716 / 1,038
卒業後
715 星暦556年 黄の月 14日 もうそろそろ涼しい(3)
しおりを挟む
「・・・抱き枕の中に仕込むのはどうだろう?」
何通りかの形を試してみた結果、薄い箱型の発熱型魔具はイマイチだった。
薄っぺらくすると魔力吸収効率が良くなくて発熱量が足りず、もっと嵩を高くすると寝返りを打った際につい押しのけてしまう。
布型のも出来ないか一応試してみたのだが・・・普通に銅線をところどころ縫い付けただけだと寝返りを打ったりくしゃくしゃにした際に魔術回路が破損することが多く、一度なんかは危なく火事になりそうなぐらい高温になって焦った。
糸の様に細く撚った銅線をパディン夫人に頼んで魔術回路の形に刺繍して貰うのも試したが、これには3日も掛かった。
一応一番問題は無かったが・・・時間が掛かりすぎるし、汗が付くとどうも銅線が緑色に変色し始めるので微妙という結論になった。
頭を抱えて考えていたところで、シャルロが抱き枕を提案した。
「抱き枕なんて、誰が使うんだ?
まあ、子供用には良いかもだが」
枕にナイフを仕込むことは今でもやっているが、抱き枕なんて嵩張って邪魔なので使ったことが無い。
「う~ん、それなりに良いんだけどなぁ。
確かに結婚してからは使ってないけど」
どうやらシャルロが抱き枕の愛用者だったらしい。
「抱き枕って朝起きるまで抱いているのか??」
俺だったらベッドの上に邪魔なものがあったらけり落とす可能性が高いので、暖房寝具として意味がないのだが。
「暖かい素材で覆えば、寒くなったら自発的に抱き着くから丁度いいかも知れないな」
アレクが言った。
へぇぇ。
まあ、子供用には良いか?
抱き枕だったらカバーを洗濯すればクッション内部までは洗わないだろうから、魔術回路の設置もそれ程工夫が要らないだろうし。
火傷したり火事にならない様に温度の上昇に関してはきっちり制限を付けなければいけないが。
子供用だとすると魔力持ちで、まだ魔力の制御を学んでいない子供が変な風に魔力を大量に排出する可能性はあるから、大量に魔力を流し込んでも不要な分は離散するようにしておかないと。
「後はこう、指先を切り捨てたゆったりめの靴下の足の甲や足首部分にポケットを付けてそこに差し込んで温めるような形で魔術回路を作ってはどうかな?
やっぱり足の方を温めるのが重要らしいし、何だったら腹巻みたいので同じデザインも可能だろ?」
ボタンで留めれば動き回ってもとポケットから落ちたりしないだろうし、中から出せば洗濯も出来る。
「確かに足首の辺と腰回りを温められれば大分快適かも知れないな。
指先の部分を切り捨てる必要はあるのか?」
アレクがちょっと首を傾げた。
「足の先は蒸れると痒くなるだろ?」
清早に加護を貰ってから水虫を治してもらって問題は無くなったが、昔は靴や靴下で足先が蒸れると痒くなったものだ。
寝る時に温まって寝ようと思っても、足の指が痒くなったら快眠できないだろう。
「あ~。
神殿で治してもらっても何故か戻るらしいよね。
僕たちの魔具のせいで痒いのが悪化したって言われたら困るか」
シャルロが他人事の様に同意した。
考えてみたら、シャルロは子供の頃から蒼流がいるのだ。
水虫になった事なんて一度もないのだろう。
「あれは神殿に行く際に靴も買い替えると良いという話だけど、それでも復活するらしいな。
まあ、確かに足の指の部分を切っておけば靴下型に挿入する魔具でも大丈夫かも知れない。
どのくらいゆとりを持たせたサイズにするかは何通りか試さないと、脱げてしまうだろうが」
アレクが応じる。
「靴下の生地はそれなりにしっかりしたのじゃないとポケットに入れた魔術回路が曲がらない様に出来ないだろうから、ベルトで軽く止める形にすれば大丈夫なんじゃないか?
やってみないと分からないが」
靴下なんてあまり注意を払って来なかったからな。
まあ、色々試してみれば良いだろう。
「あとは・・・汗を通さないけど魔力は通す素材があったらシーツの下に敷くのもありかも?
体重を乗せて上で人が寝ると魔術回路が曲がったり断線したりするかもだから注意が必要だろうけど」
シャルロが更に提案した。
「固い目のしっかりしたマットレスの下に置けば断線や変形の心配をしなくていいが、それでは熱が伝わりにくいし余剰魔力の吸収効率も悪そうだ。
かと言って薄い板状でやったら寝心地が悪い。
これも何通りか試してちゃんと眠れる形のを見つけられるかだな」
俺の場合はどれだけベッドが固くても眠れるから、アレクとシャルロに色々試して貰う事になりそうだ。
「じゃあ、取り敢えず靴下型と、腹巻型と、抱き枕型と、シーツ下型を作ってみようか」
シャルロが話をまとめた。
もっと寒かったら更にテストしやすいのだが・・・今でも肌寒くなってきたので試作品を付けて薄いタオルケットだけを被って寝るようにすればそれなりに結果がわかるかな?
足首を温めるタイプだけでも先にシェイラに試作品を提供して感想を聞いても良いし。
腹巻型も欲しがるかな?
何通りかの形を試してみた結果、薄い箱型の発熱型魔具はイマイチだった。
薄っぺらくすると魔力吸収効率が良くなくて発熱量が足りず、もっと嵩を高くすると寝返りを打った際につい押しのけてしまう。
布型のも出来ないか一応試してみたのだが・・・普通に銅線をところどころ縫い付けただけだと寝返りを打ったりくしゃくしゃにした際に魔術回路が破損することが多く、一度なんかは危なく火事になりそうなぐらい高温になって焦った。
糸の様に細く撚った銅線をパディン夫人に頼んで魔術回路の形に刺繍して貰うのも試したが、これには3日も掛かった。
一応一番問題は無かったが・・・時間が掛かりすぎるし、汗が付くとどうも銅線が緑色に変色し始めるので微妙という結論になった。
頭を抱えて考えていたところで、シャルロが抱き枕を提案した。
「抱き枕なんて、誰が使うんだ?
まあ、子供用には良いかもだが」
枕にナイフを仕込むことは今でもやっているが、抱き枕なんて嵩張って邪魔なので使ったことが無い。
「う~ん、それなりに良いんだけどなぁ。
確かに結婚してからは使ってないけど」
どうやらシャルロが抱き枕の愛用者だったらしい。
「抱き枕って朝起きるまで抱いているのか??」
俺だったらベッドの上に邪魔なものがあったらけり落とす可能性が高いので、暖房寝具として意味がないのだが。
「暖かい素材で覆えば、寒くなったら自発的に抱き着くから丁度いいかも知れないな」
アレクが言った。
へぇぇ。
まあ、子供用には良いか?
抱き枕だったらカバーを洗濯すればクッション内部までは洗わないだろうから、魔術回路の設置もそれ程工夫が要らないだろうし。
火傷したり火事にならない様に温度の上昇に関してはきっちり制限を付けなければいけないが。
子供用だとすると魔力持ちで、まだ魔力の制御を学んでいない子供が変な風に魔力を大量に排出する可能性はあるから、大量に魔力を流し込んでも不要な分は離散するようにしておかないと。
「後はこう、指先を切り捨てたゆったりめの靴下の足の甲や足首部分にポケットを付けてそこに差し込んで温めるような形で魔術回路を作ってはどうかな?
やっぱり足の方を温めるのが重要らしいし、何だったら腹巻みたいので同じデザインも可能だろ?」
ボタンで留めれば動き回ってもとポケットから落ちたりしないだろうし、中から出せば洗濯も出来る。
「確かに足首の辺と腰回りを温められれば大分快適かも知れないな。
指先の部分を切り捨てる必要はあるのか?」
アレクがちょっと首を傾げた。
「足の先は蒸れると痒くなるだろ?」
清早に加護を貰ってから水虫を治してもらって問題は無くなったが、昔は靴や靴下で足先が蒸れると痒くなったものだ。
寝る時に温まって寝ようと思っても、足の指が痒くなったら快眠できないだろう。
「あ~。
神殿で治してもらっても何故か戻るらしいよね。
僕たちの魔具のせいで痒いのが悪化したって言われたら困るか」
シャルロが他人事の様に同意した。
考えてみたら、シャルロは子供の頃から蒼流がいるのだ。
水虫になった事なんて一度もないのだろう。
「あれは神殿に行く際に靴も買い替えると良いという話だけど、それでも復活するらしいな。
まあ、確かに足の指の部分を切っておけば靴下型に挿入する魔具でも大丈夫かも知れない。
どのくらいゆとりを持たせたサイズにするかは何通りか試さないと、脱げてしまうだろうが」
アレクが応じる。
「靴下の生地はそれなりにしっかりしたのじゃないとポケットに入れた魔術回路が曲がらない様に出来ないだろうから、ベルトで軽く止める形にすれば大丈夫なんじゃないか?
やってみないと分からないが」
靴下なんてあまり注意を払って来なかったからな。
まあ、色々試してみれば良いだろう。
「あとは・・・汗を通さないけど魔力は通す素材があったらシーツの下に敷くのもありかも?
体重を乗せて上で人が寝ると魔術回路が曲がったり断線したりするかもだから注意が必要だろうけど」
シャルロが更に提案した。
「固い目のしっかりしたマットレスの下に置けば断線や変形の心配をしなくていいが、それでは熱が伝わりにくいし余剰魔力の吸収効率も悪そうだ。
かと言って薄い板状でやったら寝心地が悪い。
これも何通りか試してちゃんと眠れる形のを見つけられるかだな」
俺の場合はどれだけベッドが固くても眠れるから、アレクとシャルロに色々試して貰う事になりそうだ。
「じゃあ、取り敢えず靴下型と、腹巻型と、抱き枕型と、シーツ下型を作ってみようか」
シャルロが話をまとめた。
もっと寒かったら更にテストしやすいのだが・・・今でも肌寒くなってきたので試作品を付けて薄いタオルケットだけを被って寝るようにすればそれなりに結果がわかるかな?
足首を温めるタイプだけでも先にシェイラに試作品を提供して感想を聞いても良いし。
腹巻型も欲しがるかな?
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる