シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

854 星暦557年 青の月 17日 魔術回路の素材(4)

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「軍も転移箱を欲しがるの?」
シャルロがちょっと意外そうに聞き返してきた。

「まあ、実際に戦争が起きたら一々署名が入った命令書なんて待っていられないだろうけど、通常の状態だと基本的に正式命令があってから動くみたいだから、書類を早く送れる手段はありがたられるんじゃないか?
国外だったら転移門を使うだろうが、国内の時はケチってなのか機密保持の為なのか知らんが、態々空滑機《グライダー》をほぼ毎日飛ばして報告書やら提案に対する承認書類のやり取りをしていたぞ」

まあ、俺の関与していた呪具探しや盗聴器探しとかは必ずしも全部書類で承認されてから動いていた訳では無かったが、出先だというのにファルナ少佐(だっけ?)は呆れる程多種多様な書類を作成し、受け取って埋もれていた。

「・・・考えてみたら、映像用の魔具と組み合わせて、転移箱で送った書類の写しも同時に作れるようにしたら凄く喜ばれるかも?」
予算が関係する書類なんかは提出用と保存用で2部態々書き出して署名入りを一部返してもらってファイルしていた。

そんな紙なんぞ王都の事務担当にでも任せておけば良いのにと言ったら、脳筋な軍人の数に対する事務に向いた人間の数が少なすぎるため、王都の事務担当は恒常的に仕事に埋もれて残業しまくりなせいで、自分でやる方が絶対に早いのだと言われた。

どうも、ファルナの少佐への昇進の理由の一つはそう言う遅れがちな書類作業を自分で遅延なく仕上げる事でもあったらしい。
少なくとも、本人はそう言っていた。

まあ、確かに何を上手くやったから昇進したのかなんて、戦場で武勲をたてたとか言うんじゃない限り普段はそこまではっきりしないよな。
そう考えると、脳筋が多いという話の軍のなかで女性であるファルナが昇進したのって確かに色々な作業がちゃんと所定の決まりに沿って行われている上に早いって言うのも重要な要素だったのかも知れない。

「ふむ。
確かに、私が両親やシェフィート商会とやり取りするのに写しは無くても特に問題はないが、他の商会や政府内のやり取りだったら写しは常に必要だろうな。
あの転移箱は元々の構想はまだしも、実際の開発は他がやったからどういう魔術回路を使っているのか興味があるし、ちょっと一つ解体して他の機能も付け加えた改造版を造るのも良いかも」
アレクがにやりと笑いながら合意した。

「でも新機能を付けちゃったら、どの程度既存のよりも良くなったか分からなくない?」
シャルロがちょっと首を傾げながら指摘する。

「新しい素材で作った後に、前の銅線で造った魔術回路の試作品も作ってこんなに効率が良くなった新作品なんですよ~って言えば良いんじゃないか?
もしも銅線で動かない様だったらそれはそれで新素材が凄いって証明にもなるし」
まあ、多少効率が下がる程度で魔具が起動しなくなるなんてことは無いから、そこまで劇的な違いを見せつけられるとは思わないが。

「考えてみたら、出先で書類を送るのだったら必ずしも写しをその場で印刷する必要はないな。
転移箱で送る書類を映像用魔具で全部記録して、それを既存の映像用魔具の印刷用の部品に嵌め込めばそのまま印刷できるようにしても良いんじゃないか?
軍部や商会や役所だったらそう言う出力用魔具はどうせ既にあるだろうし」
アレクが提案する。

「記録した映像を確認する機能があれば、印刷は後でもいいかな?
まあ、出先で誰かに見せなきゃいけない時もあるかもだから、別売りで簡単な印刷が出来る魔具も出しておいても良いかもだが」
ある意味、どこにも送らなくても写しを作るという機能だけでも使える様にしたら便利かも?
どの程度そこら辺の必要があるかは微妙に不明だが。

下手になんでもできるようにすると映像用魔具関連の売り上げが落ちるかも知れないし。

つうか、送った書類の詳細が誰にでも後から読めてしまうとなると困るから、そこら辺の機密保護の機能も必要になってちょっと面倒かも?

「ちなみに、転移箱ってどんな感じに使われているのかな?
比較的誰でも触れる場所に置いてあるのか、それとも責任者だけが使える場所に鍵をかけてしまってあるのか?
送りつけちゃえば何を伝えたか分からない現在の仕様から、魔具に触れる人間なら誰でも中身が分かっちまう仕組みに変わると問題が起きるかも?」

商会とかだったらそこら辺をしっかり管理しそうだが、脳筋な軍人が使っていたらうっかり軍事機密までぼろぼろに漏れる可能性もありそうで、ちょっと怖いな。

・・・写しは止めた方が良いか??



【後書き】
またちょっと横道にそれそうw

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