左腕に嵌めこんでいた。
指輪は人差し指に。
「クッキーとかおやつをつまむ時に人差し指はよく使うだろ?爪の間に毒が入っていたりしたら危険だから、何かを手で取る時に使わない指にした方が良いんじゃないか?」
まあ、蒼流が全て無効化してくれるから関係ないっちゃあ無いんだろうが。
「そうだね!
折角の異国の食べ物に毒が混じって変な味になったら残念だもんね」
シャルロが頷き、小指に嵌め直した。
そっかぁ。
小指以外は全部の指を使っているか~。
俺としては人差し指と中指があれば大丈夫かなと思って薬指で毒に触れたんだが、確かに大き目な焼き菓子なんかを掴む時は薬指も使っているかな?
そんなことを考えながら紙を取り出し、超辛いパイに指を突っ込んだシャルロの腕輪を心眼《サイト》で観察する。
魔力の流れを観察しつつ線を描いていく。
やはり随分と複雑だな。
どうやって不特定多数の毒を発見するのだろうか。
人間って毒や有害なものに触れた際に何か決まった反応を示すのだろうか?
だとしたら、万人で使える(金さえあれば)魔具になり、更に人によって反応が違う物があるのも納得だ。
蜂蜜や果物に変な反応をする奴もいるし、ナッツとかも駄目なのもいるって話だよな。
俺自体は文字通り毒が入っているの以外で駄目な食材なんぞ無いが、人によっては妙にデリケートでうっかり普通に食事を食べると喉が腫れ上がるって言っている奴もいた。
ある意味、スラムの下町で食べられるような腐りかけた古いジャガイモとか肉なら大丈夫そうだから下町の連中の方が毒に掛かりにくいのかも?
イマイチ人によって毒になったりならなかったりっていう範疇が良く分からないが。
毒の効果に個人差があるんだったら、昔から毒を盛って盛られてを続けて幅広く毒に耐性を持っているであろう貴族の御坊ちゃまなシャルロより、普通に安全そうな物ばかり食べてきたアレクが試す方が良いかも?
シェフィート商会もそれなりに息子たちの後継者争いはシビアっぽいから、ホルザック氏とかセビウス氏あたりだったら毒耐性をもっていそうだが。
その点、アレクは比較的早くから魔術師として商会から出ることは決まっていたらしいから、狙われた可能性は低いだろう。
「あ、ピリッときた!」
超辛いパイに指を突っ込んだシャルロが慌てて手を引き戻して振る。
「そんなにキツイのか??
一応食べ物なんだろ、そのパイも」
辛い物好き用って話だが、一応普通の一般人でも涙が止まらなくなるが食べられると屋台のおっさんは言っていたが。
『普通の一般人』の許容範囲が全然違うのかも知れない。
でもやっぱ、毒判定なんだな!!
そうだと思ったよ、涙無しで食べられないなんて!
まあ、涙を流すだけで食べられると考えると毒としても一時的な物だけど。
それとも大量に食べたら体に異変が起きるのかな?
「じゃあ、こっちはどうなんだ?」
こちらの一般人向けのパイを切り分けてシャルロの方に差し出す。
流石に本体に指を突っ込まれたパイを食べるのは微妙だ。
最初から切り分けておけば皆で食べられるだろう。
「あ、ごくごく弱く反応はあったけど、無いに等しいぐらいだからこれなら多少食べ過ぎても大丈夫なんじゃない?」
シャルロが頷きながら言った。
「じゃあ、この一般向けパイは体に有毒な素材は使われておらず、辛い物好きのパイに関しては慣れてなければ有毒ってやつなんだろう」
人間って慣れれば毒でも平気って訳ではない筈なのだが・・・この辛いのに関しては一般レベルだったら慣れれば平気ってやつなのかね?
イマイチ納得できない働き方だが。
まあ、辛すぎるパイも慣れたらそれなりに美味しいらしいから、なるようになるだろう。
それよりも。
頑張って魔術回路を写し出さないと。
色々と店を見て回り、午後に軽く軽食とお茶とケーキっぽい甘味を食べて屋敷船に戻った俺たちは、工房代わりの部屋で作業机の上に今回入手した毒探知の魔具を置いて覗き込んでいた。
ちなみに、現地の人間でもよっぽどの辛い物好きじゃなきゃ食べないと言われている小さなパイっぽいのと、アファル王国基準で言ったら十分以上に辛いけどこちらでは平均的という辛さのパイも買って来てみた。
あの痛いぐらいの辛さは弱毒だろ!と俺が主張したのだ。
「魔術回路だけだったら心眼《サイト》で視て描き出せば良いさ。
素材や回路の組み込み方か何かに工夫がある場合だったら厳しいが」
金属の中にある細かい仕組みとかってアスカに見て取れるのかな?
地中の鉱石とかの位置関係とかだったら感じ取れるって話だが、金属の内部の位置関係とかも分かるのか、ちょっと気になる。
あと、精度も。
アスカってそこそこ大雑把だからなぁ。
土竜《ジャイアント・モール》って皆そうなのかと思っていたんだが、以前パストン島で会った奴は契約している魔術師の話ではもっと細かい性格らしい。
まあ、そいつが特に細かかったのかもだが。
まあ、取り敢えずは心眼《サイト》で魔術回路をパクらせて貰って色々と実験してみよう。
「ふ~ん、これを腕に嵌めて指輪を付けた指で触れば良いんだ」
興味深げに覗き込んでいたシャルロが腕輪を手に取って左腕に嵌めこんでいた。
指輪は人差し指に。
「クッキーとかおやつをつまむ時に人差し指はよく使うだろ?爪の間に毒が入っていたりしたら危険だから、何かを手で取る時に使わない指にした方が良いんじゃないか?」
まあ、蒼流が全て無効化してくれるから関係ないっちゃあ無いんだろうが。
「そうだね!
折角の異国の食べ物に毒が混じって変な味になったら残念だもんね」
シャルロが頷き、小指に嵌め直した。
そっかぁ。
小指以外は全部の指を使っているか~。
俺としては人差し指と中指があれば大丈夫かなと思って薬指で毒に触れたんだが、確かに大き目な焼き菓子なんかを掴む時は薬指も使っているかな?
そんなことを考えながら紙を取り出し、超辛いパイに指を突っ込んだシャルロの腕輪を心眼《サイト》で観察する。
魔力の流れを観察しつつ線を描いていく。
やはり随分と複雑だな。
どうやって不特定多数の毒を発見するのだろうか。
人間って毒や有害なものに触れた際に何か決まった反応を示すのだろうか?
だとしたら、万人で使える(金さえあれば)魔具になり、更に人によって反応が違う物があるのも納得だ。
蜂蜜や果物に変な反応をする奴もいるし、ナッツとかも駄目なのもいるって話だよな。
俺自体は文字通り毒が入っているの以外で駄目な食材なんぞ無いが、人によっては妙にデリケートでうっかり普通に食事を食べると喉が腫れ上がるって言っている奴もいた。
ある意味、スラムの下町で食べられるような腐りかけた古いジャガイモとか肉なら大丈夫そうだから下町の連中の方が毒に掛かりにくいのかも?
イマイチ人によって毒になったりならなかったりっていう範疇が良く分からないが。
毒の効果に個人差があるんだったら、昔から毒を盛って盛られてを続けて幅広く毒に耐性を持っているであろう貴族の御坊ちゃまなシャルロより、普通に安全そうな物ばかり食べてきたアレクが試す方が良いかも?
シェフィート商会もそれなりに息子たちの後継者争いはシビアっぽいから、ホルザック氏とかセビウス氏あたりだったら毒耐性をもっていそうだが。
その点、アレクは比較的早くから魔術師として商会から出ることは決まっていたらしいから、狙われた可能性は低いだろう。
「あ、ピリッときた!」
超辛いパイに指を突っ込んだシャルロが慌てて手を引き戻して振る。
「そんなにキツイのか??
一応食べ物なんだろ、そのパイも」
辛い物好き用って話だが、一応普通の一般人でも涙が止まらなくなるが食べられると屋台のおっさんは言っていたが。
『普通の一般人』の許容範囲が全然違うのかも知れない。
でもやっぱ、毒判定なんだな!!
そうだと思ったよ、涙無しで食べられないなんて!
まあ、涙を流すだけで食べられると考えると毒としても一時的な物だけど。
それとも大量に食べたら体に異変が起きるのかな?
「じゃあ、こっちはどうなんだ?」
こちらの一般人向けのパイを切り分けてシャルロの方に差し出す。
流石に本体に指を突っ込まれたパイを食べるのは微妙だ。
最初から切り分けておけば皆で食べられるだろう。
「あ、ごくごく弱く反応はあったけど、無いに等しいぐらいだからこれなら多少食べ過ぎても大丈夫なんじゃない?」
シャルロが頷きながら言った。
「じゃあ、この一般向けパイは体に有毒な素材は使われておらず、辛い物好きのパイに関しては慣れてなければ有毒ってやつなんだろう」
人間って慣れれば毒でも平気って訳ではない筈なのだが・・・この辛いのに関しては一般レベルだったら慣れれば平気ってやつなのかね?
イマイチ納得できない働き方だが。
まあ、辛すぎるパイも慣れたらそれなりに美味しいらしいから、なるようになるだろう。
それよりも。
頑張って魔術回路を写し出さないと。
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