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卒業後
705 星暦556年 緑の月 30日 久しぶりに船探し(17)
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「ほう、これはファセール神殿の神具に近い様式だな!」
神殿の奥にあった宝物庫(多分)に案内された途端、ツァレスはささっと手に現れた刷毛で砂をどけながら最初に目についた金属を調べ始めた。
遺跡では人の手で触れることで塩分や脂分が付いたら劣化が進むので薄い皮手袋や絹手袋を嵌めて触るという話を以前聞いたが、ここでもちゃんと絹(多分)手袋をしている。
海にずっと沈んでいたんだから今さら塩分はどうでも良い気はするが、脂分がダメなのかな?
初日に見て回った際に幾つか手に取って触った気がするが・・・まあ、第一発見者の権利として許して貰おう。
「こちらはちょっとフォレスタ文明の文様にも近い感じがしますね。
多少は影響を受けていたのでしょうか?
時期的には大分と違うと思いますが」
別の棚にあった壺っぽいのを砂から掘り出したシェイラも何やら学者っぽい事を熱心に言っている。
お互い夢中になっているけど、相手が言っていることに耳を傾けているんかね?
幸い、地下室の扉はそれなりに頑丈だった上にちゃんと海に飲まれる前に鍵を閉めていたのか、浸水の勢いはゆっくりだったらしく中の物はあまり破損していない。
とは言え、ネコババされまくった後なせいか、棚の数に比べてかなり物は少ない気がするが。
まあ、もしかしたら木製の物が多かったのかも知れない。
いや、神殿長の地下室はもっと色々と金属製の物があったな。
やはり神殿長に盗まれまくった上に最後の嵐の前に神殿長か神官が重要な神具は持ち出したんじゃないかなぁ。
「ちなみに、奥にある神殿長の館っぽいとこの隠れ地下室にはもっと色々とあるぞ。
どうも神殿長が金を横領して貴金属製の物を買いまくっていたか、神具をネコババしていたっぽい」
色々盗まれている(多分)とは言え、神殿の宝物を一つ一つ丁寧に分類しながら取り出していたらそれだけで数日かかるだろう。
効率的に見て回る為にも、先にこの島の全貌を見せてからこれからの予定を話し合った方が無難だ。
・・・数日でツァレス達をここから引き剝がせるのか、かなり心配だが。
「ふむ。
まずはどのくらいの遺物があるのか、確認するべきだな。
見せて貰えるか?」
意外と理性的にツァレスが応じて立ち上がった。
シェイラの方が未練がましく壺の周りの砂をどけている。
まあ、シェイラだけだったらデート代わりに休みにここまで連れて来ても良いけど、売れる物は先に持ち出して売っちまう可能性が高いからなぁ。
柱とか壁だけ調べるのでも、楽しいかな?
神殿長の屋敷に連れて行き、まずは粉々になった何かがあったリビングとか食堂っぽい所を見せる。
「こちらの破片は流石に売れないと思うから、ここに残していくつもりだが・・・もしも回収して調べたいというのだったら協力する」
アレクがさらっと説明した。
まあ、こんだけ粉々だったら適当に清早や蒼流に箱に突っ込んで船に積んでくれって頼んでも大丈夫だろうから、回収して持ち出すのは大して手間じゃあないしな。
「うう~ん。
これだけの破片を組み立てるとしたらどれだけ時間が掛かる事か・・・。
凄く魅力的だが、予算が厳しいかなぁ」
ツァレスが床一面に散らばる砂に半ば埋まった破片を見ながらため息をついた。
「学生用の実習素材として回収しては?
いい練習になるでしょうし、本当の遺物に触れられるというのは学生にとってもいい刺激になりそう」
シェイラが提案した。
なるほど。
発掘現場で色々な破片をどうやって研究するかの実習に良いかもな。
実際に遺跡から出てきた物で、しかもただで入手できるんだし。
「それは良いね!!!
何か面白い研究結果がいつの日か発表されるかもしれない!!!
年始の休みの時なんかに僕もちょっと研究しに行こうかな」
ツァレスが嬉し気に同意した。
なんか、学生じゃなくって学者の方が年始とかの休みの時に集まって破片を組み立てる遊びを家族そっちのけでやりそうな気がする。
知らんぞ~。
せめて年に一度ぐらいはちゃんと家に帰って家族サービスをした方が良いんじゃないかと思うけどね。
学生の実習素材の使い道に関して楽し気に話し合うツァレスとシェイラを連れて、今度は書斎の方へ行く。
「多分元書斎だった場所だが・・・書類や書籍関係は全滅だな。
ここの金庫にちょっと真珠がバラで入っていたが・・・」
と言って板を外す。
「あれ?」
前回は一応まともに見えた真珠だが、今回は罅が入ってボロボロになっていた。
「前回見た時は普通に粒真珠だったよな??」
振り返ってアレクとシャルロに尋ねる。
折角シェイラに見せようと思ってそのままにしてあったのに。
「あ~。
真珠って元々何百年ももつような物じゃないからねぇ。
海水に浸かっていたお蔭でなんとか形を保っていたのかも?」
シャルロが覗き込んでボロボロになった真珠の残骸を見て言った。
おやま。
海水から出したのがダメだったのか?
「もう寿命だったんだろう。
海水に浸けたままだとしても動かしたら水の流れで外側が剥がれ落ちた可能性が高いし、どうしようもないだろう」
そっと指先で真珠だった物をつついてそれが崩れるのを確認したアレクもシャルロに同意した。
「ふうん。
ってことは、地下室にある宝物系も真珠を使っているのは全滅か」
そこまで良くは見ていなかったが、海神さまの神具なのだ。
確実に海の宝石である真珠を使っているだろう。
「構わないよ!!
金属の細工だけでも十分に研究価値があるからね!!!」
ツァレスが元気いっぱいに答えた。
嵌っていた真珠が駄目になっていても、金だったら換金価値は十分あるから研究用に提供するのは極一部になる予定だぞ?
【後書き】
学者は強しw
神殿の奥にあった宝物庫(多分)に案内された途端、ツァレスはささっと手に現れた刷毛で砂をどけながら最初に目についた金属を調べ始めた。
遺跡では人の手で触れることで塩分や脂分が付いたら劣化が進むので薄い皮手袋や絹手袋を嵌めて触るという話を以前聞いたが、ここでもちゃんと絹(多分)手袋をしている。
海にずっと沈んでいたんだから今さら塩分はどうでも良い気はするが、脂分がダメなのかな?
初日に見て回った際に幾つか手に取って触った気がするが・・・まあ、第一発見者の権利として許して貰おう。
「こちらはちょっとフォレスタ文明の文様にも近い感じがしますね。
多少は影響を受けていたのでしょうか?
時期的には大分と違うと思いますが」
別の棚にあった壺っぽいのを砂から掘り出したシェイラも何やら学者っぽい事を熱心に言っている。
お互い夢中になっているけど、相手が言っていることに耳を傾けているんかね?
幸い、地下室の扉はそれなりに頑丈だった上にちゃんと海に飲まれる前に鍵を閉めていたのか、浸水の勢いはゆっくりだったらしく中の物はあまり破損していない。
とは言え、ネコババされまくった後なせいか、棚の数に比べてかなり物は少ない気がするが。
まあ、もしかしたら木製の物が多かったのかも知れない。
いや、神殿長の地下室はもっと色々と金属製の物があったな。
やはり神殿長に盗まれまくった上に最後の嵐の前に神殿長か神官が重要な神具は持ち出したんじゃないかなぁ。
「ちなみに、奥にある神殿長の館っぽいとこの隠れ地下室にはもっと色々とあるぞ。
どうも神殿長が金を横領して貴金属製の物を買いまくっていたか、神具をネコババしていたっぽい」
色々盗まれている(多分)とは言え、神殿の宝物を一つ一つ丁寧に分類しながら取り出していたらそれだけで数日かかるだろう。
効率的に見て回る為にも、先にこの島の全貌を見せてからこれからの予定を話し合った方が無難だ。
・・・数日でツァレス達をここから引き剝がせるのか、かなり心配だが。
「ふむ。
まずはどのくらいの遺物があるのか、確認するべきだな。
見せて貰えるか?」
意外と理性的にツァレスが応じて立ち上がった。
シェイラの方が未練がましく壺の周りの砂をどけている。
まあ、シェイラだけだったらデート代わりに休みにここまで連れて来ても良いけど、売れる物は先に持ち出して売っちまう可能性が高いからなぁ。
柱とか壁だけ調べるのでも、楽しいかな?
神殿長の屋敷に連れて行き、まずは粉々になった何かがあったリビングとか食堂っぽい所を見せる。
「こちらの破片は流石に売れないと思うから、ここに残していくつもりだが・・・もしも回収して調べたいというのだったら協力する」
アレクがさらっと説明した。
まあ、こんだけ粉々だったら適当に清早や蒼流に箱に突っ込んで船に積んでくれって頼んでも大丈夫だろうから、回収して持ち出すのは大して手間じゃあないしな。
「うう~ん。
これだけの破片を組み立てるとしたらどれだけ時間が掛かる事か・・・。
凄く魅力的だが、予算が厳しいかなぁ」
ツァレスが床一面に散らばる砂に半ば埋まった破片を見ながらため息をついた。
「学生用の実習素材として回収しては?
いい練習になるでしょうし、本当の遺物に触れられるというのは学生にとってもいい刺激になりそう」
シェイラが提案した。
なるほど。
発掘現場で色々な破片をどうやって研究するかの実習に良いかもな。
実際に遺跡から出てきた物で、しかもただで入手できるんだし。
「それは良いね!!!
何か面白い研究結果がいつの日か発表されるかもしれない!!!
年始の休みの時なんかに僕もちょっと研究しに行こうかな」
ツァレスが嬉し気に同意した。
なんか、学生じゃなくって学者の方が年始とかの休みの時に集まって破片を組み立てる遊びを家族そっちのけでやりそうな気がする。
知らんぞ~。
せめて年に一度ぐらいはちゃんと家に帰って家族サービスをした方が良いんじゃないかと思うけどね。
学生の実習素材の使い道に関して楽し気に話し合うツァレスとシェイラを連れて、今度は書斎の方へ行く。
「多分元書斎だった場所だが・・・書類や書籍関係は全滅だな。
ここの金庫にちょっと真珠がバラで入っていたが・・・」
と言って板を外す。
「あれ?」
前回は一応まともに見えた真珠だが、今回は罅が入ってボロボロになっていた。
「前回見た時は普通に粒真珠だったよな??」
振り返ってアレクとシャルロに尋ねる。
折角シェイラに見せようと思ってそのままにしてあったのに。
「あ~。
真珠って元々何百年ももつような物じゃないからねぇ。
海水に浸かっていたお蔭でなんとか形を保っていたのかも?」
シャルロが覗き込んでボロボロになった真珠の残骸を見て言った。
おやま。
海水から出したのがダメだったのか?
「もう寿命だったんだろう。
海水に浸けたままだとしても動かしたら水の流れで外側が剥がれ落ちた可能性が高いし、どうしようもないだろう」
そっと指先で真珠だった物をつついてそれが崩れるのを確認したアレクもシャルロに同意した。
「ふうん。
ってことは、地下室にある宝物系も真珠を使っているのは全滅か」
そこまで良くは見ていなかったが、海神さまの神具なのだ。
確実に海の宝石である真珠を使っているだろう。
「構わないよ!!
金属の細工だけでも十分に研究価値があるからね!!!」
ツァレスが元気いっぱいに答えた。
嵌っていた真珠が駄目になっていても、金だったら換金価値は十分あるから研究用に提供するのは極一部になる予定だぞ?
【後書き】
学者は強しw
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