743 / 1,038
卒業後
742 星暦556年 桃の月 10日 確認したら、ヤバかった(20)
しおりを挟む
「結局、惚れ薬モドキはザルガの商人たちの単なる商売の一環だったって・・・本当に??」
やっと呪具使の確認作業も終わり、ちょこちょこ頼まれた捜査の手助けも終了して今回は無事、年末の忙しい時期になる前に依頼が全部終了した。
しかもファルナに誰が黒幕だったのかも教えて貰えたのですっきりしたし。
という事で久しぶりにシェイラの所に遊びに来て、雑談交じりに王都での話をしている。
「多分商業ギルド経由でも警告と対応策の話が広められると思うけど、ザルガ共和国では強壮剤とか気分が良くなる軽い麻薬とか、凄く強い酒とかを知り合いに飲ませたり、家に招いた取引相手の飲み物に混ぜるのごく普通な取引慣行らしい。
だからアファル王国の人間も取引であの国に行く際は皆解毒剤とか、毒が分かる魔具を身に付けているって話なんだが・・・東大陸のお手軽呪具を惚れ薬紛いに使うのも、全然普通のことなんだってさ」
麻薬を家に招いた客に出す飲み物に混ぜるなんて、信じられないが。
どうりであっちの国の人間ってやたらと薬の効きが悪い訳だ。
普通の取引相手との食事や一杯酒を飲むだけでもしっかり解毒剤や麻薬が効かなくなるような薬を飲んでおかないととんでもないことになるなんて、やってらんないね。
「あ~、確かにあの国はよっぽど信頼している相手じゃないかぎり個人宅では絶対に出されたものに手を付けるなって教わったわね。
まだ信頼できる店で正規の店員に出された飲み物や食べ物の方が大丈夫な確率が高いって言う話よ」
シェイラが思い出したように言った。
マジか。
裏ギルドの仕事ついでに行っただけだったから商人と会って話なんてしなかったが、薬を盛るのが普通な国って怖すぎる。
「だからあっちの国では、よっぽど酷い使い方をしなければ中毒性も後遺症も無い呪具を使ったハニートラップは良心的で小手調べ扱いらしい。
流石に呪具が扱われていない国でやったらもっと質の悪い呪具と同じ扱いで即処刑になりかねないから今まではアファル王国で販売していなかったのが、東大陸と直接取引するようになって呪具もそれなりに知られるようになったから、ザルガ共和国式使い方を教えながら販売するのにそれ程危険は無いだろうって幾つかの商会が普通に他の麻薬とかの違法商品と一緒に売っていたらしい」
まあ、麻薬と一緒に売っている時点でその商家の質の悪さは察せられるけどな。
掴まったザルガ共和国の商人はマジで麻薬よりずっと良心的で良いだろう!と胸を張っていたとファルナが苦笑していた。
「なるほど。
今までは自制していたんだ・・・」
シェイラが呆れたように薄く笑う。
「ザルガ共和国でも有人な島が使えなくなったり国家が滅ぶ規模でヤバい呪具を取り扱うと本人だけでなく一族全員連座で処刑なんてこともあるからな。
お手軽な呪具とヤバい呪具の違いが認識されていない国にはあの安物呪具も売り込まないのが過去の経験から得た暗黙知らしい。
で、アファル王国でも呪具の情報が公告されて、解呪の魔具での定期的な点検も義務付けられたから、罪もない惚れ薬モドキな使い方も大丈夫だろうと解禁の噂があっちの商業ギルドで話が流れたんだってさ」
お手軽呪具の対応策を講じ始めたから、あれを売っても大丈夫になったと判断しただなんて滅茶苦茶な話だ。
「相変わらず、常識が変な方向に突き抜けている国よねぇ。
製造を殆どしない交易だけの国だからあそこまで商売になりふり構わずでも全世界を制覇しちゃうなんて事になっていないのか、自国以外と金儲け以外のかかわりを持とうとしないからこそ周辺国から攻め込まれていないのか、なんとも微妙な感じだわ・・・」
ため息を吐いてワインを注ぎながらシェイラが言った。
「そう言えば、うっかり勝っちまって占領したガルカ王国も何とか独立させようと昔の王族とか高位貴族を探しているらしいんだが、ザルガ共和国の一部でいる方が金回りが良いってことで絶対に元に戻りたくない一般市民に元王族とか高位貴族が殺されまくっちまって上手くいっていないんだって」
ついでにファルナから聞いたこぼれ話を暴露する。
もしかしたらこちらは呪具の話程一般公開する予定はない情報かも知れないが、まあ別に特にどうという事はない話だ。
「まあ、ガルカ王国も滅茶苦茶だったからねぇ。
どっちもどっちって感じだわ」
呆れたようにシェイラが笑う。
どっちもあまり隣国として好ましい相手じゃないよなぁ。
まあ、そこら辺は国のお偉いさんが頭を悩ませる話だ。
俺は気軽に魔具を開発して、時折シェイラに会いに来て発掘の手伝いでも出来れば良い。
【後書き】
実は深い陰謀はなかった!
ある意味、ザルガ共和国って違法行為とは単に取引に必要な賄賂の額が高いだけと認識しているような、金儲けにしか目が行っていない国なんですね~
やっと呪具使の確認作業も終わり、ちょこちょこ頼まれた捜査の手助けも終了して今回は無事、年末の忙しい時期になる前に依頼が全部終了した。
しかもファルナに誰が黒幕だったのかも教えて貰えたのですっきりしたし。
という事で久しぶりにシェイラの所に遊びに来て、雑談交じりに王都での話をしている。
「多分商業ギルド経由でも警告と対応策の話が広められると思うけど、ザルガ共和国では強壮剤とか気分が良くなる軽い麻薬とか、凄く強い酒とかを知り合いに飲ませたり、家に招いた取引相手の飲み物に混ぜるのごく普通な取引慣行らしい。
だからアファル王国の人間も取引であの国に行く際は皆解毒剤とか、毒が分かる魔具を身に付けているって話なんだが・・・東大陸のお手軽呪具を惚れ薬紛いに使うのも、全然普通のことなんだってさ」
麻薬を家に招いた客に出す飲み物に混ぜるなんて、信じられないが。
どうりであっちの国の人間ってやたらと薬の効きが悪い訳だ。
普通の取引相手との食事や一杯酒を飲むだけでもしっかり解毒剤や麻薬が効かなくなるような薬を飲んでおかないととんでもないことになるなんて、やってらんないね。
「あ~、確かにあの国はよっぽど信頼している相手じゃないかぎり個人宅では絶対に出されたものに手を付けるなって教わったわね。
まだ信頼できる店で正規の店員に出された飲み物や食べ物の方が大丈夫な確率が高いって言う話よ」
シェイラが思い出したように言った。
マジか。
裏ギルドの仕事ついでに行っただけだったから商人と会って話なんてしなかったが、薬を盛るのが普通な国って怖すぎる。
「だからあっちの国では、よっぽど酷い使い方をしなければ中毒性も後遺症も無い呪具を使ったハニートラップは良心的で小手調べ扱いらしい。
流石に呪具が扱われていない国でやったらもっと質の悪い呪具と同じ扱いで即処刑になりかねないから今まではアファル王国で販売していなかったのが、東大陸と直接取引するようになって呪具もそれなりに知られるようになったから、ザルガ共和国式使い方を教えながら販売するのにそれ程危険は無いだろうって幾つかの商会が普通に他の麻薬とかの違法商品と一緒に売っていたらしい」
まあ、麻薬と一緒に売っている時点でその商家の質の悪さは察せられるけどな。
掴まったザルガ共和国の商人はマジで麻薬よりずっと良心的で良いだろう!と胸を張っていたとファルナが苦笑していた。
「なるほど。
今までは自制していたんだ・・・」
シェイラが呆れたように薄く笑う。
「ザルガ共和国でも有人な島が使えなくなったり国家が滅ぶ規模でヤバい呪具を取り扱うと本人だけでなく一族全員連座で処刑なんてこともあるからな。
お手軽な呪具とヤバい呪具の違いが認識されていない国にはあの安物呪具も売り込まないのが過去の経験から得た暗黙知らしい。
で、アファル王国でも呪具の情報が公告されて、解呪の魔具での定期的な点検も義務付けられたから、罪もない惚れ薬モドキな使い方も大丈夫だろうと解禁の噂があっちの商業ギルドで話が流れたんだってさ」
お手軽呪具の対応策を講じ始めたから、あれを売っても大丈夫になったと判断しただなんて滅茶苦茶な話だ。
「相変わらず、常識が変な方向に突き抜けている国よねぇ。
製造を殆どしない交易だけの国だからあそこまで商売になりふり構わずでも全世界を制覇しちゃうなんて事になっていないのか、自国以外と金儲け以外のかかわりを持とうとしないからこそ周辺国から攻め込まれていないのか、なんとも微妙な感じだわ・・・」
ため息を吐いてワインを注ぎながらシェイラが言った。
「そう言えば、うっかり勝っちまって占領したガルカ王国も何とか独立させようと昔の王族とか高位貴族を探しているらしいんだが、ザルガ共和国の一部でいる方が金回りが良いってことで絶対に元に戻りたくない一般市民に元王族とか高位貴族が殺されまくっちまって上手くいっていないんだって」
ついでにファルナから聞いたこぼれ話を暴露する。
もしかしたらこちらは呪具の話程一般公開する予定はない情報かも知れないが、まあ別に特にどうという事はない話だ。
「まあ、ガルカ王国も滅茶苦茶だったからねぇ。
どっちもどっちって感じだわ」
呆れたようにシェイラが笑う。
どっちもあまり隣国として好ましい相手じゃないよなぁ。
まあ、そこら辺は国のお偉いさんが頭を悩ませる話だ。
俺は気軽に魔具を開発して、時折シェイラに会いに来て発掘の手伝いでも出来れば良い。
【後書き】
実は深い陰謀はなかった!
ある意味、ザルガ共和国って違法行為とは単に取引に必要な賄賂の額が高いだけと認識しているような、金儲けにしか目が行っていない国なんですね~
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる