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卒業後
845 星暦557年 紺の月 22日 久しぶりの訪問(5)
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取り敢えず海賊や私掠船モドキからの危険の話は皆と相談しようということで後回しにして、空滑機《グライダー》改の使い方をジャレットを含めた空滑機《グライダー》に慣れた5人程に教えたところ、意外とあっさりとコツを掴んでくれた。
と言うことで午後は適当に島の上や周辺を飛ばして何か問題点や疑問があったら話し合おうということにして解散し、俺はシャルロとアレクを捕まえてジャレットお勧めの食事処の個室で昼食を食べながら朝聞いた話を話題に出した。
「島の防衛??」
食後のお茶をのんびりと楽しもうとしていたシャルロが目を丸くして手を止める。
「おう。
元々、開拓し始めの補給港は襲ったら露骨に本国への敵対行為なのに大して得る物が無いから余程血に飢えた馬鹿以外はやらないんだが、最近はここも大分と栄えてきたからな。
取引の一環として街に流れ込む資金もそれなりに大きくなったから襲撃したら得られる富が大きくなったし、アファル王国に対する嫌がらせとしての規模も大きくなった。海賊にとっても、海賊の振りをした私掠船モドキにとっても狙う価値が出て来たんだ」
ジャレットがため息を吐きながら俺の言葉に情報を付け足した。
「・・・資金に関しては、通信機と転移箱を使って王都の商業ギルドに口座を開いて資金のやり取りを口座間での即時小切手決済の形にしたら、パストン島に置いてある物理的に持ち出せる資金額は小さく出来るのでは?」
アレクが少し考えて提案した。
そう言えば、商業ギルドに口座があるとそこで資金を動かす形にできるんだっけ?
まあ、俺たちの場合は商業ギルドにある魔術院の総合口座経由で魔術回路特許料用の魔術院にある口座に振り込んでもらっているが。
特許使用料が無い製品に関するシェフィート商会からの商品開発料っぽい報酬は態々定期的に魔術院の方に持ち込んでくれているらしい。
なんでそこまで?と聞いたら、商業ギルドの幹部に垂れ流しになる情報は出来るだけ少ないに越したことは無いんだそうだ。
イマイチ分らんが、商会同士の暗躍に関係するのかね?
それはともかく。
「だが、遠く離れた商業ギルドの口座に多額の資金を預けておくことになったら誰かに横領されたりしないか?」
そうしょっちゅうは確認に行けないのだ。
横領しまくりな気がするが。
「いや、どうせパストン島の資金は国から委託された代官代行として俺が動かしているが、定期的に監査を受けているしもとより国の金なんだ。
本国での決済にすると船が沈没した際に資金回収が出来ないから補給地っていうのは現金支払いが基本だったんだが、考えてみたら今だったら通信機と転移箱でちゃんと正式な書類をやり取りしてその場で決済できるから船が沈んでもとりっぱぐれる心配はないよな。
だとしたら本国での口座決済は商会側にとっても歓迎されそうだ」
ジャレットがにやりと笑いながら言った。
まあ、沈むかもしれない船に置いておく現金は出来るだけ少なくしておく方が商会側にとっても良いよな。
しかも売りに来た物に対して受け取る金が口座決済になるなら困るかもだが、補給港だったら多少小麦粉とかを売り込んでいるにしても船側が純額では支払う形になる筈。
「とは言え、王都の商業ギルドに口座があるそれなりに信用が出来る商会だけになるが。
それに、現金取引が減ると言ってもゼロにはならないから襲撃する価値は残る」
溜め息をつきながらジャレットが付け加えた。
「だが襲撃時に空滑機《グライダー》改で上から攻撃っていうのは微妙だと思うぞ。
港街以外に上陸してそっちからの同時襲撃だって考えられるんだから、緊急で人を動かすのに使う必要が出てくる可能性も高いし」
最初の一回は馬鹿正直に船が港に突っ込んでくるだけかも知れないが、それを追い払われたら次は別地点に人員を降ろして街の裏からの襲撃と合わせるぐらいの事は考えるだろう。
「ええ~?
空滑機《グライダー》改で上から攻撃って・・・火のついた油入りの壺でも落とすの??」
シャルロが顔をしかめながら尋ねる。
「まあ、そこら辺が一番現実的だろうな。
船に穴が開くほど重い岩を落とすのは難しいだろうから」
ジャレットが肩を竦めながら言った。
「・・・ちなみに、広告用の気球の色って空に合わせて見えにくくすることも出来るんだが。
北の方の山の上まで見通せるだけの高さに目立たない様に気球を上げておいて、見張りをさせるというのはどうだ?」
アレクが提案した。
「変な場所から上陸しようとしている怪しい奴を見つけるのには役に立つから、港以外を使って密輸とかしようとしている奴らには良いだろうが、港へ堂々と近づく船が襲撃する意図があるかを判断するのは難しいぞ?」
というか、それは普通に港側で空滑機《グライダー》改で上から攻撃を考えていても問題だよな。
襲撃してきたと分かった時点で既に港の中に居たら油なんぞ投げつけられないし。
ガルカ王国とザルガ共和国の戦争中の時みたいに準戦時体制で入ってくる見知らぬ船全てをまず足止めして調べるなんてことが出来ない状況だと、中々難しいな。
他の補給港とか離島とかってどうやって拠点防衛しているんだろ?
【後書き】
マジで港町の防衛って寄ってくる船が危険か否か、どうやって見分けるんでしょうね?
旗を掲げて立って偽物の可能性があるでしょうに。
と言うことで午後は適当に島の上や周辺を飛ばして何か問題点や疑問があったら話し合おうということにして解散し、俺はシャルロとアレクを捕まえてジャレットお勧めの食事処の個室で昼食を食べながら朝聞いた話を話題に出した。
「島の防衛??」
食後のお茶をのんびりと楽しもうとしていたシャルロが目を丸くして手を止める。
「おう。
元々、開拓し始めの補給港は襲ったら露骨に本国への敵対行為なのに大して得る物が無いから余程血に飢えた馬鹿以外はやらないんだが、最近はここも大分と栄えてきたからな。
取引の一環として街に流れ込む資金もそれなりに大きくなったから襲撃したら得られる富が大きくなったし、アファル王国に対する嫌がらせとしての規模も大きくなった。海賊にとっても、海賊の振りをした私掠船モドキにとっても狙う価値が出て来たんだ」
ジャレットがため息を吐きながら俺の言葉に情報を付け足した。
「・・・資金に関しては、通信機と転移箱を使って王都の商業ギルドに口座を開いて資金のやり取りを口座間での即時小切手決済の形にしたら、パストン島に置いてある物理的に持ち出せる資金額は小さく出来るのでは?」
アレクが少し考えて提案した。
そう言えば、商業ギルドに口座があるとそこで資金を動かす形にできるんだっけ?
まあ、俺たちの場合は商業ギルドにある魔術院の総合口座経由で魔術回路特許料用の魔術院にある口座に振り込んでもらっているが。
特許使用料が無い製品に関するシェフィート商会からの商品開発料っぽい報酬は態々定期的に魔術院の方に持ち込んでくれているらしい。
なんでそこまで?と聞いたら、商業ギルドの幹部に垂れ流しになる情報は出来るだけ少ないに越したことは無いんだそうだ。
イマイチ分らんが、商会同士の暗躍に関係するのかね?
それはともかく。
「だが、遠く離れた商業ギルドの口座に多額の資金を預けておくことになったら誰かに横領されたりしないか?」
そうしょっちゅうは確認に行けないのだ。
横領しまくりな気がするが。
「いや、どうせパストン島の資金は国から委託された代官代行として俺が動かしているが、定期的に監査を受けているしもとより国の金なんだ。
本国での決済にすると船が沈没した際に資金回収が出来ないから補給地っていうのは現金支払いが基本だったんだが、考えてみたら今だったら通信機と転移箱でちゃんと正式な書類をやり取りしてその場で決済できるから船が沈んでもとりっぱぐれる心配はないよな。
だとしたら本国での口座決済は商会側にとっても歓迎されそうだ」
ジャレットがにやりと笑いながら言った。
まあ、沈むかもしれない船に置いておく現金は出来るだけ少なくしておく方が商会側にとっても良いよな。
しかも売りに来た物に対して受け取る金が口座決済になるなら困るかもだが、補給港だったら多少小麦粉とかを売り込んでいるにしても船側が純額では支払う形になる筈。
「とは言え、王都の商業ギルドに口座があるそれなりに信用が出来る商会だけになるが。
それに、現金取引が減ると言ってもゼロにはならないから襲撃する価値は残る」
溜め息をつきながらジャレットが付け加えた。
「だが襲撃時に空滑機《グライダー》改で上から攻撃っていうのは微妙だと思うぞ。
港街以外に上陸してそっちからの同時襲撃だって考えられるんだから、緊急で人を動かすのに使う必要が出てくる可能性も高いし」
最初の一回は馬鹿正直に船が港に突っ込んでくるだけかも知れないが、それを追い払われたら次は別地点に人員を降ろして街の裏からの襲撃と合わせるぐらいの事は考えるだろう。
「ええ~?
空滑機《グライダー》改で上から攻撃って・・・火のついた油入りの壺でも落とすの??」
シャルロが顔をしかめながら尋ねる。
「まあ、そこら辺が一番現実的だろうな。
船に穴が開くほど重い岩を落とすのは難しいだろうから」
ジャレットが肩を竦めながら言った。
「・・・ちなみに、広告用の気球の色って空に合わせて見えにくくすることも出来るんだが。
北の方の山の上まで見通せるだけの高さに目立たない様に気球を上げておいて、見張りをさせるというのはどうだ?」
アレクが提案した。
「変な場所から上陸しようとしている怪しい奴を見つけるのには役に立つから、港以外を使って密輸とかしようとしている奴らには良いだろうが、港へ堂々と近づく船が襲撃する意図があるかを判断するのは難しいぞ?」
というか、それは普通に港側で空滑機《グライダー》改で上から攻撃を考えていても問題だよな。
襲撃してきたと分かった時点で既に港の中に居たら油なんぞ投げつけられないし。
ガルカ王国とザルガ共和国の戦争中の時みたいに準戦時体制で入ってくる見知らぬ船全てをまず足止めして調べるなんてことが出来ない状況だと、中々難しいな。
他の補給港とか離島とかってどうやって拠点防衛しているんだろ?
【後書き】
マジで港町の防衛って寄ってくる船が危険か否か、どうやって見分けるんでしょうね?
旗を掲げて立って偽物の可能性があるでしょうに。
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