シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

737 星暦556年 橙の月 19日 確認したら、ヤバかった(15)

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「王都の方が先に広まるかと思ったんだが・・・意外に被害者はいないな」
次から次へとデートスポットとして人気らしき路地や広場を歩き回り、疲れ果てた俺はファルナと一緒にこれまたデートスポットして人気があるらしき甘味処に入ってお茶を頼んだ。

さて。
色々とデートスポットを知っているようだったが、ファルナが個人的に利用しているから知っていたのか、それとも第3騎士団として集めた情報なのか。

ちょっと興味あるところだが、聞いたら後が怖いのでその点に関して好奇心を満たしてはいない。
いい加減疲れたし。

デートスポットなのでせかせかと急いで歩くと人目を引く。
一応場違いに見えないようにそれなりにゆっくりとファルナと歩く羽目になったのだが・・・ゆっくり歩くのって意外と疲れるんだよなぁ。
疲れた時には足が遅くなるのに、何故か意図してゆっくり歩くと疲労度が大きくなる気がする。

「全然いないの?」
ケーキにフォークを刺し込みながらファルナが聞く。

「今日は見かけていない・・・と思ったら、ひとり来たぞ」
入り口が開き、何やら良い服を着た若い男が綺麗な美少女を伴って入ってきた。

どっちもまだ若いが、美少女の方はまだ10代半ばか後半って感じなのに対し、男は20代半ばぐらいだろう。
少し年が離れている気がしないでもない。
家同士の結びつきの結婚の為の付き合いなら不思議は無い年齢差だと思うが・・・男の方に呪具を掛けられた症状が出ている。

「うわ、怖え」
思わず美少女の方を凝視しそうになったので慌ててファルナの方へ眼を逸らす。

「なに、あんな若い子を呪具を使って誘惑しているの?
許しがたいわね」
ファルナが顔は微笑んだ形にしたまま、低い声で怒ったように言う。

「いや、美少女側が男を罠にかけてるっぽい」

「マジ???」
ぴくっとファルナも二人組の方に顔を向けそうになって止めていた。

「良い年した男が何だって若い女の子に呪具を使われるような羽目になったのか知らんが・・・放っておいたら幼女趣味って噂が立ちそうだから早いところ助けてやるべきだろうな。
それとも今晩の舞踏会が終わるまで放置か?」
高位貴族には警告が流されるという話だが、一応その前に今晩の舞踏会で様子を見てどの程度被害が出ているかを確認してから情報を広めることになっていると先ほどファルナに言われた。

高位貴族でも呪具を使って政敵の政略結婚を邪魔しようと考える人間がいる可能性はゼロではないと上の方の誰かが考えているらしい。

となるとここで二人組を捕まえて、加害者側の美少女が貴族に繋がっていると情報が洩れかねない。

しかし流石にあれだけ若い娘だったら夜まで拘束する訳にはいかないだろう。
・・・社交界では人前で踊る回数とか挨拶の仕方とかでそれなりに深読みできる慣習があるらしいから、放置していたら若い男の方はこの美少女にがっつり捕まる可能性もあるが、どうなんだろう?

「多分、あの若い男はフィダルト侯爵の三男だと思うのよね。
もうそろそろ婚約が発表されるって話だから元々家同士で話が決まっていて娘さんが魅力的な婚約者がよそ見しない様に自分に夢中にさせたいって我儘を言ったって言うならまだ良いんだけど・・・」
ため息をつきながらファルナが言う。

「あの美少女は婚約者として発表される予定の相手じゃないのか?」
つうか、あれだけ美人だったら化粧で少し大人っぽくすれば呪具なんぞ使わなくても男なんて幾らでも言いなりに出来るんじゃないのか?

それともいつまでも子ども扱いするから呪具を使うことにしたとか?
まあ、本来決まる筈の婚約をぶち壊すために呪具を使って誘惑しようとしている可能性もあるが。

とは言え、あの呪具の効果は数回使う程度ではそこまで強力ではない。
まだ理性で十分決まり事を守れる程度の筈だから、家の為の婚約を台無しにするとしたら本人も婚約その物を本心では微妙に思っているからという事になるだろう。

まあ、あの若いのがアホンダラでずっと解呪の魔具の傍に寄っていないならかなり強力に洗脳されている可能性もあるが・・・こっから視える範囲ではそこまで強くかかっている様子ではない。

「顔まで知っているのはばっちり適齢期な貴族だけなのよ。
あの若い子はまだちょっと早いから知らないわ。
有名な美少女はそれなりにいるけど・・・あれだったらまだ今晩の舞踏会に来るには早すぎる筈よ」
ファルナが応じる。

あれ?
舞踏会って16歳からだよな?
あの美少女って何歳なんだ?


【後書き】
大人っぽい化粧をした若い女の子の年齢判断が下手なウィル。
実は少女は13歳w
完全にロリコン呼ばわりされる年齢差ですね~。

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