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卒業後
858 星暦557年 青の月 23日 魔術回路の素材(8)
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可変型転移箱は相手側の通信機の共鳴魔石の魔力が追加されないと転移する為のリンクが稼働できない様にした。
お蔭で旧式の転移箱と同じランクの魔石を使っても多少有効範囲が広くなった。
というか、新素材を使ったことで元々有効範囲が広がっていたのだが、それが更に伸びたのだ。
新素材だと魔力消費量が減るだけでなく、魔石のランクを上げなくても有効範囲がちょっと伸びたのは中々嬉しい発見だ。
元々、転移箱(転移門も)の有効範囲というのは費やす魔力で伸びるものだったので、魔石で基本的に動かす転移箱の場合は使う魔石のランクで有効範囲が決まっていた。
それが、魔石を変えなくても有効範囲が伸びたのである。
これは中々嬉しい、アピールしやすい長点だ。
で。
受け取り損ねた相手からの伝言だが。
「メッセージは3件も受けられるようにする必要あるか?
一つでも良くない?」
メッセージを記録できる量も記録用魔石のランクに依存する。
基本的に夜中や、偶々席を外していた時にメッセージを受ける為と考えていた俺とシャルロはお知らせを受けられれば良いんじゃないかと思っていたのだが、アレクがもっと必要だと主張したのだ。
「いや、東大陸支店とかのやり取りだと、半日近く業務時間がずれているんだ。
帰宅後にアファル王国側から午後の連絡が3つぐらい入っても不思議は無い。
どうせ名前を残す程度の短いメッセージならば低ランクの小魔石で何とかなるから、複数受けられるように魔術回路を工夫して、3つ受けられるようにしよう」
アレクが説明する。
そう言えば、地域によって時間が違うんだっけ。
相手がちょっと遅くまで働いていたから連絡が取れないなんていう状況は極まれにある程度だろうと思っていたが、地域的に時間がずれていて基本的に夕方とか朝は相手がまだ寝ている時間帯だと考えると、確かに1日の半分ぐらいの業務を想定すると3つぐらい連絡が来ても可笑しくは無いか。
「って言うかさ、名前を記録させるんじゃなくって、接続しようとした共鳴魔石の識別情報を記録しておくようにしたらどうだ?
『メッセージを残して下さい』なんて突然魔具から言われても、慣れてない人間だったらびっくりするんじゃないか?」
どうせ識別情報は伝わるのだ。
それをどこかに記録して残すようにしたらどうだろうか?
「ふむ。
連絡を受けた魔具の識別情報が残るだけだから、偶々出先で通信機を借りた場合は折り返し先が変わるかも知れないが、その程度だったらどうせ先に通信機で繋いで話すのだから、構わないか」
アレクがちょっと考えてから頷く。
「でもそうすると識別情報にちゃんと名前を付けなきゃいけないし、同じ名じゃダメってなると名前の管理は誰がするの?」
シャルロが指摘する。
基本的に今は魔石の共鳴機能を使っているだけなので識別情報も後付けで誰が持っている魔石なのかを簡単にメモ程度に刻み込んでいるだけだ。
識別情報へ正式に名称を紐付けようとしたら、誤認しないように同じ名前だった場合は後から登録した方は通称か何かを考えなければならない。
どの名称が既に登録しているか確認するのが大変そうだし、権力が絡んだりしたら誰が通称を使うかでも面倒な事になりそうだ。
かと言って適当な名前で重複も大丈夫って事にすると良くある名前の相手からだったりすると実際に誰から受信があったのか分からない事態になりかねない。
「・・・確かにそれは面倒か。
名称の一覧を維持して新しい名称を調べるなんて事をしようとしたら、通信機が多く売られていくと大変な手間になるな」
アレクが眉を顰める。
通信機用の識別情報に入っている簡易名称は誰かに譲っても態々変えないことが多い。そう考えると通信機や転移箱に識別情報の名称を見える様にしてもちょっと微妙か?
まあ、通信機でやり取りする相手に同じような簡易名称の相手が複数いなければ特に問題は無いだろうが。
転移箱が普及していくと、家名を省いていたりしたら重複しまくる様になるだろう。
「通信機用の共鳴魔石を登録制にしたら魔術院は資金源が増えるって凄く喜ぶかもだけど、名称が使われていないかの確認が必要になったら待ち時間がやたらと長くなって通信機の売り上げが落ちるんじゃないか?
そう考えると、下手なことは提案しない方が良さげだな」
俺たちにとっては、魔術院の収入を増やすよりも商会が売りに出す通信機や転移箱の販売が増える方が利益が大きい。
「そうなると名前を言わせて音で記録する形になるな。
魔石のランクが少し上がりそうだが・・・名前だけ言う形にしたら短く出来るか。
音楽用魔術回路のどれが一番記録用に良いか、試行錯誤だな」
昨日魔術院に行って色々と写してきた魔術回路の束を見ながらアレクがため息を吐いた。
名前の記録だけだから、音楽用と違って音の良さとかよりも魔力消費量の少なさの方が重要なんだが、特許用の資料ってどの程度魔力が必要かとかは書いてないから試作してみないと確認できないんだよなぁ。
まあ、頑張ろう。
・・・つうか、有効距離が広がるってだけで既に新素材のアピールとしては十分なんだけどな。
俺たちってちょっと拘り過ぎ??
【後書き】
正式名称を登録する形にしたら、貴族とかだとやたらと名前が長くなりそうw
お蔭で旧式の転移箱と同じランクの魔石を使っても多少有効範囲が広くなった。
というか、新素材を使ったことで元々有効範囲が広がっていたのだが、それが更に伸びたのだ。
新素材だと魔力消費量が減るだけでなく、魔石のランクを上げなくても有効範囲がちょっと伸びたのは中々嬉しい発見だ。
元々、転移箱(転移門も)の有効範囲というのは費やす魔力で伸びるものだったので、魔石で基本的に動かす転移箱の場合は使う魔石のランクで有効範囲が決まっていた。
それが、魔石を変えなくても有効範囲が伸びたのである。
これは中々嬉しい、アピールしやすい長点だ。
で。
受け取り損ねた相手からの伝言だが。
「メッセージは3件も受けられるようにする必要あるか?
一つでも良くない?」
メッセージを記録できる量も記録用魔石のランクに依存する。
基本的に夜中や、偶々席を外していた時にメッセージを受ける為と考えていた俺とシャルロはお知らせを受けられれば良いんじゃないかと思っていたのだが、アレクがもっと必要だと主張したのだ。
「いや、東大陸支店とかのやり取りだと、半日近く業務時間がずれているんだ。
帰宅後にアファル王国側から午後の連絡が3つぐらい入っても不思議は無い。
どうせ名前を残す程度の短いメッセージならば低ランクの小魔石で何とかなるから、複数受けられるように魔術回路を工夫して、3つ受けられるようにしよう」
アレクが説明する。
そう言えば、地域によって時間が違うんだっけ。
相手がちょっと遅くまで働いていたから連絡が取れないなんていう状況は極まれにある程度だろうと思っていたが、地域的に時間がずれていて基本的に夕方とか朝は相手がまだ寝ている時間帯だと考えると、確かに1日の半分ぐらいの業務を想定すると3つぐらい連絡が来ても可笑しくは無いか。
「って言うかさ、名前を記録させるんじゃなくって、接続しようとした共鳴魔石の識別情報を記録しておくようにしたらどうだ?
『メッセージを残して下さい』なんて突然魔具から言われても、慣れてない人間だったらびっくりするんじゃないか?」
どうせ識別情報は伝わるのだ。
それをどこかに記録して残すようにしたらどうだろうか?
「ふむ。
連絡を受けた魔具の識別情報が残るだけだから、偶々出先で通信機を借りた場合は折り返し先が変わるかも知れないが、その程度だったらどうせ先に通信機で繋いで話すのだから、構わないか」
アレクがちょっと考えてから頷く。
「でもそうすると識別情報にちゃんと名前を付けなきゃいけないし、同じ名じゃダメってなると名前の管理は誰がするの?」
シャルロが指摘する。
基本的に今は魔石の共鳴機能を使っているだけなので識別情報も後付けで誰が持っている魔石なのかを簡単にメモ程度に刻み込んでいるだけだ。
識別情報へ正式に名称を紐付けようとしたら、誤認しないように同じ名前だった場合は後から登録した方は通称か何かを考えなければならない。
どの名称が既に登録しているか確認するのが大変そうだし、権力が絡んだりしたら誰が通称を使うかでも面倒な事になりそうだ。
かと言って適当な名前で重複も大丈夫って事にすると良くある名前の相手からだったりすると実際に誰から受信があったのか分からない事態になりかねない。
「・・・確かにそれは面倒か。
名称の一覧を維持して新しい名称を調べるなんて事をしようとしたら、通信機が多く売られていくと大変な手間になるな」
アレクが眉を顰める。
通信機用の識別情報に入っている簡易名称は誰かに譲っても態々変えないことが多い。そう考えると通信機や転移箱に識別情報の名称を見える様にしてもちょっと微妙か?
まあ、通信機でやり取りする相手に同じような簡易名称の相手が複数いなければ特に問題は無いだろうが。
転移箱が普及していくと、家名を省いていたりしたら重複しまくる様になるだろう。
「通信機用の共鳴魔石を登録制にしたら魔術院は資金源が増えるって凄く喜ぶかもだけど、名称が使われていないかの確認が必要になったら待ち時間がやたらと長くなって通信機の売り上げが落ちるんじゃないか?
そう考えると、下手なことは提案しない方が良さげだな」
俺たちにとっては、魔術院の収入を増やすよりも商会が売りに出す通信機や転移箱の販売が増える方が利益が大きい。
「そうなると名前を言わせて音で記録する形になるな。
魔石のランクが少し上がりそうだが・・・名前だけ言う形にしたら短く出来るか。
音楽用魔術回路のどれが一番記録用に良いか、試行錯誤だな」
昨日魔術院に行って色々と写してきた魔術回路の束を見ながらアレクがため息を吐いた。
名前の記録だけだから、音楽用と違って音の良さとかよりも魔力消費量の少なさの方が重要なんだが、特許用の資料ってどの程度魔力が必要かとかは書いてないから試作してみないと確認できないんだよなぁ。
まあ、頑張ろう。
・・・つうか、有効距離が広がるってだけで既に新素材のアピールとしては十分なんだけどな。
俺たちってちょっと拘り過ぎ??
【後書き】
正式名称を登録する形にしたら、貴族とかだとやたらと名前が長くなりそうw
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