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卒業後
765 星暦557年 藤の月 16日 ちょっと方向が違う方が良い?(6)
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「いいわねぇ、これ。
薄いシュミーズを着て座って1日の予定を相談しながらお茶を飲んでいる間に寝汗がさっと綺麗になるのもありがたいし、立った姿勢で服の汚れを落とせるのも嬉しいわ。
何よりも、肌と髪の毛の艶が違う!!!」
ケレナも喜んでいたが、どうやら美容効果はシャルロのお袋さん世代に更に大きかったのか、オレファーニ侯爵家の王都別邸で実験を始めたらもの凄く喜ばれた。
しかもお袋さんが使ってみたら何故かあっという間にその日のお茶会で会った親しい女性陣にバレたらしく、シャルロの義姉さんや親戚の叔母さんやらがテスト要員になると押しかけて来た。
ちなみに、使い勝手が良い様にと範囲指定用の結界を夜会ドレスを着て座った程度の範囲で腰まで、首まで、頭の上まで、立ち上がった頭の上までの4種類の大きさと、部屋全体を使う設定とを作った。
ボタンを押して必要な範囲を選べば良いので扱いは比較的簡単な筈。
その分魔術回路が複雑になったが、結界の大きさの調整は基本的に魔術師じゃないと出来ないからボタンを押して変更できるように魔術回路に組み込むのは必須だった。
こうも何通りもいるのかはちょっと疑問だったけど、アレク曰く貴族女性用だと思ったら値段を安くするより使い勝手を良くする方が重要らしい。
結界内の温度に関しては風呂代わりに4ミル程度で汗ががっつり滴り始めるぐらいに熱い温度と、仄かに暖かい程度と二種類ある。
これに関しては夏になって苦情や要望が来たらもっと涼しい設定のある物を売り出しても良いかもと話し合っているが、仄かに暖かい程度で多分大丈夫なんじゃないかね?
真夏の暑い日に使ったらどう感じるかは要確認だけど。
汚れを落とすのに最適な水の量はアレクが入手してきた湿度計に連動させて適切な湿度になるだけの水を容器から勝手に使うようにしてある。
ただ、精油に関しては使うか否か、どの程度使うかは個人の好みという話になった。
とは言え、大量に使っても『汚れ』として清浄化されてしまうので、実質どれだけあっても仄かに香りを楽しむだけの効果なので数滴たらす程度を推奨量としてある。
「思ったんだけど、ドレスを綺麗にするのにこれって使えないかしら?
別に中に人間が座っていないと起動しない訳ではないでしょう?
若い頃のドレスをリメークして姪にあげようと思ったんだけど、意外と汚れとか埃とかで薄汚れた感じなのよ。
下手に洗うと形が崩れるからどうしようかと思っていたんだけど、この魔具って汚れを落としてくれるでしょ?
時間経過で溜まった様な服の汚れも落ちないかしら?」
シャルロの叔母さん(多分)らしき中年女性が女性陣が色々と肌や髪の毛の艶に関して囀っているなかでこちらに寄ってきて要望を伝えてきた。
アレクの目がきらりと光る。
「・・・所要時間が変わるかも知れませんし、どの程度の湿度が最適かも実験してみなければなりませんが、上手くいけば良いアイディアですね」
俺なんかは基本的に同じ服を着回すし、洗って型崩れする程高級は服も殆ど無いが・・・考えてみたら、シャルロの婚約式用に買った服はクロゼットの中に放り込んだままだ。
あれも一度綺麗にしておいたら良いのかな?
季節が変わった際に久しぶりに出した服って黴臭い事もあるし、そこら辺にも効果があるかも知れない。
「良いね!!
男性用礼服なんて同じのを使い回すから、虫が食わない様に厳重に樟脳でガードするせいで偶に出すと臭くてくしゃみが止まらなくなるんだよ!!!
これを落とせるとしたら男性貴族から凄く感謝されるよ!!!」
シャルロが熱心に言い募った。
なんでも、貴族の礼服っていうのにはランクがあって高位貴族とかや王宮で式典に出るような役職持ちだと何種類か揃えなければならないらしい。
しかも式典とか主賓のランクによってどんな礼服を着るかが細かく決まっている為、滅多に着ない最高品質の礼服なんかもほぼ全ての貴族当主や跡取りは持っており・・・これらは数年に一度(場合によっては一生に一度、爵位を継ぐ時だけ)しか着ないらしい。
高いし流行の変化がないらしく(というか滅多に着ない礼服のスタイルを変えるなんて、例え簡易化であろうと新しいのを仕立てるなんて絶対に反対!!!と強固な反対に遭うらしい)、樟脳の需要は男性貴族の礼服関連が過半数らしい。
「でも、服は女性の方が沢山持ってるだろ?」
社交シーズンが終わったら暫くは夜会服はそれ程着なくなるのだ。
服の量から考えたら女性の方が保管用に必要な樟脳の量は多いだろうに。
「あら、女性は今年のドレスを来年着たりなんて出来ないわよ。
よっぽど気に入ったのとか、何か思い入れがあるのは丁寧に保存しておくけど普通のドレスは何度か招待客の重ならない夜会で着たら侍女や親戚の下級貴族に下げ渡すの。
下級貴族は生地は最高級だけど多少流行遅れな服を手に入れたら次のシーズンまでに手を加えて新品っぽくするから、樟脳を使う程仕舞っておく期間が長くないことが多いのよ」
ケレナが俺の疑問に答えてくれた。
マジか。
毎年あの量のドレスを買い替えてるのか????!!!
滅茶苦茶貴族って無駄な生活してるな。
まあ、お蔭で仕立て屋が食っていけるんかもだけど。
ある意味、そこそこの資産しかない貴族って娘が多すぎたら破産するんじゃないのか??
それとも娘が多すぎる金持ちじゃない貴族は社交はあまりしないのかな?
まあ、どちらにせよ。
樟脳や黴臭い臭いを取るのにこのままでいいのか何か工夫が必要なのか、要実験だな。
・・・シャルロの兄貴の服でもを借りられるかなぁ?
それともウォレン爺あたりの方が黴臭い服を持っているか?
【後書き】
高位貴族の侍女も下級貴族の娘が多いです。
なので親戚と侍女のどちらも下級貴族。
イマイチ本文の中で説明臭くなく上手く書けなかった・・・
薄いシュミーズを着て座って1日の予定を相談しながらお茶を飲んでいる間に寝汗がさっと綺麗になるのもありがたいし、立った姿勢で服の汚れを落とせるのも嬉しいわ。
何よりも、肌と髪の毛の艶が違う!!!」
ケレナも喜んでいたが、どうやら美容効果はシャルロのお袋さん世代に更に大きかったのか、オレファーニ侯爵家の王都別邸で実験を始めたらもの凄く喜ばれた。
しかもお袋さんが使ってみたら何故かあっという間にその日のお茶会で会った親しい女性陣にバレたらしく、シャルロの義姉さんや親戚の叔母さんやらがテスト要員になると押しかけて来た。
ちなみに、使い勝手が良い様にと範囲指定用の結界を夜会ドレスを着て座った程度の範囲で腰まで、首まで、頭の上まで、立ち上がった頭の上までの4種類の大きさと、部屋全体を使う設定とを作った。
ボタンを押して必要な範囲を選べば良いので扱いは比較的簡単な筈。
その分魔術回路が複雑になったが、結界の大きさの調整は基本的に魔術師じゃないと出来ないからボタンを押して変更できるように魔術回路に組み込むのは必須だった。
こうも何通りもいるのかはちょっと疑問だったけど、アレク曰く貴族女性用だと思ったら値段を安くするより使い勝手を良くする方が重要らしい。
結界内の温度に関しては風呂代わりに4ミル程度で汗ががっつり滴り始めるぐらいに熱い温度と、仄かに暖かい程度と二種類ある。
これに関しては夏になって苦情や要望が来たらもっと涼しい設定のある物を売り出しても良いかもと話し合っているが、仄かに暖かい程度で多分大丈夫なんじゃないかね?
真夏の暑い日に使ったらどう感じるかは要確認だけど。
汚れを落とすのに最適な水の量はアレクが入手してきた湿度計に連動させて適切な湿度になるだけの水を容器から勝手に使うようにしてある。
ただ、精油に関しては使うか否か、どの程度使うかは個人の好みという話になった。
とは言え、大量に使っても『汚れ』として清浄化されてしまうので、実質どれだけあっても仄かに香りを楽しむだけの効果なので数滴たらす程度を推奨量としてある。
「思ったんだけど、ドレスを綺麗にするのにこれって使えないかしら?
別に中に人間が座っていないと起動しない訳ではないでしょう?
若い頃のドレスをリメークして姪にあげようと思ったんだけど、意外と汚れとか埃とかで薄汚れた感じなのよ。
下手に洗うと形が崩れるからどうしようかと思っていたんだけど、この魔具って汚れを落としてくれるでしょ?
時間経過で溜まった様な服の汚れも落ちないかしら?」
シャルロの叔母さん(多分)らしき中年女性が女性陣が色々と肌や髪の毛の艶に関して囀っているなかでこちらに寄ってきて要望を伝えてきた。
アレクの目がきらりと光る。
「・・・所要時間が変わるかも知れませんし、どの程度の湿度が最適かも実験してみなければなりませんが、上手くいけば良いアイディアですね」
俺なんかは基本的に同じ服を着回すし、洗って型崩れする程高級は服も殆ど無いが・・・考えてみたら、シャルロの婚約式用に買った服はクロゼットの中に放り込んだままだ。
あれも一度綺麗にしておいたら良いのかな?
季節が変わった際に久しぶりに出した服って黴臭い事もあるし、そこら辺にも効果があるかも知れない。
「良いね!!
男性用礼服なんて同じのを使い回すから、虫が食わない様に厳重に樟脳でガードするせいで偶に出すと臭くてくしゃみが止まらなくなるんだよ!!!
これを落とせるとしたら男性貴族から凄く感謝されるよ!!!」
シャルロが熱心に言い募った。
なんでも、貴族の礼服っていうのにはランクがあって高位貴族とかや王宮で式典に出るような役職持ちだと何種類か揃えなければならないらしい。
しかも式典とか主賓のランクによってどんな礼服を着るかが細かく決まっている為、滅多に着ない最高品質の礼服なんかもほぼ全ての貴族当主や跡取りは持っており・・・これらは数年に一度(場合によっては一生に一度、爵位を継ぐ時だけ)しか着ないらしい。
高いし流行の変化がないらしく(というか滅多に着ない礼服のスタイルを変えるなんて、例え簡易化であろうと新しいのを仕立てるなんて絶対に反対!!!と強固な反対に遭うらしい)、樟脳の需要は男性貴族の礼服関連が過半数らしい。
「でも、服は女性の方が沢山持ってるだろ?」
社交シーズンが終わったら暫くは夜会服はそれ程着なくなるのだ。
服の量から考えたら女性の方が保管用に必要な樟脳の量は多いだろうに。
「あら、女性は今年のドレスを来年着たりなんて出来ないわよ。
よっぽど気に入ったのとか、何か思い入れがあるのは丁寧に保存しておくけど普通のドレスは何度か招待客の重ならない夜会で着たら侍女や親戚の下級貴族に下げ渡すの。
下級貴族は生地は最高級だけど多少流行遅れな服を手に入れたら次のシーズンまでに手を加えて新品っぽくするから、樟脳を使う程仕舞っておく期間が長くないことが多いのよ」
ケレナが俺の疑問に答えてくれた。
マジか。
毎年あの量のドレスを買い替えてるのか????!!!
滅茶苦茶貴族って無駄な生活してるな。
まあ、お蔭で仕立て屋が食っていけるんかもだけど。
ある意味、そこそこの資産しかない貴族って娘が多すぎたら破産するんじゃないのか??
それとも娘が多すぎる金持ちじゃない貴族は社交はあまりしないのかな?
まあ、どちらにせよ。
樟脳や黴臭い臭いを取るのにこのままでいいのか何か工夫が必要なのか、要実験だな。
・・・シャルロの兄貴の服でもを借りられるかなぁ?
それともウォレン爺あたりの方が黴臭い服を持っているか?
【後書き】
高位貴族の侍女も下級貴族の娘が多いです。
なので親戚と侍女のどちらも下級貴族。
イマイチ本文の中で説明臭くなく上手く書けなかった・・・
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