932 / 1,038
卒業後
931 星暦557年 緑の月 22日 熟練の技モドキ(13)
しおりを挟む
「枝はお互いが日光を得るのに邪魔にならない程度に剪定して、この時期に追肥。
花が咲いた後は一枝にこの程度だけ残して花がらを摘む。
それでも一枝に実がなりすぎた場合はそれも早い段階で摘まないと一個一個の実が小さくなります」
色々と果樹園のおっさんが説明しているのをシャルロがうんうんと頷きながらメモを取っている。
予想通り、レディ・トレンティスは喜んで桃の苗木を3本ほど分けてくれた。
で、果樹園のおっさんは更にシャルロに育て方とかについて色々と細かく指導している。
ありがたいんだけど・・・ある意味、これってシャルロの庭の世話を見る庭師なり、果樹の世話担当になる人間なりを連れてきて教わる方が良いんじゃないかなぁ?
まあ、1年間フルに張り付けておくわけにはいかないし、短期間の間ににわか仕込みした知識だけでは失敗するだろうからこの程度の情報をさらっと教わって、後は試行錯誤でいってもいいんだが。
妖精が果樹のご機嫌伺いをする予定なので、流石に死にそうになる前に状況を改善出来るだろうから多分何とかなるだろう。
取り敢えず、受粉の時期以外は虫除け結界をフルに使い、実がなったら結界に鳥除け機能も付けるつもりだが・・・雨とかはどうなんだろ?
水除け結界を利用して温度管理が出来るが、直接花や実に水が掛からない方が良いのなら水除け結界を使って雨が降っても防ぐ様にするが、普通に雨が降って濡れた方が良いなら余計な手は加えない。
つうか、水に関してはどういう状態が良いのかさえ教えてもらっておけば、魔具なんぞ使わなくても蒼流が完璧に管理するな。
蒼流の魔力満載な水の方が果樹が大きく育つとか、実が甘くなるとかあるんだったらシャルロの庭の分だけでも水遣りに工夫をしちゃいたいな。他所で土壌成分の分析用魔具を使う際の参考にはちょっと微妙になるかも知れないが、俺たち的には美味しく仕上がるだろう。
まあ、そこら辺はやってみなきゃ分からんだろうが。
取り敢えず、最低でも1本は蒼流が水をやる方向で誘導してみるかな?
現実的な話として、高位精霊による水遣りが必要な果物なんて高くつきすぎて売れないが。
色々と説明を聞いた後、今度はシャルロが土壌成分の分析用魔具を取り出して使い方の説明を始めた。
「これを使うと土の状態が分かるんだ。
だから定期的に土を摂ってこれで調べればどの成分がどんな時に減るかを確認できるから、長期的にはより正確な追肥の時期が分かるかも?
あと、こっちの筒を地面にさしたらどの程度地面の中が湿っているかも分かるから、記録を取っておいたら後で実がなった時にどういう状態が理想的か推測できそうだよね。
いい結果が出たら、是非教えて?」
水に関してはシャルロは無敵だからなぁ。
理想的な状態が分かりさすればそれを維持するのは朝飯前だ。
理想的な状態を常に保つことが果樹にとって良い事なのかは知らんが。
それこそ、精霊頼みだったらシャルロが寿命で死んじゃったり引っ越した後に桃の収穫量とか味が一気に劣化しそうだ。
・・・桃の木の寿命ってどの程度なんだろ?
そんなことを考えながら周囲を見て回る。
何やらシャルロと仲良くしてた小僧がこっちに走ってくるのが見える。
「シャルロ様!!
桃の苗を植えるんだって?!
世話を見るのに俺を雇ってよ!!」
おいおい。
まだ若すぎじゃないか?
まあ、俺が盗賊《シーフ》ギルドで独り立ちしていた年齢よりは上だが。
「ええ??
チャックはまだ小さいじゃん!!」
シャルロが声を上げる。
おや。
名前を知っているぐらい、親しいんだ?
「冬に一番上の兄貴の子供が生まれるから、俺の部屋を開けた方が良いんだ。
もうちゃんと読み書きも出来るし、もうそろそろどっかに弟子入りするかって話も親父としていたんだけど、シャルロ様の所で庭師見習いになって、ついでに桃の面倒を見れば良い事だらけだろ?!
桃に関してなら王都の庭しか知らないおっさんよりも俺の方が詳しいぞ!!」
小僧が胸を張って主張する。
ちらりと色々と説明していたおっさんの方を見ると、微妙そうな顔をしていたがさっさと小僧を黙らせて追い払おうとはしないから、それなりにありだと思っているらしい。
良いのか??
まあ、レディ・トレンティスの親戚の屋敷で庭師になるんだったら安心かもだが。
【後書き】
最初に苗をばばっと育てるって話を果樹園のおっさんやチャックにしてるのかな・・・?
花が咲いた後は一枝にこの程度だけ残して花がらを摘む。
それでも一枝に実がなりすぎた場合はそれも早い段階で摘まないと一個一個の実が小さくなります」
色々と果樹園のおっさんが説明しているのをシャルロがうんうんと頷きながらメモを取っている。
予想通り、レディ・トレンティスは喜んで桃の苗木を3本ほど分けてくれた。
で、果樹園のおっさんは更にシャルロに育て方とかについて色々と細かく指導している。
ありがたいんだけど・・・ある意味、これってシャルロの庭の世話を見る庭師なり、果樹の世話担当になる人間なりを連れてきて教わる方が良いんじゃないかなぁ?
まあ、1年間フルに張り付けておくわけにはいかないし、短期間の間ににわか仕込みした知識だけでは失敗するだろうからこの程度の情報をさらっと教わって、後は試行錯誤でいってもいいんだが。
妖精が果樹のご機嫌伺いをする予定なので、流石に死にそうになる前に状況を改善出来るだろうから多分何とかなるだろう。
取り敢えず、受粉の時期以外は虫除け結界をフルに使い、実がなったら結界に鳥除け機能も付けるつもりだが・・・雨とかはどうなんだろ?
水除け結界を利用して温度管理が出来るが、直接花や実に水が掛からない方が良いのなら水除け結界を使って雨が降っても防ぐ様にするが、普通に雨が降って濡れた方が良いなら余計な手は加えない。
つうか、水に関してはどういう状態が良いのかさえ教えてもらっておけば、魔具なんぞ使わなくても蒼流が完璧に管理するな。
蒼流の魔力満載な水の方が果樹が大きく育つとか、実が甘くなるとかあるんだったらシャルロの庭の分だけでも水遣りに工夫をしちゃいたいな。他所で土壌成分の分析用魔具を使う際の参考にはちょっと微妙になるかも知れないが、俺たち的には美味しく仕上がるだろう。
まあ、そこら辺はやってみなきゃ分からんだろうが。
取り敢えず、最低でも1本は蒼流が水をやる方向で誘導してみるかな?
現実的な話として、高位精霊による水遣りが必要な果物なんて高くつきすぎて売れないが。
色々と説明を聞いた後、今度はシャルロが土壌成分の分析用魔具を取り出して使い方の説明を始めた。
「これを使うと土の状態が分かるんだ。
だから定期的に土を摂ってこれで調べればどの成分がどんな時に減るかを確認できるから、長期的にはより正確な追肥の時期が分かるかも?
あと、こっちの筒を地面にさしたらどの程度地面の中が湿っているかも分かるから、記録を取っておいたら後で実がなった時にどういう状態が理想的か推測できそうだよね。
いい結果が出たら、是非教えて?」
水に関してはシャルロは無敵だからなぁ。
理想的な状態が分かりさすればそれを維持するのは朝飯前だ。
理想的な状態を常に保つことが果樹にとって良い事なのかは知らんが。
それこそ、精霊頼みだったらシャルロが寿命で死んじゃったり引っ越した後に桃の収穫量とか味が一気に劣化しそうだ。
・・・桃の木の寿命ってどの程度なんだろ?
そんなことを考えながら周囲を見て回る。
何やらシャルロと仲良くしてた小僧がこっちに走ってくるのが見える。
「シャルロ様!!
桃の苗を植えるんだって?!
世話を見るのに俺を雇ってよ!!」
おいおい。
まだ若すぎじゃないか?
まあ、俺が盗賊《シーフ》ギルドで独り立ちしていた年齢よりは上だが。
「ええ??
チャックはまだ小さいじゃん!!」
シャルロが声を上げる。
おや。
名前を知っているぐらい、親しいんだ?
「冬に一番上の兄貴の子供が生まれるから、俺の部屋を開けた方が良いんだ。
もうちゃんと読み書きも出来るし、もうそろそろどっかに弟子入りするかって話も親父としていたんだけど、シャルロ様の所で庭師見習いになって、ついでに桃の面倒を見れば良い事だらけだろ?!
桃に関してなら王都の庭しか知らないおっさんよりも俺の方が詳しいぞ!!」
小僧が胸を張って主張する。
ちらりと色々と説明していたおっさんの方を見ると、微妙そうな顔をしていたがさっさと小僧を黙らせて追い払おうとはしないから、それなりにありだと思っているらしい。
良いのか??
まあ、レディ・トレンティスの親戚の屋敷で庭師になるんだったら安心かもだが。
【後書き】
最初に苗をばばっと育てるって話を果樹園のおっさんやチャックにしてるのかな・・・?
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる