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卒業後
789 星暦557年 赤の月 21日 一斉調査(6)
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地下通路が繋がっている店の所在地を確認する為に窓を探そうと周囲を心眼《サイト》で更に詳しく見回したら、ふと奥の部屋の人影が不自然なまでに動いていないことに気が付いた。
元々、人間がいるのは分かっていたが二つ先の部屋だから静かにしていればいいかと思ったのだが、人数が多いわりに妙に動いていない。
かなり詰め込んでいるのでてっきり船員か店員の仮眠室かと思っていたのだが、それにしてはしっかり確認してみた各人影の位置がおかしい。
殆ど重なり合うのに近い形で部屋の隅にいるのだ。
仮眠中だったらベッドなり敷布団なり寝袋なりを使うから、それなりに各人の間に多少の距離を取る。
そうでないと誰かが寝返りを打つたびに両隣の人間が目が覚めることになり、起きた人間の身じろぎでその向こうの人間も目覚め・・・と言う感じに一人の動きが全員を起こすなんてことになりかねないからだ。
まあ、スラムの孤児なんかが暖を取る為に纏まって寝る場合はそんな贅沢も言わずに只管くっついて寝るけど、ここはスラムでは無いし、奥の部屋にいる人間は大人が殆どだ。
・・・この人影の集まり方、考えてみたらちょっと見覚えがあるぞ?
学生時代に手伝った違法人身売買の奴らの地下室に閉じ込められていた人達があんな感じに身を寄せ合っていた気がする。
あの時は港の中の倉庫まで捜査することは無かったが、考えてみたら王都で集めたそれなりの人数の人間を出荷しようと思ったら、地下通路があるならば倉庫経由で船に積み込むのが一番だろう。
人気が無い岸で乗り降りさせようにも王都をまず出なくてはならず、馬車に人間を積んで動かす場合は王都の城壁にある門でのチェックに引っかかる可能性がそれなりに高いし、一度に人目を引かずに動かせる人間の数も限られる。
だが、倉庫区域へ出入りする為の確認作業は王都城壁でのそれよりもずっと綿密だ。
なんと言っても王都の出入りに税金はかからないからな。
そう考えると攫ってきたり違法に騙してつれてきたりした人間を木箱に押し込んで普通に倉庫街に持ち込むのは難しい。
だからこそあのダンガン家の三男は個人用のヨットを使って港の倉庫街を経由せずに人を動かしていたのだと思われていたのだが・・・どうやら別の搬出方法があったようだ。
多分。
「奥の方に人がいるんだが、どうも妙な感じに固まっている上に動いていない。
もしかしたら魔具や呪具だけでなく人身売買もやっているのかも知れない」
捕まっている人間は売り払われてしまう前に救助する必要があるだろうが、今ここで準備が整う前に手を出すと組織の上層部に逃げられる可能性が高い。
どうするんかね?
取り敢えず俺が決める話では無いので、士官のおっさんに低い声で知らせる。
「・・・確認できるか?」
難しい顔になったおっさんが聞いてくる。
「流石に縛られているかどうかまでは実際に目視しないと確認するのは難しい。
だが、顔を見せたのにそのまま放置した場合、組織の人間に俺たちのことがバレるかも知れないぞ?」
別に捕まっている人間が組織の人間に味方するつもりは無くても、救われると思ったのに俺たちがそのまま去ろうとしたら・・・引き止めようと必死に声を上げられて地上階に居る人間にバレるだろう。
バリバリと頭を掻きむしってから、士官のおっさんが深く息を吐いた。
「取り敢えず、今晩中にここを襲撃する必要があるな。
検査が終わっていないという事で船の出港を禁じておけば国外へ出されることは無いだろうから、至急ここの所在地を確認して、港へ戻る」
まあ、それが一番現実的だろうな。
どうせここを襲撃して密輸業者は全部捕縛するんだ。
密輸組織の一員だろうが、船員だろうが、攫われた被害者だろうが、今ここにいる人間を全員捕まえれば問題はない。
願わくはそっから上層部へ繋がると期待しよう。
本当ならば上層部の人間か、上に報告するやつを見つけてから一気に網を掛ける方が確実なんだけどな。
「じゃあ、まずは人がいないところから上に行って場所を確認だな。
今晩の襲撃も何だったら手伝おう」
流石に首を突っ込んじまったからな。
組織を一網打尽するところまで付き合うつもりは無いが、この店舗の隠し金庫探しぐらいは手伝おう。
「助かる。
危険手当も出すよ」
今回の依頼は退屈手当を貰う筈で、危険とは縁が無い予定だったんだけどなぁ・・・。
襲撃の際にはしっかり変装して来よう。
【後書き】
フラグを回収しちゃいましたw
元々、人間がいるのは分かっていたが二つ先の部屋だから静かにしていればいいかと思ったのだが、人数が多いわりに妙に動いていない。
かなり詰め込んでいるのでてっきり船員か店員の仮眠室かと思っていたのだが、それにしてはしっかり確認してみた各人影の位置がおかしい。
殆ど重なり合うのに近い形で部屋の隅にいるのだ。
仮眠中だったらベッドなり敷布団なり寝袋なりを使うから、それなりに各人の間に多少の距離を取る。
そうでないと誰かが寝返りを打つたびに両隣の人間が目が覚めることになり、起きた人間の身じろぎでその向こうの人間も目覚め・・・と言う感じに一人の動きが全員を起こすなんてことになりかねないからだ。
まあ、スラムの孤児なんかが暖を取る為に纏まって寝る場合はそんな贅沢も言わずに只管くっついて寝るけど、ここはスラムでは無いし、奥の部屋にいる人間は大人が殆どだ。
・・・この人影の集まり方、考えてみたらちょっと見覚えがあるぞ?
学生時代に手伝った違法人身売買の奴らの地下室に閉じ込められていた人達があんな感じに身を寄せ合っていた気がする。
あの時は港の中の倉庫まで捜査することは無かったが、考えてみたら王都で集めたそれなりの人数の人間を出荷しようと思ったら、地下通路があるならば倉庫経由で船に積み込むのが一番だろう。
人気が無い岸で乗り降りさせようにも王都をまず出なくてはならず、馬車に人間を積んで動かす場合は王都の城壁にある門でのチェックに引っかかる可能性がそれなりに高いし、一度に人目を引かずに動かせる人間の数も限られる。
だが、倉庫区域へ出入りする為の確認作業は王都城壁でのそれよりもずっと綿密だ。
なんと言っても王都の出入りに税金はかからないからな。
そう考えると攫ってきたり違法に騙してつれてきたりした人間を木箱に押し込んで普通に倉庫街に持ち込むのは難しい。
だからこそあのダンガン家の三男は個人用のヨットを使って港の倉庫街を経由せずに人を動かしていたのだと思われていたのだが・・・どうやら別の搬出方法があったようだ。
多分。
「奥の方に人がいるんだが、どうも妙な感じに固まっている上に動いていない。
もしかしたら魔具や呪具だけでなく人身売買もやっているのかも知れない」
捕まっている人間は売り払われてしまう前に救助する必要があるだろうが、今ここで準備が整う前に手を出すと組織の上層部に逃げられる可能性が高い。
どうするんかね?
取り敢えず俺が決める話では無いので、士官のおっさんに低い声で知らせる。
「・・・確認できるか?」
難しい顔になったおっさんが聞いてくる。
「流石に縛られているかどうかまでは実際に目視しないと確認するのは難しい。
だが、顔を見せたのにそのまま放置した場合、組織の人間に俺たちのことがバレるかも知れないぞ?」
別に捕まっている人間が組織の人間に味方するつもりは無くても、救われると思ったのに俺たちがそのまま去ろうとしたら・・・引き止めようと必死に声を上げられて地上階に居る人間にバレるだろう。
バリバリと頭を掻きむしってから、士官のおっさんが深く息を吐いた。
「取り敢えず、今晩中にここを襲撃する必要があるな。
検査が終わっていないという事で船の出港を禁じておけば国外へ出されることは無いだろうから、至急ここの所在地を確認して、港へ戻る」
まあ、それが一番現実的だろうな。
どうせここを襲撃して密輸業者は全部捕縛するんだ。
密輸組織の一員だろうが、船員だろうが、攫われた被害者だろうが、今ここにいる人間を全員捕まえれば問題はない。
願わくはそっから上層部へ繋がると期待しよう。
本当ならば上層部の人間か、上に報告するやつを見つけてから一気に網を掛ける方が確実なんだけどな。
「じゃあ、まずは人がいないところから上に行って場所を確認だな。
今晩の襲撃も何だったら手伝おう」
流石に首を突っ込んじまったからな。
組織を一網打尽するところまで付き合うつもりは無いが、この店舗の隠し金庫探しぐらいは手伝おう。
「助かる。
危険手当も出すよ」
今回の依頼は退屈手当を貰う筈で、危険とは縁が無い予定だったんだけどなぁ・・・。
襲撃の際にはしっかり変装して来よう。
【後書き】
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