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卒業後
818 星暦557年 紫の月 15日 肩凝り対策(9)
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「う~ん、出力を高くしても魔具側が持ち上がるだけで体を押す力はあまり変わらないね」
ちょっと強めに設定した押す機能を付けたフードを被ってみたアレクの従姉妹の肩の辺を確認しながらシャルロが不満げに言った。
「それでもそれなりに気持ちはよろしいですわよ?」
ラティファとか言う名前のアレクの従姉妹が言った。
彼女は今日は休みだったらしいのだが、先日のアレクの聞き込みで肩凝り対策の魔具を開発していると聞いて、ぜひ協力したいと押しかけて来たのだ。
どうも試作品が欲しいらしい。
まあ、美顔器だってテストに協力してくれた人達にそれなりな数の試作品を渡したから、肩凝り対策の魔具だって試作品を配るのは良いんだけどさ。
「気持ちは良いかも知れないが、魔力の殆どが体ではなく魔具の部品を意味もなく宙に押し上げるのに使われているから無駄なんだ」
ピコピコ動くフードの裾を見ながらアレクがラティファに説明する。
「ぐっとベルトで止めるみたいな感じに固定するとしたら、どうだ?
これで肩の凝りが解れるのか?」
フードを上から押さえつけて、先を丸くした短い棒のような部品の動きが直接肩の方に向かうようにして尋ねる。
「あ、痛い!かも?
ちょっと、衝撃が、大きい、けど、慣れたら、気持ちが、良い・・・と言えなく、もない、かも?」
がたがた動く魔具の揺れに合わして声が途切れるが、ラティファは最初に上げた驚きの声の後は意外と気持ちよさげにそのまま魔具の動きに身を任せている。
心眼《サイト》で視ると、血のめぐりが悪くて体温が低く筋肉が強張っていた部分の血流が多少良くなって暖まり、それに伴って筋肉もちょっと解れているように見えなくもないが・・・表面上の変化だけで、奥の方の状態はほぼ変わっていない。
これでも気持ちいいらしいが、外したらすぐにまた元の状態に戻るんじゃないかね?
つうか、何をしたらこの奥の方の固まっている状態を解除できるんだ?
風呂に入って温めた状態で揉み解したらどうなるのか観察したいところだが・・・いくらアレクの従姉妹とは言え、流石に女性が風呂に入っている所を観察する訳にもいかないだろう。
男の試験体が欲しい。
でも、肩凝りは女の方が酷そうかも?
シャルロの親父さんはそれなりに凝っているようだったが、流石に侯爵様と一緒に風呂に入るのは遠慮したい。
それに、男と女で風呂に入った時の反応も違うかもしれないしなぁ。
取り敢えず、先に温めた状態で叩いたらどうなるのか、確認してみるか?
「ちょっとこの温める用のカバーを下に敷いて全体的に温めてからやったらどうなるか、確認して良いか?」
ちょっと重めのどっしりとした保温性の高い素材で作ったフードに発熱の魔術回路を縫い付けた試作品を取り出して、声を掛ける。
「うん~?
気持ちが良いなら何でも良いよ~」
何やらぼんやりと朦朧とした返事が返ってきた。
睡眠不足なのかね?
今日が本来なら仕事の休みだったということは、通常ならば寝溜めでもしている日なのかもしれないな。
まずは温める発熱用素材で造ったフードを被せて起動する。
ちょっと暖まるまで待ってみよう。
心眼《サイト》でラティファの肩や首周りが頭って血流が良くなっているのを確認しながらアレクに声を掛ける。
「これって男性と女性でも反応が違うかもしれないから、協力してくれる人間を男女両方集められるか?
俺たちじゃあ肩が凝っていないからあまりテスト要員として役に立たないだろ。
近所の爺さんたち相手じゃあ微妙に効果が不明だし」
ここら辺の爺さんたちはそれなりに動いているから肩が凝るって言うよりも腰痛が~って感じなんだよな。
最近腰に注意を払いながら良く視て歩いたところ、必ずしも肩凝りと同じ感じにはなっていないし、腰痛を訴えている人間の間でも状態が同じではないっぽい人もいるしで、単純に肩凝り用の魔具を腰痛にも使ってみたら良い効果が得られるかは微妙な感じだ。
「肩凝りに悩まされている従姉妹や親戚は幾らでもいるからね。
適当に声を掛けてみるよ」
アレクが薄く笑いながら言った。
美顔器の方はシャルロの親戚が試作品と実施テストをほぼ独占したからなぁ。
何やらそれに関して母親に言われたのかね?
まあ、肩凝り用魔具に関してはアレクの親戚の方が必要とする人間も多そうだし、テスト要員を集めやすいだろう。
こうやって見ると、俺って人的ネットワークがイマイチだよなぁ。
誰かがこの前みたいに誘拐されたら情報を得やすいかもってところで負けておいてもらおう。
【後書き】
魔術学院での友達の輪はアレクやシャルロの方が大きかったし、ネットワーク的には裏社会とのコネ以外では圧倒的弱者なウィル君ですw
ちょっと強めに設定した押す機能を付けたフードを被ってみたアレクの従姉妹の肩の辺を確認しながらシャルロが不満げに言った。
「それでもそれなりに気持ちはよろしいですわよ?」
ラティファとか言う名前のアレクの従姉妹が言った。
彼女は今日は休みだったらしいのだが、先日のアレクの聞き込みで肩凝り対策の魔具を開発していると聞いて、ぜひ協力したいと押しかけて来たのだ。
どうも試作品が欲しいらしい。
まあ、美顔器だってテストに協力してくれた人達にそれなりな数の試作品を渡したから、肩凝り対策の魔具だって試作品を配るのは良いんだけどさ。
「気持ちは良いかも知れないが、魔力の殆どが体ではなく魔具の部品を意味もなく宙に押し上げるのに使われているから無駄なんだ」
ピコピコ動くフードの裾を見ながらアレクがラティファに説明する。
「ぐっとベルトで止めるみたいな感じに固定するとしたら、どうだ?
これで肩の凝りが解れるのか?」
フードを上から押さえつけて、先を丸くした短い棒のような部品の動きが直接肩の方に向かうようにして尋ねる。
「あ、痛い!かも?
ちょっと、衝撃が、大きい、けど、慣れたら、気持ちが、良い・・・と言えなく、もない、かも?」
がたがた動く魔具の揺れに合わして声が途切れるが、ラティファは最初に上げた驚きの声の後は意外と気持ちよさげにそのまま魔具の動きに身を任せている。
心眼《サイト》で視ると、血のめぐりが悪くて体温が低く筋肉が強張っていた部分の血流が多少良くなって暖まり、それに伴って筋肉もちょっと解れているように見えなくもないが・・・表面上の変化だけで、奥の方の状態はほぼ変わっていない。
これでも気持ちいいらしいが、外したらすぐにまた元の状態に戻るんじゃないかね?
つうか、何をしたらこの奥の方の固まっている状態を解除できるんだ?
風呂に入って温めた状態で揉み解したらどうなるのか観察したいところだが・・・いくらアレクの従姉妹とは言え、流石に女性が風呂に入っている所を観察する訳にもいかないだろう。
男の試験体が欲しい。
でも、肩凝りは女の方が酷そうかも?
シャルロの親父さんはそれなりに凝っているようだったが、流石に侯爵様と一緒に風呂に入るのは遠慮したい。
それに、男と女で風呂に入った時の反応も違うかもしれないしなぁ。
取り敢えず、先に温めた状態で叩いたらどうなるのか、確認してみるか?
「ちょっとこの温める用のカバーを下に敷いて全体的に温めてからやったらどうなるか、確認して良いか?」
ちょっと重めのどっしりとした保温性の高い素材で作ったフードに発熱の魔術回路を縫い付けた試作品を取り出して、声を掛ける。
「うん~?
気持ちが良いなら何でも良いよ~」
何やらぼんやりと朦朧とした返事が返ってきた。
睡眠不足なのかね?
今日が本来なら仕事の休みだったということは、通常ならば寝溜めでもしている日なのかもしれないな。
まずは温める発熱用素材で造ったフードを被せて起動する。
ちょっと暖まるまで待ってみよう。
心眼《サイト》でラティファの肩や首周りが頭って血流が良くなっているのを確認しながらアレクに声を掛ける。
「これって男性と女性でも反応が違うかもしれないから、協力してくれる人間を男女両方集められるか?
俺たちじゃあ肩が凝っていないからあまりテスト要員として役に立たないだろ。
近所の爺さんたち相手じゃあ微妙に効果が不明だし」
ここら辺の爺さんたちはそれなりに動いているから肩が凝るって言うよりも腰痛が~って感じなんだよな。
最近腰に注意を払いながら良く視て歩いたところ、必ずしも肩凝りと同じ感じにはなっていないし、腰痛を訴えている人間の間でも状態が同じではないっぽい人もいるしで、単純に肩凝り用の魔具を腰痛にも使ってみたら良い効果が得られるかは微妙な感じだ。
「肩凝りに悩まされている従姉妹や親戚は幾らでもいるからね。
適当に声を掛けてみるよ」
アレクが薄く笑いながら言った。
美顔器の方はシャルロの親戚が試作品と実施テストをほぼ独占したからなぁ。
何やらそれに関して母親に言われたのかね?
まあ、肩凝り用魔具に関してはアレクの親戚の方が必要とする人間も多そうだし、テスト要員を集めやすいだろう。
こうやって見ると、俺って人的ネットワークがイマイチだよなぁ。
誰かがこの前みたいに誘拐されたら情報を得やすいかもってところで負けておいてもらおう。
【後書き】
魔術学院での友達の輪はアレクやシャルロの方が大きかったし、ネットワーク的には裏社会とのコネ以外では圧倒的弱者なウィル君ですw
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