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卒業後
808 星暦557年 紫の月 6日 人探し(11)
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第二騎士団の団長さん視点です
【本文】
>>>サイド ベルトラン・ファルコス団長(第2騎士団)
「バルダート伯爵邸で死体が見つかった?!
・・・なんだって第2騎士団が関与しているんだ??」
部下の報告に思わず聞き返す。
勿論、死体の発見は重大な問題であり、被害者の安寧と加害者の逮捕は重要だが・・・殺人事件の調査は国防を担う第2騎士団の直接的な責務内ではない。
「今回の人身売買組織の調査で見つかった書類を元に伯爵の所へ話を伺いに行ったところ、ちょうど下男が大掛かりな強盗団に押し入られたと飛び出してきたところで・・・何やら夜明け近くに複数名の集団に押し入られ、何もする機会もなく縛り上げられたそうです。
やっと縄を緩めて出てきたところで騎士団の人間に出会ったらしく、家人と伯爵を救助するついでに被害の範囲を確認する為に家の中を確認したところ、書斎にあった隠し金庫が開けられていて色々と書類が出ていた挙句、地下室にあったずれていた棚の後ろに死体が隠された部屋が見つかったそうです」
隠し金庫が開けられていた、ねぇ。
確かに隠し金庫の中から宝石や金貨を盗むために開けた可能性はあるだろうが、伯爵家に強盗に入るような図太い人間だったら普通ならヤバい書類も脅迫用に持ち帰るだろうに。
「裏ギルドの協力ってやつですかね?」
副団長のケルピスが低い声で言ってきた。
「あちこちの容疑者の事務所や家や別邸が荒らされて悪事の証拠が都合よく見つかっている流れを鑑みるに、そうなんだろうな。
どうせだったら平時からもっと協力してくれれば良いのに」
ここ数日、次から次へとあちこちの疑わしい人間の家に強盗が入られ、救助や捜査に入った人間が都合よく(家主にとっては非常に都合の悪く)色んな悪事の証拠を見つけている。
第3騎士団の妖怪ジジイの話だと、あまり密輸に関係していない盗賊《シーフ》ギルドに一斉調査に関するちょっとした情報を流す代わりに国防に関係する調査に協力してもらう話が付いていたらしいが・・・。
ここまで鮮やかに証拠を突き出せるのだったら、ここまで色々と悪事が行われる前に手を打って欲しかったところだ。
というか、何故ここまで協力してくるのか。はっきり言って気持ちが悪い。
競争相手を陥れるために証拠をでっち上げているのかとも思わないでもないが、手に入った情報を元に更に調べると芋蔓式に協力者が見つかってそちらは正真正銘の我々が見つけた証拠なのででっち上げではない様なのだが、お膳立てされている感が強い。
「まあ、人身売買組織が邪魔なんでしょうね。
ついでにその連中から金を貰って組織を優遇してきた役人とかと結託している貴族も排除したいから、協力しているような顔で我々を利用しているだけでしょう」
渡された報告書に目を通しながらケルビスが肩を竦める。
「おや。
具合が悪くて領地で療養中との話だった奥方の指輪が白骨死体の一つの傍に落ちていたそうですね。
これで残りの二人は誰なのか、人身売買組織とどのような取引をしていたのか、強制的に伯爵から聞き取りが出来そうです」
伯爵ともなれば、自白剤の利用や精神を読みとる術の利用は基本的に許されないだけの権利が保障される。
通常ならば。
が、同じ貴族である奥方を殺した強い疑惑があるとなれば、話は変わる。
伯爵夫人の指輪を外さずに死体を地下室に隠したなんて、一体何を考えていたのだか。
・・・それとも、伯爵夫人が自分の身分の証になる指輪を抜き取られない様に死ぬ前に指輪を飲み込んだか何かしたせいで見つけられず、死体ごと地下室に隠すことにしたのか?
あちこちから集まってくる情報を精査し、次の強制捜査先を議論していたら入り口からノックの音が響いてきた。
「入れ!」
扉が開き、若い見習い騎士が現れて敬礼した。
「失礼いたします!
オレファーニ侯爵からの連絡で、姪御殿が見つかったのでこれ以上のそちらに関する捜査は不要とのことです。
騎士団の協力には感謝しており、近いうちに礼に伺いますと知らせが来ました!」
「分かった、ありがとう」
「盗賊《シーフ》ギルドはオレファーニ侯爵に恩を売る為に頑張っていたのかな?
シャルロ殿に頼み事がしやすくなると思って急がせていたのに、負けたか」
溜め息を吐きながらケルビスにぼやく。
侯爵子息であり、高位精霊の加護持ちであるシャルロ・オレファーニに頼み事などそうそうできないが、恩を売れれば一度ぐらいは割引価格で高位精霊の助力を得られるかも、と騎士団総力で頑張っていたのだが。
「やられましたね。
捜査に協力しているような形であちこちで悪事の証拠を開示されたせいでそちらに手を取られ過ぎました」
手に持っていた書類を机の上に投げ出しながらケルビスがため息を吐く。
随分と今回の人身売買組織の殲滅に協力的だと思ったら、キリファ嬢を探すついでだったのか。
見つかった情報で裏社会での競争相手を潰し、ついでにシャルロ殿の従姉妹嬢を探す競争相手である騎士団と警備兵の時間を拘束して、まんまと先にキリファ嬢を救出したのだろう。
「まあ、若い女性が無事救出されて良かったと思おう。
こちらも悪徳役人やクソッタレな貴族をついでに検挙できそうだし」
仕事の賞与だけで満足しよう。
そこまで大ごとじゃない時にも割安に協力してもらいたいな~という期待は潰えたが、流石に国の大事となればシャルロ殿も協力してくれるだろうし。
でも、残念だ・・・。
【後書き】
ばっさり見つけるシーンはカットw
【本文】
>>>サイド ベルトラン・ファルコス団長(第2騎士団)
「バルダート伯爵邸で死体が見つかった?!
・・・なんだって第2騎士団が関与しているんだ??」
部下の報告に思わず聞き返す。
勿論、死体の発見は重大な問題であり、被害者の安寧と加害者の逮捕は重要だが・・・殺人事件の調査は国防を担う第2騎士団の直接的な責務内ではない。
「今回の人身売買組織の調査で見つかった書類を元に伯爵の所へ話を伺いに行ったところ、ちょうど下男が大掛かりな強盗団に押し入られたと飛び出してきたところで・・・何やら夜明け近くに複数名の集団に押し入られ、何もする機会もなく縛り上げられたそうです。
やっと縄を緩めて出てきたところで騎士団の人間に出会ったらしく、家人と伯爵を救助するついでに被害の範囲を確認する為に家の中を確認したところ、書斎にあった隠し金庫が開けられていて色々と書類が出ていた挙句、地下室にあったずれていた棚の後ろに死体が隠された部屋が見つかったそうです」
隠し金庫が開けられていた、ねぇ。
確かに隠し金庫の中から宝石や金貨を盗むために開けた可能性はあるだろうが、伯爵家に強盗に入るような図太い人間だったら普通ならヤバい書類も脅迫用に持ち帰るだろうに。
「裏ギルドの協力ってやつですかね?」
副団長のケルピスが低い声で言ってきた。
「あちこちの容疑者の事務所や家や別邸が荒らされて悪事の証拠が都合よく見つかっている流れを鑑みるに、そうなんだろうな。
どうせだったら平時からもっと協力してくれれば良いのに」
ここ数日、次から次へとあちこちの疑わしい人間の家に強盗が入られ、救助や捜査に入った人間が都合よく(家主にとっては非常に都合の悪く)色んな悪事の証拠を見つけている。
第3騎士団の妖怪ジジイの話だと、あまり密輸に関係していない盗賊《シーフ》ギルドに一斉調査に関するちょっとした情報を流す代わりに国防に関係する調査に協力してもらう話が付いていたらしいが・・・。
ここまで鮮やかに証拠を突き出せるのだったら、ここまで色々と悪事が行われる前に手を打って欲しかったところだ。
というか、何故ここまで協力してくるのか。はっきり言って気持ちが悪い。
競争相手を陥れるために証拠をでっち上げているのかとも思わないでもないが、手に入った情報を元に更に調べると芋蔓式に協力者が見つかってそちらは正真正銘の我々が見つけた証拠なのででっち上げではない様なのだが、お膳立てされている感が強い。
「まあ、人身売買組織が邪魔なんでしょうね。
ついでにその連中から金を貰って組織を優遇してきた役人とかと結託している貴族も排除したいから、協力しているような顔で我々を利用しているだけでしょう」
渡された報告書に目を通しながらケルビスが肩を竦める。
「おや。
具合が悪くて領地で療養中との話だった奥方の指輪が白骨死体の一つの傍に落ちていたそうですね。
これで残りの二人は誰なのか、人身売買組織とどのような取引をしていたのか、強制的に伯爵から聞き取りが出来そうです」
伯爵ともなれば、自白剤の利用や精神を読みとる術の利用は基本的に許されないだけの権利が保障される。
通常ならば。
が、同じ貴族である奥方を殺した強い疑惑があるとなれば、話は変わる。
伯爵夫人の指輪を外さずに死体を地下室に隠したなんて、一体何を考えていたのだか。
・・・それとも、伯爵夫人が自分の身分の証になる指輪を抜き取られない様に死ぬ前に指輪を飲み込んだか何かしたせいで見つけられず、死体ごと地下室に隠すことにしたのか?
あちこちから集まってくる情報を精査し、次の強制捜査先を議論していたら入り口からノックの音が響いてきた。
「入れ!」
扉が開き、若い見習い騎士が現れて敬礼した。
「失礼いたします!
オレファーニ侯爵からの連絡で、姪御殿が見つかったのでこれ以上のそちらに関する捜査は不要とのことです。
騎士団の協力には感謝しており、近いうちに礼に伺いますと知らせが来ました!」
「分かった、ありがとう」
「盗賊《シーフ》ギルドはオレファーニ侯爵に恩を売る為に頑張っていたのかな?
シャルロ殿に頼み事がしやすくなると思って急がせていたのに、負けたか」
溜め息を吐きながらケルビスにぼやく。
侯爵子息であり、高位精霊の加護持ちであるシャルロ・オレファーニに頼み事などそうそうできないが、恩を売れれば一度ぐらいは割引価格で高位精霊の助力を得られるかも、と騎士団総力で頑張っていたのだが。
「やられましたね。
捜査に協力しているような形であちこちで悪事の証拠を開示されたせいでそちらに手を取られ過ぎました」
手に持っていた書類を机の上に投げ出しながらケルビスがため息を吐く。
随分と今回の人身売買組織の殲滅に協力的だと思ったら、キリファ嬢を探すついでだったのか。
見つかった情報で裏社会での競争相手を潰し、ついでにシャルロ殿の従姉妹嬢を探す競争相手である騎士団と警備兵の時間を拘束して、まんまと先にキリファ嬢を救出したのだろう。
「まあ、若い女性が無事救出されて良かったと思おう。
こちらも悪徳役人やクソッタレな貴族をついでに検挙できそうだし」
仕事の賞与だけで満足しよう。
そこまで大ごとじゃない時にも割安に協力してもらいたいな~という期待は潰えたが、流石に国の大事となればシャルロ殿も協力してくれるだろうし。
でも、残念だ・・・。
【後書き】
ばっさり見つけるシーンはカットw
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