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卒業後
871 星暦557年 翠の月 28日 水除け(10)
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「母上が庭用の水除け結界を凄く気に入ってた!!
友人にも勧めるって言ってたから、かなり売れるかも?
でももっと大きいのは特に要らないんじゃないかって。
基本的に本格的に大規模なイベントで庭を使う時は魔術師を雇うのが常識だって言っていたよ」
昨日1日かけて個人用水除け結界と庭や馬車止め用の水除け結界の試作品を作りまくり、実家やその他の伝手に配りに行ったアレクとシャルロ(俺はシェイラしか配る相手がいないので休息日までお預け)なのだが、シャルロの方はどうやらお茶会用の利用にかなり反応が良かったらしい。
まあ、母親だからな。
息子の造った魔具だったらそれなりに良さげだったら特に深く悩まずに買うだろう。
「いや、イベントで魔術師を雇うのは確かに良くある話なんだが、シーズンになると魔術師への依頼が重なるから魔術院の支部やケータリングの商会にとっては魔術師の代わりになる魔具は非常にありがたいという話らしい」
アレクがシャルロの報告に異議を入れた。
「あ~。
確かに地方都市なんかだと魔術師の数が限られるだろうし、長時間ちんたら続くガーデンパーティの間ずっと大型な水除け結界を展開し続けられる魔術師の確保って厳しいだろうからな。
魔石を買っておけば延長しても大丈夫な魔具って有難いんじゃないか?」
それこそ婚約式とその後のパーティを立食式で外でやろうなんて話だったら、マジで昼前から夕食直前まで延々と続く可能性がある。
そんだけ長い間、庭一杯を覆うような結界を展開できるのはシャルロぐらいのもんだ。
俺だって水除けなら清早が助けてくれるから何とかなるが、本来の魔力量では無理だ。
現実的な話としては中堅クラスの魔術師を2人雇って時間差で結界の展開を頼むことになりそうだが、そんなのをパーティが多い時期に確保しようとしたらそれなりに大変そうだ。
大きな庭園付きの屋敷が少ない王都の方がまだ魔術師の数に対して庭での大規模なパーティが少なそうだから人を派遣してもらうって言うのも不可能ではないだろうが、転移門を使って王都から魔術師を連れてこようなんてしたらかなり高くつく。
魔術師の派遣って転移門の使用料を一般人の分と同じだけ請求するからなぁ。
本当ならば自力の魔力で飛べるんで追加費用は実質発生していないんだけど、魔術師って出不精な連中が多いから面倒がって断られたくて請求額を上げるのだ。
「屋敷によって庭の形状が違うから庭全体を使うようなパーティで全体を水除けしたいなんてことになったら微調整が必要になるだろうが、まあそこら辺は工房と相談すれば予約の段階で手配できるだろうし、魔術院かケータリング系の商会に売り込めばいい感じかな?
馬車止めの方はシェフィート商会の方で試しているが、荷物の運び入れの際に濡れなくて良いと現時点では好評なようだ」
アレクが付け加える。
「あ、でもなんか結界の中へ出入りする際にちょっと違和感があるってメイドの子が言っていたって」
シャルロが報告した。
おや?
違和感ね。
魔術師とか魔力に敏感なタイプだと結界への出入りの際に魔力の膜を認知するが・・・それなのかね?
「ちょっと試してみよう。
結界を展開するから、アレクがゆっくり出入りしてくれ」
水関係だとシャルロや俺の反応は微妙に信頼できないからな。
『違和感』ってことは悪影響な場合もあり、水は俺たちを害することが無いから他の人間だったら何か起きていても俺たちには起きない可能性が高いんだよね。
「ふむ。
確かに結界を通るという感触はあるが・・・何か視えるか?」
ゆっくりと結界の中へ入ったり出たりを繰り返しながらアレクが尋ねる。
じっくりと心眼《サイト》を凝らすが・・・魔力の動きに特に異常はない。
アレクの魔力が反応している訳でもない。
とは言え、確かに何かが微かに反応している感じがするか?
何が動いているんだ?
更にじっと視ていて、やっと血流が微妙に結界に出入りする際に影響を受けているのが分かった。
ちょっと押し戻される感じなのだ。
もしかして、血の中に水が入含まれているから結界に入る際に押し戻されているのか??
人間の身体は魔力の影響を受けにくいから、流石に出血レベルまで血が押し戻されるほどの影響は受けていないようだが、多少押される感じで血が微妙に偏り、全身が結界の中に入った際に状態が戻ることでちょっと反動がある感じかな?
ごく微量だが、貧血気味だったりすると体調を崩すかも?
「微妙に血の中の水分へ結界が働きかけちゃうせいで違和感が感じるのかも?
それこそどっかに傷口があったら結界に運び込む際に出血が多少酷くなるかもだけど、それ以外だったらほぼ影響はないと思うが」
俺の言葉を聞いて、結界に手だけ出したり入れたりしていたアレクが目を丸くして自分の指を見つめた。
「そうなのか??
殆ど何も感じられないが」
「ちょっと一瞬逆立ちして体勢を戻した時ぐらいの影響程度だから、体調が悪くない限り感じない程度なんじゃないか?
だけどまあ、体内への影響を排除するような魔術回路を組み込んだ方が良いかも」
そんなのがあればだが。
【後書き】
でんぐり返し1回分ぐらいの影響w
友人にも勧めるって言ってたから、かなり売れるかも?
でももっと大きいのは特に要らないんじゃないかって。
基本的に本格的に大規模なイベントで庭を使う時は魔術師を雇うのが常識だって言っていたよ」
昨日1日かけて個人用水除け結界と庭や馬車止め用の水除け結界の試作品を作りまくり、実家やその他の伝手に配りに行ったアレクとシャルロ(俺はシェイラしか配る相手がいないので休息日までお預け)なのだが、シャルロの方はどうやらお茶会用の利用にかなり反応が良かったらしい。
まあ、母親だからな。
息子の造った魔具だったらそれなりに良さげだったら特に深く悩まずに買うだろう。
「いや、イベントで魔術師を雇うのは確かに良くある話なんだが、シーズンになると魔術師への依頼が重なるから魔術院の支部やケータリングの商会にとっては魔術師の代わりになる魔具は非常にありがたいという話らしい」
アレクがシャルロの報告に異議を入れた。
「あ~。
確かに地方都市なんかだと魔術師の数が限られるだろうし、長時間ちんたら続くガーデンパーティの間ずっと大型な水除け結界を展開し続けられる魔術師の確保って厳しいだろうからな。
魔石を買っておけば延長しても大丈夫な魔具って有難いんじゃないか?」
それこそ婚約式とその後のパーティを立食式で外でやろうなんて話だったら、マジで昼前から夕食直前まで延々と続く可能性がある。
そんだけ長い間、庭一杯を覆うような結界を展開できるのはシャルロぐらいのもんだ。
俺だって水除けなら清早が助けてくれるから何とかなるが、本来の魔力量では無理だ。
現実的な話としては中堅クラスの魔術師を2人雇って時間差で結界の展開を頼むことになりそうだが、そんなのをパーティが多い時期に確保しようとしたらそれなりに大変そうだ。
大きな庭園付きの屋敷が少ない王都の方がまだ魔術師の数に対して庭での大規模なパーティが少なそうだから人を派遣してもらうって言うのも不可能ではないだろうが、転移門を使って王都から魔術師を連れてこようなんてしたらかなり高くつく。
魔術師の派遣って転移門の使用料を一般人の分と同じだけ請求するからなぁ。
本当ならば自力の魔力で飛べるんで追加費用は実質発生していないんだけど、魔術師って出不精な連中が多いから面倒がって断られたくて請求額を上げるのだ。
「屋敷によって庭の形状が違うから庭全体を使うようなパーティで全体を水除けしたいなんてことになったら微調整が必要になるだろうが、まあそこら辺は工房と相談すれば予約の段階で手配できるだろうし、魔術院かケータリング系の商会に売り込めばいい感じかな?
馬車止めの方はシェフィート商会の方で試しているが、荷物の運び入れの際に濡れなくて良いと現時点では好評なようだ」
アレクが付け加える。
「あ、でもなんか結界の中へ出入りする際にちょっと違和感があるってメイドの子が言っていたって」
シャルロが報告した。
おや?
違和感ね。
魔術師とか魔力に敏感なタイプだと結界への出入りの際に魔力の膜を認知するが・・・それなのかね?
「ちょっと試してみよう。
結界を展開するから、アレクがゆっくり出入りしてくれ」
水関係だとシャルロや俺の反応は微妙に信頼できないからな。
『違和感』ってことは悪影響な場合もあり、水は俺たちを害することが無いから他の人間だったら何か起きていても俺たちには起きない可能性が高いんだよね。
「ふむ。
確かに結界を通るという感触はあるが・・・何か視えるか?」
ゆっくりと結界の中へ入ったり出たりを繰り返しながらアレクが尋ねる。
じっくりと心眼《サイト》を凝らすが・・・魔力の動きに特に異常はない。
アレクの魔力が反応している訳でもない。
とは言え、確かに何かが微かに反応している感じがするか?
何が動いているんだ?
更にじっと視ていて、やっと血流が微妙に結界に出入りする際に影響を受けているのが分かった。
ちょっと押し戻される感じなのだ。
もしかして、血の中に水が入含まれているから結界に入る際に押し戻されているのか??
人間の身体は魔力の影響を受けにくいから、流石に出血レベルまで血が押し戻されるほどの影響は受けていないようだが、多少押される感じで血が微妙に偏り、全身が結界の中に入った際に状態が戻ることでちょっと反動がある感じかな?
ごく微量だが、貧血気味だったりすると体調を崩すかも?
「微妙に血の中の水分へ結界が働きかけちゃうせいで違和感が感じるのかも?
それこそどっかに傷口があったら結界に運び込む際に出血が多少酷くなるかもだけど、それ以外だったらほぼ影響はないと思うが」
俺の言葉を聞いて、結界に手だけ出したり入れたりしていたアレクが目を丸くして自分の指を見つめた。
「そうなのか??
殆ど何も感じられないが」
「ちょっと一瞬逆立ちして体勢を戻した時ぐらいの影響程度だから、体調が悪くない限り感じない程度なんじゃないか?
だけどまあ、体内への影響を排除するような魔術回路を組み込んだ方が良いかも」
そんなのがあればだが。
【後書き】
でんぐり返し1回分ぐらいの影響w
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