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卒業後
846 星暦557年 紺の月 22日 久しぶりの訪問(6)
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「取り敢えず、上陸する船員はナイフ以上の長さの武器持ち込みは禁止ってことにして、港へ直接接岸できるのは海軍と決まった商会の船だけで、船は全部入港時に先に港の人間が乗り込んで確認を取ってからって形にしたら?
接岸させない船はあっち等辺で小舟を繋げた上に渡した桟橋経由で積み荷や人間を動かすことにして、何かがあったらその桟橋を形成している小舟に火を付けちゃえばどう?」
シャルロが窓から港を見ながら提案した。
ふん?
船を接岸させないことで、一気に船員が港に乱入しにくい様にするのか?
まあ、発火用の魔具だったら造るのはそれ程難しくないし、なんだったら小舟の方に発火や燃焼を早める油なり乾いた木片なりをさり気なく入れておけば直ぐに桟橋を焼き捨てられるな。
「良さそうだが、それは相手がこちらの言う事に従ったらだろう?
勝手にこちらの制止を無視して接岸されたらどうする?」
ジャレットが聞き返す。
確かに海賊がお行儀良く接岸場所の決まりを従うとは思えないな。
「・・・港の接岸部分に板の足場でも組んでおいて、普段は接岸の役に立つ便利な足場だけど、実は緊急時には爆破したら接岸してる船を破壊したり、接岸の邪魔をしたりする仕組みにしておくとか?」
少し考えてシャルロが応じる。
桟橋用の小舟は適当に中古を買ってきて修理するにしても、かなりの量の建材が必要になりそうだ。
この島だとあまり建材が無いからなぁ。
水辺だと木材は腐りやすいが、船で石材を運び込むのは高くつくし、何よりも緊急時に爆破するのも難しいだろう。
・・・もしかしたら、アスカとこの島にいる土竜《ジャイアント・モール》に手伝ってもらえば必要な石材を創り出すのも可能かな?
「爆破かぁ・・・」
溜め息を吐きながらジャレットが呟く。
まあ、平和なパストン島に爆破準備なんて違和感ありまくりだよな。
「攻め込まれた時に火のついた油壺を空滑機《グライダー》改で上から投げ落とすのだって十分物騒だし、そっちの方が人目に付く場所で色々と練習する必要があるから、こっそり爆破用の素材を仕込む方が表面上は平和なのでは?」
アレクが指摘する。
なんともこう、面倒だな。
戦時中みたいに寄ってくる船を全部足止め出来たら良いのに。
「ついでに、入港前に全ての船を前もって疫病持ちがいないかを確認する為にざっと検査するって事にしたらどうだ?
ヤバい連中って殺気立っているから検査に乗り込むだけで何となくわかるんじゃないか?」
元々、東大陸からの船が多い場所なのだ。
アファル王国の住民が知らない変な疫病を持ち込まれる危険は常にある。
「滅茶苦茶時間がかかるぞ?」
ジャレットが顔をしかめた。
「下手に疫病を持ち込まれて島全体で本格的な検疫隔離とかをする羽目になったらもっと時間がかかるし、海賊に街を焼かれたら再生に掛かる時間は更に長くなるぞ?
失われた命は戻ってこないし。
毎回4~5人程度乗り込ませてささっと中の人間の顔色を確認させる程度だったらそこまで時間はかからないだろ?」
幾らそれなりに繁盛するようになったとはいえ、まだ船は多くて1日に数隻入ってくる程度なのだ。
ちょっと入港に時間がかかっても行列になる程ではないだろう。
「・・・まあ、検疫はやった方がいいかも知れないという話は前から出ていたからな。
基本的に接岸するのではなく桟橋経由にして貰えば一気に乗り込まれるのを防ぎやすいか。
後はその広告用の気球っていうので警戒させる体制を構築したらなんとかなるかな?
予算はそれなりにあるから、早いうちに手を打った方がいいし」
ジャレットがため息を吐きながらお茶のお代わりを注いだ。
「予算をどこかから発掘しなくてはっていう悩みはよく聞くが、既にあるのか?」
アレクが目を丸くしながら聞き返した。
「どうもアレグ海軍基地の方からも怪しい船が増えたって報告が上がっているようでね。
今は軍艦を出来るだけ継続してこっちに回して常に海軍の姿が見える様にしてくれているんだが、パトロールに回す船を増やしたいから予算を出すので自衛手段をもう少し何とかしてくれって言われているんだ」
ジャレットが教えてくれた。
なる程。
ここが丸裸状態だと海軍が警備の為に常駐に近い形で近くを巡回しなくちゃならないから、船が拘束されて海軍的には嬉しくないのか。
自衛手段を多少整えたところで大丈夫なのかは微妙なところだが。
何かもっと工夫出来るかなぁ?
次に遊びに来たらジャレットやキャリーナが海賊に殺されてたなんて聞くのは嫌だぞ。
【後書き】
命が掛かると『やってみて駄目だったら改善』ともいえませんしねぇ。
接岸させない船はあっち等辺で小舟を繋げた上に渡した桟橋経由で積み荷や人間を動かすことにして、何かがあったらその桟橋を形成している小舟に火を付けちゃえばどう?」
シャルロが窓から港を見ながら提案した。
ふん?
船を接岸させないことで、一気に船員が港に乱入しにくい様にするのか?
まあ、発火用の魔具だったら造るのはそれ程難しくないし、なんだったら小舟の方に発火や燃焼を早める油なり乾いた木片なりをさり気なく入れておけば直ぐに桟橋を焼き捨てられるな。
「良さそうだが、それは相手がこちらの言う事に従ったらだろう?
勝手にこちらの制止を無視して接岸されたらどうする?」
ジャレットが聞き返す。
確かに海賊がお行儀良く接岸場所の決まりを従うとは思えないな。
「・・・港の接岸部分に板の足場でも組んでおいて、普段は接岸の役に立つ便利な足場だけど、実は緊急時には爆破したら接岸してる船を破壊したり、接岸の邪魔をしたりする仕組みにしておくとか?」
少し考えてシャルロが応じる。
桟橋用の小舟は適当に中古を買ってきて修理するにしても、かなりの量の建材が必要になりそうだ。
この島だとあまり建材が無いからなぁ。
水辺だと木材は腐りやすいが、船で石材を運び込むのは高くつくし、何よりも緊急時に爆破するのも難しいだろう。
・・・もしかしたら、アスカとこの島にいる土竜《ジャイアント・モール》に手伝ってもらえば必要な石材を創り出すのも可能かな?
「爆破かぁ・・・」
溜め息を吐きながらジャレットが呟く。
まあ、平和なパストン島に爆破準備なんて違和感ありまくりだよな。
「攻め込まれた時に火のついた油壺を空滑機《グライダー》改で上から投げ落とすのだって十分物騒だし、そっちの方が人目に付く場所で色々と練習する必要があるから、こっそり爆破用の素材を仕込む方が表面上は平和なのでは?」
アレクが指摘する。
なんともこう、面倒だな。
戦時中みたいに寄ってくる船を全部足止め出来たら良いのに。
「ついでに、入港前に全ての船を前もって疫病持ちがいないかを確認する為にざっと検査するって事にしたらどうだ?
ヤバい連中って殺気立っているから検査に乗り込むだけで何となくわかるんじゃないか?」
元々、東大陸からの船が多い場所なのだ。
アファル王国の住民が知らない変な疫病を持ち込まれる危険は常にある。
「滅茶苦茶時間がかかるぞ?」
ジャレットが顔をしかめた。
「下手に疫病を持ち込まれて島全体で本格的な検疫隔離とかをする羽目になったらもっと時間がかかるし、海賊に街を焼かれたら再生に掛かる時間は更に長くなるぞ?
失われた命は戻ってこないし。
毎回4~5人程度乗り込ませてささっと中の人間の顔色を確認させる程度だったらそこまで時間はかからないだろ?」
幾らそれなりに繁盛するようになったとはいえ、まだ船は多くて1日に数隻入ってくる程度なのだ。
ちょっと入港に時間がかかっても行列になる程ではないだろう。
「・・・まあ、検疫はやった方がいいかも知れないという話は前から出ていたからな。
基本的に接岸するのではなく桟橋経由にして貰えば一気に乗り込まれるのを防ぎやすいか。
後はその広告用の気球っていうので警戒させる体制を構築したらなんとかなるかな?
予算はそれなりにあるから、早いうちに手を打った方がいいし」
ジャレットがため息を吐きながらお茶のお代わりを注いだ。
「予算をどこかから発掘しなくてはっていう悩みはよく聞くが、既にあるのか?」
アレクが目を丸くしながら聞き返した。
「どうもアレグ海軍基地の方からも怪しい船が増えたって報告が上がっているようでね。
今は軍艦を出来るだけ継続してこっちに回して常に海軍の姿が見える様にしてくれているんだが、パトロールに回す船を増やしたいから予算を出すので自衛手段をもう少し何とかしてくれって言われているんだ」
ジャレットが教えてくれた。
なる程。
ここが丸裸状態だと海軍が警備の為に常駐に近い形で近くを巡回しなくちゃならないから、船が拘束されて海軍的には嬉しくないのか。
自衛手段を多少整えたところで大丈夫なのかは微妙なところだが。
何かもっと工夫出来るかなぁ?
次に遊びに来たらジャレットやキャリーナが海賊に殺されてたなんて聞くのは嫌だぞ。
【後書き】
命が掛かると『やってみて駄目だったら改善』ともいえませんしねぇ。
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