883 / 1,038
卒業後
881 星暦557年 萌葱の月 13日 久しぶりに遠出(3)
しおりを挟む
「いらっしゃ~い!
ケレナちゃんも久しぶりねぇ。元気そうでよかったわ」
途中で一度トイレ休憩を入れたものの、レディ・トレンティスの屋敷にはちょっと遅めの昼ぐらいの時間に問題なくたどり着けた。
機体の中に多少の風を通す形にしているが、日差しが強くなってからはちょっと中が暑かった。遮熱結界を機体の上部に取り付けると良いかも知れない。
冬は暖房用魔具もあった方が良さそうだ。
コートを着ていても動かなければ寒いだろう。
取り敢えずレンタル用の機体には付けて、後はシェフィート商会の方に追加サービスとして既に売った機体に取り付ける提案をするか、来年の初夏まで待つかはあちらに任せておこう。
風に乗って空の遊覧を楽しむ空滑機《グライダー》と違い、『移動』を主目的とする空滑機《グライダー》改の方が移動速度は早いんだよな。
こうやって使ってみると、中々便利だ。
俺たちの場合は転移門で大抵の所には行けるんだが、空滑機《グライダー》改も中々便利だ。
軍なんかはこれの更に大型版が出来ないかとシェフィート商会が相談されたが、必要になる魔石量がぐっと増えるんで、研究したいんだったら国の方で好きにやってくれ(ただし俺たちの魔術回路をつかうなら特許料をよろしく!)と返してある。
そのうち大型空滑機改が開発されるかもしれない。
少なくともこれまでの国関係の依頼では少人数で動き回る状況ばかりだったので転移門か空滑機《グライダー》改しか使っていないが、どうなったんだろう?
方向性さえ示せば、魔術院の研究部門も中々出来る奴らがいるようなので既にこっそり出来ている可能性はありそうだ。
考えてみたらこっそりやって魔術回路の特許料を払っていないんだったら当事者である俺を乗せる訳はないだろうが・・・いつか何か国の緊急依頼で突然大型の空滑機《グライダー》改が出てきたら、過去の分の特許使用料を無断使用の罰金を含めて思いっきりふんだくらねば。
非常事態に使う特殊任務隊用みたいのがあっても不思議は無い。
そして秘密な特殊任務隊用だったら魔術回路の特許料を払うような登録作業もやっていない可能性も高いだろう。
まあ、国の為っていうのは回り回ったら俺たちの知り合いの命を助けることに繋がるかも知れないから、金さえ払ってくれれば極端に文句は言わないが。
「レディ・トレンティス!
お久しぶりです。
いつ見ても素晴らしい庭ですね!!」
ケレナが親し気にレディ・トレンティスに抱き着きながら挨拶をしていた。
おお~。
思っていた以上に親しいらしい。
「おばあ様、お久しぶりです!」
シャルロも嬉し気にレディ・トレンティスを抱擁して挨拶していた。
ガキだったシャルロが結婚しているんだから、考えてみたら学生時代からそれなりに年月が経っているんだが、レディ・トレンティスは殆ど変わっていない様に見える。
まあ、変に加齢を認めずに悪あがきしているんでなく、穏やかに老いているタイプの老婦人ってある意味変わっていない様に見えるからなぁ。
却って筋肉が落ちて肩回りの厚みが減っていく男の方が年の衰えがはっきり分かる気がする。
女性側から見たらもっと色々と細かい点で変化が分かるんかもしれないが、俺から見たらお上品で綺麗そうな婆さんがそのまま変わらずって感じだ。
昔来た時はイチゴが美味しかったが・・・今は季節じゃないよなぁ。
ちょっと残念だ。
「ちょうど美味しい桃と葡萄が生っているのよ。
なんだったら少し収穫を手伝ってつまみ食いしたらどう?」
屋敷の中に入りながらレディ・トレンティスが勧めてきた。
お。
桃と葡萄か。
ワインは大して好きじゃないが、葡萄は好きだ。桃はあまり縁がないが・・・きっとこの老婦人が勧めるってことは美味しいんだろう。
ついでにシェイラにもお土産に少し貰えないかな?
でも、次の休息日までに悪くなるか?
「いいの?!!
やったぁ!!!」
シャルロがガキのように喜んで飛び上がっていた。
これは期待が出来そうだな。
日差しの中で果物の収穫をするっていうのはちょっと暑そうだが・・・持ってきた試作品には遮熱機能は付いてないんだよなぁ。
・・・自前の魔力で結界を展開すれば良いか。
桃と葡萄か。
楽しみだぜ。
遺跡を見に行くのは果物を味わってからで良いよな?
【後書き】
現場はウィルが空滑機の特許持ちだと知らないだろうから、うっかり無断使用している機体に乗せちゃいそうw
ケレナちゃんも久しぶりねぇ。元気そうでよかったわ」
途中で一度トイレ休憩を入れたものの、レディ・トレンティスの屋敷にはちょっと遅めの昼ぐらいの時間に問題なくたどり着けた。
機体の中に多少の風を通す形にしているが、日差しが強くなってからはちょっと中が暑かった。遮熱結界を機体の上部に取り付けると良いかも知れない。
冬は暖房用魔具もあった方が良さそうだ。
コートを着ていても動かなければ寒いだろう。
取り敢えずレンタル用の機体には付けて、後はシェフィート商会の方に追加サービスとして既に売った機体に取り付ける提案をするか、来年の初夏まで待つかはあちらに任せておこう。
風に乗って空の遊覧を楽しむ空滑機《グライダー》と違い、『移動』を主目的とする空滑機《グライダー》改の方が移動速度は早いんだよな。
こうやって使ってみると、中々便利だ。
俺たちの場合は転移門で大抵の所には行けるんだが、空滑機《グライダー》改も中々便利だ。
軍なんかはこれの更に大型版が出来ないかとシェフィート商会が相談されたが、必要になる魔石量がぐっと増えるんで、研究したいんだったら国の方で好きにやってくれ(ただし俺たちの魔術回路をつかうなら特許料をよろしく!)と返してある。
そのうち大型空滑機改が開発されるかもしれない。
少なくともこれまでの国関係の依頼では少人数で動き回る状況ばかりだったので転移門か空滑機《グライダー》改しか使っていないが、どうなったんだろう?
方向性さえ示せば、魔術院の研究部門も中々出来る奴らがいるようなので既にこっそり出来ている可能性はありそうだ。
考えてみたらこっそりやって魔術回路の特許料を払っていないんだったら当事者である俺を乗せる訳はないだろうが・・・いつか何か国の緊急依頼で突然大型の空滑機《グライダー》改が出てきたら、過去の分の特許使用料を無断使用の罰金を含めて思いっきりふんだくらねば。
非常事態に使う特殊任務隊用みたいのがあっても不思議は無い。
そして秘密な特殊任務隊用だったら魔術回路の特許料を払うような登録作業もやっていない可能性も高いだろう。
まあ、国の為っていうのは回り回ったら俺たちの知り合いの命を助けることに繋がるかも知れないから、金さえ払ってくれれば極端に文句は言わないが。
「レディ・トレンティス!
お久しぶりです。
いつ見ても素晴らしい庭ですね!!」
ケレナが親し気にレディ・トレンティスに抱き着きながら挨拶をしていた。
おお~。
思っていた以上に親しいらしい。
「おばあ様、お久しぶりです!」
シャルロも嬉し気にレディ・トレンティスを抱擁して挨拶していた。
ガキだったシャルロが結婚しているんだから、考えてみたら学生時代からそれなりに年月が経っているんだが、レディ・トレンティスは殆ど変わっていない様に見える。
まあ、変に加齢を認めずに悪あがきしているんでなく、穏やかに老いているタイプの老婦人ってある意味変わっていない様に見えるからなぁ。
却って筋肉が落ちて肩回りの厚みが減っていく男の方が年の衰えがはっきり分かる気がする。
女性側から見たらもっと色々と細かい点で変化が分かるんかもしれないが、俺から見たらお上品で綺麗そうな婆さんがそのまま変わらずって感じだ。
昔来た時はイチゴが美味しかったが・・・今は季節じゃないよなぁ。
ちょっと残念だ。
「ちょうど美味しい桃と葡萄が生っているのよ。
なんだったら少し収穫を手伝ってつまみ食いしたらどう?」
屋敷の中に入りながらレディ・トレンティスが勧めてきた。
お。
桃と葡萄か。
ワインは大して好きじゃないが、葡萄は好きだ。桃はあまり縁がないが・・・きっとこの老婦人が勧めるってことは美味しいんだろう。
ついでにシェイラにもお土産に少し貰えないかな?
でも、次の休息日までに悪くなるか?
「いいの?!!
やったぁ!!!」
シャルロがガキのように喜んで飛び上がっていた。
これは期待が出来そうだな。
日差しの中で果物の収穫をするっていうのはちょっと暑そうだが・・・持ってきた試作品には遮熱機能は付いてないんだよなぁ。
・・・自前の魔力で結界を展開すれば良いか。
桃と葡萄か。
楽しみだぜ。
遺跡を見に行くのは果物を味わってからで良いよな?
【後書き】
現場はウィルが空滑機の特許持ちだと知らないだろうから、うっかり無断使用している機体に乗せちゃいそうw
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる