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卒業後
850 星暦557年 紺の月 28日 久しぶりの訪問(10)
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「ちなみに魔力感応素材特許の話は何か注意した方がいい点ってありますか?」
アレクがお茶に手を伸ばしながら学院長に尋ねた。
アンディに軽く聞いたところだと、結局魔術回路の改善についても素材特許の一環として扱うらしい。
魔術回路その物の改善としてやるには潜在的な応用範囲が広すぎるので『素材』と『魔術回路』で別建て計算するらしい。
だから魔術回路用に良い素材を見つけたら、古い特許切れした魔術回路に使った場合でも新たに素材特許料が僅かばかりながらも入るとのことだった。
「新しい制度だからな。
最初に役に立つって印象付けた方がいいから、良い魔術回路用の素材を見つけたら古くても広く使われている出力の大きな魔術回路を使っている魔具に使うのを例示サンプルとして提出すると良いかも知れない。
うっかり手近な例を提示して『ごく僅かにしか改善しない』という誤解が広まると、魔術院の職員とかが手続きを面倒臭がって登録に水を差すようなことを言う可能性がある」
ちょっと微妙な表情で学院長が言った。
誰か、魔術学院の中でこの素材特許の新制度に反対する勢力がいるのだろうか?
まあ、普通の素材特許だったら商業ギルドが扱っているからな。
魔力感応素材に関する特許だって商業ギルドが扱いたいと思っていても不思議は無い。
既得権益の一部だと見做している可能性が高いし、魔具の製造や販売にもっと深く食い込める機会と狙っているかも知れない。
そう考えると、魔術院の職員に接待してそれとなく扱いを悪くするように話を持ち掛けても不思議は無いか。
数年冷遇させた後に『利用者が少ないようだし、事務手続きを効率化する為に』とでも言って普通の素材特許と一緒に商業ギルドで扱ってはどうかと提案する計画があるのかも?
本来ならば魔術院の職員と商業ギルドってそれ程仲は良くない筈なんだが・・・ある意味、魔術院の中でトップに昇進する可能性が低い人間だったら自分の懐さえ潤うなら組織間の利害関係なんてどうでもいいんだろう。
バレて魔術院を追い出された後に商業ギルドが拾ってくれるなんて思っているとしたらアホだが。
「なるほど。
何か良いのが無いか、探してみますね!
そう言えば、肩凝り用魔具はどうでしょう?
そろそろ試用が終わっているなら感想を聞いて回収しようかと思うんですが」
シャルロがにこやかに付け加えた。
え??
あの試作品、回収するつもりなのか???
そう言えば、シャルロは今回の試作品は自分の親戚の家令とかにしか配っていなかったっけ?
お上品な家令だったらあっさり試作品を返すかもしれないが、あれを一般事務員から取り上げようとなんてするのは危険だぞ?
「中々好評なようだぞ?
・・・ちなみに、試作品は回収する予定なのか?」
ちょっと顔を引き攣らせながら学院長が答えた。
「改善点があるなら回収して、改造したのを持って来ようかと思ったんですけど?」
シャルロが首を軽く傾げながら応じる。
「何か危険な問題点があるって言うんじゃない限り、現状の試作品はそのまま使ってもらって、改善点があって改造版を造ることになったらそっちの試作品をまた持って来れば良いんじゃないか?
改善してくれって言って変えて貰ったら実は思っていたほど良くなかったなんてこともあるだろうから、改造前のも比較対象としてあった方がいいだろ」
別に、再利用しなければいけない程高い素材を使っている訳でもないのだし。
試作品を回収して事務の女性陣に怨まれるのは嫌だぞ。
「確かに、改造前と後の物を使ってもらって、製造費が変わるならそれだけの価値があるかを聞いてみるのも重要だな」
シェフィート商会の事務員から試作品を回収する大変さを考えたのか、アレクも素早く俺の提案に賛成した。
「そう?
そうかもね。
じゃあ、実家の方の試作品も回収を頼んでいたけど、感想と改造点の要請だけ聞いておいて、そのまま次の試作品が来るまで使っていてって伝えておくね」
シャルロがあっさり頷いた。
うわ~。
既に家令の方に回収命令を出してたのかぁ。
シャルロの実家の王都別邸の家令ってそれなりに年のいった爺さんだったよな?
色々と部下のメイドとかから文句を言われて大変な目に合っていないと良いんだが。
まあ、爺さんだったらメイドをあしらうのも上手いかな?
却って誰か一族の屋敷に若い家令とかが居たら痛い目に合っているかも。
・・・ある意味、どこの屋敷の家令が泣きついてきたのか、シャルロに確認させたら面白いかも。
【後書き】
今話は島とほぼ関係ないですが全話の訪問の続きなのでサブタイトルはそのままです
アレクがお茶に手を伸ばしながら学院長に尋ねた。
アンディに軽く聞いたところだと、結局魔術回路の改善についても素材特許の一環として扱うらしい。
魔術回路その物の改善としてやるには潜在的な応用範囲が広すぎるので『素材』と『魔術回路』で別建て計算するらしい。
だから魔術回路用に良い素材を見つけたら、古い特許切れした魔術回路に使った場合でも新たに素材特許料が僅かばかりながらも入るとのことだった。
「新しい制度だからな。
最初に役に立つって印象付けた方がいいから、良い魔術回路用の素材を見つけたら古くても広く使われている出力の大きな魔術回路を使っている魔具に使うのを例示サンプルとして提出すると良いかも知れない。
うっかり手近な例を提示して『ごく僅かにしか改善しない』という誤解が広まると、魔術院の職員とかが手続きを面倒臭がって登録に水を差すようなことを言う可能性がある」
ちょっと微妙な表情で学院長が言った。
誰か、魔術学院の中でこの素材特許の新制度に反対する勢力がいるのだろうか?
まあ、普通の素材特許だったら商業ギルドが扱っているからな。
魔力感応素材に関する特許だって商業ギルドが扱いたいと思っていても不思議は無い。
既得権益の一部だと見做している可能性が高いし、魔具の製造や販売にもっと深く食い込める機会と狙っているかも知れない。
そう考えると、魔術院の職員に接待してそれとなく扱いを悪くするように話を持ち掛けても不思議は無いか。
数年冷遇させた後に『利用者が少ないようだし、事務手続きを効率化する為に』とでも言って普通の素材特許と一緒に商業ギルドで扱ってはどうかと提案する計画があるのかも?
本来ならば魔術院の職員と商業ギルドってそれ程仲は良くない筈なんだが・・・ある意味、魔術院の中でトップに昇進する可能性が低い人間だったら自分の懐さえ潤うなら組織間の利害関係なんてどうでもいいんだろう。
バレて魔術院を追い出された後に商業ギルドが拾ってくれるなんて思っているとしたらアホだが。
「なるほど。
何か良いのが無いか、探してみますね!
そう言えば、肩凝り用魔具はどうでしょう?
そろそろ試用が終わっているなら感想を聞いて回収しようかと思うんですが」
シャルロがにこやかに付け加えた。
え??
あの試作品、回収するつもりなのか???
そう言えば、シャルロは今回の試作品は自分の親戚の家令とかにしか配っていなかったっけ?
お上品な家令だったらあっさり試作品を返すかもしれないが、あれを一般事務員から取り上げようとなんてするのは危険だぞ?
「中々好評なようだぞ?
・・・ちなみに、試作品は回収する予定なのか?」
ちょっと顔を引き攣らせながら学院長が答えた。
「改善点があるなら回収して、改造したのを持って来ようかと思ったんですけど?」
シャルロが首を軽く傾げながら応じる。
「何か危険な問題点があるって言うんじゃない限り、現状の試作品はそのまま使ってもらって、改善点があって改造版を造ることになったらそっちの試作品をまた持って来れば良いんじゃないか?
改善してくれって言って変えて貰ったら実は思っていたほど良くなかったなんてこともあるだろうから、改造前のも比較対象としてあった方がいいだろ」
別に、再利用しなければいけない程高い素材を使っている訳でもないのだし。
試作品を回収して事務の女性陣に怨まれるのは嫌だぞ。
「確かに、改造前と後の物を使ってもらって、製造費が変わるならそれだけの価値があるかを聞いてみるのも重要だな」
シェフィート商会の事務員から試作品を回収する大変さを考えたのか、アレクも素早く俺の提案に賛成した。
「そう?
そうかもね。
じゃあ、実家の方の試作品も回収を頼んでいたけど、感想と改造点の要請だけ聞いておいて、そのまま次の試作品が来るまで使っていてって伝えておくね」
シャルロがあっさり頷いた。
うわ~。
既に家令の方に回収命令を出してたのかぁ。
シャルロの実家の王都別邸の家令ってそれなりに年のいった爺さんだったよな?
色々と部下のメイドとかから文句を言われて大変な目に合っていないと良いんだが。
まあ、爺さんだったらメイドをあしらうのも上手いかな?
却って誰か一族の屋敷に若い家令とかが居たら痛い目に合っているかも。
・・・ある意味、どこの屋敷の家令が泣きついてきたのか、シャルロに確認させたら面白いかも。
【後書き】
今話は島とほぼ関係ないですが全話の訪問の続きなのでサブタイトルはそのままです
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