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卒業後
813 星暦557年 紫の月 11日 肩凝り対策(4)
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「肩凝り?
最近はあのお風呂のお蔭で大分と楽になったけど、忙しくなるとお風呂にもノンビリ浸かる時間が無くなるから、本当にテストの後とか入学申し込み時期とかは大変なのよ~」
パディン夫人が焼いたクッキーの缶を手に、魔術学院の事務室に突撃して話を聞いて回る。
下町とかだったら酒場で酒を奢るんだが、事務所とかだったら手をあまり汚さずに楽しめるクッキーあたりが一番人気なんだよな。
商業ギルドなんかだと手作りではなく人気店の箱に入ったクッキーじゃないとそっぽ向かれるとアレクは言っていたが、魔術学院だったら手作りクッキーでも大人気だ。
「へぇ、入学の申し込み前も忙しいんだ?」
俺の入学はなんか学院長が勝手に決めたから、どんな手続きをしたのかすら知らんな。
テストは俺が捕まった時の騒ぎを考えても大変なんだろうなぁとは予想できたけど。
「本来なら、入学前の年齢の子がいたらいつ申し込みをしておいても良いのよ?
早い目に申し込みしてくれたら、ちゃんとこちらで入学時期になったら必要書類とか寮の手配の話とかを連絡するから。
だけど魔術師の家系の人ですら締め切り間際に毎年大量に申し込んでくるんだから!
本当に困るわ!!!」
憤懣と怒りながら別の女性がクッキーに手を伸ばす。
まあ、入学人数で寮の部屋の手配とかクラス割りとかも変わるだろうし、確かに大変そうだ。
「そう言えば、魔術師家系以外の人間ってどうなるんだ?」
神殿での確認作業を手伝ったし、地方でも確認に人が回るって聞いた気がするが。
あの時も俺はテスト結果を魔術院の方に知らせただけで、特に何か書類を扱った記憶はないんだが。
「どうしても人員のやりくりの関係で各地での神殿や村の広場での魔力検査の時期はずれるからね。随時人が見つかったら魔術院からこちらに連絡が来て、私たちがその子の年齢と連絡先を確認して入学前に再度お知らせを送るの。
これだけでもそれなりに忙しいのに、うっかり魔術師連中が自分の子供のことを忘れていて間際になって慌てて申し込んでくるから・・・!」
入学時の作業のストレスは中々凄いらしい。
国が相手の税金関係ですら、書類仕事はいい加減で借金をする羽目になるのが多い魔術師なんだ。
子供の魔術学院の申し込みなんぞギリギリのタイミングになっても不思議は無いだろう。
「ちなみに、あの温泉が出来てから肩凝りとか腰痛とかマシになったかな?」
「少しは楽になった感じだけど・・・忙しくなるとゆっくりお風呂に浸かっている暇もないから、繁忙期にガチガチに凝るのは変わらないのよねぇ。
忙しいから凝るのか、お風呂にゆったり浸かっている暇がないから凝りが酷くなるのか、なんとも分からないわ」
最初に聞いた女性が応じる。
「でも、以前は入学前の忙しい時期になると朝から頭が痛かったのが今は夕方ぐらいまでそれ程酷くないし、お風呂に入ると少しはましになる気がするから効き目はあると思うわよ?」
別の女性が口を挟んだ。
マジか。
頭が痛くなるの???
俺は基本的に頭痛なんて殆ど縁が無いが、あれって肩凝りが酷すぎると起きるものなんだ・・・。
少なくとも周りの女性の頷いている顔を見る限り、珍しい現象ではないらしい。
「ちなみに、風呂に入る以外に効果がある対策ってあるのか?」
身体を動かすのが一番だとは思うが。
女性の方が街中を歩いていたら襲われる可能性は高いんだ。
しっかり護身術の鍛錬をしたら丁度良いんじゃないかと思うんだがな。
「まあ、揉んで貰ったり自分でぐりぐり棒で押したりすると少しはましになるけど、場合によっては後で更に辛くなる感じなのよねぇ・・・」
一人が何やら変な形の棒を見せてくれながら言った。
「棒で自分の身体を押すのか?
痣になったりしないか?」
確かに開発中に根を詰めすぎて肩が凝った時に自分で揉み解す為に手で揉むことはあるが、棒を使うって言うのは知らなかったな。
「この棒だとぐっとピンポイントに凝った部分を解せる感じがするのよね~。
やっぱり指だと柔らかすぎてガチガチに固まった筋肉に負けちゃうのよ」
そう言いながら初老の事務員の女性が自分の肩の辺を揉みだした。
ふむ。
筋肉が付いたらそれなりに腕も肩も固くなるし、筋肉が無い女性ってふにゃっとした感じなんだが・・・肩が凝るともっと固くなるのか?
今度シェイラが肩が凝った時に少し触らせてもらおうかな。
あまりシェイラも肩凝りに困っていると言っていることが無いんだが、偶には凝るんだろう。
きっと。
・・・凝って固くなった肩と、普通に筋肉の硬さとで違うんかな?
流石にオレファーニ侯爵の肩を触れさせてくれと言う訳にはいかないから、誰かシェフィート商会にでも丁度いい肩凝りの男性がいることを期待しよう。
【後書き】
イマイチ肩凝りに縁が無くって実感が薄いウィル君w
最近はあのお風呂のお蔭で大分と楽になったけど、忙しくなるとお風呂にもノンビリ浸かる時間が無くなるから、本当にテストの後とか入学申し込み時期とかは大変なのよ~」
パディン夫人が焼いたクッキーの缶を手に、魔術学院の事務室に突撃して話を聞いて回る。
下町とかだったら酒場で酒を奢るんだが、事務所とかだったら手をあまり汚さずに楽しめるクッキーあたりが一番人気なんだよな。
商業ギルドなんかだと手作りではなく人気店の箱に入ったクッキーじゃないとそっぽ向かれるとアレクは言っていたが、魔術学院だったら手作りクッキーでも大人気だ。
「へぇ、入学の申し込み前も忙しいんだ?」
俺の入学はなんか学院長が勝手に決めたから、どんな手続きをしたのかすら知らんな。
テストは俺が捕まった時の騒ぎを考えても大変なんだろうなぁとは予想できたけど。
「本来なら、入学前の年齢の子がいたらいつ申し込みをしておいても良いのよ?
早い目に申し込みしてくれたら、ちゃんとこちらで入学時期になったら必要書類とか寮の手配の話とかを連絡するから。
だけど魔術師の家系の人ですら締め切り間際に毎年大量に申し込んでくるんだから!
本当に困るわ!!!」
憤懣と怒りながら別の女性がクッキーに手を伸ばす。
まあ、入学人数で寮の部屋の手配とかクラス割りとかも変わるだろうし、確かに大変そうだ。
「そう言えば、魔術師家系以外の人間ってどうなるんだ?」
神殿での確認作業を手伝ったし、地方でも確認に人が回るって聞いた気がするが。
あの時も俺はテスト結果を魔術院の方に知らせただけで、特に何か書類を扱った記憶はないんだが。
「どうしても人員のやりくりの関係で各地での神殿や村の広場での魔力検査の時期はずれるからね。随時人が見つかったら魔術院からこちらに連絡が来て、私たちがその子の年齢と連絡先を確認して入学前に再度お知らせを送るの。
これだけでもそれなりに忙しいのに、うっかり魔術師連中が自分の子供のことを忘れていて間際になって慌てて申し込んでくるから・・・!」
入学時の作業のストレスは中々凄いらしい。
国が相手の税金関係ですら、書類仕事はいい加減で借金をする羽目になるのが多い魔術師なんだ。
子供の魔術学院の申し込みなんぞギリギリのタイミングになっても不思議は無いだろう。
「ちなみに、あの温泉が出来てから肩凝りとか腰痛とかマシになったかな?」
「少しは楽になった感じだけど・・・忙しくなるとゆっくりお風呂に浸かっている暇もないから、繁忙期にガチガチに凝るのは変わらないのよねぇ。
忙しいから凝るのか、お風呂にゆったり浸かっている暇がないから凝りが酷くなるのか、なんとも分からないわ」
最初に聞いた女性が応じる。
「でも、以前は入学前の忙しい時期になると朝から頭が痛かったのが今は夕方ぐらいまでそれ程酷くないし、お風呂に入ると少しはましになる気がするから効き目はあると思うわよ?」
別の女性が口を挟んだ。
マジか。
頭が痛くなるの???
俺は基本的に頭痛なんて殆ど縁が無いが、あれって肩凝りが酷すぎると起きるものなんだ・・・。
少なくとも周りの女性の頷いている顔を見る限り、珍しい現象ではないらしい。
「ちなみに、風呂に入る以外に効果がある対策ってあるのか?」
身体を動かすのが一番だとは思うが。
女性の方が街中を歩いていたら襲われる可能性は高いんだ。
しっかり護身術の鍛錬をしたら丁度良いんじゃないかと思うんだがな。
「まあ、揉んで貰ったり自分でぐりぐり棒で押したりすると少しはましになるけど、場合によっては後で更に辛くなる感じなのよねぇ・・・」
一人が何やら変な形の棒を見せてくれながら言った。
「棒で自分の身体を押すのか?
痣になったりしないか?」
確かに開発中に根を詰めすぎて肩が凝った時に自分で揉み解す為に手で揉むことはあるが、棒を使うって言うのは知らなかったな。
「この棒だとぐっとピンポイントに凝った部分を解せる感じがするのよね~。
やっぱり指だと柔らかすぎてガチガチに固まった筋肉に負けちゃうのよ」
そう言いながら初老の事務員の女性が自分の肩の辺を揉みだした。
ふむ。
筋肉が付いたらそれなりに腕も肩も固くなるし、筋肉が無い女性ってふにゃっとした感じなんだが・・・肩が凝るともっと固くなるのか?
今度シェイラが肩が凝った時に少し触らせてもらおうかな。
あまりシェイラも肩凝りに困っていると言っていることが無いんだが、偶には凝るんだろう。
きっと。
・・・凝って固くなった肩と、普通に筋肉の硬さとで違うんかな?
流石にオレファーニ侯爵の肩を触れさせてくれと言う訳にはいかないから、誰かシェフィート商会にでも丁度いい肩凝りの男性がいることを期待しよう。
【後書き】
イマイチ肩凝りに縁が無くって実感が薄いウィル君w
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