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卒業後
775 星暦557年 藤の月 25日 ちょっと方向が違う方が良い?(16)
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「これって水分を除去してくれる魔術回路でしょ?
ちょっと効力を落としていいから、汗を吸い取ってくれる魔術回路付きの肌着って造れないかしら?」
結局、各種化粧品の落ち具合を調べるには俺たちの周りにある化粧品の種類が足りず(ケレナも軽くしか化粧をしないタイプらしくて、本人曰く持っている化粧品数が貴族令嬢としては平均より圧倒的に少ないらしい)、仮面のごとき厚塗り化粧のやり方も分からなかったのでそこら辺のテストはアレクの母親とシャルロの親戚女性陣に任せることになった。
ちなみに、何度も白粉とクリームを重ね塗りして文字通り仮面のごとく固めてみた化粧は流石にあの清浄用魔具を使っても3回使わないと落ちなかった。
ある意味、3度であの仮面モドキな物体が落とせるなんて凄いと俺は密かに思ったが、がっつり厚塗り化粧するなら先に専用の化粧落としクリームで落としてから清浄用魔具は使ってくれと使用説明書にはそれとなく注意書きすることになった。ちなみに『厚塗り』と言う言葉は侮辱になるので使ってはいけないらしい。
蒸気の細かい魔術回路に関しては汚れの落ち具合は目視では大して違いが無いように俺たちには感じられたが、女性陣曰く美顔効果は絶対に蒸気が細かい方が高いとのことだったのでそちらを本採用することに。
後はもう俺たちが出来ることは無いかな~と話し合っていたところで、突然ケレナが何故か肌着の開発を要請してきた。
「肌着に魔術回路を付けるのは無理じゃない?
魔石が邪魔だし、服を洗う際に魔術回路が破損する可能性が高いし、なんと言っても女性用の肌着みたいにぐいぐい締め付けられたら直ぐに割れるか潰れるかして壊れちゃうよ」
シャルロが指摘する。
というか、なんだって肌着に魔術回路???
汗をかいたら服を着替えれば良いだろうに。
「基本的に女性のドレスって温度調整がしにくいのよ。
だから風邪ひかない程度に暖かく造るんだけど、そうするとどうしても人が多い舞踊ホールとかで部屋が暑くなると汗をかくの。
踊ったりしたら更に汗だくよ。
そうすると服のラインが崩れるし、汗が染みになるし、化粧は崩れてくるしで最悪なの!!
この魔具って蒸気で汗だくと同様な状態にしたあとすっきり落としているじゃない?
こんな感じに肌着の汗もすっきり消し去って欲しいのよ。
洗濯だったらこの清浄用魔具を使えば水洗いする必要は無いわ。
ぐりぐり締め付けることに関しては確かにそうだけど・・・ウエストの下のスカートがふんわりしている部分だったら余裕があるから、そこにデリケートな魔術回路の部分を縫い付けておけない?」
ケレナは最近ドレスなんてそれ程着ていないと思ったんだが、それでも時折断れない付き合いがあるんかね?
確かに肌着が汗で濡れていると不快ではあるが・・・値段的に考えたらめっちゃ無駄じゃね?
「普通のそれほど締め付けない男性用の服でも上着を着ていたら下の服の汚れも汗も完全には除去できないからねぇ。
女性用のドレスの下の肌着の汗を除去なんて・・・どうやってやれば良いんだろ?」
シャルロが首を傾げる。
「肌に触れている生地から常時水分を奪い取る魔具を身に着けていたら、肌が乾燥しすぎて大変なことになりそうな気がするが」
アレクが指摘する。
そう言えば、アレクはちょっと乾燥肌なんだって言っていたっけ?
乾燥する季節にはちょくちょくクリームを塗らないと肌が荒れて白っぽくなって更に酷くなると痒くなるって言っていたな。
肌着の下がそんな状態になって痒かったら苦情の嵐になりそうだ。
「常時起動式だったら乾きすぎるし魔力も食いすぎるから、汗をかいたらボタンを押して動かす感じかな?
肌着の生地に魔力を伝えられる素材を編み込んで範囲指定に使ってそこを除湿させる魔術回路を下の方に繋ぐとか?
でも、しっかりした基盤を使わないとしたら直ぐに壊れそうだな。
銅線を刺繍する感じで魔術回路を作るにしても、服って言うのはそれなりに動きに合わせて折れ曲がったり伸びたりするから動きが激しい部分の銅線がすぐに切れるんじゃないか?」
「肌着の刺繍糸はそうそう切れないわよ?
流石に銅線はちょっと硬くて痛いかもだけど、魔術回路に使える糸の素材ってないの?」
ケレナが指摘する。
誰も見ない筈の肌着なんぞに何だって刺繍なんぞするんだ???
夫婦でも、夜会に行った後は別々にドレスや燕尾服とかを脱いで、汗を拭いたり風呂に入ったりしてから寝室に行くぜ?
夜会ドレスの下に来ている肌着なんて、本人と侍女以外は見ないんじゃないか??
夜会で爛れた活動を楽しむ浮気派なら多少は肌着を見せることもあるかもだが。
「見えないところにもお金を掛けるのがお洒落ってものなのよ・・・」
微妙な表情の俺たちに、ちょっと疲れた顔でケレナが説明した。
「誰も知らないんだから要らなくない?
肌に擦れて痛そう」
シャルロが指摘する。
「洗濯メイドや侍女見習いとかからそう言う話って漏れるのよ・・・」
ため息を吐きながらケレナが応じた。
肌着が野暮ったいなんて噂が流れると、それの撤回は難しいんだろうなぁ。
なんと言っても人前でそれを見せる訳にはいかないのだ。
とは言え。
それはどうでも良い。
肌着の汗をなんとかする魔具ねぇ。
・・・不可能じゃね??
ちょっと効力を落としていいから、汗を吸い取ってくれる魔術回路付きの肌着って造れないかしら?」
結局、各種化粧品の落ち具合を調べるには俺たちの周りにある化粧品の種類が足りず(ケレナも軽くしか化粧をしないタイプらしくて、本人曰く持っている化粧品数が貴族令嬢としては平均より圧倒的に少ないらしい)、仮面のごとき厚塗り化粧のやり方も分からなかったのでそこら辺のテストはアレクの母親とシャルロの親戚女性陣に任せることになった。
ちなみに、何度も白粉とクリームを重ね塗りして文字通り仮面のごとく固めてみた化粧は流石にあの清浄用魔具を使っても3回使わないと落ちなかった。
ある意味、3度であの仮面モドキな物体が落とせるなんて凄いと俺は密かに思ったが、がっつり厚塗り化粧するなら先に専用の化粧落としクリームで落としてから清浄用魔具は使ってくれと使用説明書にはそれとなく注意書きすることになった。ちなみに『厚塗り』と言う言葉は侮辱になるので使ってはいけないらしい。
蒸気の細かい魔術回路に関しては汚れの落ち具合は目視では大して違いが無いように俺たちには感じられたが、女性陣曰く美顔効果は絶対に蒸気が細かい方が高いとのことだったのでそちらを本採用することに。
後はもう俺たちが出来ることは無いかな~と話し合っていたところで、突然ケレナが何故か肌着の開発を要請してきた。
「肌着に魔術回路を付けるのは無理じゃない?
魔石が邪魔だし、服を洗う際に魔術回路が破損する可能性が高いし、なんと言っても女性用の肌着みたいにぐいぐい締め付けられたら直ぐに割れるか潰れるかして壊れちゃうよ」
シャルロが指摘する。
というか、なんだって肌着に魔術回路???
汗をかいたら服を着替えれば良いだろうに。
「基本的に女性のドレスって温度調整がしにくいのよ。
だから風邪ひかない程度に暖かく造るんだけど、そうするとどうしても人が多い舞踊ホールとかで部屋が暑くなると汗をかくの。
踊ったりしたら更に汗だくよ。
そうすると服のラインが崩れるし、汗が染みになるし、化粧は崩れてくるしで最悪なの!!
この魔具って蒸気で汗だくと同様な状態にしたあとすっきり落としているじゃない?
こんな感じに肌着の汗もすっきり消し去って欲しいのよ。
洗濯だったらこの清浄用魔具を使えば水洗いする必要は無いわ。
ぐりぐり締め付けることに関しては確かにそうだけど・・・ウエストの下のスカートがふんわりしている部分だったら余裕があるから、そこにデリケートな魔術回路の部分を縫い付けておけない?」
ケレナは最近ドレスなんてそれ程着ていないと思ったんだが、それでも時折断れない付き合いがあるんかね?
確かに肌着が汗で濡れていると不快ではあるが・・・値段的に考えたらめっちゃ無駄じゃね?
「普通のそれほど締め付けない男性用の服でも上着を着ていたら下の服の汚れも汗も完全には除去できないからねぇ。
女性用のドレスの下の肌着の汗を除去なんて・・・どうやってやれば良いんだろ?」
シャルロが首を傾げる。
「肌に触れている生地から常時水分を奪い取る魔具を身に着けていたら、肌が乾燥しすぎて大変なことになりそうな気がするが」
アレクが指摘する。
そう言えば、アレクはちょっと乾燥肌なんだって言っていたっけ?
乾燥する季節にはちょくちょくクリームを塗らないと肌が荒れて白っぽくなって更に酷くなると痒くなるって言っていたな。
肌着の下がそんな状態になって痒かったら苦情の嵐になりそうだ。
「常時起動式だったら乾きすぎるし魔力も食いすぎるから、汗をかいたらボタンを押して動かす感じかな?
肌着の生地に魔力を伝えられる素材を編み込んで範囲指定に使ってそこを除湿させる魔術回路を下の方に繋ぐとか?
でも、しっかりした基盤を使わないとしたら直ぐに壊れそうだな。
銅線を刺繍する感じで魔術回路を作るにしても、服って言うのはそれなりに動きに合わせて折れ曲がったり伸びたりするから動きが激しい部分の銅線がすぐに切れるんじゃないか?」
「肌着の刺繍糸はそうそう切れないわよ?
流石に銅線はちょっと硬くて痛いかもだけど、魔術回路に使える糸の素材ってないの?」
ケレナが指摘する。
誰も見ない筈の肌着なんぞに何だって刺繍なんぞするんだ???
夫婦でも、夜会に行った後は別々にドレスや燕尾服とかを脱いで、汗を拭いたり風呂に入ったりしてから寝室に行くぜ?
夜会ドレスの下に来ている肌着なんて、本人と侍女以外は見ないんじゃないか??
夜会で爛れた活動を楽しむ浮気派なら多少は肌着を見せることもあるかもだが。
「見えないところにもお金を掛けるのがお洒落ってものなのよ・・・」
微妙な表情の俺たちに、ちょっと疲れた顔でケレナが説明した。
「誰も知らないんだから要らなくない?
肌に擦れて痛そう」
シャルロが指摘する。
「洗濯メイドや侍女見習いとかからそう言う話って漏れるのよ・・・」
ため息を吐きながらケレナが応じた。
肌着が野暮ったいなんて噂が流れると、それの撤回は難しいんだろうなぁ。
なんと言っても人前でそれを見せる訳にはいかないのだ。
とは言え。
それはどうでも良い。
肌着の汗をなんとかする魔具ねぇ。
・・・不可能じゃね??
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