946 / 1,077
卒業後
945 星暦557年 黄の月 5日 新しい伝手(9)
しおりを挟む
下から戻ってきた若いのが何やらおっさんに囁いた後、案内されたのは昨日見かけた一軒家とは別の家だった。
王都の長と同じで、毎日いる場所を変えているのかな?
それともここは外からの人間と会う場所なのか。
まあ、考えてみたら自分たちの本拠地へどこの誰だか知らん奴を連れ込んじゃダメだよな。
そう考えると、ゼブってかなりうっかり屋??
「ゼブからの紹介とは珍しいな」
ザグルは30前後ぐらいの比較的若い男だった。
確かにこの年代だったらまだ枯れてないから女に入れ込んだりしても不思議は無いか。
まあ、ジジイになっても女に入れ込んで家を傾ける迷惑な老害だって居るが。
レディ・トレンティスに使われそうになった薬の販売履歴から調べた被害者の一人にそんなのがいた。
殺す代わりに引退させて女とにゃんにゃん楽しく過ごせと郊外の屋敷に軟禁したそうだが、温厚な解決手段だと国も『次は無い』と警告して違法薬の利用に今回は目を瞑ったらしいと聞いた。
それはさておき。
ザグルに関しては呪具や毒薬の原料を買いに来るような怖い女は俺だったらごめんだが、そこは人それぞれって奴なんだろうな。
「ゼブにはちょっとした貸しがあったんでね。
今後は普通に商売上の関係だ」
ジルダスは呪具も多いがシェフィート商会にとっては香辛料が主な交易商品だが・・・ケッパッサは何か輸出できるんかね?
一応アレクがシャルロと一緒に街の中を歩き回って探索している筈だが。
「ほおう?
呪具か?それとも香辛料か?」
「香辛料だ。
呪具を持ち込むアホもいるせいで祖国の上層部は色々と対処に追われているようだが」
お蔭で俺までも駆り出されたし。
まあ、それなりに報酬は現金で手に入ったけどね。
「で?
こちらもある程度は香辛料があるが・・・ちょっと癖が強いからアファル王国の人間に好まれるかは分からんぞ?」
にやりと笑いながらザグルが言った。
これって毒の事を言っているのか、それとも本当にケッパッサも癖が強い香辛料を売り出しているか?
分からんな。
まあ、香辛料だって量が多かったり組み合わせ次第では毒になると言うが・・・俺だったら美味しくても組み合わせ次第で体に悪い香辛料は使いたくないぞ?
「香辛料に関しては街で食事を食べてから決めるよ。
態々あんたに会うための紹介文を入手して来たのは・・・毒を全般的に探知できる魔具や、毒の種類を特定しなくても解毒できる解毒剤を探しているからだ」
まあ、シャルロの力技な対処法が明らかになったから極端に差し迫った必要ではないんだが。
「この街の特産物を無効化するような魔具や薬を売ると思っているのか?」
馬鹿にしたように鼻を鳴らしながらザグルが言った。
「まあ、大量に売り出しはしないだろうが・・・少数を高値で売るぐらいはするかと思っている。
何だったら土産代わりに肌が綺麗になる美顔用魔具や、肩凝りにスッキリ効くマッサージ用の魔具を提供しても良いぞ?」
こっちは蒸し暑いからマッサージ用魔具はちょっと汗ばんで不快かも知れないが。
誰でも金さえあれば買える宝石や装飾品よりも、顔が綺麗になる美顔器の方が女には好評な可能性が高いぞ~?
あれってまだ国内の貴族向けすら需要に応じきれていないから、国外への輸出はされていない筈。
ザルガ共和国の商人もそれなりに手を回して入手しているだろうが、それを東大陸の顔役に売りつける程は数を揃えていないだろう。
とは言え、女に惚れたからと言って美顔器を渡そうと思いつくかどうかは知らんが。
日常生活が乱れているのかザグルの肌もあまり綺麗そうに見えないから、本人が使っても少し若返って見える可能性はありそうだぞ?
今はまだ良くても、年を取って肌が荒れてくると老けて見えるぞ~?
毒薬を売る街の顔役相手に美顔器の魔具を土産候補として持ってくるアレクには驚いたが、アレク曰くどれだけ男本位な業界だってトップに妻や愛人や娘がいる可能性は高いから、女性向けのプレゼントを持ってくるのは悪くないし、変に悪用されない無難な選択肢なのだそうだ。
転移箱とかは外に出して良いのか微妙に不明だし、虫除け魔具は地域によって出没する虫の種類が違うだろうから、こっちでも実効性があるのか確認するまでは迂闊に人に配れない。
そう考えると美顔用魔具は安全路線だよな。
「美顔用魔具?」
ザグルが美顔用魔具に興味を示した。肩凝りには困っていないらしい。
「ああ。
新しい魔術回路を組み込んだ魔具でな。
アファル王国の貴族や豪商の間で物凄い人気になってまだまだ入手は難しいぞ?
女性に使わすと物凄い違いが一回で出るから二度と手放せないそうだ」
はっきり言って余程の厚化粧をしまくっている女性以外だったら俺たち男が見てもあまり違いは分からないんだけどな。
でも、女性陣は誰もが『凄い!!』と言うので女の目には分かる違いがあるんだろう。
多分。
「ふむ。
全ての毒を解毒できるような薬なんぞ存在しない。
神殿に行って高位神官に金を払うのが一番確実だ。
探知する方は・・・触れれば有毒な物が分かる魔具ならあるな。
ただし、人によっては毒以外の物にも反応することがあるぞ?」
ザグルが女に興味を持っているというのは本当なのか、あっさり毒探知の魔具に関して話し始めた。
触れなければ分からないってちょっと面倒だが、全く分からないよりはマシだろう。
さて。
幾らになるのかな?
美顔用魔具は土産と言ったから、売りつける訳にはいかないからなぁ。
王都の長と同じで、毎日いる場所を変えているのかな?
それともここは外からの人間と会う場所なのか。
まあ、考えてみたら自分たちの本拠地へどこの誰だか知らん奴を連れ込んじゃダメだよな。
そう考えると、ゼブってかなりうっかり屋??
「ゼブからの紹介とは珍しいな」
ザグルは30前後ぐらいの比較的若い男だった。
確かにこの年代だったらまだ枯れてないから女に入れ込んだりしても不思議は無いか。
まあ、ジジイになっても女に入れ込んで家を傾ける迷惑な老害だって居るが。
レディ・トレンティスに使われそうになった薬の販売履歴から調べた被害者の一人にそんなのがいた。
殺す代わりに引退させて女とにゃんにゃん楽しく過ごせと郊外の屋敷に軟禁したそうだが、温厚な解決手段だと国も『次は無い』と警告して違法薬の利用に今回は目を瞑ったらしいと聞いた。
それはさておき。
ザグルに関しては呪具や毒薬の原料を買いに来るような怖い女は俺だったらごめんだが、そこは人それぞれって奴なんだろうな。
「ゼブにはちょっとした貸しがあったんでね。
今後は普通に商売上の関係だ」
ジルダスは呪具も多いがシェフィート商会にとっては香辛料が主な交易商品だが・・・ケッパッサは何か輸出できるんかね?
一応アレクがシャルロと一緒に街の中を歩き回って探索している筈だが。
「ほおう?
呪具か?それとも香辛料か?」
「香辛料だ。
呪具を持ち込むアホもいるせいで祖国の上層部は色々と対処に追われているようだが」
お蔭で俺までも駆り出されたし。
まあ、それなりに報酬は現金で手に入ったけどね。
「で?
こちらもある程度は香辛料があるが・・・ちょっと癖が強いからアファル王国の人間に好まれるかは分からんぞ?」
にやりと笑いながらザグルが言った。
これって毒の事を言っているのか、それとも本当にケッパッサも癖が強い香辛料を売り出しているか?
分からんな。
まあ、香辛料だって量が多かったり組み合わせ次第では毒になると言うが・・・俺だったら美味しくても組み合わせ次第で体に悪い香辛料は使いたくないぞ?
「香辛料に関しては街で食事を食べてから決めるよ。
態々あんたに会うための紹介文を入手して来たのは・・・毒を全般的に探知できる魔具や、毒の種類を特定しなくても解毒できる解毒剤を探しているからだ」
まあ、シャルロの力技な対処法が明らかになったから極端に差し迫った必要ではないんだが。
「この街の特産物を無効化するような魔具や薬を売ると思っているのか?」
馬鹿にしたように鼻を鳴らしながらザグルが言った。
「まあ、大量に売り出しはしないだろうが・・・少数を高値で売るぐらいはするかと思っている。
何だったら土産代わりに肌が綺麗になる美顔用魔具や、肩凝りにスッキリ効くマッサージ用の魔具を提供しても良いぞ?」
こっちは蒸し暑いからマッサージ用魔具はちょっと汗ばんで不快かも知れないが。
誰でも金さえあれば買える宝石や装飾品よりも、顔が綺麗になる美顔器の方が女には好評な可能性が高いぞ~?
あれってまだ国内の貴族向けすら需要に応じきれていないから、国外への輸出はされていない筈。
ザルガ共和国の商人もそれなりに手を回して入手しているだろうが、それを東大陸の顔役に売りつける程は数を揃えていないだろう。
とは言え、女に惚れたからと言って美顔器を渡そうと思いつくかどうかは知らんが。
日常生活が乱れているのかザグルの肌もあまり綺麗そうに見えないから、本人が使っても少し若返って見える可能性はありそうだぞ?
今はまだ良くても、年を取って肌が荒れてくると老けて見えるぞ~?
毒薬を売る街の顔役相手に美顔器の魔具を土産候補として持ってくるアレクには驚いたが、アレク曰くどれだけ男本位な業界だってトップに妻や愛人や娘がいる可能性は高いから、女性向けのプレゼントを持ってくるのは悪くないし、変に悪用されない無難な選択肢なのだそうだ。
転移箱とかは外に出して良いのか微妙に不明だし、虫除け魔具は地域によって出没する虫の種類が違うだろうから、こっちでも実効性があるのか確認するまでは迂闊に人に配れない。
そう考えると美顔用魔具は安全路線だよな。
「美顔用魔具?」
ザグルが美顔用魔具に興味を示した。肩凝りには困っていないらしい。
「ああ。
新しい魔術回路を組み込んだ魔具でな。
アファル王国の貴族や豪商の間で物凄い人気になってまだまだ入手は難しいぞ?
女性に使わすと物凄い違いが一回で出るから二度と手放せないそうだ」
はっきり言って余程の厚化粧をしまくっている女性以外だったら俺たち男が見てもあまり違いは分からないんだけどな。
でも、女性陣は誰もが『凄い!!』と言うので女の目には分かる違いがあるんだろう。
多分。
「ふむ。
全ての毒を解毒できるような薬なんぞ存在しない。
神殿に行って高位神官に金を払うのが一番確実だ。
探知する方は・・・触れれば有毒な物が分かる魔具ならあるな。
ただし、人によっては毒以外の物にも反応することがあるぞ?」
ザグルが女に興味を持っているというのは本当なのか、あっさり毒探知の魔具に関して話し始めた。
触れなければ分からないってちょっと面倒だが、全く分からないよりはマシだろう。
さて。
幾らになるのかな?
美顔用魔具は土産と言ったから、売りつける訳にはいかないからなぁ。
0
お気に入りに追加
501
あなたにおすすめの小説
ある、義妹にすべてを奪われて魔獣の生贄になった令嬢のその後
オレンジ方解石
ファンタジー
異母妹セリアに虐げられた挙げ句、婚約者のルイ王太子まで奪われて世を儚み、魔獣の生贄となったはずの侯爵令嬢レナエル。
ある夜、王宮にレナエルと魔獣が現れて…………。
婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話
Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」
「よっしゃー!! ありがとうございます!!」
婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。
果たして国王との賭けの内容とは――
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな
こうやさい
ファンタジー
わたくしは婚約者や義妹に断罪され、学園から追放を命じられました。
これが「ざまぁ」されるというものなんですのね。
義妹に冤罪着せられて殿下に皆の前で婚約破棄のうえ学園からの追放される令嬢とかいったら頑張ってる感じなんだけどなぁ。
とりあえずお兄さま頑張れ。
PCがエラーがどうこうほざいているので消えたら察してください、どのみち不定期だけど。
やっぱスマホでも更新できるようにしとかないとなぁ、と毎度の事を思うだけ思う。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
思わず呆れる婚約破棄
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある国のとある夜会、その場にて、その国の王子が婚約破棄を言い渡した。
だがしかし、その内容がずさんというか、あまりにもひどいというか……呆れるしかない。
余りにもひどい内容に、思わず誰もが呆れてしまうのであった。
……ネタバレのような気がする。しかし、良い紹介分が思いつかなかった。
よくあるざまぁ系婚約破棄物ですが、第3者視点よりお送りいたします。
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる