922 / 1,038
卒業後
921 星暦557年 緑の月 3日 熟練の技モドキ(3)
しおりを挟む
「意外と成分とか素材の分析や探知の魔具ってないんだな」
特許記録を調べるのは数日かかる事もあるので1日で終わらないことの方が多いのだが、俺たちは昨日1日探したものの余りにも成果が無かったので取り敢えずもう一度話し合うことにした。
「ああ。
毒探知の魔具があるんだから、もっとこう、材料の成分確認用とか武器の持ち込み探知とか、違法薬物や麻薬の探知とか言った用途の魔具が開発されていると思っていたのだが」
アレクが顔をしかめながら頷く。
薬の調合とか陶器の製造なんかの際に素材の成分を確認しそうなものだが・・・熟練の技で色とか匂いとか手触りとかで判断するのかね?
まあ、麻薬に関しては港の調査に使っていないんだから無いのはある意味想像がつく結果だったけど。
「考えてみたら、触れずに探知できるような魔具と対象の素材を取り込んで調べる魔具とでは大分と機能の仕方が違うだろう。
毒探知の魔具って食材とか飲み物に触れさせなくても分かるのか?」
一々食べ物を魔具に入れていたら目立ちすぎて使い勝手が悪いだろうが、距離があっても中身を探知できるとなったら一体どういう仕組みなのか是非知りたいところだな。
それに、毒の代わりに麻薬を探知させれば港の税関で使えそうなんじゃないかね?
「毒探知の魔具はブレスレット型でそっと指に付けた飲み物なり食材なりを決まった場所に触れさせて確かめるタイプが多いらしいよ。
だから同じプレート内の食事でも毒が入った食材が他の物と混ざらない様に上手い事盛り付けられるとうっかり毒入りの素材を食べてしまうこともあるんだって」
シャルロが教えてくれた。
流石貴族のお坊ちゃま。
本人に使う必要は無くてもそこら辺は色々と知っているらしい。
俺もシェイラに確認しておけば良かったな。
「やっぱ触れさせないとダメなんだ?
グラスでさり気なく指にワインを付ける程度ならまだしも、食べ物を『うっかり指に付ける』って言うのは中々さり気なくやるのは難しそうだけど」
知り合いの屋敷に招かれたのに、毒見をしまくっているってバレたら気まずそうだが・・・常識だとして誰も気にしないのかね?
殺伐としてるなぁ。
「香りとか、特殊な魔力を発するような毒だと近づいたら分かるのもあるらしいが、触れさせないと確実ではない毒が多いらしい」
アレクが肩を竦めながら応じる。
シェイラが俺と食事に行っている時にブレスレットに頻繁に触れている姿なんて見た記憶はないが、ちゃんと毒探知をしているんかね?
俺が毒を盛るつもりなんぞなくても、宿屋や食事処のメイドが買収されて毒を振りかける可能性はゼロじゃあないんだぞ?
まあ、今となれば清早の知り合い精霊に護衛を頼んだから大丈夫な筈だが。
「特許の申請がされている魔術回路はほぼ絶望的っぽいから、取り敢えず毒探知用魔具をばらして魔術回路を確認するか。
・・・これって特許登録されていないんだから勝手に活用しても怒られないよな?」
流石に買った魔具の魔術回路をそのまま登録するつもりはないが、俺たちなりに工夫して土壌の成分分析用に改造したのは特許登録するつもりなんだが。
「それなりに内容を変えて明らかに毒探知用に使うのには向かない様に作り変えれば良いんじゃないか?
下手に小さくまとめたりすると魔力探知具の二の舞になって国に自粛の『お願い』をされる可能性が高いが」
アレクが微妙そうな顔で言った。
あまり大きいと持ち運びが面倒そうだが、夜会とかに持ち込めないサイズになれば良いだろう。
「そう言えば、成分を分析できるようになったとして、それをどうやって利用するかも重要だよねぇ。
前手伝ってもらった虫関連の研究者みたいな、植物関連の研究者の知り合いっていないの?」
シャルロがアレクに尋ねる。
あ~。
そう言えば、そんなおっさんがいたよな。
・・・生物学会って植物の研究もしているのかな?
「農作物や果樹関係の研究をしている人間がいないか、探してみるよ」
アレクが頷きながら応じた。
おお~。
流石、顔が広いね~。
いつの間に顔を広げているのか、ある意味疑問だが、便利で助かるぜ。
「そう言えば、妖精って植物の声とかって聞こえないのか?
精霊もだが、アルフォンスの子分にでもちょっと短期契約で手伝って貰えたら良さげかも?」
精霊は気紛れだからなぁ。
妖精も気紛れかもだが。
「・・・聞いてみるね。
ウィルもアスカに確認してみたら?」
確かに。
土竜《ジャイアント・モール》は植物より鉱物系が得意な気がするが、一応聞いてみよう。
「おう。
ついでにラフェーンにも聞いておいたらどうだ?
どうせほぼ毎日遠乗りに行ってるんだろ?」
それで声を掛け無かったら拗ねられるぞ?
【後書き】
薬草に詳しいユニコーンと、土に詳しい土竜《ジャイアント・モール》、そして未知数な妖精。
誰が一番役に立つか、競争になったりw
特許記録を調べるのは数日かかる事もあるので1日で終わらないことの方が多いのだが、俺たちは昨日1日探したものの余りにも成果が無かったので取り敢えずもう一度話し合うことにした。
「ああ。
毒探知の魔具があるんだから、もっとこう、材料の成分確認用とか武器の持ち込み探知とか、違法薬物や麻薬の探知とか言った用途の魔具が開発されていると思っていたのだが」
アレクが顔をしかめながら頷く。
薬の調合とか陶器の製造なんかの際に素材の成分を確認しそうなものだが・・・熟練の技で色とか匂いとか手触りとかで判断するのかね?
まあ、麻薬に関しては港の調査に使っていないんだから無いのはある意味想像がつく結果だったけど。
「考えてみたら、触れずに探知できるような魔具と対象の素材を取り込んで調べる魔具とでは大分と機能の仕方が違うだろう。
毒探知の魔具って食材とか飲み物に触れさせなくても分かるのか?」
一々食べ物を魔具に入れていたら目立ちすぎて使い勝手が悪いだろうが、距離があっても中身を探知できるとなったら一体どういう仕組みなのか是非知りたいところだな。
それに、毒の代わりに麻薬を探知させれば港の税関で使えそうなんじゃないかね?
「毒探知の魔具はブレスレット型でそっと指に付けた飲み物なり食材なりを決まった場所に触れさせて確かめるタイプが多いらしいよ。
だから同じプレート内の食事でも毒が入った食材が他の物と混ざらない様に上手い事盛り付けられるとうっかり毒入りの素材を食べてしまうこともあるんだって」
シャルロが教えてくれた。
流石貴族のお坊ちゃま。
本人に使う必要は無くてもそこら辺は色々と知っているらしい。
俺もシェイラに確認しておけば良かったな。
「やっぱ触れさせないとダメなんだ?
グラスでさり気なく指にワインを付ける程度ならまだしも、食べ物を『うっかり指に付ける』って言うのは中々さり気なくやるのは難しそうだけど」
知り合いの屋敷に招かれたのに、毒見をしまくっているってバレたら気まずそうだが・・・常識だとして誰も気にしないのかね?
殺伐としてるなぁ。
「香りとか、特殊な魔力を発するような毒だと近づいたら分かるのもあるらしいが、触れさせないと確実ではない毒が多いらしい」
アレクが肩を竦めながら応じる。
シェイラが俺と食事に行っている時にブレスレットに頻繁に触れている姿なんて見た記憶はないが、ちゃんと毒探知をしているんかね?
俺が毒を盛るつもりなんぞなくても、宿屋や食事処のメイドが買収されて毒を振りかける可能性はゼロじゃあないんだぞ?
まあ、今となれば清早の知り合い精霊に護衛を頼んだから大丈夫な筈だが。
「特許の申請がされている魔術回路はほぼ絶望的っぽいから、取り敢えず毒探知用魔具をばらして魔術回路を確認するか。
・・・これって特許登録されていないんだから勝手に活用しても怒られないよな?」
流石に買った魔具の魔術回路をそのまま登録するつもりはないが、俺たちなりに工夫して土壌の成分分析用に改造したのは特許登録するつもりなんだが。
「それなりに内容を変えて明らかに毒探知用に使うのには向かない様に作り変えれば良いんじゃないか?
下手に小さくまとめたりすると魔力探知具の二の舞になって国に自粛の『お願い』をされる可能性が高いが」
アレクが微妙そうな顔で言った。
あまり大きいと持ち運びが面倒そうだが、夜会とかに持ち込めないサイズになれば良いだろう。
「そう言えば、成分を分析できるようになったとして、それをどうやって利用するかも重要だよねぇ。
前手伝ってもらった虫関連の研究者みたいな、植物関連の研究者の知り合いっていないの?」
シャルロがアレクに尋ねる。
あ~。
そう言えば、そんなおっさんがいたよな。
・・・生物学会って植物の研究もしているのかな?
「農作物や果樹関係の研究をしている人間がいないか、探してみるよ」
アレクが頷きながら応じた。
おお~。
流石、顔が広いね~。
いつの間に顔を広げているのか、ある意味疑問だが、便利で助かるぜ。
「そう言えば、妖精って植物の声とかって聞こえないのか?
精霊もだが、アルフォンスの子分にでもちょっと短期契約で手伝って貰えたら良さげかも?」
精霊は気紛れだからなぁ。
妖精も気紛れかもだが。
「・・・聞いてみるね。
ウィルもアスカに確認してみたら?」
確かに。
土竜《ジャイアント・モール》は植物より鉱物系が得意な気がするが、一応聞いてみよう。
「おう。
ついでにラフェーンにも聞いておいたらどうだ?
どうせほぼ毎日遠乗りに行ってるんだろ?」
それで声を掛け無かったら拗ねられるぞ?
【後書き】
薬草に詳しいユニコーンと、土に詳しい土竜《ジャイアント・モール》、そして未知数な妖精。
誰が一番役に立つか、競争になったりw
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる