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卒業後
877 星暦557年 萌葱の月 6日 水除け(16)
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今回はアレク視点の話です
【本文】
>>>サイド アレク・シェフィート
「冷風機能はどの試作品にも付けない方が良い??」
試作品をシェフィート商会に渡し、同じ物を商業ギルドにも無料提供してみたらどうかと提案したら、早速冷風機を自分の執務室に運び込んで試している長兄から反対された。
「ああ。
今から提供しても、もうすぐ涼しくなる。
今すぐだったら欲しいという客は多いだろうが、製造体制を整えられる頃には涼しくなっているだろう。そうなると納品日を知らせた途端に注文をキャンセルして、自分に伝手がある工房で独自で開発させる人間が続出するぞ。
だったら来年になって暑くなり始めてきたころに、新機能の試作品として配った方が良い。
ちなみに、遮熱機能は簡単に後付け出来るか?
あれは目立たなそうだから後付けが難しいなら最初から付けたままでも良いが」
現時点で冷風機能を見せることの問題点を指摘された。
なるほど。
我々が試作品を造る程度ならまだしも、商業的な販売に伴う大量生産には工房の協力と余力が必要だ。
確かに一気に評判が広まっても暑いうちに買えないとなったら類似品を造る機会を与えるだけになるか。
「遮熱機能は・・・まあ、後付け出来なくもないが、最初からつけておく方が楽ではあるかな」
とは言え、無しで製造する方が安くなるのは事実だ。
「可能ならば簡単かつ安上がりに機能を追加できるように工夫してくれ。来年の追加購入へのおまけにしたい。
あれも絶対に売れるが・・・アイディアさえあれば、真似できない訳ではないのだろう?」
長兄が冷風機の風を自分の顔に当てながら言った。
「まあ、熱の付与もしくは排除は比較的単純な現象だからね。
何通りでもやり方はあるから、此方の魔術回路の特許を侵害せずに類似品を造るのは難しくはないと思う」
そうなると、確かに数を揃えておいて一気に売り出すのが正解か。
「だとしたら、ここで使うのも不味いのでは?
あと、シャルロの方でも試作品として家族に持って行ったから貴族界で話が広がりそうだ」
貴族が配られた試作品からアイディアを拝借して自分で開発させることは余りないだろうが、家令に買ってこいと命じて見つからなかった場合に贔屓の商会へ『こういうのが欲しい』と言うのはよくある流れだ。
「あ~。
シャルロ殿かぁ・・・。
冷やす必要があったら、今年だけは彼か彼の精霊にやって貰う訳にはいかないか?
もうあと10日もしないうちに暑さも収まると思うんだが」
兄が残念そうに言った。
「確かにそれなりに暑さもピークを過ぎた感じだから、取り敢えずあちらの試作品の遮熱機能は残しておいて、後は送風機で風だけ流すようにしたらなんとかなる・・・かな?
遮熱機能は見なければ分からないし、あの結界その物も強風が吹かなければ使わなくてもいいし、冷風機能そのものは外しておいてもらうのもありかも」
シャルロの母君はそこまでパーティ好きでもないと聞くし。
「うむ。
こちらもこの冷風機能は封印しておく。
いくらウチの商会の目玉商品になるかも知れない新商品だとしても、快適だったら従業員がついそのことを家族や友人に話しかねないからな」
残念そうに冷風機を止めながら兄が言った。
「こっそり自分の部屋で使うとか、寝室で使えば?
兄さんと義姉さんだけだったら話は漏れないと思うが。
・・・いや、子供たちが駆け込んでくるとバレるか」
子供相手に口止めしても絶対に話は漏れる。
学校で変に自慢話なんぞされたら、一気に王都全体に広まりかねない。
「・・・駄目だ、我慢できる自信がない。
アレク、冷風機は持って帰ってくれ」
暫し悩んでから、悲壮感満載で兄が言ってきた。
そこまで暑さが辛いなら、こないだケレナ用に試作して没になった下着が冷える機構をシャツにでも取り付けて提供するか?
首周りと背中だけでも冷やしたらぐっと暑さが紛れると思うが。
確か風の出るシャツっぽくしてウィルはシェイラに提供していたな。
家が比較的快適だから、暑くなってきたら売り出せるか相談しようと考えていたのを皆で忘れていた。
我々の工房はどうも蒼流や清早が何かしてくれているのかそれ程暑さは気にならないのだが、確かに兄の執務室やシェフィート商会の店舗の方はまだかなり暑い気はする。
シャツが涼しいだけだったら目立たないし、良いかも知れない。
【後書き】
感覚的には8月下旬でもう直ぐ秋かな~と言う時期です。
最近では日本は9月中ばまで暑いですが、ウィルの世界では地球温暖化も起きていないので8月初旬で暑さのピークが終わり、9月には秋という感じw
【本文】
>>>サイド アレク・シェフィート
「冷風機能はどの試作品にも付けない方が良い??」
試作品をシェフィート商会に渡し、同じ物を商業ギルドにも無料提供してみたらどうかと提案したら、早速冷風機を自分の執務室に運び込んで試している長兄から反対された。
「ああ。
今から提供しても、もうすぐ涼しくなる。
今すぐだったら欲しいという客は多いだろうが、製造体制を整えられる頃には涼しくなっているだろう。そうなると納品日を知らせた途端に注文をキャンセルして、自分に伝手がある工房で独自で開発させる人間が続出するぞ。
だったら来年になって暑くなり始めてきたころに、新機能の試作品として配った方が良い。
ちなみに、遮熱機能は簡単に後付け出来るか?
あれは目立たなそうだから後付けが難しいなら最初から付けたままでも良いが」
現時点で冷風機能を見せることの問題点を指摘された。
なるほど。
我々が試作品を造る程度ならまだしも、商業的な販売に伴う大量生産には工房の協力と余力が必要だ。
確かに一気に評判が広まっても暑いうちに買えないとなったら類似品を造る機会を与えるだけになるか。
「遮熱機能は・・・まあ、後付け出来なくもないが、最初からつけておく方が楽ではあるかな」
とは言え、無しで製造する方が安くなるのは事実だ。
「可能ならば簡単かつ安上がりに機能を追加できるように工夫してくれ。来年の追加購入へのおまけにしたい。
あれも絶対に売れるが・・・アイディアさえあれば、真似できない訳ではないのだろう?」
長兄が冷風機の風を自分の顔に当てながら言った。
「まあ、熱の付与もしくは排除は比較的単純な現象だからね。
何通りでもやり方はあるから、此方の魔術回路の特許を侵害せずに類似品を造るのは難しくはないと思う」
そうなると、確かに数を揃えておいて一気に売り出すのが正解か。
「だとしたら、ここで使うのも不味いのでは?
あと、シャルロの方でも試作品として家族に持って行ったから貴族界で話が広がりそうだ」
貴族が配られた試作品からアイディアを拝借して自分で開発させることは余りないだろうが、家令に買ってこいと命じて見つからなかった場合に贔屓の商会へ『こういうのが欲しい』と言うのはよくある流れだ。
「あ~。
シャルロ殿かぁ・・・。
冷やす必要があったら、今年だけは彼か彼の精霊にやって貰う訳にはいかないか?
もうあと10日もしないうちに暑さも収まると思うんだが」
兄が残念そうに言った。
「確かにそれなりに暑さもピークを過ぎた感じだから、取り敢えずあちらの試作品の遮熱機能は残しておいて、後は送風機で風だけ流すようにしたらなんとかなる・・・かな?
遮熱機能は見なければ分からないし、あの結界その物も強風が吹かなければ使わなくてもいいし、冷風機能そのものは外しておいてもらうのもありかも」
シャルロの母君はそこまでパーティ好きでもないと聞くし。
「うむ。
こちらもこの冷風機能は封印しておく。
いくらウチの商会の目玉商品になるかも知れない新商品だとしても、快適だったら従業員がついそのことを家族や友人に話しかねないからな」
残念そうに冷風機を止めながら兄が言った。
「こっそり自分の部屋で使うとか、寝室で使えば?
兄さんと義姉さんだけだったら話は漏れないと思うが。
・・・いや、子供たちが駆け込んでくるとバレるか」
子供相手に口止めしても絶対に話は漏れる。
学校で変に自慢話なんぞされたら、一気に王都全体に広まりかねない。
「・・・駄目だ、我慢できる自信がない。
アレク、冷風機は持って帰ってくれ」
暫し悩んでから、悲壮感満載で兄が言ってきた。
そこまで暑さが辛いなら、こないだケレナ用に試作して没になった下着が冷える機構をシャツにでも取り付けて提供するか?
首周りと背中だけでも冷やしたらぐっと暑さが紛れると思うが。
確か風の出るシャツっぽくしてウィルはシェイラに提供していたな。
家が比較的快適だから、暑くなってきたら売り出せるか相談しようと考えていたのを皆で忘れていた。
我々の工房はどうも蒼流や清早が何かしてくれているのかそれ程暑さは気にならないのだが、確かに兄の執務室やシェフィート商会の店舗の方はまだかなり暑い気はする。
シャツが涼しいだけだったら目立たないし、良いかも知れない。
【後書き】
感覚的には8月下旬でもう直ぐ秋かな~と言う時期です。
最近では日本は9月中ばまで暑いですが、ウィルの世界では地球温暖化も起きていないので8月初旬で暑さのピークが終わり、9月には秋という感じw
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