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卒業後
838 星暦557年 紺の月 10日 肩凝り対策(29)
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「良いわぁ・・・」
試作品(急遽作った温スリッパと温ミトン付)を改善点や幾らぐらい出しても構わないか等を参考までに教えてくれとお願いしながら魔術学園の事務所やシェフィート商会の本部事務所に配り、昨日はほぼ終わった。
本体の試作品は最初から配る数は考えていたので良かったが、後から追加した緑熱《ジェイパル》石を使ったふにゃ暖かい温スリッパと温ミトンはシェイラの分を確保するのにかなり苦労した。
それを全部渡してシェイラに使わせたら、すっかり本人はリラックスしてこのまま二度寝しそうな雰囲気だ。
まだ朝食を食べ終わったばかりの時間なんだけどな。
昨日は忙しくて最後の温スリッパと温ミトンが出来上がったのが夜遅かったので、今朝の朝一で来たんだが・・・まあ、俺も疲れているからちょっと朝寝しても良いけど。
「このふにゃ~と柔らかくて暖かいの、本当に良いわねぇ・・・」
魔具の再延長ボタンを押しながらシェイラが言ってきた。
「前回も持ってきた、魔力を通すと液化して暖まる緑熱《ジェイパル》石を使っているんだが、色々と工夫を重ねて使い勝手を良くしたんだ」
これに関してはまだ魔力感応素材用特許制度の整備が完全には終わっていないので詳しくは教えられないが。
ちなみに、新しい制度は魔力感応素材用特許制度と呼ばれ、魔力を通すと反応する素材を使い勝手良くする発見に対する使用料と言うことで、商業ギルドで扱っている普通の素材用特許とは別に魔術院で魔術回路の特許と一緒に管理することになりそうだ。
シャルロが心配していたよりもかなりあっさりと話が纏まりそうで、シャルロは驚いていたが・・・アレク曰く、『学院長は狸だから』とのことで、どうやら学院長が上手く話を通してくれたらしい。
まあ、魔具関連の素材だったらどうせ魔術回路の特許料が生じることが多いのだ。
魔術院が全部カバーする方が一部だけ商業ギルドが関与するよりも話が単純で良い。
俺たちも商業ギルドに口座を開くのは面倒だし。
あっちの方が色々と情報漏洩のリスクが高いらしいしな。
情報漏洩に対する危機意識は魔術院の方がガバガバらしいが、何分ちょっと怪しかったら魔術院管轄内なら気軽に嘘をついているかを確認する精神系の魔術を使って調査が出来るので、盗んで売ろうと考える人間の数が少ない。
これが商業ギルドだったら外部である魔術院に精神系の魔術を依頼することにかなりの抵抗を感じる人間が多く、面倒な内部の根回しが必要になるのでそれをやっている間に証拠隠滅されてしまったり、証人や実行犯が姿を消したりするらしい。
別に殺す訳では無くても、遠方の支店に別名で移動させたり、他国へ出すなどして黒幕がさっさと自分に繋がる人間を隠してしまうのだ。
お蔭で商業ギルドの調査では実行犯は見つかっても黒幕まで繋がることはほぼ無いとアレクが言っていた。
まあ、世の中そんなもんだよな。
「このミトンとスリッパも良いわねぇ。
ミトンはちょっと分厚過ぎて何か作業をする際には向かないけど・・・これを指無し手袋にして、手の甲だけでも温められないかしら?」
シェイラが顔を上げずに提案してきた。
指無し手袋ねぇ。
盗賊《シーフ》として現役だったころは、手が冷えて凍えたら困るものの指先の感覚がなくなるのも問題なので、良く世話になっていたが・・・遺跡発掘作業でも指先の感覚が重要だから指無し手袋を使っているのか。
それに温める機能があったら嬉しいのは分かるが・・・そんなのを買う予算があるのかね?
まあ、個人で買うんだったらちょっと高い贅沢って感じで何とかなるかもだが。
「小さな魔石を手首の近くにでもはめ込む形で可能かな?
ただ、自動で切れる機能まで組み込んだら手袋サイズに収めるのが大変だから、ずっと温め続けても低温火傷しない様にかなり温度を温めにすることになると思うが」
というか、この肩凝り用魔具も長時間使いすぎたらどうなるか、ちょっと心配かもだな。
嵌めたまま寝ても4ミルで止まるが、本人がずっと再延長ボタンを押し続けても大丈夫なんだろうか。
低温火傷しそうになったら、流石にヒリヒリしてきて本人が気づくよな??
最初から『転寝モード』みたいな感じで少し温めの温度と緩めの刺激で1刻程度続く設定も作っておくか?
事務所で共有しているんだったらそこまで長時間一人で独占できるようにしない方が良いんじゃないかと言う気もするが、個人で買うならちょっとした昼寝用に欲しいかも知れない。
微妙なとこだな・・・。
【後書き】
寒い朝になんかに暖かいアイマスクとスリッパ・ミトン付きマッサージ器なんて試させたら、只管延長ボタンを押しまくるのは想定すべきだったw
試作品(急遽作った温スリッパと温ミトン付)を改善点や幾らぐらい出しても構わないか等を参考までに教えてくれとお願いしながら魔術学園の事務所やシェフィート商会の本部事務所に配り、昨日はほぼ終わった。
本体の試作品は最初から配る数は考えていたので良かったが、後から追加した緑熱《ジェイパル》石を使ったふにゃ暖かい温スリッパと温ミトンはシェイラの分を確保するのにかなり苦労した。
それを全部渡してシェイラに使わせたら、すっかり本人はリラックスしてこのまま二度寝しそうな雰囲気だ。
まだ朝食を食べ終わったばかりの時間なんだけどな。
昨日は忙しくて最後の温スリッパと温ミトンが出来上がったのが夜遅かったので、今朝の朝一で来たんだが・・・まあ、俺も疲れているからちょっと朝寝しても良いけど。
「このふにゃ~と柔らかくて暖かいの、本当に良いわねぇ・・・」
魔具の再延長ボタンを押しながらシェイラが言ってきた。
「前回も持ってきた、魔力を通すと液化して暖まる緑熱《ジェイパル》石を使っているんだが、色々と工夫を重ねて使い勝手を良くしたんだ」
これに関してはまだ魔力感応素材用特許制度の整備が完全には終わっていないので詳しくは教えられないが。
ちなみに、新しい制度は魔力感応素材用特許制度と呼ばれ、魔力を通すと反応する素材を使い勝手良くする発見に対する使用料と言うことで、商業ギルドで扱っている普通の素材用特許とは別に魔術院で魔術回路の特許と一緒に管理することになりそうだ。
シャルロが心配していたよりもかなりあっさりと話が纏まりそうで、シャルロは驚いていたが・・・アレク曰く、『学院長は狸だから』とのことで、どうやら学院長が上手く話を通してくれたらしい。
まあ、魔具関連の素材だったらどうせ魔術回路の特許料が生じることが多いのだ。
魔術院が全部カバーする方が一部だけ商業ギルドが関与するよりも話が単純で良い。
俺たちも商業ギルドに口座を開くのは面倒だし。
あっちの方が色々と情報漏洩のリスクが高いらしいしな。
情報漏洩に対する危機意識は魔術院の方がガバガバらしいが、何分ちょっと怪しかったら魔術院管轄内なら気軽に嘘をついているかを確認する精神系の魔術を使って調査が出来るので、盗んで売ろうと考える人間の数が少ない。
これが商業ギルドだったら外部である魔術院に精神系の魔術を依頼することにかなりの抵抗を感じる人間が多く、面倒な内部の根回しが必要になるのでそれをやっている間に証拠隠滅されてしまったり、証人や実行犯が姿を消したりするらしい。
別に殺す訳では無くても、遠方の支店に別名で移動させたり、他国へ出すなどして黒幕がさっさと自分に繋がる人間を隠してしまうのだ。
お蔭で商業ギルドの調査では実行犯は見つかっても黒幕まで繋がることはほぼ無いとアレクが言っていた。
まあ、世の中そんなもんだよな。
「このミトンとスリッパも良いわねぇ。
ミトンはちょっと分厚過ぎて何か作業をする際には向かないけど・・・これを指無し手袋にして、手の甲だけでも温められないかしら?」
シェイラが顔を上げずに提案してきた。
指無し手袋ねぇ。
盗賊《シーフ》として現役だったころは、手が冷えて凍えたら困るものの指先の感覚がなくなるのも問題なので、良く世話になっていたが・・・遺跡発掘作業でも指先の感覚が重要だから指無し手袋を使っているのか。
それに温める機能があったら嬉しいのは分かるが・・・そんなのを買う予算があるのかね?
まあ、個人で買うんだったらちょっと高い贅沢って感じで何とかなるかもだが。
「小さな魔石を手首の近くにでもはめ込む形で可能かな?
ただ、自動で切れる機能まで組み込んだら手袋サイズに収めるのが大変だから、ずっと温め続けても低温火傷しない様にかなり温度を温めにすることになると思うが」
というか、この肩凝り用魔具も長時間使いすぎたらどうなるか、ちょっと心配かもだな。
嵌めたまま寝ても4ミルで止まるが、本人がずっと再延長ボタンを押し続けても大丈夫なんだろうか。
低温火傷しそうになったら、流石にヒリヒリしてきて本人が気づくよな??
最初から『転寝モード』みたいな感じで少し温めの温度と緩めの刺激で1刻程度続く設定も作っておくか?
事務所で共有しているんだったらそこまで長時間一人で独占できるようにしない方が良いんじゃないかと言う気もするが、個人で買うならちょっとした昼寝用に欲しいかも知れない。
微妙なとこだな・・・。
【後書き】
寒い朝になんかに暖かいアイマスクとスリッパ・ミトン付きマッサージ器なんて試させたら、只管延長ボタンを押しまくるのは想定すべきだったw
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