シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

709 星暦556年 黄の月 1日 久しぶりに船探し(21)

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「腰が辛い・・・」
陶器の破片交じりの砂は中々重かった。
箱を持ち運ぶのは新しい台車型魔具で運べるからそれ程苦労しないだろうと思っていたのだが、箱に掬って入れるのが想定以上に大変だった。

最初は部屋に海水を戻して砂と破片を海水ごと蒼流に箱に入れて貰おうと思っていたのだが、どうしても箱の中身が『主に水、おまけで砂と破片』という感じになってしまい、必要な箱の数が膨大になる上に船の中で水を垂らしまくるので自分で掬って入れる方が良いだろうとなったのだ。

大きなスコップで試してみたのだが、一回に掬える量が限られている。
そこで浅い箱の片面の板を外して塵取りモドキにして床を擦るように動かして砂と破片を集めて箱に入れているのだが・・・中腰でそれなりに重さのある砂(と破片)を集めるのは想定以上に大変だった。

「思ったよりも重いね~」
ため息をつきながらシャルロがしゃがみ込んだ。

「箱に入れるのも面倒だし」
塵取りモドキと言っても塵取りでは無いので、どうしても掬った中身を箱に移す際に色々零れるのだ。

「・・・小型の手漕ぎボートを使わないか?
がばっと海水ごと砂と破片をボートに注ぎ込んでもらい、砂が落ち着いたら海水を捨ててもう一度同じことをし、ボートの半分ぐらいまで溜まったら屋敷船の方へ持って行こう。
箱詰めは・・・王都の方で人を雇ってやれば良い。
小型ボートが足りなくなったら適当に中古のをファーグの港で買えば良いだろう」
アレクが思い切った方向転換を提案してきた。

屋敷船は俺とシャルロが居ない時は動かすのもままならないので、一応何かがあった時に動けるよう避難用の手漕ぎボートは寝室の数だけあるのでそれなりに小型の手漕ぎボートは積み込んである。

海水ごと砂と破片を集めると水の量の方が多くなるが、小型ボートなら平べったいので箱に入れるよりも多めの量の砂と破片を集められそうだ。

「そうだな。
どうやら箱詰め作業って思っていたよりも大変そうだから、小型ボートを使ってみようぜ」
破片を使ったパズル組み立ても楽しいが、果てしなさそうだからなぁ。
あまりそれを集めるために労力と時間を掛けたくない。

元々、神殿長(多分)にネコババされまくった神殿側の宝物庫はスカスカなので、あそこを今日1日ツァレスとシェイラが確認し、その後は神殿長の地下室に行く予定らしいんで明日からは神殿の方の神具の箱詰めだ。

取り敢えず、ちゃちゃっとこの破片集めを終わらせて、時間が余ったら適当に神殿長の個人用地下室の宝物の砂を払って映像記録でも撮っておきたい。

◆◆◆◆

「じゃあ、蒼流、お願い~」
小型ボートを部屋の窓の外に置き、シャルロが声をかける。

ぶわっと海水がどこからか流れ込み、砂を巻き上げて小型ボートの方へ流れ込む。

ふむ。
良く見ると、砂はかなり舞い上がっているが、陶器の破片は余程小さいの以外は底に落ちて水に揺られるだけであまり動いていない。

「これって水と一緒に砂だけ巻き上げてボートから出したら、破片だけ集められないか?
細かいのは砂と一緒に出ていっちまうだろうけど、どうせ完璧に再現するのは無理だろうから小さな破片が無くなっていても構わなくないか?」
砂が沢山ある素材を歴史学会に持ち込んだところで、誰かが砂をどけなければならないのだ。

だったら最初から大部分の砂も取り除いた形にしておく方が持ち込む俺たちも楽だし、持ち込まれた歴史学会の方も手間が省けて良いだろう。

「確かに、考えてみたら砂の方は大分と舞い上がってるね。
蒼流、舞い上がった砂は窓の外にでも捨てちゃってくれる?」
シャルロが蒼流に頼む。

どうせ嵐の中で島が沈み、窓が割れて海水が奔流として流れ込んだ際に破片の一部は洗い流されているんだろうから、これで十分だろう。

どうしても誰かが砂の中を漁って無くなった破片を探したいというんだったら、連れて来てもいいし。
それだけ根性があるんだったら協力しようじゃないか。

そんかわり、途中で諦めるのは許さないが。



【後書き】
金持ち神殿長が溜め込んでいた、飾り棚一杯の綺麗な食器の破片を使ったジズゾーパズル。
完成に滅茶苦茶時間が掛かりそうw
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