シーフな魔術師

極楽とんぼ

文字の大きさ
上 下
881 / 1,119
卒業後

880 星暦557年 萌葱の月 11日 久しぶりに遠出

しおりを挟む
「ねえねえ、久しぶりに北のサンクタスの方に行かない?
おばあ様は庭でお茶をするのが好きだから、これを届けてあげたいし、あっちなら涼しいから風さえ通るようにしておけば遮熱や冷風機能は要らないと思うんだ。
ついでにあの遺跡も、またもう一度見に行ってみようよ」
休息日明けに工房でお茶を飲みながら次は何をするか話し合おうとしたら、シャルロがちょっと意外な提案をしてきた。

サンクタス?
学生時代に行った、シャルロの祖母が住んでいる別邸がある地方だったっけ?
あの遺跡かぁ・・・俺たちが初めて見た遺跡だったが、ある意味一番ありがたくない記憶がある場所でもある。

とは言え。
流石にもうあの虫と魔物の中間みたいな変な生き物はいないと思うし、なんだったら入る前に先にしっかり下まで調べれば安心だろう。

「そうだな、あちらの方の富裕層にちょっと売り込むのにも、レディ・トレンティスのところで使ってもらうのは悪くはないかも知れない。
ついでに遺跡に遊びに行くのもありか・・・。
そう言えば、あそこの遺跡はもう調べ尽くしてあるんだよな?
流石に今回は遺跡探索の手伝いをする暇はないが」
アレクがマグを受け取りながら応じた。

「新しい方の遺跡はまだまだ調べることがあるからずっと発掘隊が常駐しているらしいけど、サンクタスの方のは時折何かを比較して確認したいことが出てくると足を運んでいるらしいけど、常駐はしていないみたいだから僕達だけで好きなだけ見て回れる」
シャルロが教えてくれた。
学生の頃は毎年夏に遊びに行っていると言っていたが、今でも行っているんかな?
確かに北の方だから王都よりも過ごしやすいだろうが・・・今年ってあまり纏まった休みを取っていないから、試作品を渡すついでにって感じなのかも知れない。

オレファーニ家はそれなりに親族の数が多いから、休息日に遊びに行くにしても行き先が色々ありそうで時間が足りない感じだろうし。
まあ、子供じゃないんだから今では親族で集まって遊ぶってこともあまりないのかな?

「折角空滑機グライダー改が出来たんだから、ケレナも誘って一緒にあれで行くか?
向こうでレディ・トレンティスが興味を示したら空滑機《グライダー》改で空の散策に連れ出しても良いかも知れないし」
流石に腹ばいになって乗る空滑機《グライダー》に貴族の老婦人を誘うのは無理があるが、椅子に座れる空滑機《グライダー》改だったら問題も無いだろう。

試作品を渡すのが目的とは言え、泊めて貰うんだろうから行って翌日に帰るって事にはならないだろう。
レディ・トレンティスにしてみれば孫と時間を過ごしたいだろうし。
そう考えるとケレナを一人こちらで留守番させるよりも、一緒に連れて行っちまった方が無難な気がする。

元々家族ぐるみで付き合いがあったって話だからケレナもそれなりにレディ・トレンティスと付き合いがあるだろうし。

ケレナがレディ・トレンティスと色々庭とか牧場とかを見て回っていれば、シャルロを遺跡に連れ込んでも気の咎めを感じなくて済む。
夕食時だけ一緒でも多分あの老婦人は文句を言わないだろうが、やっぱ人の家に遊びに行って好きなことだけしているって言うのは悪い気がするからなぁ。

まあ、遊びに行くっていうよりは便利な試作品を配りに行くだけなんだからそれ程気を使わなくてもいいのかもだが。

「そうだねぇ。
そう言えば、おばあ様のところで子猫が生まれたって言っていたから、それを見せて貰いにケレナも誘ったら良いかもだね」
シャルロがその気になって頷いた。

子猫ねぇ。
見に行ったら一匹引き取る羽目になるんじゃないか?
まあ、使用人がいるんだし猫の面倒はそっちがみてくれるだろうから特に問題はないかもだが。

でも、猫を飼うなら壊れ物はしまっておいた方がいいぞ~?
猫は犬と違って吠えないから屋敷に『お邪魔』しに行っても問題はない事が多かったが、こっちのことをじっと見ていたと思ったら徐に棚の上に飛び乗って中の物を落とし始めたりすることもあるから、中々微妙な存在だったんだよなぁ。



【後書き】
ちょっとした夏休み代わりかな?

しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ホスト異世界へ行く

REON
ファンタジー
「勇者になってこの世界をお救いください」 え?勇者? 「なりたくない( ˙-˙ )スンッ」 ☆★☆★☆ 同伴する為に客と待ち合わせしていたら異世界へ! 国王のおっさんから「勇者になって魔王の討伐を」と、異世界系の王道展開だったけど……俺、勇者じゃないんですけど!?なに“うっかり”で召喚してくれちゃってんの!? しかも元の世界へは帰れないと来た。 よし、分かった。 じゃあ俺はおっさんのヒモになる! 銀髪銀目の異世界ホスト。 勇者じゃないのに勇者よりも特殊な容姿と特殊恩恵を持つこの男。 この男が召喚されたのは本当に“うっかり”だったのか。 人誑しで情緒不安定。 モフモフ大好きで自由人で女子供にはちょっぴり弱い。 そんな特殊イケメンホストが巻きおこす、笑いあり(?)涙あり(?)の異世界ライフ! ※注意※ パンセクシャル(全性愛)ハーレムです。 可愛い女の子をはべらせる普通のハーレムストーリーと思って読むと痛い目をみますのでご注意ください。笑

先にわかっているからこそ、用意だけならできたとある婚約破棄騒動

志位斗 茂家波
ファンタジー
調査して準備ができれば、怖くはない。 むしろ、当事者なのに第3者視点でいることができるほどの余裕が持てるのである。 よくある婚約破棄とは言え、のんびり対応できるのだ!! ‥‥‥たまに書きたくなる婚約破棄騒動。 ゲスト、テンプレ入り混じりつつ、お楽しみください。

てめぇの所為だよ

章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…

三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった! 次の話(グレイ視点)にて完結になります。 お読みいただきありがとうございました。

処理中です...