787 / 1,038
卒業後
786 星暦557年 赤の月 21日 一斉調査(3)
しおりを挟む
「へぇぇ、ここは香辛料が中心か?」
最初に入った倉庫は香辛料のちょっとヒリヒリするような匂い(実際にはヒリヒリしないんだけど)が充満していた。
新航路を活用した東大陸からの香辛料かな?
微妙に見覚えのある除湿用の魔具が倉庫の四隅に置いてある。
あれは輸入品じゃあないだろうから指摘しなくて良いんだよな?
箱に入っていないし。
「ダルム商会なんで香辛料も大々的に扱っているが、他の商品もほぼ全種類扱っていると言っていいな」
ヴェルナスが教えてくれた。
おお~。
もしかして、数年前に俺たちが見つけてシャルロが王都まで引っ張ってきたアドリアーナ号の貨物もこの中にあるのかな?
あのトップの兄ちゃんはちょっとうっかりなところもあったが、それなりに真面目そうだったからもしもここで密輸品があるとしたら船長とか部下が勝手にやっている可能性が高いんだろうなぁ。
シェフィート商会だったらセビウス氏がいるからそんな部下の違法行為なんて直ぐに発覚するだろうが、さてダルム商会はどうかな?
そんなことを考えながら各木箱をざっと心眼《サイト》で確認しつつ倉庫の中を歩いて回る。
魔石や魔具は無い。
呪具も無い。
二重底っぽいのも・・・無さそうだな。
後は・・・
「これと、そっちのと、あと・・・・これが中身が一様じゃないな」
歩きながら幾つかの木箱に触れていく。
「お~し、開けて調べるぞ!
ダルム商会の人間も呼べ!」
ヴェルナスが声を上げる。
なるほど。
冤罪や積み荷の窃取を防ぐために商会側の人間も木箱を開ける場合は立ち会うのか。
その前に俺は次の倉庫に進もう。
次の倉庫はダルム商会の倉庫の右隣だった。
こちらは微かに香辛料の香りはするがそれがメインではないっぽい。
とは言え。
「マジかぁ・・・。
この木箱は魔具が下の方に入っているな」
入り口から5メタ程度の所に何気なく積んであった木箱の一つを叩きながらヴェルナスに伝える。
二件目で魔具を発見って・・・。
うっかりなのか密輸なのか知らんが、この調子だったらあちこちの商会(もしくは不正をしている船長)の恨みを買いそうだな。
「あんまり税務調査の切り札みたいな感じに名を売りたくないんだが・・・。
こう、調べる箱に印をつける為の札でも貸してもらって、俺が印をつけて次の倉庫に行ってから人を読んで木箱を開けていくって言うのはどうだ?」
ヴェルナスが人を呼ぶ前に、ちょっと提案をした。
尾行されても俺だったらすぐにわかるし、何だったら暫く清早に俺と一緒について回って警備してくれって頼めば俺でもほぼ無敵状態だが、多種多様な相手から恨みを買ったらすぐに忘れないタイプも紛れ込みかねないからなぁ。
下手に恨みを忘れないタイプの怒りを買うと、後々思いがけないところで襲撃されたら困る。
それに俺のことを調べたらシャルロとアレクと事業をしていることだって比較的簡単にわかるから、仕事関係で嫌がらせを受ける可能性だってゼロではないし。
「・・・まあ、今後も協力してもらうかも知れないしな。お前さんの動向を見張って密輸の荷下ろしの調整なんぞされても困るか。
分った、札を手配する。
魔具や魔石、呪具用と中身が一様でないのと、二重底のとで3通りの札を集めておくからちょっと待ってくれ」
ヴェルナスが一瞬考えてから頷いた。
え~。
来年も手伝うのは嫌なんだけど。
特に、恨みを買いそうなら。
別に何も見つからないなら悪くない小遣い稼ぎだが、色々発見があると雇い主にとっては金を払った甲斐があって嬉しいんだろうけど俺はあちこちから恨みを蓄積しそうだから遠慮したい。
連続で年初の調査で根こそぎ見つかる様になったら商会側が年初の密輸を避けるかも知れないが、そうなったら国の方も時期を色々ずらしたりするだろう。
税金を払う側と取る側の鼬ごっこは世の常とは言え、商会側の損失が大きくなったらその原因の一つと見做される俺が狙われる可能性が高くなる。
・・・もしも来年もなんてことになったら、それこそ調査の時は軍服でも借りて、髪型と色を変えて付け髭でも貼り付けようかな?
付け髭は長期間付けていると肌が痒くなって嫌なんだが。
そんなことを考えていたら、ヴェルナスが何枚かの札を持ってきた。
「もっと要るぞ~。
ちなみに呪具っぽいのは触るのもヤバいのがあるかも知れないから、直接箱ごと魔術師の所に持って行くのを勧める」
普通の呪具だったら発動条件もそれなりに決まっているもんだが、安物の密輸品だったらそこら辺がしっかりしていなくて触ったら誤作動するような安物が紛れ込んでいる可能性もある。
そこら辺は流石にさらっと心眼《サイト》で見ただけでは分からないからな~。
ちらっと見た限り、奥の方のは呪具っぽいんだよな、あれ。
呪具だけ更に札を変えた方が良いかも?
【後書き】
髭が比較的薄いので自前ので人相を隠せる程まで生やそうと思ったら時間が掛かるウィル君w
最初に入った倉庫は香辛料のちょっとヒリヒリするような匂い(実際にはヒリヒリしないんだけど)が充満していた。
新航路を活用した東大陸からの香辛料かな?
微妙に見覚えのある除湿用の魔具が倉庫の四隅に置いてある。
あれは輸入品じゃあないだろうから指摘しなくて良いんだよな?
箱に入っていないし。
「ダルム商会なんで香辛料も大々的に扱っているが、他の商品もほぼ全種類扱っていると言っていいな」
ヴェルナスが教えてくれた。
おお~。
もしかして、数年前に俺たちが見つけてシャルロが王都まで引っ張ってきたアドリアーナ号の貨物もこの中にあるのかな?
あのトップの兄ちゃんはちょっとうっかりなところもあったが、それなりに真面目そうだったからもしもここで密輸品があるとしたら船長とか部下が勝手にやっている可能性が高いんだろうなぁ。
シェフィート商会だったらセビウス氏がいるからそんな部下の違法行為なんて直ぐに発覚するだろうが、さてダルム商会はどうかな?
そんなことを考えながら各木箱をざっと心眼《サイト》で確認しつつ倉庫の中を歩いて回る。
魔石や魔具は無い。
呪具も無い。
二重底っぽいのも・・・無さそうだな。
後は・・・
「これと、そっちのと、あと・・・・これが中身が一様じゃないな」
歩きながら幾つかの木箱に触れていく。
「お~し、開けて調べるぞ!
ダルム商会の人間も呼べ!」
ヴェルナスが声を上げる。
なるほど。
冤罪や積み荷の窃取を防ぐために商会側の人間も木箱を開ける場合は立ち会うのか。
その前に俺は次の倉庫に進もう。
次の倉庫はダルム商会の倉庫の右隣だった。
こちらは微かに香辛料の香りはするがそれがメインではないっぽい。
とは言え。
「マジかぁ・・・。
この木箱は魔具が下の方に入っているな」
入り口から5メタ程度の所に何気なく積んであった木箱の一つを叩きながらヴェルナスに伝える。
二件目で魔具を発見って・・・。
うっかりなのか密輸なのか知らんが、この調子だったらあちこちの商会(もしくは不正をしている船長)の恨みを買いそうだな。
「あんまり税務調査の切り札みたいな感じに名を売りたくないんだが・・・。
こう、調べる箱に印をつける為の札でも貸してもらって、俺が印をつけて次の倉庫に行ってから人を読んで木箱を開けていくって言うのはどうだ?」
ヴェルナスが人を呼ぶ前に、ちょっと提案をした。
尾行されても俺だったらすぐにわかるし、何だったら暫く清早に俺と一緒について回って警備してくれって頼めば俺でもほぼ無敵状態だが、多種多様な相手から恨みを買ったらすぐに忘れないタイプも紛れ込みかねないからなぁ。
下手に恨みを忘れないタイプの怒りを買うと、後々思いがけないところで襲撃されたら困る。
それに俺のことを調べたらシャルロとアレクと事業をしていることだって比較的簡単にわかるから、仕事関係で嫌がらせを受ける可能性だってゼロではないし。
「・・・まあ、今後も協力してもらうかも知れないしな。お前さんの動向を見張って密輸の荷下ろしの調整なんぞされても困るか。
分った、札を手配する。
魔具や魔石、呪具用と中身が一様でないのと、二重底のとで3通りの札を集めておくからちょっと待ってくれ」
ヴェルナスが一瞬考えてから頷いた。
え~。
来年も手伝うのは嫌なんだけど。
特に、恨みを買いそうなら。
別に何も見つからないなら悪くない小遣い稼ぎだが、色々発見があると雇い主にとっては金を払った甲斐があって嬉しいんだろうけど俺はあちこちから恨みを蓄積しそうだから遠慮したい。
連続で年初の調査で根こそぎ見つかる様になったら商会側が年初の密輸を避けるかも知れないが、そうなったら国の方も時期を色々ずらしたりするだろう。
税金を払う側と取る側の鼬ごっこは世の常とは言え、商会側の損失が大きくなったらその原因の一つと見做される俺が狙われる可能性が高くなる。
・・・もしも来年もなんてことになったら、それこそ調査の時は軍服でも借りて、髪型と色を変えて付け髭でも貼り付けようかな?
付け髭は長期間付けていると肌が痒くなって嫌なんだが。
そんなことを考えていたら、ヴェルナスが何枚かの札を持ってきた。
「もっと要るぞ~。
ちなみに呪具っぽいのは触るのもヤバいのがあるかも知れないから、直接箱ごと魔術師の所に持って行くのを勧める」
普通の呪具だったら発動条件もそれなりに決まっているもんだが、安物の密輸品だったらそこら辺がしっかりしていなくて触ったら誤作動するような安物が紛れ込んでいる可能性もある。
そこら辺は流石にさらっと心眼《サイト》で見ただけでは分からないからな~。
ちらっと見た限り、奥の方のは呪具っぽいんだよな、あれ。
呪具だけ更に札を変えた方が良いかも?
【後書き】
髭が比較的薄いので自前ので人相を隠せる程まで生やそうと思ったら時間が掛かるウィル君w
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる