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卒業後
917 星暦557年 萌葱の月 22日 やはりお手伝いか(13)
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「なんかこう・・・昨日の2商会に比べると平凡な感じ?」
2日目の国税調査に付き合った三番目に調査対象になったファグッパ商会はよくある隠し金庫や二重引き出しが見つかっただけで、昨日の二か所に比べるとあまり想定外な発見は無かった。
まあ、俺的にはって話だが。
隠し金庫の中の書類には当局側にとっては大発見な物もあったかも知れないが、デラビール商会のような愉快な隠し脱出路や、ヴィント商会のような地下室に隠された研究者とかはおらず、目新しい物は無い感じだ。
「まあ、ここは香辛料の輸入ついでに儲かるから違法薬物に手を出している程度で、関係者の名簿を渡せば多分そこそこの罰金程度で許される程度の事しかやっていないだろうと見做されていたから、2日目に回されたからの」
肩を竦めながらウォレン爺が言った。
まあ、そうだよな。
デラビール商会はまだしも、同日午後に2つ目の商会に調査が入った段階で違法薬物業界が狙い撃ちされているのはバレていたんだから、業界内でヤバい所はさっさと証拠隠滅に走っていただろう。だから人員的・時間的制約があるにしても、翌日に回したという時点であまり害がないと見做されていたんだろうし。
「ちなみに、昨日連絡した解毒剤になる果物の汁に関しては、偶然?」
偶々美味しいからとか毒に触れる機会が多い商会だから福利厚生的とかな感じに提供していたという可能性も・・・まあ、無いか。
有能な薬師を都合よく使いたいからってその妹に毒を盛るような商会が、福利厚生なんぞに金を使うなんてことはないだろ。
「ヴィント商会では、毎月とある毒物の解毒効果検証実験に参加すると臨時報酬が貰える制度があるそうじゃ。
あの紫の果汁を定期的に摂取していれば毒の悪影響が出ないという研究の実証試験だという話だったが・・・参加を拒否すると、下っ端はずっと下っ端なまま危険な仕事に回されるようになり、もっと商会内の危険な情報に触れる機会がある人間が拒否するといつの間にか姿を消すようになるとの話でな。
実質裏切り防止の脅しとして使っていたらしい」
うっわぁ~。
知らぬうちに毒を盛るんじゃなくって、臨時報酬を払う実証試験に自発的に参加って形にしているけど、実際の所は裏切らないかの瀬踏みって感じだな。
「だが、大々的にやっているんだったらあの果物を自分で入手して、そんなヤバい事をやらせる商会をさっさと当局に売ろうとする人間が出て来るんじゃないのか?」
脅しっていうのはやりすぎると却って反発を招くもんだが。
「どうもあの地下に捕まっていた薬師が偶然見つけた解毒効果らしくてな。
あの果実だけでは何やら手足に多少の痺れが出て来るらしくて、他に必要な素材があるという話だ」
うっわぁ。
無理やり強制させられて協力しているのに、他の人間が悪事に協力するのに使われる薬剤を見つけるなんて、駄目じゃんか。
というか、そんな悪用できる解毒剤を見つけたら、バレる前にちゃんと握りつぶせよ。
研究者ってどうも頭はいい筈なのにずる賢さが足りないよなぁ。
願わくは、この情報もすっぱり消えてくれるといいんだが・・・ヴィント商会が消えるにしても、その便利な解毒剤に関しては国の方に情報が残りそうだな。
「ちなみに、レディ・トレンティスに使われそうになった薬を売った業者は分かったのか?」
今回の騒動の大元は、レディ・トレンティスを狙ったアホとそれに関与した連中を一網打尽するのが目的だった筈。
どさくさまぎれに国の病根を焼き払うのに使われた気がするけど。
「おう。
ちゃんとデラビール商会から色々と情報が出てきて、国内の業者から船の船長まで全部逮捕した!
輸入元のザルガ共和国の商会に関しては・・・おいおい潰さねばな。
あの国に関しては、正規の手段では手を出せないから、いい加減危険な商売に関しては何とかせねばならんから周辺国とも協議中だ」
おやま。
既にばっさり逮捕済みですか。
船に関しては入港していて運が良かったな。
国外に出ていたらそのまま逃げられた可能性が高い。
しっかし。
ザルガ共和国に関しては周辺国と協議中ねぇ。
却って協議すると情報が漏れると思うんだが。
つうか、あの国って交易でしか食っていけないんだから、利幅が大きい違法薬物とかの取り扱いを止めさせるのって無理じゃないかね?
特に、利益が出ていた東大陸との香辛料の取引ががっくり減っちまったんだし。
香辛料取引にザルガ共和国を通る必要がなくなったから遠慮せずに不都合な取引をぶっ潰すことにしたんだろうが、香辛料取引が無くなったからこそ、ザルガ共和国にしてみれば違法取引を手放したら食っていけなくなるから死に物狂いで抵抗しそうな気がするんだが。
大丈夫かね?
【後書き】
南国なので果物と魚を食べるだけの生活に満足できればザルガ共和国も餓えはしませんが、一度裕福な生活を知ってしまったら素朴な生活には戻れませんよね~。
2日目の国税調査に付き合った三番目に調査対象になったファグッパ商会はよくある隠し金庫や二重引き出しが見つかっただけで、昨日の二か所に比べるとあまり想定外な発見は無かった。
まあ、俺的にはって話だが。
隠し金庫の中の書類には当局側にとっては大発見な物もあったかも知れないが、デラビール商会のような愉快な隠し脱出路や、ヴィント商会のような地下室に隠された研究者とかはおらず、目新しい物は無い感じだ。
「まあ、ここは香辛料の輸入ついでに儲かるから違法薬物に手を出している程度で、関係者の名簿を渡せば多分そこそこの罰金程度で許される程度の事しかやっていないだろうと見做されていたから、2日目に回されたからの」
肩を竦めながらウォレン爺が言った。
まあ、そうだよな。
デラビール商会はまだしも、同日午後に2つ目の商会に調査が入った段階で違法薬物業界が狙い撃ちされているのはバレていたんだから、業界内でヤバい所はさっさと証拠隠滅に走っていただろう。だから人員的・時間的制約があるにしても、翌日に回したという時点であまり害がないと見做されていたんだろうし。
「ちなみに、昨日連絡した解毒剤になる果物の汁に関しては、偶然?」
偶々美味しいからとか毒に触れる機会が多い商会だから福利厚生的とかな感じに提供していたという可能性も・・・まあ、無いか。
有能な薬師を都合よく使いたいからってその妹に毒を盛るような商会が、福利厚生なんぞに金を使うなんてことはないだろ。
「ヴィント商会では、毎月とある毒物の解毒効果検証実験に参加すると臨時報酬が貰える制度があるそうじゃ。
あの紫の果汁を定期的に摂取していれば毒の悪影響が出ないという研究の実証試験だという話だったが・・・参加を拒否すると、下っ端はずっと下っ端なまま危険な仕事に回されるようになり、もっと商会内の危険な情報に触れる機会がある人間が拒否するといつの間にか姿を消すようになるとの話でな。
実質裏切り防止の脅しとして使っていたらしい」
うっわぁ~。
知らぬうちに毒を盛るんじゃなくって、臨時報酬を払う実証試験に自発的に参加って形にしているけど、実際の所は裏切らないかの瀬踏みって感じだな。
「だが、大々的にやっているんだったらあの果物を自分で入手して、そんなヤバい事をやらせる商会をさっさと当局に売ろうとする人間が出て来るんじゃないのか?」
脅しっていうのはやりすぎると却って反発を招くもんだが。
「どうもあの地下に捕まっていた薬師が偶然見つけた解毒効果らしくてな。
あの果実だけでは何やら手足に多少の痺れが出て来るらしくて、他に必要な素材があるという話だ」
うっわぁ。
無理やり強制させられて協力しているのに、他の人間が悪事に協力するのに使われる薬剤を見つけるなんて、駄目じゃんか。
というか、そんな悪用できる解毒剤を見つけたら、バレる前にちゃんと握りつぶせよ。
研究者ってどうも頭はいい筈なのにずる賢さが足りないよなぁ。
願わくは、この情報もすっぱり消えてくれるといいんだが・・・ヴィント商会が消えるにしても、その便利な解毒剤に関しては国の方に情報が残りそうだな。
「ちなみに、レディ・トレンティスに使われそうになった薬を売った業者は分かったのか?」
今回の騒動の大元は、レディ・トレンティスを狙ったアホとそれに関与した連中を一網打尽するのが目的だった筈。
どさくさまぎれに国の病根を焼き払うのに使われた気がするけど。
「おう。
ちゃんとデラビール商会から色々と情報が出てきて、国内の業者から船の船長まで全部逮捕した!
輸入元のザルガ共和国の商会に関しては・・・おいおい潰さねばな。
あの国に関しては、正規の手段では手を出せないから、いい加減危険な商売に関しては何とかせねばならんから周辺国とも協議中だ」
おやま。
既にばっさり逮捕済みですか。
船に関しては入港していて運が良かったな。
国外に出ていたらそのまま逃げられた可能性が高い。
しっかし。
ザルガ共和国に関しては周辺国と協議中ねぇ。
却って協議すると情報が漏れると思うんだが。
つうか、あの国って交易でしか食っていけないんだから、利幅が大きい違法薬物とかの取り扱いを止めさせるのって無理じゃないかね?
特に、利益が出ていた東大陸との香辛料の取引ががっくり減っちまったんだし。
香辛料取引にザルガ共和国を通る必要がなくなったから遠慮せずに不都合な取引をぶっ潰すことにしたんだろうが、香辛料取引が無くなったからこそ、ザルガ共和国にしてみれば違法取引を手放したら食っていけなくなるから死に物狂いで抵抗しそうな気がするんだが。
大丈夫かね?
【後書き】
南国なので果物と魚を食べるだけの生活に満足できればザルガ共和国も餓えはしませんが、一度裕福な生活を知ってしまったら素朴な生活には戻れませんよね~。
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