882 / 1,038
卒業後
881 星暦557年 萌葱の月 13日 久しぶりに遠出(2)
しおりを挟む
今回の遠出の話はちゃんと俺たちに提案する前にレディ・トレンティスとケレナには根回ししてあったらしく、俺たちが賛成したらあっさり2日後に出発となった。
今年は紺の月に俺たちの仕事は中断したものの、パストン島に行ったせいで孫が遊びに来れなかったレディ・トレンティスがそれとなく寂しさを訴えていたのかもな。
何か物凄く簡単にケレナの仕事(手伝いと言っているがありゃあ実質仕事だろう)もシャルロの屋敷の世話も、何やら一族の誰かしらが手伝いの人員が行く話が決まって翌日にはそいつらが来て引継ぎもあれよあれよという間に終わっていた。
俺たちの家の方にも誰か寄越そうかと言われたが、こっちはパディン夫人が残るので特に問題はないと辞退した。
元々、長期に留守にする際には結界を張ってパディン夫人とその旦那、及び近所の時々手伝いに来る女性しか入れない様にしてあるし、工房そのものには誰も入れない様にしている。
だから下手に手伝いの人員なんて来られたら面倒なんだよな。
工房には書類や試作品が山積みになっているので、何か盗もうと思って忍び込んでも狙った情報を見つけるのに苦労するとは思うが・・・一応アレクがそれなりに整理整頓しているのでアレクの整理方法が分かれば色々見つかるだろうし、いざとなればごっそり全部盗むというのも不可能ではない。
まあ、シャルロと俺が重要な書類や試作品に血を一滴ずつ垂らしてるので、本当に盗む人間がいたら清早か蒼流が直ぐに追跡できるが。
基本的に魔術回路とかは実用出来るのは一応特許登録してあるのが殆どだから、態々盗みに入っても大したことにはならないとは思うが。
金の方は魔術院の口座なので会員カードの魔力登録に一致しなければ引き出せない。
家の中には殆ど金や宝石と言った物は置いてないし、盗みに入るアホはいないとは思うが・・・嫌がらせで工房を破壊されては困るので、敷地への立ち入りを制限しているのだ。
敷地内に火を放つのは炉に居る事が多いサラマンダーに止めるようお願いしてあるし。
最近は俺も色々と意図せずに活躍しちゃっているし、俺たちの事業もそれなりに成功して嫉まれている可能性があるからな。
どうせなら手を出させて完膚なきまで叩き潰す方が良くないかとも提案したのだが、下手に敵は増やさない方が良いと説得された。
ある程度分かる範囲に敵がいる方が、下手に手を出させてそれを木っ端みじんにした後に敵意を持つ人間に隠れて変なことをされるよりも対応しやすいとのことだ。
まあ、本当に侯爵の子息で水の大精霊の愛し子であるシャルロに手を出すアホがいるとはちょっと信じがたいが・・・俺関連の程度の低い悪人とか、事業絡みの妬みで行動を起こすアホな商家の跡取りとかがちゃんと下調べをせずに行動をとる可能性はゼロではない。
悪人も、本当にすごい奴だったら情報収集とか危機管理がしっかりしているから面倒な相手には目障りでも手を出さないのだが・・・密輸とか盗聴とか機密窃盗とかに手を出す連中が必ずしも賢いとは限らないからなぁ。
国からの依頼で相手の事を調べる暇もなく叩き潰すのに関与する羽目になり、しかも叩き潰すのも自分でやるんじゃないせいでしっかり徹底して関係者を全部確保しているかも不明なので、用心はしておくに越したことは無い。
結婚はしていないものの恋人であるシェイラに何かあったら困るから、一応彼女にも護身用の魔具を渡そうとしたのだが、既に本人が一流の物を持っていた。
親父さんからも渡されているらしいし、本人も兄貴のアホ具合が分かった頃から色々入手して機能も適時最新版に更新しているらしい。
そろそろあのアホ兄貴も変なことをする経済力が無くなってきて諦めも付いているんじゃないかとも思わないでもないが、どうも商会の跡取りがすんなり決まらないせいで中途半端に色々と長引いているらしい。
あのアホはまだしも、他にも兄弟とか従姉妹がいるらしいのに中途半端に出来る(出来ない?)人間が揃っているせいで中々決まらないらしい。
最近は親父さんもだったら諦めて商会を一族外に委ねることも考えて始めているとシェイラが言っていた。
『やっとよ』と笑いながら言っていたので、どうやら親族連中はどれも合格点には達していないというのがシェイラの評価らしい。
まあ、それはともかく。
俺たちは朝食後にサンクタスの方へ出立することになった。
【後書き】
突然の旅行は根回ししとかないと女性陣に不評ですよねw
今年は紺の月に俺たちの仕事は中断したものの、パストン島に行ったせいで孫が遊びに来れなかったレディ・トレンティスがそれとなく寂しさを訴えていたのかもな。
何か物凄く簡単にケレナの仕事(手伝いと言っているがありゃあ実質仕事だろう)もシャルロの屋敷の世話も、何やら一族の誰かしらが手伝いの人員が行く話が決まって翌日にはそいつらが来て引継ぎもあれよあれよという間に終わっていた。
俺たちの家の方にも誰か寄越そうかと言われたが、こっちはパディン夫人が残るので特に問題はないと辞退した。
元々、長期に留守にする際には結界を張ってパディン夫人とその旦那、及び近所の時々手伝いに来る女性しか入れない様にしてあるし、工房そのものには誰も入れない様にしている。
だから下手に手伝いの人員なんて来られたら面倒なんだよな。
工房には書類や試作品が山積みになっているので、何か盗もうと思って忍び込んでも狙った情報を見つけるのに苦労するとは思うが・・・一応アレクがそれなりに整理整頓しているのでアレクの整理方法が分かれば色々見つかるだろうし、いざとなればごっそり全部盗むというのも不可能ではない。
まあ、シャルロと俺が重要な書類や試作品に血を一滴ずつ垂らしてるので、本当に盗む人間がいたら清早か蒼流が直ぐに追跡できるが。
基本的に魔術回路とかは実用出来るのは一応特許登録してあるのが殆どだから、態々盗みに入っても大したことにはならないとは思うが。
金の方は魔術院の口座なので会員カードの魔力登録に一致しなければ引き出せない。
家の中には殆ど金や宝石と言った物は置いてないし、盗みに入るアホはいないとは思うが・・・嫌がらせで工房を破壊されては困るので、敷地への立ち入りを制限しているのだ。
敷地内に火を放つのは炉に居る事が多いサラマンダーに止めるようお願いしてあるし。
最近は俺も色々と意図せずに活躍しちゃっているし、俺たちの事業もそれなりに成功して嫉まれている可能性があるからな。
どうせなら手を出させて完膚なきまで叩き潰す方が良くないかとも提案したのだが、下手に敵は増やさない方が良いと説得された。
ある程度分かる範囲に敵がいる方が、下手に手を出させてそれを木っ端みじんにした後に敵意を持つ人間に隠れて変なことをされるよりも対応しやすいとのことだ。
まあ、本当に侯爵の子息で水の大精霊の愛し子であるシャルロに手を出すアホがいるとはちょっと信じがたいが・・・俺関連の程度の低い悪人とか、事業絡みの妬みで行動を起こすアホな商家の跡取りとかがちゃんと下調べをせずに行動をとる可能性はゼロではない。
悪人も、本当にすごい奴だったら情報収集とか危機管理がしっかりしているから面倒な相手には目障りでも手を出さないのだが・・・密輸とか盗聴とか機密窃盗とかに手を出す連中が必ずしも賢いとは限らないからなぁ。
国からの依頼で相手の事を調べる暇もなく叩き潰すのに関与する羽目になり、しかも叩き潰すのも自分でやるんじゃないせいでしっかり徹底して関係者を全部確保しているかも不明なので、用心はしておくに越したことは無い。
結婚はしていないものの恋人であるシェイラに何かあったら困るから、一応彼女にも護身用の魔具を渡そうとしたのだが、既に本人が一流の物を持っていた。
親父さんからも渡されているらしいし、本人も兄貴のアホ具合が分かった頃から色々入手して機能も適時最新版に更新しているらしい。
そろそろあのアホ兄貴も変なことをする経済力が無くなってきて諦めも付いているんじゃないかとも思わないでもないが、どうも商会の跡取りがすんなり決まらないせいで中途半端に色々と長引いているらしい。
あのアホはまだしも、他にも兄弟とか従姉妹がいるらしいのに中途半端に出来る(出来ない?)人間が揃っているせいで中々決まらないらしい。
最近は親父さんもだったら諦めて商会を一族外に委ねることも考えて始めているとシェイラが言っていた。
『やっとよ』と笑いながら言っていたので、どうやら親族連中はどれも合格点には達していないというのがシェイラの評価らしい。
まあ、それはともかく。
俺たちは朝食後にサンクタスの方へ出立することになった。
【後書き】
突然の旅行は根回ししとかないと女性陣に不評ですよねw
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる