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卒業後
821 星暦557年 紫の月 18日 肩凝り対策(12)
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「うっわぁ~、これって気持ち悪い!」
拘束用麻痺効果の魔術回路の写しは工房になかったので昨日はそれと、ついでに痛みやその他の刺激タイプの魔術回路を魔術院で入手して試作してみたのだが・・・。
シャルロが言う通り、魔具で麻痺させると本当にかなり気持ちが悪い。
実際に気分が悪くなる訳では無いが、触っても何も感じないし動かせないで自分の体の一部が突然何者かに乗っ取られたかの様で不気味なのだ。
そこがぶつけて腫れあがって動かなくなったかのような感覚にも近いが、抓っても針でついても何も感じない。
滅茶苦茶気持ち悪い。
しかも動かないし。
面白い事に、手首だけを軽く麻痺させると手首を回せないが腕は振りまわせるし、指先も動く。
が、麻痺用魔術回路の出力を上げると手首の先も動かなくなるのだ。
何かこう、体を動かす体内の信号を阻害しているのだろうか?
そう考えて心眼《サイト》でじっと視ると、やがて血液や魔力だけでなく何か微弱な光(じゃないけど)が体を動き回っているのが視えた。
指先を動かそうとするとその光がちょっと増えて流れる感じがする・・・かな?
「ちょっと貸してくれ」
手首だと自分でまくのが難しいので、麻痺用試作品のベルトを足首に巻いてまずは軽く麻痺を掛けてみる。
皮膚の下の光が打ち消されてる・・・かも?
足先の動きや感覚もちょっと鈍くなっている気がするから、先へ進む信号っぽいのも多少は阻害されているのか?
更に魔術回路へ流す魔力を上げると、今度は先へ流れる光がなくなった・・・かも?
もっとぐっと魔術回路へ魔力を流し込んでみたら、なんか足先全体の光が消えて血流も遅くなった気がする。
げっ?
これはヤバいかも?
慌てて試作品を外したら、まるできつく縛りすぎて血流が止まっていた後に解放された時のようなピリピリした痺れが軽く感じられた。
うわ、もしかしてこの麻痺の魔術回路って魔力を沢山込めれば体の機能その物を止める効果があるのか??
血流が止まれば下手をすれば死ぬし、もしかしたら肺の周りで使ったら呼吸その物もしなくなるかもしれない。
下手をしたら昔に高位貴族が死んだのって、マジで全身に麻痺用魔具を付けて出力を上げすぎたせいかもしれないな。
まあ、普通に拘束させた後に誰かの手足が腐り落ちるなんてことがあったら警備兵が全般的に使うなんてことは無かっただろうから、死ぬような出力で使われた拘束用麻痺魔具は出力制御が壊れた不良品だったか、誰かが意図的に出力を上げた特注品だったんだろうが。
「この麻痺用の魔術回路って魔力を込めすぎると血の流れも止めかねないぞ。
首周りで血の流れを止めたら意識を失うし、下手をしたら死ぬ。
もしもの時のことを考えたら、これは使わない方がいいかも」
例え出力を制限するように俺たちが設計したところで、誰かが弄る可能性はある。
密輸業者や人身売買組織に俺たちが開発した浮遊型台車が使われるのでもかなり不快なのに、肩凝り用魔具を改造して暗殺用に使われたりしたら嫌すぎる。
「え??
血が止まる??」
シャルロとアレクがびっくりしたようにこちらを見る。
「ぐっと出力を上げる様に魔力を大量に込めて暫く腕か足に巻いて外すと、外した時に痺れた感じがするぞ?
あれって止まっていた血流が流れ出した時の症状だろ」
つうか、考えてみたらなんで縛って血流を止めた後に開放するとピリピリ痺れたような感じになるんだ?
それともあれって体を動かす信号が止められていたのが一気に流れてそっちなのか?
いや、でも血の流れも確かにゆっくりになっているのは視えたから、体の機能を阻害している事は間違いない筈。
「へぇぇ?
ちょっと試してみるから、危なそうになったら直ぐ止めてね」
そう言いながら、シャルロが試作品のベルトを首の周りに巻いて魔力を込めた。
おい!!
危ないぞ!!
慌てて止めようとしたが、俺とアレクがシャルロの所に届く前に突然蒼流が現れて試作品のベルトをシャルロの首から毟り取った。
『危ないぞ』
くたりと倒れそうになったシャルロを支えながら蒼流がシャルロに小言を言った。
「うわ~立ち眩みみたいな感じで突然目の前が真っ暗になった。
首の血流って止めると直ぐに倒れるんだね。
本当に血流が止まったっぽいや」
ソファに座り込みながらのほほんとシャルロが言った。
「ウィルは腕か足って言ったのに、何故首で試す・・・」
ふうっと傍の椅子に座り込みながらアレクが呻く。
マジで、シャルロって時々妙に思い切りが良すぎる。
「取り敢えず、麻痺用魔術回路が使い方によっては危険だと分かったから、絶対に出力を上げられないような改造が出来るんじゃない限り、使わない方がいいな。
まずは普通に痛み用の魔術回路で強弱や使い方で何か良い効果を得られないか試してみようぜ」
つうか、痛みを感じないような麻痺効果と併用しなくちゃいけないような刺激って実際に痛みを感じないにしても体にとって良くないんじゃないかって気もしてきたし。
この麻痺用魔術回路は封印だな。
でも、いつかどっかの組織に誘拐される際に使われた場合に備えて、自分が拘束された時に何とか無効化出来ないか、試行錯誤だけはしておいても良いかも。
国によってはまだこのタイプの拘束具を使っている所もあるって魔術院の職員は言っていたよな?
【後書き】
シャルロ思い切り良すぎw
拘束用麻痺効果の魔術回路の写しは工房になかったので昨日はそれと、ついでに痛みやその他の刺激タイプの魔術回路を魔術院で入手して試作してみたのだが・・・。
シャルロが言う通り、魔具で麻痺させると本当にかなり気持ちが悪い。
実際に気分が悪くなる訳では無いが、触っても何も感じないし動かせないで自分の体の一部が突然何者かに乗っ取られたかの様で不気味なのだ。
そこがぶつけて腫れあがって動かなくなったかのような感覚にも近いが、抓っても針でついても何も感じない。
滅茶苦茶気持ち悪い。
しかも動かないし。
面白い事に、手首だけを軽く麻痺させると手首を回せないが腕は振りまわせるし、指先も動く。
が、麻痺用魔術回路の出力を上げると手首の先も動かなくなるのだ。
何かこう、体を動かす体内の信号を阻害しているのだろうか?
そう考えて心眼《サイト》でじっと視ると、やがて血液や魔力だけでなく何か微弱な光(じゃないけど)が体を動き回っているのが視えた。
指先を動かそうとするとその光がちょっと増えて流れる感じがする・・・かな?
「ちょっと貸してくれ」
手首だと自分でまくのが難しいので、麻痺用試作品のベルトを足首に巻いてまずは軽く麻痺を掛けてみる。
皮膚の下の光が打ち消されてる・・・かも?
足先の動きや感覚もちょっと鈍くなっている気がするから、先へ進む信号っぽいのも多少は阻害されているのか?
更に魔術回路へ流す魔力を上げると、今度は先へ流れる光がなくなった・・・かも?
もっとぐっと魔術回路へ魔力を流し込んでみたら、なんか足先全体の光が消えて血流も遅くなった気がする。
げっ?
これはヤバいかも?
慌てて試作品を外したら、まるできつく縛りすぎて血流が止まっていた後に解放された時のようなピリピリした痺れが軽く感じられた。
うわ、もしかしてこの麻痺の魔術回路って魔力を沢山込めれば体の機能その物を止める効果があるのか??
血流が止まれば下手をすれば死ぬし、もしかしたら肺の周りで使ったら呼吸その物もしなくなるかもしれない。
下手をしたら昔に高位貴族が死んだのって、マジで全身に麻痺用魔具を付けて出力を上げすぎたせいかもしれないな。
まあ、普通に拘束させた後に誰かの手足が腐り落ちるなんてことがあったら警備兵が全般的に使うなんてことは無かっただろうから、死ぬような出力で使われた拘束用麻痺魔具は出力制御が壊れた不良品だったか、誰かが意図的に出力を上げた特注品だったんだろうが。
「この麻痺用の魔術回路って魔力を込めすぎると血の流れも止めかねないぞ。
首周りで血の流れを止めたら意識を失うし、下手をしたら死ぬ。
もしもの時のことを考えたら、これは使わない方がいいかも」
例え出力を制限するように俺たちが設計したところで、誰かが弄る可能性はある。
密輸業者や人身売買組織に俺たちが開発した浮遊型台車が使われるのでもかなり不快なのに、肩凝り用魔具を改造して暗殺用に使われたりしたら嫌すぎる。
「え??
血が止まる??」
シャルロとアレクがびっくりしたようにこちらを見る。
「ぐっと出力を上げる様に魔力を大量に込めて暫く腕か足に巻いて外すと、外した時に痺れた感じがするぞ?
あれって止まっていた血流が流れ出した時の症状だろ」
つうか、考えてみたらなんで縛って血流を止めた後に開放するとピリピリ痺れたような感じになるんだ?
それともあれって体を動かす信号が止められていたのが一気に流れてそっちなのか?
いや、でも血の流れも確かにゆっくりになっているのは視えたから、体の機能を阻害している事は間違いない筈。
「へぇぇ?
ちょっと試してみるから、危なそうになったら直ぐ止めてね」
そう言いながら、シャルロが試作品のベルトを首の周りに巻いて魔力を込めた。
おい!!
危ないぞ!!
慌てて止めようとしたが、俺とアレクがシャルロの所に届く前に突然蒼流が現れて試作品のベルトをシャルロの首から毟り取った。
『危ないぞ』
くたりと倒れそうになったシャルロを支えながら蒼流がシャルロに小言を言った。
「うわ~立ち眩みみたいな感じで突然目の前が真っ暗になった。
首の血流って止めると直ぐに倒れるんだね。
本当に血流が止まったっぽいや」
ソファに座り込みながらのほほんとシャルロが言った。
「ウィルは腕か足って言ったのに、何故首で試す・・・」
ふうっと傍の椅子に座り込みながらアレクが呻く。
マジで、シャルロって時々妙に思い切りが良すぎる。
「取り敢えず、麻痺用魔術回路が使い方によっては危険だと分かったから、絶対に出力を上げられないような改造が出来るんじゃない限り、使わない方がいいな。
まずは普通に痛み用の魔術回路で強弱や使い方で何か良い効果を得られないか試してみようぜ」
つうか、痛みを感じないような麻痺効果と併用しなくちゃいけないような刺激って実際に痛みを感じないにしても体にとって良くないんじゃないかって気もしてきたし。
この麻痺用魔術回路は封印だな。
でも、いつかどっかの組織に誘拐される際に使われた場合に備えて、自分が拘束された時に何とか無効化出来ないか、試行錯誤だけはしておいても良いかも。
国によってはまだこのタイプの拘束具を使っている所もあるって魔術院の職員は言っていたよな?
【後書き】
シャルロ思い切り良すぎw
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