708 / 1,038
卒業後
707 星暦556年 緑の月 30日 久しぶりに船探し(19)
しおりを挟む
結局、大量の箱と緩衝材及び新型の台車型魔具を持って来る必要があったので、アレクとシャルロが急いで王都に帰ることになった。
蒼流に本気で急いで貰えば9の刻に出て12の刻前後に王都に着けるとの話だったので、通信用魔具でセビウス氏に連絡して必要な物の手配をして貰い、王都でちゃちゃっと必要品を屋敷船へ運び込んでもらっている間に今後の手配について相談し、夜までに帰ってくることが決まったのだ。
食材やその他の買い物をする為にパディン夫妻も一度ついでに王都へ戻ることに。
メイドさんは偶々今日はファーグの街の知り合いの所に泊ることになっていたので、そのまま予定通り。
そして俺はシェイラやツァレスと一緒に海底で神殿探索だ。
俺一人(というか清早だけど)でも神殿の排水は十分出来るし何かあったら手漕ぎ船に3人乗せてファーグの街へ戻るのも可能なので問題は無い筈。
取り敢えず、急遽パディン夫人に作って貰ったランチとちょっとしたおやつ、あと一応夜が遅くなった時用の軽食を貰ったので、俺はのんびりと学者二人の行動を観察しつつ、時折ふらふらと気が向いたところを見て回っていた。
昼過ぎに、腹が減ったので食事のことなんぞ気にしていなかった二人に声をかける。
「昼食~!!」
「後でいい・・・」
興味なさげにツァレスが返したが、シェイラは荷物を置いて俺の方へ来た。
シェイラが無理やり昼休みを取らせないところを見るに、ツァレスはちょっとぐらい昼食を抜いても(もしくは遅れても)倒れないんだろう。
まあ、いかにも熱意が体力を補っていそうだよな。
「ウィル一人こっちに残っているんでいいの?」
バスケットの中から切り分けたミートパイを取り出しながらシェイラが尋ねる。
「おう。
一人おまけが居るけど実質いないに近いんだから、シェイラと二人で楽しく過ごすっていう予定通りだろ?
シェイラたちこそ、研究が数日しか出来ないけどいいのか?」
それに突然ヴァルージャの方の遺跡を数日間とは言え投げ出しちゃって大丈夫なのかね?
「まあ、もっとじっくり調べられたら更に嬉しいけど、それでも数百年間も人の手に触れずに残っていた遺跡を荒らされる前にそのまま調べられるのは一生に一度あったら幸運なぐらいの事だから、あまり贅沢は言えないわね。
流石にフォレスタ文明遺跡を放り出すほどではないけど、数日だったらあっちを放置しても問題は無いから、その間にたっぷり楽しませてもらうわ」
にかりと笑いながらシェイラが言った。
なるほど。
数日のお楽しみ程度で良いレベルの遺跡なのか。
「あまり歴史的発見はないのか?」
俺から見たら石造りの神殿と宝だけだからイマイチ調べる物が無い気がするのだが、学者的にはどうなんだろう?
「500年前だったら現存する建物や神殿は幾つかあるからね。
修繕とか拡張とかが無かった500年前の様子がそのまま残っているのは珍しいし、神殿が蓄財に励んだ時期の宝がそのまま残っているのは現存の神殿にはまずないから、論文を書いたら反響は大きいとは思うけど・・・フォレスタ文明程ワクワクするような驚きと発見は無いかな?
ちょっとウィルと楽しみながら宝を掘り出して梱包する程度で丁度良いかも」
ふむ。
500年だとまだ色々残っているんだな。
資料が間違っているとか推論が裏付けされるとかといった楽しみはあるかもだが、もっと古い一度途絶えた文明の遺跡程の新鮮な驚きはない、と。
道理でツァレスがあっさり引いた訳だ。
何が何でも調べさせてくれって泣きつかれても困るから、丁度よかった。
「500年前だったら基本的に当時の記録とかがちゃんと残っているのか?」
極端に技術が500年で変わったとは思えないから、今と変わらず普通に訴訟や納税記録とかが残っていると思うが、考えてみたら神殿ってどんな記録が残るのだろうか?
「まさか!
そんな沢山の資料を保管しておけるほどの場所なんてどの組織にも無いわ。
まあ、去年ウィル達が開発した映像として記録できる魔具だったらあまり場所を取らないから今後はどうなるか知らないけど、今までは20年も経ったら書類は破棄されることが多かったから、偶然倉庫に忘れられて残されていた資料とか、どっかの屋根裏から出てきた日記とか、大学の図書館に当時の教科書とかが残っている程度ね。
それでもそれなりには残っているから大体の全体像は分かっている・・・つもりなんだけど、時折想定外な発見もあったりするから、比較的新しい歴史もそれなりに面白いのよ」
シェイラがデザート代わりの果物を手に取りながら教えてくれた。
なるほど。
退屈な納税用の資料も、100年とか200年前の物になれば興味深い歴史的資料になるのか。
ただし、200年経つ前に20年後ぐらいに破棄されちゃうからあまり残らないんだろうが。
貴族の屋敷とかだったら十分場所があるから歴史がある古い家系だったりしたら色々資料はあるのかもな。
・・・シャルロの一族なんてどうなんだろ?
蒼流に本気で急いで貰えば9の刻に出て12の刻前後に王都に着けるとの話だったので、通信用魔具でセビウス氏に連絡して必要な物の手配をして貰い、王都でちゃちゃっと必要品を屋敷船へ運び込んでもらっている間に今後の手配について相談し、夜までに帰ってくることが決まったのだ。
食材やその他の買い物をする為にパディン夫妻も一度ついでに王都へ戻ることに。
メイドさんは偶々今日はファーグの街の知り合いの所に泊ることになっていたので、そのまま予定通り。
そして俺はシェイラやツァレスと一緒に海底で神殿探索だ。
俺一人(というか清早だけど)でも神殿の排水は十分出来るし何かあったら手漕ぎ船に3人乗せてファーグの街へ戻るのも可能なので問題は無い筈。
取り敢えず、急遽パディン夫人に作って貰ったランチとちょっとしたおやつ、あと一応夜が遅くなった時用の軽食を貰ったので、俺はのんびりと学者二人の行動を観察しつつ、時折ふらふらと気が向いたところを見て回っていた。
昼過ぎに、腹が減ったので食事のことなんぞ気にしていなかった二人に声をかける。
「昼食~!!」
「後でいい・・・」
興味なさげにツァレスが返したが、シェイラは荷物を置いて俺の方へ来た。
シェイラが無理やり昼休みを取らせないところを見るに、ツァレスはちょっとぐらい昼食を抜いても(もしくは遅れても)倒れないんだろう。
まあ、いかにも熱意が体力を補っていそうだよな。
「ウィル一人こっちに残っているんでいいの?」
バスケットの中から切り分けたミートパイを取り出しながらシェイラが尋ねる。
「おう。
一人おまけが居るけど実質いないに近いんだから、シェイラと二人で楽しく過ごすっていう予定通りだろ?
シェイラたちこそ、研究が数日しか出来ないけどいいのか?」
それに突然ヴァルージャの方の遺跡を数日間とは言え投げ出しちゃって大丈夫なのかね?
「まあ、もっとじっくり調べられたら更に嬉しいけど、それでも数百年間も人の手に触れずに残っていた遺跡を荒らされる前にそのまま調べられるのは一生に一度あったら幸運なぐらいの事だから、あまり贅沢は言えないわね。
流石にフォレスタ文明遺跡を放り出すほどではないけど、数日だったらあっちを放置しても問題は無いから、その間にたっぷり楽しませてもらうわ」
にかりと笑いながらシェイラが言った。
なるほど。
数日のお楽しみ程度で良いレベルの遺跡なのか。
「あまり歴史的発見はないのか?」
俺から見たら石造りの神殿と宝だけだからイマイチ調べる物が無い気がするのだが、学者的にはどうなんだろう?
「500年前だったら現存する建物や神殿は幾つかあるからね。
修繕とか拡張とかが無かった500年前の様子がそのまま残っているのは珍しいし、神殿が蓄財に励んだ時期の宝がそのまま残っているのは現存の神殿にはまずないから、論文を書いたら反響は大きいとは思うけど・・・フォレスタ文明程ワクワクするような驚きと発見は無いかな?
ちょっとウィルと楽しみながら宝を掘り出して梱包する程度で丁度良いかも」
ふむ。
500年だとまだ色々残っているんだな。
資料が間違っているとか推論が裏付けされるとかといった楽しみはあるかもだが、もっと古い一度途絶えた文明の遺跡程の新鮮な驚きはない、と。
道理でツァレスがあっさり引いた訳だ。
何が何でも調べさせてくれって泣きつかれても困るから、丁度よかった。
「500年前だったら基本的に当時の記録とかがちゃんと残っているのか?」
極端に技術が500年で変わったとは思えないから、今と変わらず普通に訴訟や納税記録とかが残っていると思うが、考えてみたら神殿ってどんな記録が残るのだろうか?
「まさか!
そんな沢山の資料を保管しておけるほどの場所なんてどの組織にも無いわ。
まあ、去年ウィル達が開発した映像として記録できる魔具だったらあまり場所を取らないから今後はどうなるか知らないけど、今までは20年も経ったら書類は破棄されることが多かったから、偶然倉庫に忘れられて残されていた資料とか、どっかの屋根裏から出てきた日記とか、大学の図書館に当時の教科書とかが残っている程度ね。
それでもそれなりには残っているから大体の全体像は分かっている・・・つもりなんだけど、時折想定外な発見もあったりするから、比較的新しい歴史もそれなりに面白いのよ」
シェイラがデザート代わりの果物を手に取りながら教えてくれた。
なるほど。
退屈な納税用の資料も、100年とか200年前の物になれば興味深い歴史的資料になるのか。
ただし、200年経つ前に20年後ぐらいに破棄されちゃうからあまり残らないんだろうが。
貴族の屋敷とかだったら十分場所があるから歴史がある古い家系だったりしたら色々資料はあるのかもな。
・・・シャルロの一族なんてどうなんだろ?
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる