817 / 1,038
卒業後
816 星暦557年 紫の月 12日 肩凝り対策(7)
しおりを挟む
「ウィルのスポンサーしていた生徒たちはさておき。
肩凝り用の魔具なんだけど、温めながら揉み解す機能が必要ってことで良いかな?」
シャルロが手を叩いて話を元に戻す。
「出来れば服を脱いだり寝転がったりしなくても使える方が良い気がするな。
そう言う事をする時間的余裕があるなら風呂に入ってゆったりすれば良いんだから」
特に、魔術学院の事務の人間なんて温泉が敷地内にあるのだ。
気分転換にでもそちらに行けば良いのに、行かずに苦しむという事はやはり時間的制約がキツイと休憩時間であろうと机から離れて何かをするのが難しいのだろう。
「確かにね。
だが、ちょっと仕事から手を休めて体勢を変える方が良いと思う。
あと、肩だけじゃなくって目を閉じて目の周りを温めてやんわり解すのも良いんじゃないかな?
書類仕事って読みにくい文字を書く部下からの報告書だと更に肩凝りが酷くなるって商会の支店長の一人が言っていたんだが、言われてみたら読みにくい文字を読もうと集中すると肩凝りが悪化しやすい気がする」
アレクが付け加える。
おっと。
読みにくい字は他者に苦痛を与えるのか。
俺の字はどうなんだろ?
まあ、殆ど文字を書いて報告なんてしてないから被害者は殆どいないとは思うけど。
「暖かいのと揉み解しかぁ。
目の下ぐらいから肩甲骨の下ぐらいまで覆う大きなフードみたいのをすっぽりかぶるのはどうかな?
そこに何か揉み解す動きをする魔具を入れる感じにして、フードの内側部分を温めておく感じで」
シャルロが大きな深い目のフードみたいなのを黒板に描いて見せた。
かなり見た目は微妙だが、カバーしなければならない範囲はそれで何とかなるか?
「ついでだったらすっぽり頭からかぶって、鼻と口の部分だけ開いている形にしたらどうだ?
首周りもしっかり温めて揉み解す方が良いだろ」
首の凝りは後ろの方が多いらしいが、前面も温めて揉み解したら更に効果がありそうじゃないか?
それに、後ろ側にだけ重さが掛かると首に負担が掛かりそうだ。
「目の部分を開いて、仕事している間中それを被っていられるようにしたいって要請が来そうな気がするね・・・」
改造版の図を黒板に書き足したシャルロが言った。
「長時間暖かい物を被っていたら汗ばんできて不潔なんじゃないか?
下手に肌が被《かぶ》れたりしても困るし、継続使用は四半刻まで、次に起動するには一度外して中を拭かなきゃいけないようにでもした方がいいかも知れないね」
アレクが眉をひそめながら言った。
綺麗好きだからなぁ。
帽子とかもまめに手入れして綺麗にしてるし。
「使用者がちゃんと綺麗な布で拭くかどうかなんて分からないから、そこは拘るんだったら清掃用の魔術回路を入れた方が良いんじゃないか?」
それこそ、適当に放置してあった前日の汗と埃で汚れたシャツで拭く人間だって出てくるだろう。
下手をしたら拭く方が汚れて臭くなりかねない。
「無駄な機能で高くするのは不本意なんだが・・・」
アレクが眉をひそめた。
「ある意味、事務所とかの職員で共有して使用するんだったら、一回使うごとに清潔になるのは良い事なんじゃない?
汗ばんで汚い人の後に使うのが嫌で自分用を買う人が出てくるとか、使わない人が出てくるとかの可能性を考えたら多少高くなっても清掃機能を付けた方が長期的にはより多くの人に使ってもらえるよ」
シャルロが清掃用魔術回路を擁護した。
どうやらシャルロも必ずしも清潔ではないかも知れない誰かが使った物を自分の頭に被せるのは嫌だと思い至ったようだ。
まあ、清潔さなんて個人の嗜好がかなり露骨に出るからなぁ。
よっぽど臭くて客から苦情が出るとでもいうんじゃない限り、雇い主とかギルドの上司とかが事務職員に髪の毛を定期的にきちんと洗えと命じることは滅多にないだろう。
そう考えると事務所で共有するなら清掃機能はあった方がいいし・・・事務所で共有するなら個人用魔具よりも多少高くても売れるだろう。
「まあ、まずは良い感じに揉み解す機能を見つける必要があるがな。
粘土でも捏ねるような魔術回路ってあるかな?
マッサージ用でも良いけど」
マッサージなんて普通は侍女にやらせることが多いから、魔具なんぞ開発されていない可能性が高そうだが。
どっかの物好きで人嫌いな貴族か誰かが開発させて無いかな?
【後書き】
顔を含めてすっぽり被るなら清潔感は重要!!
肩凝り用の魔具なんだけど、温めながら揉み解す機能が必要ってことで良いかな?」
シャルロが手を叩いて話を元に戻す。
「出来れば服を脱いだり寝転がったりしなくても使える方が良い気がするな。
そう言う事をする時間的余裕があるなら風呂に入ってゆったりすれば良いんだから」
特に、魔術学院の事務の人間なんて温泉が敷地内にあるのだ。
気分転換にでもそちらに行けば良いのに、行かずに苦しむという事はやはり時間的制約がキツイと休憩時間であろうと机から離れて何かをするのが難しいのだろう。
「確かにね。
だが、ちょっと仕事から手を休めて体勢を変える方が良いと思う。
あと、肩だけじゃなくって目を閉じて目の周りを温めてやんわり解すのも良いんじゃないかな?
書類仕事って読みにくい文字を書く部下からの報告書だと更に肩凝りが酷くなるって商会の支店長の一人が言っていたんだが、言われてみたら読みにくい文字を読もうと集中すると肩凝りが悪化しやすい気がする」
アレクが付け加える。
おっと。
読みにくい字は他者に苦痛を与えるのか。
俺の字はどうなんだろ?
まあ、殆ど文字を書いて報告なんてしてないから被害者は殆どいないとは思うけど。
「暖かいのと揉み解しかぁ。
目の下ぐらいから肩甲骨の下ぐらいまで覆う大きなフードみたいのをすっぽりかぶるのはどうかな?
そこに何か揉み解す動きをする魔具を入れる感じにして、フードの内側部分を温めておく感じで」
シャルロが大きな深い目のフードみたいなのを黒板に描いて見せた。
かなり見た目は微妙だが、カバーしなければならない範囲はそれで何とかなるか?
「ついでだったらすっぽり頭からかぶって、鼻と口の部分だけ開いている形にしたらどうだ?
首周りもしっかり温めて揉み解す方が良いだろ」
首の凝りは後ろの方が多いらしいが、前面も温めて揉み解したら更に効果がありそうじゃないか?
それに、後ろ側にだけ重さが掛かると首に負担が掛かりそうだ。
「目の部分を開いて、仕事している間中それを被っていられるようにしたいって要請が来そうな気がするね・・・」
改造版の図を黒板に書き足したシャルロが言った。
「長時間暖かい物を被っていたら汗ばんできて不潔なんじゃないか?
下手に肌が被《かぶ》れたりしても困るし、継続使用は四半刻まで、次に起動するには一度外して中を拭かなきゃいけないようにでもした方がいいかも知れないね」
アレクが眉をひそめながら言った。
綺麗好きだからなぁ。
帽子とかもまめに手入れして綺麗にしてるし。
「使用者がちゃんと綺麗な布で拭くかどうかなんて分からないから、そこは拘るんだったら清掃用の魔術回路を入れた方が良いんじゃないか?」
それこそ、適当に放置してあった前日の汗と埃で汚れたシャツで拭く人間だって出てくるだろう。
下手をしたら拭く方が汚れて臭くなりかねない。
「無駄な機能で高くするのは不本意なんだが・・・」
アレクが眉をひそめた。
「ある意味、事務所とかの職員で共有して使用するんだったら、一回使うごとに清潔になるのは良い事なんじゃない?
汗ばんで汚い人の後に使うのが嫌で自分用を買う人が出てくるとか、使わない人が出てくるとかの可能性を考えたら多少高くなっても清掃機能を付けた方が長期的にはより多くの人に使ってもらえるよ」
シャルロが清掃用魔術回路を擁護した。
どうやらシャルロも必ずしも清潔ではないかも知れない誰かが使った物を自分の頭に被せるのは嫌だと思い至ったようだ。
まあ、清潔さなんて個人の嗜好がかなり露骨に出るからなぁ。
よっぽど臭くて客から苦情が出るとでもいうんじゃない限り、雇い主とかギルドの上司とかが事務職員に髪の毛を定期的にきちんと洗えと命じることは滅多にないだろう。
そう考えると事務所で共有するなら清掃機能はあった方がいいし・・・事務所で共有するなら個人用魔具よりも多少高くても売れるだろう。
「まあ、まずは良い感じに揉み解す機能を見つける必要があるがな。
粘土でも捏ねるような魔術回路ってあるかな?
マッサージ用でも良いけど」
マッサージなんて普通は侍女にやらせることが多いから、魔具なんぞ開発されていない可能性が高そうだが。
どっかの物好きで人嫌いな貴族か誰かが開発させて無いかな?
【後書き】
顔を含めてすっぽり被るなら清潔感は重要!!
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる