728 / 1,038
卒業後
727 星暦556年 橙の月 12日 確認したら、ヤバかった(5)
しおりを挟む
「・・・魔術師にとっては自分一人を転移門で移動させるのはそれ程大変じゃあないって話を聞いたけど、本当?」
船乗りと宿屋の女性を解放した後、彼に呪具を使ったらしき女と他の2組の加害者らしき女と男を尋問したファルナが戻ってきて暫し現地の役人と話し合ったと思ったら、俺の所へ転移門のことを尋ねにきた。
転移門で今まで回った場所をもう一度回ってこいって言うのか?
港町って言っても漁港に毛が生えた程度の所もあったからそう言う場所には魔術院の支部は無いが、ここはそれなりに大きな港なので支部があり、急いで戻れないことは無いが・・・。
ちらっと見るだけじゃあここ程あっさり被害者が見つかるかは不明だぞ?
「まあ、俺一人での転移だったらそれ程大変じゃないが・・・。
魔術院の支部の傍にデートスポットとして人気があるような露店通りがあるとは限らないし、俺一人で周って見てくるだけって訳にもいかないだろ?
各街のデートスポットを案内する人間と被害者がいたら捕獲しておく人間が必要だが、それを直ぐに手配できるのか?」
もう一度回る必要があるか確認する為に見て回るという手もあるが。
「・・・考えてみたら、貴方なら呪具を大量に持っている人間も見つけられるわよね。
販売元を探すのに協力してもらう方が良いか」
ちょっと悩んで、行き当たりばったりな確認よりはしっかりここで販売元を捕まえてそこから供給源や配給先を探す方が良いと思ったのか、ファルナが別のことを言いだした。
俺の契約って単に怪しい奴を視て探すだけの筈なんだけどなぁ。
まあ、協力してさっさと終わらせないとまた去年みたいに年末の休みを潰されかねない。取り敢えずここは文句を言わずに協力しておこう。
夕食時にでも追加報酬を要求だな。
「誘惑した側の人間から、どこで呪具なりお呪《まじな》いなりを買ったのか聞けたのか?」
既に目安が付いているんだったらついて行って『後ちょっとで逃げられた』を防ぐのに協力するぐらいはしてやろう。
「裏通りの出店で売っているらしいわ。
主に若い女性相手に売っているみたいだから裏通りの出店の癖に昼過ぎから商売をしているって話。
今から行くわよ」
ファルナが剣を手に取りながら言う。
なるほど。
裏通りの出店って夕方から夜に商売をする怪しげな店が多いんだが、流石に裏通りを夜に出歩く良家の若い女はいないだろう。
少なくともぼったくり価格な呪具を買うだけの金がある女はそんな危険は冒さない。
誘拐されたり乱暴されたりしたんじゃあ、意中の男を捕まえるのに差し支える。
目的とする購入層を考えると真昼間から売るしかなく・・・それでもいつでも逃げ出せるように店舗ではなく出店を使うことになるから、ある意味目立つかもしれないな。
「へいへい」
ファルナと現地の警備兵と役人と一緒に港から少し離れた方向の裏通りへ進む。
こんなに人を集めたら目立つんじゃないかね?
場所が分かっているなら前もって警備兵を目的の裏通りの周辺に散らばって配置させておけば良いのに。
そんなことを考えながらファルナの後をついて宿屋のある広場から裏通りに入ったが・・・道が長かった。
『裏通り』というよりも、『表のメイン通りじゃない2番目の通り』といった感じだな。
港で入荷した物を売る店舗や出店が、港から街の中央部を突っ切って更に内陸部までずっと続いている。
確かにこの通りを全て囲むのは難しいか。
幸い人通りが多いから警備兵もある程度は紛れているみたいだし。
でも、真昼間から出店をやっていてもあまり目立たないから店を見つけるのは手間そうだ。
港の方へ向かうのと、内陸方面へ向かうのとどちらにするのかと思ったら、2手に分かれて俺たちは港の方へと向かった。
これってどっちかで見つかって声を上げても、通行人が邪魔でもう一方と合流するのは至難の業なんじゃないかねぇ。
数人を内陸側から逃げるのを防ぐために配置して、後は表通りで港に向かってそっちから全員纏まってしっかり調べた方が逃げられないんじゃないかという気もするが。
まあ、呪具って言っても誘惑用となったらそこまで死ぬ気では逃げないかな?
売っている方もあまり深く考えていない可能性は高いし。
こういうのって下っ端の実行役は実は違法行為をしていることすら自覚していない場合も多いんだよな。
金を集める上役は分かっているが、そいつらはそう簡単には見つからない様に上手く立ち回る。
ここまで派手に探していたら実行役から上をたどった時点で既に逃げられているかもなぁ。
港町だから船があれば国外にだって逃げられるし。
まあ、なるようになるだろう。
俺の年末年始を潰しさえしなければ何でも良いや。
【後書き】
定期的に解呪する決まりなので、誘惑されたその日にベッドインしなければ被害者も致命的な事態にはならない・・・筈。
それもあってちょっと投げやりなウィル君w
船乗りと宿屋の女性を解放した後、彼に呪具を使ったらしき女と他の2組の加害者らしき女と男を尋問したファルナが戻ってきて暫し現地の役人と話し合ったと思ったら、俺の所へ転移門のことを尋ねにきた。
転移門で今まで回った場所をもう一度回ってこいって言うのか?
港町って言っても漁港に毛が生えた程度の所もあったからそう言う場所には魔術院の支部は無いが、ここはそれなりに大きな港なので支部があり、急いで戻れないことは無いが・・・。
ちらっと見るだけじゃあここ程あっさり被害者が見つかるかは不明だぞ?
「まあ、俺一人での転移だったらそれ程大変じゃないが・・・。
魔術院の支部の傍にデートスポットとして人気があるような露店通りがあるとは限らないし、俺一人で周って見てくるだけって訳にもいかないだろ?
各街のデートスポットを案内する人間と被害者がいたら捕獲しておく人間が必要だが、それを直ぐに手配できるのか?」
もう一度回る必要があるか確認する為に見て回るという手もあるが。
「・・・考えてみたら、貴方なら呪具を大量に持っている人間も見つけられるわよね。
販売元を探すのに協力してもらう方が良いか」
ちょっと悩んで、行き当たりばったりな確認よりはしっかりここで販売元を捕まえてそこから供給源や配給先を探す方が良いと思ったのか、ファルナが別のことを言いだした。
俺の契約って単に怪しい奴を視て探すだけの筈なんだけどなぁ。
まあ、協力してさっさと終わらせないとまた去年みたいに年末の休みを潰されかねない。取り敢えずここは文句を言わずに協力しておこう。
夕食時にでも追加報酬を要求だな。
「誘惑した側の人間から、どこで呪具なりお呪《まじな》いなりを買ったのか聞けたのか?」
既に目安が付いているんだったらついて行って『後ちょっとで逃げられた』を防ぐのに協力するぐらいはしてやろう。
「裏通りの出店で売っているらしいわ。
主に若い女性相手に売っているみたいだから裏通りの出店の癖に昼過ぎから商売をしているって話。
今から行くわよ」
ファルナが剣を手に取りながら言う。
なるほど。
裏通りの出店って夕方から夜に商売をする怪しげな店が多いんだが、流石に裏通りを夜に出歩く良家の若い女はいないだろう。
少なくともぼったくり価格な呪具を買うだけの金がある女はそんな危険は冒さない。
誘拐されたり乱暴されたりしたんじゃあ、意中の男を捕まえるのに差し支える。
目的とする購入層を考えると真昼間から売るしかなく・・・それでもいつでも逃げ出せるように店舗ではなく出店を使うことになるから、ある意味目立つかもしれないな。
「へいへい」
ファルナと現地の警備兵と役人と一緒に港から少し離れた方向の裏通りへ進む。
こんなに人を集めたら目立つんじゃないかね?
場所が分かっているなら前もって警備兵を目的の裏通りの周辺に散らばって配置させておけば良いのに。
そんなことを考えながらファルナの後をついて宿屋のある広場から裏通りに入ったが・・・道が長かった。
『裏通り』というよりも、『表のメイン通りじゃない2番目の通り』といった感じだな。
港で入荷した物を売る店舗や出店が、港から街の中央部を突っ切って更に内陸部までずっと続いている。
確かにこの通りを全て囲むのは難しいか。
幸い人通りが多いから警備兵もある程度は紛れているみたいだし。
でも、真昼間から出店をやっていてもあまり目立たないから店を見つけるのは手間そうだ。
港の方へ向かうのと、内陸方面へ向かうのとどちらにするのかと思ったら、2手に分かれて俺たちは港の方へと向かった。
これってどっちかで見つかって声を上げても、通行人が邪魔でもう一方と合流するのは至難の業なんじゃないかねぇ。
数人を内陸側から逃げるのを防ぐために配置して、後は表通りで港に向かってそっちから全員纏まってしっかり調べた方が逃げられないんじゃないかという気もするが。
まあ、呪具って言っても誘惑用となったらそこまで死ぬ気では逃げないかな?
売っている方もあまり深く考えていない可能性は高いし。
こういうのって下っ端の実行役は実は違法行為をしていることすら自覚していない場合も多いんだよな。
金を集める上役は分かっているが、そいつらはそう簡単には見つからない様に上手く立ち回る。
ここまで派手に探していたら実行役から上をたどった時点で既に逃げられているかもなぁ。
港町だから船があれば国外にだって逃げられるし。
まあ、なるようになるだろう。
俺の年末年始を潰しさえしなければ何でも良いや。
【後書き】
定期的に解呪する決まりなので、誘惑されたその日にベッドインしなければ被害者も致命的な事態にはならない・・・筈。
それもあってちょっと投げやりなウィル君w
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる