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卒業後
927 星暦557年 緑の月 8日 熟練の技モドキ(9)
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「ここに入れた土壌の中に、こちらに選んでおいた成分がどの程度入っているか分かるのか!
つまり、うっかり肥料をやりすぎることも防げるし、どの成分が足りないのかも分かるのだな!!」
成分分析用の魔具の機能を説明したら、パクストンは流石に直ぐにその目的を理解したようだった。
「ああ。
後は土壌にあったら良くない代表的な鉱毒とか塩とかの同時検査も考えている。
鉱毒に関しては周辺の鉱山から危険な廃棄物のサンプルを取り寄せてそれらが浸透してきていないか調べた方が良いかも知れないが」
というか、土壌に入ってきているということは水源が汚染されているってことだから、近辺の飲み水も調べた方が良い気がするが・・・考えてみたらこういうのって誰が責任を取って調べるんだろ?
どう考えても鉱山主がやるべきことだが、自分の鉱山が周辺の水源を汚染しているなんて正直に報告したら色々と金がかかるし下手をしたら鉱山を閉鎖なんて事になるから、ほぼ確実に鉱山主にまかせたら隠蔽するよな。
誰か水か土の精霊と契約している魔術師がいたらそっちから苦情が上がってくるかもだが、そうじゃない場合はかなりの人数が体調を崩して第三者が調査をして、普通の風邪とか伝染病じゃないって分かるまでに下手をしたら相当な年月がかかりそうだ。
まあ、土壌のチェックをするようになって毒が発見されるようになったら早い段階で水もチェックするだろうから、それで良いか?
「ちなみに、成分だけでなく水の量や酸度もそれなりに重要な要素なのだが?」
パクストンが俺たちが調べるつもりな『あった方が良い成分』サンプルとして出しておいた粒をそっと舐めたりして調べながら指摘する。
農家の爺さんなんかは土を舐めて状態を確認するって言うが、マジで土を舐める人間なんて居るんだな。初めて見た。
・・・試作品を試してもらう近所の農家の人間とかもあれを舐めるかも知れないんだったら、あれを後で洗っておく方が良いかも。
「水は同じようにここに入れておけば土壌に含まれる水分量が大体見て取れるが・・・出しておいたら水は乾いてしまうからな。
水だけは筒でも地面に差し込んで調べる形にした方が良いかも知れないね」
アレクが応じる。
そうなんだよなぁ。
考えてみたら、水遣りの最適量を把握するっていうのが話の発端だった。
いつの間にか成分の方に注意が逸れてたけど。
「ちなみに酸度ってなに?
土って酸っぱくなったりするの??」
シャルロがちょっと驚いたように尋ねる。
ヤバい毒沼とかだったらまだしも、普通の土に酸度なんてあるんか?
「決まった栄養素だけを使い続けるとだんだん土の酸度が偏ることがあるから、石灰などを撒いて中性に戻す方が作物の育ちが良くなる事がある。
そちらも調べたら更に良いと思うんだが」
パクストンが言った。
「どうやって調べるんだ、それ?」
舐めて調べるとか、絶対に嫌だぞ。
「少量の土壌を水に溶かして試験紙に付けて調べるのが我々のやり方だが、ちょっと面倒だからね。
どうせならこの魔具で一緒に出来たら良いのにと思ったんだが」
うう~ん。
何か面倒だなぁ。
まあ、どうせやるなら狙った植物が一番美味しくなる状態にする方が良いんだろうが・・・魔術で酸度なんぞどうやって測るんだ??
「トレーに乗せた土をどけた後に最後に水で流して、その水の酸度を調べるんじゃだめなのか?」
何も全ての機能を魔術回路を使ってやる必要もないだろう。
酸度を調べる魔術回路なんぞ、見たことないし。
「そうだね。
その程度でやってみて、実際に普通の方法で土壌の酸度を調べた時と結果が大きく変わらないかを確認してみよう」
アレクが頷く。
「成分を調べるのはこのリン、カリウム、チッソかね?」
パクストンがサンプルの粒を示しながら聞いてきた。
見た目と味だけで分かるんだ??
「一応それらが特に重要なんじゃないかとウチの土竜《ジャイアント・モール》が言っていたんだが。
何か他に調べた方が良い成分があるか?」
「他にもあると良いのではないかと言われる成分もあるが・・・絞り切れていない。
そちらの土竜《ジャイアント・モール》?に教えて貰えないのか?」
パクストンが聞いてきた。
「俺たちの使い魔はどんな成分が農業をすると土から減るかとか、植物が不満を持っているか否かとかが分かる程度で何が植物の理想的な成長の為にあると良いのかまでは分からないんでな。
そこら辺の知識も含めて学会の方へ協力を求めたんだが」
学者なんだから、色々知っていると期待したんだけど?
「ほおう?!
植物が不満を持っているか分かるなら、色々とテストが出来るな!!
今迄は育ててみてどの程度育つかを調べる結果論的な比較しか出来なかったから条件を絞り込のに時間がかかる上に正確性がイマイチだったんだが、使い魔経由で聞ける上に土壌に含まれる量も分かるなら、色々と研究が進みそうだ!!」
パクストンが嬉しそうに言う。
・・・あんまり時間をかけて細かく調べる気は無いんだが。
なんかこう、ツァレスみたいな暴走傾向が感じられる気がする・・・。
大丈夫かね?
【後書き】
成分の名称はカタカナで誤魔化す事にしましたw
つまり、うっかり肥料をやりすぎることも防げるし、どの成分が足りないのかも分かるのだな!!」
成分分析用の魔具の機能を説明したら、パクストンは流石に直ぐにその目的を理解したようだった。
「ああ。
後は土壌にあったら良くない代表的な鉱毒とか塩とかの同時検査も考えている。
鉱毒に関しては周辺の鉱山から危険な廃棄物のサンプルを取り寄せてそれらが浸透してきていないか調べた方が良いかも知れないが」
というか、土壌に入ってきているということは水源が汚染されているってことだから、近辺の飲み水も調べた方が良い気がするが・・・考えてみたらこういうのって誰が責任を取って調べるんだろ?
どう考えても鉱山主がやるべきことだが、自分の鉱山が周辺の水源を汚染しているなんて正直に報告したら色々と金がかかるし下手をしたら鉱山を閉鎖なんて事になるから、ほぼ確実に鉱山主にまかせたら隠蔽するよな。
誰か水か土の精霊と契約している魔術師がいたらそっちから苦情が上がってくるかもだが、そうじゃない場合はかなりの人数が体調を崩して第三者が調査をして、普通の風邪とか伝染病じゃないって分かるまでに下手をしたら相当な年月がかかりそうだ。
まあ、土壌のチェックをするようになって毒が発見されるようになったら早い段階で水もチェックするだろうから、それで良いか?
「ちなみに、成分だけでなく水の量や酸度もそれなりに重要な要素なのだが?」
パクストンが俺たちが調べるつもりな『あった方が良い成分』サンプルとして出しておいた粒をそっと舐めたりして調べながら指摘する。
農家の爺さんなんかは土を舐めて状態を確認するって言うが、マジで土を舐める人間なんて居るんだな。初めて見た。
・・・試作品を試してもらう近所の農家の人間とかもあれを舐めるかも知れないんだったら、あれを後で洗っておく方が良いかも。
「水は同じようにここに入れておけば土壌に含まれる水分量が大体見て取れるが・・・出しておいたら水は乾いてしまうからな。
水だけは筒でも地面に差し込んで調べる形にした方が良いかも知れないね」
アレクが応じる。
そうなんだよなぁ。
考えてみたら、水遣りの最適量を把握するっていうのが話の発端だった。
いつの間にか成分の方に注意が逸れてたけど。
「ちなみに酸度ってなに?
土って酸っぱくなったりするの??」
シャルロがちょっと驚いたように尋ねる。
ヤバい毒沼とかだったらまだしも、普通の土に酸度なんてあるんか?
「決まった栄養素だけを使い続けるとだんだん土の酸度が偏ることがあるから、石灰などを撒いて中性に戻す方が作物の育ちが良くなる事がある。
そちらも調べたら更に良いと思うんだが」
パクストンが言った。
「どうやって調べるんだ、それ?」
舐めて調べるとか、絶対に嫌だぞ。
「少量の土壌を水に溶かして試験紙に付けて調べるのが我々のやり方だが、ちょっと面倒だからね。
どうせならこの魔具で一緒に出来たら良いのにと思ったんだが」
うう~ん。
何か面倒だなぁ。
まあ、どうせやるなら狙った植物が一番美味しくなる状態にする方が良いんだろうが・・・魔術で酸度なんぞどうやって測るんだ??
「トレーに乗せた土をどけた後に最後に水で流して、その水の酸度を調べるんじゃだめなのか?」
何も全ての機能を魔術回路を使ってやる必要もないだろう。
酸度を調べる魔術回路なんぞ、見たことないし。
「そうだね。
その程度でやってみて、実際に普通の方法で土壌の酸度を調べた時と結果が大きく変わらないかを確認してみよう」
アレクが頷く。
「成分を調べるのはこのリン、カリウム、チッソかね?」
パクストンがサンプルの粒を示しながら聞いてきた。
見た目と味だけで分かるんだ??
「一応それらが特に重要なんじゃないかとウチの土竜《ジャイアント・モール》が言っていたんだが。
何か他に調べた方が良い成分があるか?」
「他にもあると良いのではないかと言われる成分もあるが・・・絞り切れていない。
そちらの土竜《ジャイアント・モール》?に教えて貰えないのか?」
パクストンが聞いてきた。
「俺たちの使い魔はどんな成分が農業をすると土から減るかとか、植物が不満を持っているか否かとかが分かる程度で何が植物の理想的な成長の為にあると良いのかまでは分からないんでな。
そこら辺の知識も含めて学会の方へ協力を求めたんだが」
学者なんだから、色々知っていると期待したんだけど?
「ほおう?!
植物が不満を持っているか分かるなら、色々とテストが出来るな!!
今迄は育ててみてどの程度育つかを調べる結果論的な比較しか出来なかったから条件を絞り込のに時間がかかる上に正確性がイマイチだったんだが、使い魔経由で聞ける上に土壌に含まれる量も分かるなら、色々と研究が進みそうだ!!」
パクストンが嬉しそうに言う。
・・・あんまり時間をかけて細かく調べる気は無いんだが。
なんかこう、ツァレスみたいな暴走傾向が感じられる気がする・・・。
大丈夫かね?
【後書き】
成分の名称はカタカナで誤魔化す事にしましたw
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