シーフな魔術師

極楽とんぼ

文字の大きさ
上 下
733 / 1,077
卒業後

732 星暦556年 橙の月 12日 確認したら、ヤバかった(10)

しおりを挟む
俺の危機回避体勢を鼻で笑ったファルナはカバーを開いて中身の紙をがっつり読み始めた。

流石に他の人間には見えない角度で持っているが、捜査員が部屋中の書類を調べている最中だと云うのに図太い。

これでがどっかの高位貴族や王族のヤバい浮気関連の手紙だったらどうするんだよ?
幾ら国軍の士官でウォレン爺の部下(多分)だとしても、あんまりにもヤバすぎる情報を知った人間の末路って言うのは誰にも知られない墓ってことが多いんだぞ??

「2階や他の部屋にも隠し金庫が無いか、確認してくる」
取り敢えず、変なことを見つけるにしても俺がいないところでやって欲しいので、退散することにした。

この部屋よりも重要な隠し場所は無いとは思うが・・・逃げる時の資金源になるような隠し財産もあるんだったら没収しておく方が良いだろう。
まあ、一つの家に全部詰め込むほどアホではないとは思うが。

王都なり、他国のどっかの港街なりに隠れ家があるだろうが、先立つものが無ければそこまで辿り着くのだって難しい。
取り敢えずこの次男を国が利用するか処刑するかを決める前に変に逃げられない様に、手軽なところにある資金源は全て没収しておく方が無難だ。

地下室から上がり、洗濯室に首を突っ込んで特に斬新な隠し場所が無いのを確認したら台所の方へ向かう。
次男《ゼネファルト》は食道楽なのか、やたらと色々と香辛料がある。
パントリーを覗いてみたら更に沢山ストックがあった。

東大陸から呪具を仕入れる際に香辛料も沢山買い付けているようだ。
換金価値はかなりあるとは思うが・・・流石に胡椒や丁子をそこら辺で現金化して船や馬車に乗るのは難しい。

パントリーに地下収納みたいな引き出しがあってそこに高そうなワインがそこそこの数あったが・・・こちらももしもの時の持ち出しには向かない。

が。
高級そうな赤いボトル(確か同じ銘柄のを以前どっかの貴族がオークションでとんでもない金で買い取ったと自慢しているのを奥さんのネックレスを拝借しに行った時に聞いた記憶がある)の一つが、中に宝石が入っていた。

宝石って濡らしても良いんかね?
少なくともこないだの海神の神殿にあった真珠はダメだったが・・・あれは年月が経ちすぎていたせいもあるかな?

取り敢えず、傍で見ていた役人を呼びつけ、ボトルを持ち上げて渡した。
「中に宝石が入っているっぽいから確認した方が良い」

考えてみたら、石の一種である宝石が液体であるワインの代わりに入っていれば分かるが、調理用の小麦粉の袋の一部が麻薬だとしても俺には分からないな。

そう言うのも調べるんだろうか?
適当にやっていたら調べる担当の警備兵にネコババされそうだが・・・まあ、違法麻薬の販売についても調べるんだ、そこら辺はちゃんとプロが対応するんだろう。

他に俺が分かるような隠し物は1階には無かったので2階へ進む。

寝室には普通の金庫があり、他の客室は特に何もなく・・・屋根裏の使用人の部屋へ行く階段の途中の板が1枚外れるようになっていてその中に束になった手紙が箱に入れられていた。

こちらは男女両方だから普通の脅迫用なのかな?
箱を手に、下に降りて行ったらリビングのわきの小さ目な部屋にファルナが次男《ゼネファルト》と二人きりで座っていた。

俺が見つけた怪しげな手紙がファルナの手の中でひらひらと動いている。
やべ、脅している所だったか。

「失礼、また後で来る」
すぐさま引っ込もうと扉を閉めるために一歩下がったが、ファルナに呼び止められた。

「あら、他にも手紙も見つけたの?」
俺の手にあった箱とその中に入っている紙の束を見てファルナが尋ねる。

「ああ。
2階はちょっとした装飾品と宝石と金貨が寝室、この手紙が使用人用の階段脇にあっただけだな。
ちなみに台所ではワインボトルの中に宝石が入っていた。
小麦粉とかの中に麻薬がまじっていても俺は分からんが、そこら辺は警備兵の誰かが調べるのか?」
隠し財産の殆どは見つかったから協力した方が為になるぞ~と知らしめるために発見した隠し場所についてファルナに知らせていく。

「ありがと。
ふふふ、そう言えばさっきは隠し場所から手紙を読む前にあっという間に消えちゃったけど、それ程危険な物ではなかったわよ?
単なる純愛の証みたいな手紙?
後生大事に持っているということは、今でも大切な人なんでしょうねぇ」
おいおい、本人が持っていた自分宛のラブレターで脅すつもりなのか?

そんなの上手くいくんかね??


【後書き】
純愛の証ww
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

ある、義妹にすべてを奪われて魔獣の生贄になった令嬢のその後

オレンジ方解石
ファンタジー
 異母妹セリアに虐げられた挙げ句、婚約者のルイ王太子まで奪われて世を儚み、魔獣の生贄となったはずの侯爵令嬢レナエル。  ある夜、王宮にレナエルと魔獣が現れて…………。  

婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話

Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」 「よっしゃー!! ありがとうございます!!」 婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。 果たして国王との賭けの内容とは――

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな

こうやさい
ファンタジー
 わたくしは婚約者や義妹に断罪され、学園から追放を命じられました。  これが「ざまぁ」されるというものなんですのね。  義妹に冤罪着せられて殿下に皆の前で婚約破棄のうえ学園からの追放される令嬢とかいったら頑張ってる感じなんだけどなぁ。  とりあえずお兄さま頑張れ。  PCがエラーがどうこうほざいているので消えたら察してください、どのみち不定期だけど。  やっぱスマホでも更新できるようにしとかないとなぁ、と毎度の事を思うだけ思う。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

(完)実の妹が私を嵌めようとするので義理の弟と仕返しをしてみます

青空一夏
ファンタジー
題名そのままの内容です。コメディです(多分)

思わず呆れる婚約破棄

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある国のとある夜会、その場にて、その国の王子が婚約破棄を言い渡した。 だがしかし、その内容がずさんというか、あまりにもひどいというか……呆れるしかない。 余りにもひどい内容に、思わず誰もが呆れてしまうのであった。 ……ネタバレのような気がする。しかし、良い紹介分が思いつかなかった。 よくあるざまぁ系婚約破棄物ですが、第3者視点よりお送りいたします。

もう、終わった話ですし

志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。 その知らせを聞いても、私には関係の無い事。 だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥ ‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの 少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?

処理中です...