857 / 1,038
卒業後
856 星暦557年 青の月 20日 魔術回路の素材(6)
しおりを挟む
「通信機で相手を確認して送る転移箱?
良いわね~。
私が商売していたら絶対に買うわ!」
通信機の機能と連動させて転移箱の転移先を変えるのは、2日程度でなんとか形になった。
今度は通信機で相手と話している状態じゃないと送れないようにして、例外的にボタンを押したら相手に連絡せずに送れるようにする機能だが・・・こちらはもう少し難航していた。
まあ、まだ通信機と転移箱を連動させた試作品が昨日完成したばかりだから、そこまで時間はかけていないんだけどね。
送りっぱなし、もしくは通信中じゃないと送れないって言うのはそれ程難しくないんだけど、両方を選べるって言うのが中々難しい。
面倒な思いをしてまで新しい機能が本当に必要なのかね?ってちょっとシェイラに愚痴ったら絶対に良い!!と言い切られた。
「そうか?
紙に書いてある筆跡とか署名を見れば、誰が送って来たか大体分かるから、やたらと煩い軍部以外はどうでも良くない?」
軍部に売り込めるかどうかまだ不明だし、あっちは予算編成がなんだかんだと財務部との交渉もあるらしくて販売が決まっても実際に金(と製品)が動くまでかなり時間がかかるんだよなぁ。
「決まった相手にしか送りつけられない1対1の転移箱だったらまだしも、複数の相手に送れて、受け取れるのよ?
相手を間違えたりしたら悲惨なことになるじゃない。
第一、書類って言うのは理由があって送るの。
さっさとちゃんと直ぐに目を通してもらわないと困るんだから、確認の為にどうせ通信機で連絡を取ることを考えると、最初から一体式にして間違った転移が出来ない様にしておけば良いわ」
シェイラが指摘した。
まあ、確かに役所なんかとのやり取りのつもりで、商業ギルドとかに機密書類を送りつけちゃったらヤバすぎるか。
もしくは愛人とラブレターのやり取りをしているつもりで妻に送っちゃったり。
転移箱って間に使用人が間に入らなくて『二人だけの愛の秘密』とでも感じるのか、意外と愛人持ちの中年男性に良く売れているらしいんだよなぁ。
そう考えると、愛人へのラブレターを間違って領地の妻の方に送ったりしたら悲惨を極めるかも知れないから、しっかり通話で相手を確認しないと送れないって言うのは重要かもな。
とは言え、ボタンを押せば送り付けるだけの機能も出来るって時点でかなり危険だが。
送る前に設定してある相手方を特定する魔石を確認すれば問題はないんだが・・・魔術師以外だと、魔石の設定なんて入れてあるケースのメモ書きからしか分からないからなぁ。
魔術師なら軽く魔力を通したら中の識別情報を読み取れるんで大丈夫なんだが。
通信機の相手の設定用魔石に刻み込まれている識別情報を明示するようにでもするかね?
そう言う機能を開発したら普通の通信機にも便利だろう。
通信機を実際に使えば誰と話しているか分かるんで大した問題は起きないらしいが、時々通信相手指定用の魔石の入った箱をひっくり返して収拾がつかなくなり、整理を頼む依頼が魔術院の方に来るってアンディが言っていたからな。
考えてみたら、今後は転移箱で話さずに送るってのが出来ちゃうから問題は起きやすいかも。
「ちなみに発掘チームにも本部と連絡を取る為に転移箱があるのか?」
定期報告みたいのをシェイラが書いているのは見ているから、定期的に書類の送付はある筈だが。
「まさか!そんなのに払うお金があったら発掘の方に回しているわよ。
お手軽に売れちゃう魔具なんて『うっかり失くしました』って言って売られかねないし。
本当にうっかり失くす学者バカも多いから、嘘かどうかの見極めも難しいから基本的に売りやすそうな小型魔具の配布はないの」
シェイラが笑いながら言った。
「・・・今の転移箱ってペアで使う物だから、片側だけ売っても余り意味はないぞ?」
まあ、共鳴させる魔石を入れ直せば他の転移箱と再設定できるが。
だけどこれは学者バカには分からない情報だと思うんだが。
「そんなもん、実際に使えなくても他国に売り払って模造品を使うのに利用する分には困らないでしょ?
学者バカから上手く金で情報や物を抜き取ろうとする輩はどこにでもいるからね。
学会本部・・・というか予算を管理している財務省の方が、そこら辺は十分に気を付けて管理しているから、換金性の高い最新式小型魔具の入手はほぼあり得ないわね」
シェイラが肩を竦めた。
ふむ。
まあ、シェイラが俺の贈った魔具を売り払うとは思わんが、どちらにせよ書類のやり取りは俺とはないし、王都側の学会本部に転移箱が無いんだったらシェイラも使えないだろうから、試作品を提供してもしょうがないかな?
ラブレターを書くのは俺には難しいから、それを必要とする転移箱も持ち込みたくない・・・。
【後書き】
ラブレターなんて生まれてから一度も書いた事のないウィル君ですw
良いわね~。
私が商売していたら絶対に買うわ!」
通信機の機能と連動させて転移箱の転移先を変えるのは、2日程度でなんとか形になった。
今度は通信機で相手と話している状態じゃないと送れないようにして、例外的にボタンを押したら相手に連絡せずに送れるようにする機能だが・・・こちらはもう少し難航していた。
まあ、まだ通信機と転移箱を連動させた試作品が昨日完成したばかりだから、そこまで時間はかけていないんだけどね。
送りっぱなし、もしくは通信中じゃないと送れないって言うのはそれ程難しくないんだけど、両方を選べるって言うのが中々難しい。
面倒な思いをしてまで新しい機能が本当に必要なのかね?ってちょっとシェイラに愚痴ったら絶対に良い!!と言い切られた。
「そうか?
紙に書いてある筆跡とか署名を見れば、誰が送って来たか大体分かるから、やたらと煩い軍部以外はどうでも良くない?」
軍部に売り込めるかどうかまだ不明だし、あっちは予算編成がなんだかんだと財務部との交渉もあるらしくて販売が決まっても実際に金(と製品)が動くまでかなり時間がかかるんだよなぁ。
「決まった相手にしか送りつけられない1対1の転移箱だったらまだしも、複数の相手に送れて、受け取れるのよ?
相手を間違えたりしたら悲惨なことになるじゃない。
第一、書類って言うのは理由があって送るの。
さっさとちゃんと直ぐに目を通してもらわないと困るんだから、確認の為にどうせ通信機で連絡を取ることを考えると、最初から一体式にして間違った転移が出来ない様にしておけば良いわ」
シェイラが指摘した。
まあ、確かに役所なんかとのやり取りのつもりで、商業ギルドとかに機密書類を送りつけちゃったらヤバすぎるか。
もしくは愛人とラブレターのやり取りをしているつもりで妻に送っちゃったり。
転移箱って間に使用人が間に入らなくて『二人だけの愛の秘密』とでも感じるのか、意外と愛人持ちの中年男性に良く売れているらしいんだよなぁ。
そう考えると、愛人へのラブレターを間違って領地の妻の方に送ったりしたら悲惨を極めるかも知れないから、しっかり通話で相手を確認しないと送れないって言うのは重要かもな。
とは言え、ボタンを押せば送り付けるだけの機能も出来るって時点でかなり危険だが。
送る前に設定してある相手方を特定する魔石を確認すれば問題はないんだが・・・魔術師以外だと、魔石の設定なんて入れてあるケースのメモ書きからしか分からないからなぁ。
魔術師なら軽く魔力を通したら中の識別情報を読み取れるんで大丈夫なんだが。
通信機の相手の設定用魔石に刻み込まれている識別情報を明示するようにでもするかね?
そう言う機能を開発したら普通の通信機にも便利だろう。
通信機を実際に使えば誰と話しているか分かるんで大した問題は起きないらしいが、時々通信相手指定用の魔石の入った箱をひっくり返して収拾がつかなくなり、整理を頼む依頼が魔術院の方に来るってアンディが言っていたからな。
考えてみたら、今後は転移箱で話さずに送るってのが出来ちゃうから問題は起きやすいかも。
「ちなみに発掘チームにも本部と連絡を取る為に転移箱があるのか?」
定期報告みたいのをシェイラが書いているのは見ているから、定期的に書類の送付はある筈だが。
「まさか!そんなのに払うお金があったら発掘の方に回しているわよ。
お手軽に売れちゃう魔具なんて『うっかり失くしました』って言って売られかねないし。
本当にうっかり失くす学者バカも多いから、嘘かどうかの見極めも難しいから基本的に売りやすそうな小型魔具の配布はないの」
シェイラが笑いながら言った。
「・・・今の転移箱ってペアで使う物だから、片側だけ売っても余り意味はないぞ?」
まあ、共鳴させる魔石を入れ直せば他の転移箱と再設定できるが。
だけどこれは学者バカには分からない情報だと思うんだが。
「そんなもん、実際に使えなくても他国に売り払って模造品を使うのに利用する分には困らないでしょ?
学者バカから上手く金で情報や物を抜き取ろうとする輩はどこにでもいるからね。
学会本部・・・というか予算を管理している財務省の方が、そこら辺は十分に気を付けて管理しているから、換金性の高い最新式小型魔具の入手はほぼあり得ないわね」
シェイラが肩を竦めた。
ふむ。
まあ、シェイラが俺の贈った魔具を売り払うとは思わんが、どちらにせよ書類のやり取りは俺とはないし、王都側の学会本部に転移箱が無いんだったらシェイラも使えないだろうから、試作品を提供してもしょうがないかな?
ラブレターを書くのは俺には難しいから、それを必要とする転移箱も持ち込みたくない・・・。
【後書き】
ラブレターなんて生まれてから一度も書いた事のないウィル君ですw
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる