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卒業後
888 星暦557年 萌葱の月 15日 久しぶりに遠出(9)
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「取り敢えず、前回と同じ感じに書籍の保存関連と隠し場所探しとをお願いしたいところなんだが、良いだろうか」
遺跡の中に入りながらアルマが尋ねてきた。
「構いませんよ。
そう思って私も来ましたし」
あっさりアレクが頷く。
「おう、俺もそのつもりだったし。
・・・ちなみにこっちは天井を調べないのか?」
レディ・トレンティスの屋敷の傍にある遺跡の天井裏空間が洞窟型居住空間に必要な換気孔か何かだったら、ここにもあるかもと思って天井を心眼《サイト》で確認したらやはり似たような空間が上にあった。
おいおい。
レディ・トレンティスの屋敷の脇の遺跡は古くから知られていて、殆ど丸裸で何も残っていないから調査も新しく発見された地下部分以外はおざなりだったのは分かるが、ここは新しい遺跡だったんだからもっと壁とか床とかしっかり調べたんじゃないのか??
まあ、これだけ大きな空間だと天井に更に上があるとは思い難いのかも知れないが。
しかも入り口がここも妙にアクセスが悪い中途半端な場所からの縄梯子って感じではある。
なんだってもっとど真ん中の中央広場からとか、反対に端っこから入るようにしないのかね?
端にして階段を壁沿いに設置する方が縄梯子で変な場所から上がらせるよりも楽だろうに。
「おや。
本当だ。
・・・本当だ?!」
上を見上げたアルマがあっけにとられたように声を上げた。
「浮遊《レヴィア》」
そのままアルマが上に飛びあがる。
「あ!
待ってください、僕も!!!」
傍にいた若いのが中々見事な反射神経でアルマの脚にしがみつく。
おいおい。
アルマはそれなりに発掘隊の中で偉いんじゃないのか?
少なくとも足にしがみつくのが許される関係ではないと思うんだが。
「縄梯子を持って来て、アレクかウィルに上から垂らしてもらえ」
振り向きもせず若いのを蹴り外してそのままアルマが上に浮いていく。
「・・・お願いしますね!!
待っていてくださいよ!!」
俺たちの方に懇願する様に声を掛けながら、若いのが奥の方へ走っていく。
「アルマって発掘隊の中では常識派だと思っていたんだが」
アレクがあっけにとられたように天井に姿を消したアルマの後を眺めながら呟いた。
「まあ、生き物はいないみたいだし、専門家なんだから変な呪いとか罠とかに関する知識は俺たちよりもあるんだろうから大丈夫なんじゃないか?
多分」
遺跡の新しい部分ってどの程度危険なのかは知らんが・・・まあ、本当に危険だったらアルマだって勝手に一人で先に進まないだろう。
レディ・トレンティスの屋敷脇のと同じ感じだとしたら大したものは無いだろうし。
こっちの方は町が一気に破棄された訳じゃないから、参考になる何かが残っているかも?
考えてみたら、こっちの遺跡は何が原因で『遺跡』になったんだろう?
現時点で人が住んでいないし近くに街もないのだから、過去の何処かの時点で人が去っていったのさろうが・・・何が原因だったかはまだ判明していないんだよな?
それとも何か情報が見つかったのか?
レディ・トレンティスの屋敷の傍の遺跡の時に争っていた相手がここまでも追いかけて来たのかね?
これだけ大きな街を造るだけの時間はあったのだ、時間的余裕はそれなりにあったんじゃないかと思うし、戦争で負けて攻め込まれたのだったらもっと破壊の跡があって本とかも無くなっていそうな気がするが。
伝染病か何かが流行って軽くて小さな金目の物だけ持って避難する羽目になったのかね?
以前シェイラが手伝いに来た時に見つけた宿屋っぽい洞窟も伝染病で封鎖されたようだったし、オーパスタ神殿文明時代って伝染病が流行りやすかったのかな?
病気が流行りやすいなら換気のしにくい地中でなんぞ生活しなきゃいいのにという気もするが。
「これで!!
お願いします!!」
はあはあ荒い呼吸をしながら若いのが戻ってきて縄梯子をアレクに渡した。
騒動に気付いた他の連中も近づいている。
「・・・ちなみに、こういう場合の上の空間の強度って誰が確認するんだ?
集まってきた人間全員が縄梯子で上がって床が抜けたら、危険だし折角見つけた新しい箇所の調査が難しくなると思うが」
下に落ちてくるだけだから再構築して調べることも不可能ではないだろうが、時間の無駄な気がする。
「あ~~~~~~!!!
そんな!!!
取り敢えず、僕だけでも連れて行ってください!!
残りは交代制で!!」
良いんかね、勝手にそんなこと決めて。
まあ、俺らは縄梯子を上に持って行って垂らせばいいだろう。
縄梯子を持ってきたのは此奴だから、先に上がってくる権利はあるかも知れないが、他の連中の説得はそっちの責任だぜ?
頑張ってくれ。
・・・一応上でアルマにも言っておく方が良いかな?
俺もいる時に上の床が抜けたら面倒そうだ。
【後書き】
ハラファがいると彼が飛び出しちゃうんで抑え役にならざるを得ないアルマですが、自分だけだとハラファと同じような行動を取ってしまう遺跡馬鹿の性w
遺跡の中に入りながらアルマが尋ねてきた。
「構いませんよ。
そう思って私も来ましたし」
あっさりアレクが頷く。
「おう、俺もそのつもりだったし。
・・・ちなみにこっちは天井を調べないのか?」
レディ・トレンティスの屋敷の傍にある遺跡の天井裏空間が洞窟型居住空間に必要な換気孔か何かだったら、ここにもあるかもと思って天井を心眼《サイト》で確認したらやはり似たような空間が上にあった。
おいおい。
レディ・トレンティスの屋敷の脇の遺跡は古くから知られていて、殆ど丸裸で何も残っていないから調査も新しく発見された地下部分以外はおざなりだったのは分かるが、ここは新しい遺跡だったんだからもっと壁とか床とかしっかり調べたんじゃないのか??
まあ、これだけ大きな空間だと天井に更に上があるとは思い難いのかも知れないが。
しかも入り口がここも妙にアクセスが悪い中途半端な場所からの縄梯子って感じではある。
なんだってもっとど真ん中の中央広場からとか、反対に端っこから入るようにしないのかね?
端にして階段を壁沿いに設置する方が縄梯子で変な場所から上がらせるよりも楽だろうに。
「おや。
本当だ。
・・・本当だ?!」
上を見上げたアルマがあっけにとられたように声を上げた。
「浮遊《レヴィア》」
そのままアルマが上に飛びあがる。
「あ!
待ってください、僕も!!!」
傍にいた若いのが中々見事な反射神経でアルマの脚にしがみつく。
おいおい。
アルマはそれなりに発掘隊の中で偉いんじゃないのか?
少なくとも足にしがみつくのが許される関係ではないと思うんだが。
「縄梯子を持って来て、アレクかウィルに上から垂らしてもらえ」
振り向きもせず若いのを蹴り外してそのままアルマが上に浮いていく。
「・・・お願いしますね!!
待っていてくださいよ!!」
俺たちの方に懇願する様に声を掛けながら、若いのが奥の方へ走っていく。
「アルマって発掘隊の中では常識派だと思っていたんだが」
アレクがあっけにとられたように天井に姿を消したアルマの後を眺めながら呟いた。
「まあ、生き物はいないみたいだし、専門家なんだから変な呪いとか罠とかに関する知識は俺たちよりもあるんだろうから大丈夫なんじゃないか?
多分」
遺跡の新しい部分ってどの程度危険なのかは知らんが・・・まあ、本当に危険だったらアルマだって勝手に一人で先に進まないだろう。
レディ・トレンティスの屋敷脇のと同じ感じだとしたら大したものは無いだろうし。
こっちの方は町が一気に破棄された訳じゃないから、参考になる何かが残っているかも?
考えてみたら、こっちの遺跡は何が原因で『遺跡』になったんだろう?
現時点で人が住んでいないし近くに街もないのだから、過去の何処かの時点で人が去っていったのさろうが・・・何が原因だったかはまだ判明していないんだよな?
それとも何か情報が見つかったのか?
レディ・トレンティスの屋敷の傍の遺跡の時に争っていた相手がここまでも追いかけて来たのかね?
これだけ大きな街を造るだけの時間はあったのだ、時間的余裕はそれなりにあったんじゃないかと思うし、戦争で負けて攻め込まれたのだったらもっと破壊の跡があって本とかも無くなっていそうな気がするが。
伝染病か何かが流行って軽くて小さな金目の物だけ持って避難する羽目になったのかね?
以前シェイラが手伝いに来た時に見つけた宿屋っぽい洞窟も伝染病で封鎖されたようだったし、オーパスタ神殿文明時代って伝染病が流行りやすかったのかな?
病気が流行りやすいなら換気のしにくい地中でなんぞ生活しなきゃいいのにという気もするが。
「これで!!
お願いします!!」
はあはあ荒い呼吸をしながら若いのが戻ってきて縄梯子をアレクに渡した。
騒動に気付いた他の連中も近づいている。
「・・・ちなみに、こういう場合の上の空間の強度って誰が確認するんだ?
集まってきた人間全員が縄梯子で上がって床が抜けたら、危険だし折角見つけた新しい箇所の調査が難しくなると思うが」
下に落ちてくるだけだから再構築して調べることも不可能ではないだろうが、時間の無駄な気がする。
「あ~~~~~~!!!
そんな!!!
取り敢えず、僕だけでも連れて行ってください!!
残りは交代制で!!」
良いんかね、勝手にそんなこと決めて。
まあ、俺らは縄梯子を上に持って行って垂らせばいいだろう。
縄梯子を持ってきたのは此奴だから、先に上がってくる権利はあるかも知れないが、他の連中の説得はそっちの責任だぜ?
頑張ってくれ。
・・・一応上でアルマにも言っておく方が良いかな?
俺もいる時に上の床が抜けたら面倒そうだ。
【後書き】
ハラファがいると彼が飛び出しちゃうんで抑え役にならざるを得ないアルマですが、自分だけだとハラファと同じような行動を取ってしまう遺跡馬鹿の性w
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