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卒業後
870 星暦557年 翠の月 27日 水除け(9)
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「取り敢えず、脱水用の新しい魔具も考えるにしても。まずは先に水除け用魔具の開発を終わらせよう。
この緩やかな球形を足元に向けて展開させるのを最終形とするなら、サンプルを20個程度造って雨でも街中を歩く人間に試用してもらって問題点を指摘してもらおうと思うが、どうだ?
毎日雨が降る訳じゃないから、さっさと試作品を渡しておかないといつまでたっても十分なテストを終わらせて販売に回せないぞ」
脱水に関して更に色々試そうとした俺をアレクが留める。
「おう。
そう言えばそうだな。
さっさとこれは終わらせて売っちまう方が良いな。
今度の休息日にシェイラにも試作品を渡しておくよ。
他は・・・シェフィート商会の人間に任せて良いんじゃないか?
シャルロの使用人とか家族の使用人にも頼んでもらっても良いが・・・雨の中を出歩くのは商会の人間の方が多そうだ」
御者なんかは雨の中でも馬車を出す羽目になることは多いが、あの連中は馬車の上に座ってびしょ濡れになっているだけだからなぁ。
まあ、雨除けの魔具が只管濡れて耐えているあの連中に役に立つならそれも良い。
とは言え。
雨の最中で座っている時にあれを使っているとなるとどうなるんだ?
それこそ座席の部分とかに水が垂れてくるのにずっと結界が触れている形だと、それなりに魔石の無駄遣いになりそうだが・・・。
今迄全身びしょ濡れだったのが、少なくとも尻以外は乾いた状態になるとなったら感謝感激だろうが、考えてみたら下っ端の御者用に態々高い魔具を買う貴族や商人はいないか?
却って商会なんかの馬車の方が目的地に着いたら引き渡しとか販売をしなくちゃならない従業員が御者も兼ねている場合に健康管理目的で買いそうだな。
「ちょっとついでに荷馬車とか馬車に座った御者が身に着けて使った場合に何か問題があるか、確認してみないか?」
態々別の魔具を売り出す程の需要があるかは不明だが、多少の修正で用途が広がるかも知れないなら確認の手間をかける価値はあるだろう。
「あ~、確かにね。
とりあえずそこに椅子を出して座って雨を降らせようか」
シャルロが頷いた。
工房の中の椅子を出してきたら後で泥を拭きとらなきゃいけないから面倒だな。
あっちの庭でお茶を飲む時の椅子で良いか。
色々な実験をやった際に吹き飛ばされぬよう端へ避けてあるが、一応天気がいい時に庭でお茶を楽しめるようにちょっとしたテーブルと椅子が庭に置いてある。
それを一脚持って来て水たまりが無い場所に設置した。
「考えてみたら、この馬車止め用の水除けだったらそのまま庭に設置したら雨の中でもゆったり景色を楽しみながらお茶を楽しむなんてことも出来そうだな」
馬車止め用だったらサイズが大きいので、庭用のテーブルと椅子をすっぽりカバーできる。
「・・・確かに!
大きな傘を広げても、ちょっと風が吹くと濡れるから雨だと外に出るのって駄目だったけど、気温さえ丁度よかったらしっとりした雰囲気を楽しみつつ静かにお茶を楽しむのにも良さそうだね。
母上に今度勧めてみよっと」
シャルロが庭を見回しながら言った。
「・・・春先なんかでひっそり花が咲き始めている時期に、静かに雨の中で庭を眺めながらお茶を味わうなんて言うのも風雅で良いかも知れないな。
春の花が咲き始めの頃は雨が多くて中々庭を楽しめないって母も文句を言っていたし、花が好きな貴族夫人達にも好評かも知れない」
アレクも庭を見回しながら付け足す。
もっとも、庭でお茶を飲んでいる間は馬車止めが水浸しってことになるが。馬車止めの水除けは夜のパーティ用だと割り切れば良いか?
いや、お茶会なんかだったら客が来る間は場所止めの水除けは必要だから、客が全員そろってから庭に設置して椅子とテーブルを出し・・・なんてことになると準備が間に合わないな。だとすると庭に使うんだったら家族用じゃない限り、2つ必要になるな。
まあ、貴族ならばその程度の出費は有用と思えば全然構わないだろう。
「庭でのパーティとか披露宴とかの時用に大規模な水除け魔具も売り出すか貸し出しで提供しても良いかもな。
婚約式なんかで庭を使おうと計画した場合に、雨が降ったら困るってありそうじゃないか?」
シャルロの婚約式も庭だった。貴族の屋敷って庭にガッツリ手を掛けているとこも多いから、花が綺麗な時期とかはそれを客に見せたいだろう。
あいつの場合は絶対に雨なんぞ降らないのは分かり切った事だったが、普通の貴族だったら雨が降ったら色々と支障が出る。
大型なテントを建ててやるにしてもそれなりに水が垂れてくるし、なんと言っても自慢したかった庭はテントの布に遮られて見えないしでがっかりだろうから、大型の水除け結界ってそれなりに需要があるんじゃないか?
【後書き】
地方だったら貸し出す相手が少なそうだから比較的小型を買取かな?
もしくはイベントプラナーみたいな業者が水避け結界提供を込みでプラニングサービスを契約するか。
この緩やかな球形を足元に向けて展開させるのを最終形とするなら、サンプルを20個程度造って雨でも街中を歩く人間に試用してもらって問題点を指摘してもらおうと思うが、どうだ?
毎日雨が降る訳じゃないから、さっさと試作品を渡しておかないといつまでたっても十分なテストを終わらせて販売に回せないぞ」
脱水に関して更に色々試そうとした俺をアレクが留める。
「おう。
そう言えばそうだな。
さっさとこれは終わらせて売っちまう方が良いな。
今度の休息日にシェイラにも試作品を渡しておくよ。
他は・・・シェフィート商会の人間に任せて良いんじゃないか?
シャルロの使用人とか家族の使用人にも頼んでもらっても良いが・・・雨の中を出歩くのは商会の人間の方が多そうだ」
御者なんかは雨の中でも馬車を出す羽目になることは多いが、あの連中は馬車の上に座ってびしょ濡れになっているだけだからなぁ。
まあ、雨除けの魔具が只管濡れて耐えているあの連中に役に立つならそれも良い。
とは言え。
雨の最中で座っている時にあれを使っているとなるとどうなるんだ?
それこそ座席の部分とかに水が垂れてくるのにずっと結界が触れている形だと、それなりに魔石の無駄遣いになりそうだが・・・。
今迄全身びしょ濡れだったのが、少なくとも尻以外は乾いた状態になるとなったら感謝感激だろうが、考えてみたら下っ端の御者用に態々高い魔具を買う貴族や商人はいないか?
却って商会なんかの馬車の方が目的地に着いたら引き渡しとか販売をしなくちゃならない従業員が御者も兼ねている場合に健康管理目的で買いそうだな。
「ちょっとついでに荷馬車とか馬車に座った御者が身に着けて使った場合に何か問題があるか、確認してみないか?」
態々別の魔具を売り出す程の需要があるかは不明だが、多少の修正で用途が広がるかも知れないなら確認の手間をかける価値はあるだろう。
「あ~、確かにね。
とりあえずそこに椅子を出して座って雨を降らせようか」
シャルロが頷いた。
工房の中の椅子を出してきたら後で泥を拭きとらなきゃいけないから面倒だな。
あっちの庭でお茶を飲む時の椅子で良いか。
色々な実験をやった際に吹き飛ばされぬよう端へ避けてあるが、一応天気がいい時に庭でお茶を楽しめるようにちょっとしたテーブルと椅子が庭に置いてある。
それを一脚持って来て水たまりが無い場所に設置した。
「考えてみたら、この馬車止め用の水除けだったらそのまま庭に設置したら雨の中でもゆったり景色を楽しみながらお茶を楽しむなんてことも出来そうだな」
馬車止め用だったらサイズが大きいので、庭用のテーブルと椅子をすっぽりカバーできる。
「・・・確かに!
大きな傘を広げても、ちょっと風が吹くと濡れるから雨だと外に出るのって駄目だったけど、気温さえ丁度よかったらしっとりした雰囲気を楽しみつつ静かにお茶を楽しむのにも良さそうだね。
母上に今度勧めてみよっと」
シャルロが庭を見回しながら言った。
「・・・春先なんかでひっそり花が咲き始めている時期に、静かに雨の中で庭を眺めながらお茶を味わうなんて言うのも風雅で良いかも知れないな。
春の花が咲き始めの頃は雨が多くて中々庭を楽しめないって母も文句を言っていたし、花が好きな貴族夫人達にも好評かも知れない」
アレクも庭を見回しながら付け足す。
もっとも、庭でお茶を飲んでいる間は馬車止めが水浸しってことになるが。馬車止めの水除けは夜のパーティ用だと割り切れば良いか?
いや、お茶会なんかだったら客が来る間は場所止めの水除けは必要だから、客が全員そろってから庭に設置して椅子とテーブルを出し・・・なんてことになると準備が間に合わないな。だとすると庭に使うんだったら家族用じゃない限り、2つ必要になるな。
まあ、貴族ならばその程度の出費は有用と思えば全然構わないだろう。
「庭でのパーティとか披露宴とかの時用に大規模な水除け魔具も売り出すか貸し出しで提供しても良いかもな。
婚約式なんかで庭を使おうと計画した場合に、雨が降ったら困るってありそうじゃないか?」
シャルロの婚約式も庭だった。貴族の屋敷って庭にガッツリ手を掛けているとこも多いから、花が綺麗な時期とかはそれを客に見せたいだろう。
あいつの場合は絶対に雨なんぞ降らないのは分かり切った事だったが、普通の貴族だったら雨が降ったら色々と支障が出る。
大型なテントを建ててやるにしてもそれなりに水が垂れてくるし、なんと言っても自慢したかった庭はテントの布に遮られて見えないしでがっかりだろうから、大型の水除け結界ってそれなりに需要があるんじゃないか?
【後書き】
地方だったら貸し出す相手が少なそうだから比較的小型を買取かな?
もしくはイベントプラナーみたいな業者が水避け結界提供を込みでプラニングサービスを契約するか。
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