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卒業後
289 星暦553年 萌葱の月 19日 ちょっとした遠出(8)
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ペトラが持ってきてくれた朝食を食べながら、サーシャとニルスの話を聞いた。
ニルスにしてももう50年もこちらに暮しているので、人間の社会で暮していた年月よりも妖精の森での生活の方が長い。
こちらの生活に慣れてしまったと言っていたが、それでも最初にこちらに迷い込んできた頃に驚いたことの幾つかは憶えていたので色々と話してくれた。
とは言え、幾つかこちらに来たときの経験を話してくれたのだが、話の種が尽きてしまったのか俺がベーコンを食べ終わる頃にはアンディとアレクが50年前の人間社会のことを色々と聞いていた。
景気のこととか、その時代の大貴族のこととか、周りの国との関係のこととか。
とは言っても、今の俺たちぐらいの年齢だったらしいので、自分が住んでいた村での日常のことはまだしも国の政治や景気の話とかはあまり興味なかったらしくてあまり知らなかったけど。
まあ、俺だってこれから幻想界に暮すことにしたとして、50年後に最近の王国や近辺国の政治や経済状況のことを聞かれたってそれ程答えられない。
アレクならかなり答えられると思うが。
でも、アレクみたいなタイプだったら幻想の森に迷い込まないんだろうな。
意図的に足を踏み入れることはあるにしても。
そんでもって俺だった絶対に森になんぞ自発的に足を運ばないから迷い込まない。
シャルロは蒼流が守るから、道に迷うということも無いな。
そう考えると、俺達は幻想の森に迷い込むタイプではないね。
それはともかく。
それでもアンディとアレクにはそれなりに興味深い話が聞けたのか、二人はまた別の時に話を聞かせて欲しいと朝食の後にニルスと約束していた。
西の妖精森は巨樹に展開しているので、それなりに上下には広いものの平面的なそれ程広くはなかった。
朝食の後に案内されたのは地上にあるちょっとしたオープン市場、初心者用の鍛錬所、そして子供の遊び場。温泉は後で俺たちがアンディを連れて行くから大丈夫ということで案内は不要とした。
あと地上にあるのは俺たちが案内された客人用の施設が幾つかと、王宮関係の何かだ。
王宮の中には流石に入れて貰えなかった。
基本的に、オープン市場に売り出しに来ているは見習いで、自分が作った物と師匠が暇つぶしに作った物が出されていた。
本当に良い物はオーダーメイドらしい。
妖精の名匠が創った名品をお土産代わりに1つぐらい買って帰りたいと思っていたのだが。
まあいいや。
下で売りに出してる物の中に、気まぐれに創った作品で何か良いのがないか後でもう一度しっかり見て回ろう。
◆◆◆◆
「ちょっと待って~~」
地上を一通り見終わったので、大樹の上にある生活圏を案内して貰っているのだが・・・真っ先にシャルロが根を上げた。
アレクもかなり辛そうな顔をしていたから、こっちも休憩が必要そうだな。
別にそれ程激しい運動をしている訳では無いのだが、縄梯子のような細い通路で地上3階(より上かも)の高さの枝と枝の間を移動するのは緊張するらしい。
シャルロとアレクはガチガチに緊張していたので、少しの運動でも負荷が高かったのだろう。
「分かりました、こちらに休憩所がありますので、一杯お茶でもしましょう」
ペトラが声を掛けて俺たちを右手の方へ案内してくれた。
よく見ると、巨樹のあちこちに似たような休憩スペースが見える。
「考えてみたら、妖精って羽が付いているんだから飛べるんだよね?
この縄梯子通路や休憩所って住民にとって必要なさそうだけどあちこちに完備されてるのは何でだ?」
お茶を受け取りながらペトラに尋ねた。
「妖精族でも飛ぶのが得意ではない部族も居ますし、妖精の森に住むのは必ずしも妖精だけではありませんからね。
また、幼子は長時間飛ぶのはまだ難しいですから、基本的に縄梯子通路を使うように言われています。
休憩所はそんな子供を連れて歩いている住民が雑談に使うのと、来訪客の休憩用です」
雑談用?
ペトラの返事に疑問を抱いてあちこちにある休憩所を視てみたら、成る程、街中の井戸端会議よろしく、ちょこちょこ住民が集まってノンビリ雑談している。
子供が周りをちょろちょろしているが、子供を連れていない大人もいるな。こういうのは噂話好きな住民なのかね?
まあ、井戸がないんだから、こういう休憩所が雑談場所になるのはある意味当然か。
・・・考えてみたら井戸がないということは、水はどうやって入手しているのかな?
魔道具か何かで出しているのだろうか?
そんなことを考えながら周りを見回していたら、ふと上空が暗くなったような気がした。まだ朝だぞ?
「げっ??」
上を視た俺の心眼に映ったのは、上空に出来た大きな亀裂と、その向こうに広がる深い暗闇だった。
何だよあれ??
幻想界の自然現象かも知れないが、見た目は非常に不吉だぞ?!
ニルスにしてももう50年もこちらに暮しているので、人間の社会で暮していた年月よりも妖精の森での生活の方が長い。
こちらの生活に慣れてしまったと言っていたが、それでも最初にこちらに迷い込んできた頃に驚いたことの幾つかは憶えていたので色々と話してくれた。
とは言え、幾つかこちらに来たときの経験を話してくれたのだが、話の種が尽きてしまったのか俺がベーコンを食べ終わる頃にはアンディとアレクが50年前の人間社会のことを色々と聞いていた。
景気のこととか、その時代の大貴族のこととか、周りの国との関係のこととか。
とは言っても、今の俺たちぐらいの年齢だったらしいので、自分が住んでいた村での日常のことはまだしも国の政治や景気の話とかはあまり興味なかったらしくてあまり知らなかったけど。
まあ、俺だってこれから幻想界に暮すことにしたとして、50年後に最近の王国や近辺国の政治や経済状況のことを聞かれたってそれ程答えられない。
アレクならかなり答えられると思うが。
でも、アレクみたいなタイプだったら幻想の森に迷い込まないんだろうな。
意図的に足を踏み入れることはあるにしても。
そんでもって俺だった絶対に森になんぞ自発的に足を運ばないから迷い込まない。
シャルロは蒼流が守るから、道に迷うということも無いな。
そう考えると、俺達は幻想の森に迷い込むタイプではないね。
それはともかく。
それでもアンディとアレクにはそれなりに興味深い話が聞けたのか、二人はまた別の時に話を聞かせて欲しいと朝食の後にニルスと約束していた。
西の妖精森は巨樹に展開しているので、それなりに上下には広いものの平面的なそれ程広くはなかった。
朝食の後に案内されたのは地上にあるちょっとしたオープン市場、初心者用の鍛錬所、そして子供の遊び場。温泉は後で俺たちがアンディを連れて行くから大丈夫ということで案内は不要とした。
あと地上にあるのは俺たちが案内された客人用の施設が幾つかと、王宮関係の何かだ。
王宮の中には流石に入れて貰えなかった。
基本的に、オープン市場に売り出しに来ているは見習いで、自分が作った物と師匠が暇つぶしに作った物が出されていた。
本当に良い物はオーダーメイドらしい。
妖精の名匠が創った名品をお土産代わりに1つぐらい買って帰りたいと思っていたのだが。
まあいいや。
下で売りに出してる物の中に、気まぐれに創った作品で何か良いのがないか後でもう一度しっかり見て回ろう。
◆◆◆◆
「ちょっと待って~~」
地上を一通り見終わったので、大樹の上にある生活圏を案内して貰っているのだが・・・真っ先にシャルロが根を上げた。
アレクもかなり辛そうな顔をしていたから、こっちも休憩が必要そうだな。
別にそれ程激しい運動をしている訳では無いのだが、縄梯子のような細い通路で地上3階(より上かも)の高さの枝と枝の間を移動するのは緊張するらしい。
シャルロとアレクはガチガチに緊張していたので、少しの運動でも負荷が高かったのだろう。
「分かりました、こちらに休憩所がありますので、一杯お茶でもしましょう」
ペトラが声を掛けて俺たちを右手の方へ案内してくれた。
よく見ると、巨樹のあちこちに似たような休憩スペースが見える。
「考えてみたら、妖精って羽が付いているんだから飛べるんだよね?
この縄梯子通路や休憩所って住民にとって必要なさそうだけどあちこちに完備されてるのは何でだ?」
お茶を受け取りながらペトラに尋ねた。
「妖精族でも飛ぶのが得意ではない部族も居ますし、妖精の森に住むのは必ずしも妖精だけではありませんからね。
また、幼子は長時間飛ぶのはまだ難しいですから、基本的に縄梯子通路を使うように言われています。
休憩所はそんな子供を連れて歩いている住民が雑談に使うのと、来訪客の休憩用です」
雑談用?
ペトラの返事に疑問を抱いてあちこちにある休憩所を視てみたら、成る程、街中の井戸端会議よろしく、ちょこちょこ住民が集まってノンビリ雑談している。
子供が周りをちょろちょろしているが、子供を連れていない大人もいるな。こういうのは噂話好きな住民なのかね?
まあ、井戸がないんだから、こういう休憩所が雑談場所になるのはある意味当然か。
・・・考えてみたら井戸がないということは、水はどうやって入手しているのかな?
魔道具か何かで出しているのだろうか?
そんなことを考えながら周りを見回していたら、ふと上空が暗くなったような気がした。まだ朝だぞ?
「げっ??」
上を視た俺の心眼に映ったのは、上空に出来た大きな亀裂と、その向こうに広がる深い暗闇だった。
何だよあれ??
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