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卒業後
880 星暦557年 萌葱の月 11日 久しぶりに遠出
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「ねえねえ、久しぶりに北のサンクタスの方に行かない?
おばあ様は庭でお茶をするのが好きだから、これを届けてあげたいし、あっちなら涼しいから風さえ通るようにしておけば遮熱や冷風機能は要らないと思うんだ。
ついでにあの遺跡も、またもう一度見に行ってみようよ」
休息日明けに工房でお茶を飲みながら次は何をするか話し合おうとしたら、シャルロがちょっと意外な提案をしてきた。
サンクタス?
学生時代に行った、シャルロの祖母が住んでいる別邸がある地方だったっけ?
あの遺跡かぁ・・・俺たちが初めて見た遺跡だったが、ある意味一番ありがたくない記憶がある場所でもある。
とは言え。
流石にもうあの虫と魔物の中間みたいな変な生き物はいないと思うし、なんだったら入る前に先にしっかり下まで調べれば安心だろう。
「そうだな、あちらの方の富裕層にちょっと売り込むのにも、レディ・トレンティスのところで使ってもらうのは悪くはないかも知れない。
ついでに遺跡に遊びに行くのもありか・・・。
そう言えば、あそこの遺跡はもう調べ尽くしてあるんだよな?
流石に今回は遺跡探索の手伝いをする暇はないが」
アレクがマグを受け取りながら応じた。
「新しい方の遺跡はまだまだ調べることがあるからずっと発掘隊が常駐しているらしいけど、サンクタスの方のは時折何かを比較して確認したいことが出てくると足を運んでいるらしいけど、常駐はしていないみたいだから僕達だけで好きなだけ見て回れる」
シャルロが教えてくれた。
学生の頃は毎年夏に遊びに行っていると言っていたが、今でも行っているんかな?
確かに北の方だから王都よりも過ごしやすいだろうが・・・今年ってあまり纏まった休みを取っていないから、試作品を渡すついでにって感じなのかも知れない。
オレファーニ家はそれなりに親族の数が多いから、休息日に遊びに行くにしても行き先が色々ありそうで時間が足りない感じだろうし。
まあ、子供じゃないんだから今では親族で集まって遊ぶってこともあまりないのかな?
「折角空滑機改が出来たんだから、ケレナも誘って一緒にあれで行くか?
向こうでレディ・トレンティスが興味を示したら空滑機《グライダー》改で空の散策に連れ出しても良いかも知れないし」
流石に腹ばいになって乗る空滑機《グライダー》に貴族の老婦人を誘うのは無理があるが、椅子に座れる空滑機《グライダー》改だったら問題も無いだろう。
試作品を渡すのが目的とは言え、泊めて貰うんだろうから行って翌日に帰るって事にはならないだろう。
レディ・トレンティスにしてみれば孫と時間を過ごしたいだろうし。
そう考えるとケレナを一人こちらで留守番させるよりも、一緒に連れて行っちまった方が無難な気がする。
元々家族ぐるみで付き合いがあったって話だからケレナもそれなりにレディ・トレンティスと付き合いがあるだろうし。
ケレナがレディ・トレンティスと色々庭とか牧場とかを見て回っていれば、シャルロを遺跡に連れ込んでも気の咎めを感じなくて済む。
夕食時だけ一緒でも多分あの老婦人は文句を言わないだろうが、やっぱ人の家に遊びに行って好きなことだけしているって言うのは悪い気がするからなぁ。
まあ、遊びに行くっていうよりは便利な試作品を配りに行くだけなんだからそれ程気を使わなくてもいいのかもだが。
「そうだねぇ。
そう言えば、おばあ様のところで子猫が生まれたって言っていたから、それを見せて貰いにケレナも誘ったら良いかもだね」
シャルロがその気になって頷いた。
子猫ねぇ。
見に行ったら一匹引き取る羽目になるんじゃないか?
まあ、使用人がいるんだし猫の面倒はそっちがみてくれるだろうから特に問題はないかもだが。
でも、猫を飼うなら壊れ物はしまっておいた方がいいぞ~?
猫は犬と違って吠えないから屋敷に『お邪魔』しに行っても問題はない事が多かったが、こっちのことをじっと見ていたと思ったら徐に棚の上に飛び乗って中の物を落とし始めたりすることもあるから、中々微妙な存在だったんだよなぁ。
【後書き】
ちょっとした夏休み代わりかな?
おばあ様は庭でお茶をするのが好きだから、これを届けてあげたいし、あっちなら涼しいから風さえ通るようにしておけば遮熱や冷風機能は要らないと思うんだ。
ついでにあの遺跡も、またもう一度見に行ってみようよ」
休息日明けに工房でお茶を飲みながら次は何をするか話し合おうとしたら、シャルロがちょっと意外な提案をしてきた。
サンクタス?
学生時代に行った、シャルロの祖母が住んでいる別邸がある地方だったっけ?
あの遺跡かぁ・・・俺たちが初めて見た遺跡だったが、ある意味一番ありがたくない記憶がある場所でもある。
とは言え。
流石にもうあの虫と魔物の中間みたいな変な生き物はいないと思うし、なんだったら入る前に先にしっかり下まで調べれば安心だろう。
「そうだな、あちらの方の富裕層にちょっと売り込むのにも、レディ・トレンティスのところで使ってもらうのは悪くはないかも知れない。
ついでに遺跡に遊びに行くのもありか・・・。
そう言えば、あそこの遺跡はもう調べ尽くしてあるんだよな?
流石に今回は遺跡探索の手伝いをする暇はないが」
アレクがマグを受け取りながら応じた。
「新しい方の遺跡はまだまだ調べることがあるからずっと発掘隊が常駐しているらしいけど、サンクタスの方のは時折何かを比較して確認したいことが出てくると足を運んでいるらしいけど、常駐はしていないみたいだから僕達だけで好きなだけ見て回れる」
シャルロが教えてくれた。
学生の頃は毎年夏に遊びに行っていると言っていたが、今でも行っているんかな?
確かに北の方だから王都よりも過ごしやすいだろうが・・・今年ってあまり纏まった休みを取っていないから、試作品を渡すついでにって感じなのかも知れない。
オレファーニ家はそれなりに親族の数が多いから、休息日に遊びに行くにしても行き先が色々ありそうで時間が足りない感じだろうし。
まあ、子供じゃないんだから今では親族で集まって遊ぶってこともあまりないのかな?
「折角空滑機改が出来たんだから、ケレナも誘って一緒にあれで行くか?
向こうでレディ・トレンティスが興味を示したら空滑機《グライダー》改で空の散策に連れ出しても良いかも知れないし」
流石に腹ばいになって乗る空滑機《グライダー》に貴族の老婦人を誘うのは無理があるが、椅子に座れる空滑機《グライダー》改だったら問題も無いだろう。
試作品を渡すのが目的とは言え、泊めて貰うんだろうから行って翌日に帰るって事にはならないだろう。
レディ・トレンティスにしてみれば孫と時間を過ごしたいだろうし。
そう考えるとケレナを一人こちらで留守番させるよりも、一緒に連れて行っちまった方が無難な気がする。
元々家族ぐるみで付き合いがあったって話だからケレナもそれなりにレディ・トレンティスと付き合いがあるだろうし。
ケレナがレディ・トレンティスと色々庭とか牧場とかを見て回っていれば、シャルロを遺跡に連れ込んでも気の咎めを感じなくて済む。
夕食時だけ一緒でも多分あの老婦人は文句を言わないだろうが、やっぱ人の家に遊びに行って好きなことだけしているって言うのは悪い気がするからなぁ。
まあ、遊びに行くっていうよりは便利な試作品を配りに行くだけなんだからそれ程気を使わなくてもいいのかもだが。
「そうだねぇ。
そう言えば、おばあ様のところで子猫が生まれたって言っていたから、それを見せて貰いにケレナも誘ったら良いかもだね」
シャルロがその気になって頷いた。
子猫ねぇ。
見に行ったら一匹引き取る羽目になるんじゃないか?
まあ、使用人がいるんだし猫の面倒はそっちがみてくれるだろうから特に問題はないかもだが。
でも、猫を飼うなら壊れ物はしまっておいた方がいいぞ~?
猫は犬と違って吠えないから屋敷に『お邪魔』しに行っても問題はない事が多かったが、こっちのことをじっと見ていたと思ったら徐に棚の上に飛び乗って中の物を落とし始めたりすることもあるから、中々微妙な存在だったんだよなぁ。
【後書き】
ちょっとした夏休み代わりかな?
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