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卒業後
868 星暦557年 翠の月 26日 水除け(7)
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歩く時に使う水除け結界がイマイチ上手くいかないので、気分転換に馬車止め用の水除け結界を造ったらこっちは比較的簡単に出来あがった。
起動時に水を排除する速度ものんびり歩く程度なゆっくりさにしたので、前や後ろに立っていた人間が突然水の直撃を受けることもない。
とは言え結界で押し出すだけなので、地面の勾配や地表の状態によっては結界の前に大きな水たまりが出来ることもあるが。
「これって結界を造る場所を少し高めにしておく方が魔力の消費量が抑えられると思うんだが、馬車止めって水が集まるのを避けるために少し高めに整備しておくとかってないのか?」
庭に設置した水除け結界の中に立つと、左側の結界の縁に浅い池が出来ているのを見える。それを指差しながらアレクに尋ねた。
結界の縁に水が溜まっていて常時それを押しやっている形になると魔力が無駄に消費されるんだけど~。
かと言って流石に水除けに縁へ土を盛る機能なんぞ付けられないし、勝手にそんなことをしたら馬車が入ってくる際に変に揺れて困るだろう。
「降りる辺が水たまりにならない様にそこら辺は定期的に砂利で均しているだろうが、馬車止め全体ってことはないだろうな」
眉を顰めながら同じく池になっている水たまりを見ていたアレクが応える。
「これはどうしようもないよ。
使用説明書の最初の部分に、大きく赤字で結界の範囲の外縁部分に池が出来るようだったらちゃんと均した方が経済的だよ~って書いておくしかないんじゃない?
馬車止め用はこれで完成に近い感じだと思うから、実家とかに試作品を配って試してもらって良いかな?」
シャルロがあっさり諦めて話を進める様に言ってきた。
まあ、確かにな。
しょっちゅう土が削れて池になってしまうんだったら、魔石を多めに使う方が場所止め周辺の地面を常時均して平らにしておく労力よりも安いかも知れないし。
金持ちの敷地だったらそこまで地面の土質が悪い事なんてほぼ無いとは思うが。
「人間用のはなぁ・・・。
対象が動くって言うのは本当に面倒だ」
それこそ歩き回る時に自動的に足元が水面より上になる踏み台モドキがコロコロと転がってその上を歩けるようにでも出来れば良いのに。
足元をがっつり凍らせ、氷の表面をザラザラにして歩いても滑らない様にするなんて言うのも考えてみたが、今の時期でも消費する魔力の量が洒落にならなかったので無理だろう。
というか、水を凍らせる魔術回路はあるが、その表面をザラザラにする魔力回路なんて見た記憶がないし、歩くスピードに合わせるぐらいの速度で地面の水を凍らせようと思ったら冬でも滅茶苦茶魔力を消費することになる。
真夏だったら不可能だろう。
「女の人のヒールをもっと平らで歩きやすい形にして靴に付けて歩いたらどうかな?」
シャルロが手で靴の下を指しながら提案した。
「水たまりに嵌って靴の中がびしょびしょになるのは避けられるかも知れないが、靴にそれを設置しようと思ったら靴のサイズに合わさなきゃならないからサイズ調整が大変だぞ?」
3イクチ程度の高さにすれば足元の泥跳ねの分は普通に体の結界ではじけるとは思うが、靴にしっかり固定できないと歩きにくいだろう。
というか、ヒールって滅茶苦茶歩き難そうに見えるが、あれって足の裏全体に平らにつければそれ程難しくないのか?
「慣れない高さのヒールだと躓きやすいと母が言っていたから、男がヒールのついた靴を履いたらあちこちで転ぶと思うぞ?」
アレクが指摘した。
そうなんだ?
ヒールに関する不満はちょくちょく聞いていたが、『バランスを取りにくい』『足首が疲れる』『足の指が痛い』といった話はよく出るが、高さが違うと躓くというのは知らなかった。
雨の中で履くのに躓きやすいなんて、絶対に御免だな。
「諦めて下向きにちょっと緩く球体っぽい角度を付けた結界を展開させてどうなるか、試してみよう。
それもダメだったら・・・どうするかね?」
シェイラも森の中みたいな場所で発掘しているから、それなりに足元に水が溜まって苦労しているっぽいんだよなぁ。
視点を変えて、濡れた靴をさっと綺麗に乾かす魔具でも造るか?
【後書き】
ちょっと思考が逃避気味になってきてますw
起動時に水を排除する速度ものんびり歩く程度なゆっくりさにしたので、前や後ろに立っていた人間が突然水の直撃を受けることもない。
とは言え結界で押し出すだけなので、地面の勾配や地表の状態によっては結界の前に大きな水たまりが出来ることもあるが。
「これって結界を造る場所を少し高めにしておく方が魔力の消費量が抑えられると思うんだが、馬車止めって水が集まるのを避けるために少し高めに整備しておくとかってないのか?」
庭に設置した水除け結界の中に立つと、左側の結界の縁に浅い池が出来ているのを見える。それを指差しながらアレクに尋ねた。
結界の縁に水が溜まっていて常時それを押しやっている形になると魔力が無駄に消費されるんだけど~。
かと言って流石に水除けに縁へ土を盛る機能なんぞ付けられないし、勝手にそんなことをしたら馬車が入ってくる際に変に揺れて困るだろう。
「降りる辺が水たまりにならない様にそこら辺は定期的に砂利で均しているだろうが、馬車止め全体ってことはないだろうな」
眉を顰めながら同じく池になっている水たまりを見ていたアレクが応える。
「これはどうしようもないよ。
使用説明書の最初の部分に、大きく赤字で結界の範囲の外縁部分に池が出来るようだったらちゃんと均した方が経済的だよ~って書いておくしかないんじゃない?
馬車止め用はこれで完成に近い感じだと思うから、実家とかに試作品を配って試してもらって良いかな?」
シャルロがあっさり諦めて話を進める様に言ってきた。
まあ、確かにな。
しょっちゅう土が削れて池になってしまうんだったら、魔石を多めに使う方が場所止め周辺の地面を常時均して平らにしておく労力よりも安いかも知れないし。
金持ちの敷地だったらそこまで地面の土質が悪い事なんてほぼ無いとは思うが。
「人間用のはなぁ・・・。
対象が動くって言うのは本当に面倒だ」
それこそ歩き回る時に自動的に足元が水面より上になる踏み台モドキがコロコロと転がってその上を歩けるようにでも出来れば良いのに。
足元をがっつり凍らせ、氷の表面をザラザラにして歩いても滑らない様にするなんて言うのも考えてみたが、今の時期でも消費する魔力の量が洒落にならなかったので無理だろう。
というか、水を凍らせる魔術回路はあるが、その表面をザラザラにする魔力回路なんて見た記憶がないし、歩くスピードに合わせるぐらいの速度で地面の水を凍らせようと思ったら冬でも滅茶苦茶魔力を消費することになる。
真夏だったら不可能だろう。
「女の人のヒールをもっと平らで歩きやすい形にして靴に付けて歩いたらどうかな?」
シャルロが手で靴の下を指しながら提案した。
「水たまりに嵌って靴の中がびしょびしょになるのは避けられるかも知れないが、靴にそれを設置しようと思ったら靴のサイズに合わさなきゃならないからサイズ調整が大変だぞ?」
3イクチ程度の高さにすれば足元の泥跳ねの分は普通に体の結界ではじけるとは思うが、靴にしっかり固定できないと歩きにくいだろう。
というか、ヒールって滅茶苦茶歩き難そうに見えるが、あれって足の裏全体に平らにつければそれ程難しくないのか?
「慣れない高さのヒールだと躓きやすいと母が言っていたから、男がヒールのついた靴を履いたらあちこちで転ぶと思うぞ?」
アレクが指摘した。
そうなんだ?
ヒールに関する不満はちょくちょく聞いていたが、『バランスを取りにくい』『足首が疲れる』『足の指が痛い』といった話はよく出るが、高さが違うと躓くというのは知らなかった。
雨の中で履くのに躓きやすいなんて、絶対に御免だな。
「諦めて下向きにちょっと緩く球体っぽい角度を付けた結界を展開させてどうなるか、試してみよう。
それもダメだったら・・・どうするかね?」
シェイラも森の中みたいな場所で発掘しているから、それなりに足元に水が溜まって苦労しているっぽいんだよなぁ。
視点を変えて、濡れた靴をさっと綺麗に乾かす魔具でも造るか?
【後書き】
ちょっと思考が逃避気味になってきてますw
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