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卒業後
699 星暦556年 緑の月 29日 久しぶりに船探し(11)
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神殿の中はあまり何もなかった。
ベンチっぽい椅子が並んでいる奥に祈祷台みたいなのがあるだけ。
何を祭っていた神殿かは分からないが・・・海のど真ん中にあることを考えたら海関連の神様なのは確実だろう。
流石に逃げ出す前に神様の像とか神具扱いしていた重要な物は持ち出したのかな?
「ここって海の神様の神殿だろ?
なのに海に飲まれるなんて、神様の信頼駄々下がりしたんじゃないのか?」
ふと、清早に尋ねる。
人間の信仰なんて精霊に聞いても認識していない可能性が高そうだが。
『まあ、神殿って言っても祭っている神が注意を払っているとは限らないからね~。
昔は神の愛し子が神殿長をしていてその頃は海流からも守ってくれていたんだろうけど、時の流れとともに人が変わって見放された後は、勝手にしろってことで放置されてたんじゃない?』
ぽわんと横に浮かんでいた清早が答える。
少なくとも神の怒りで沈んだという訳ではないみたいだが、神様が守ってくれなきゃダメな場所だったのに見放されたから沈没したってことかね?
「ふ~ん。
ちなみに、精霊って神様に仕えているのか?」
神様の方が強そうな印象があるが、蒼流みたいな高位精霊だとやれることが突き抜けている感じだから、神様とどう違うのかイマイチ分からない。
『俺たち精霊は自然現象の力が凝った存在。
人間とは興味があったら仲良くする場合もあるけど、基本的に関係がない。
神っていうのは概念の根源が顕現化したみたいな存在?
基本的に暗黒界の様なこの世界に有害な世界がこちらを侵食してこないように世界を守るのが役割だね。
沢山の人間が信仰してその概念を大切にすると多少は力が増えるから人間に干渉することもあるけど、気に入った人間が居なくなったら面倒になって神殿を顧みなくなるね。
精霊とは力のあり方が違うから、偶に暇つぶしに話すことはあってもあんまり関係は無いかな~』
清早が頭の後ろで腕を組んで宙に寝転がりながら答えた。
思わぬ情報に他の3人も足を止めて耳を傾けている。
「概念の根源、ねぇ。
じゃあ、もしかして国とか時代によって違う名前の神様も実は同じだったりするのか??」
学生時代に悪魔を撃退する為に神殿長が呼びかけていた神様が、信仰する人間が居なくなったら消えてしまうほど儚い存在だとは思えない。とは言え、数多にある国や時代の神様が全部実在したら神様同士の戦争で世界がとっくのとうに破滅してなきゃおかしいとも思っていたんだよね。
概念が大元で、勝手に人間が違う名前を付けているだけなのだと考えればある意味辻褄があう。
『おう!
まあ、物によっては宗教その物がでっち上げで、祭っている神が実在しないのもあるけどな』
あっさり清早が答えた。
「うわ~。
実在しない神様に祈っている神殿とかもあるんだ・・・。
まあ、宗教って人を動かしたりお金を集めるのに便利だからねぇ。
詐欺師が始めて大きくなっちゃった宗教とかもありそう」
シャルロが呟いた。
「嘘から出た真《まこと》ってやつで、でっち上げた宗教の概念に祈っていたら本物の神様に気に入られて神殿長になった人とかも居そう」
笑いながらケレナが付け加える。
確かに居そうだ。
今度シェイラにこの話を教えてやろう。
各種遺跡の神様が実在したかとか色々と研究が始まったら面白いかも。
「!!
地下室への階段があるぞ」
奥にあった扉を開けてみたアレクが声を上げる。
行ってみると、地下室と・・・裏口っぽい扉があった。
心眼《サイト》で見ると鍵がかかっていたっぽいが、金属の方が木よりも海水に弱いのか、蝶番と鍵の部分は殆ど無くなっているみたいで扉がずれて外れかかっている。
まずはしっかりした石造りの階段を降りて行ってみると、そこそこ大きい部屋に辿り着いた。
棚がいくつもあり、それなりに壺とか金の装飾品とかが置いてある。
砂を被っていてあまり良く見えないが。
多少魔力が残っているので一部は魔具かも知れない。
「こんな不便な島にこれだけ大きな神殿を造ったわりに、宝物はショボいな」
かなりがら空きな棚を見ながら呟く。
「島が沈むことになった嵐の前に避難して持ち去ったか、沈没した後に何とか潜って持って行ったか・・・神殿長が神殿の宝物を盗むような人物だったから神に見捨てられたか、といったところかな?」
アレクが応じる。
それなりに深かったことを考えると、水精霊の加護でも持っていないとここまで潜って宝物を回収するのは厳しいだろう。
しかも態々潜って回収したんだったら魔具や金の装飾品を残していくのはおかしい。
「神殿長がネコババして神様に見捨てられたに一票!」
【後書き】
神殿の宝物を神殿長が私物化していたとしても船が無ければ持ち出せなかったでしょうから、他にもネコババに加担した人はいたんでしょうねぇ・・・。
ベンチっぽい椅子が並んでいる奥に祈祷台みたいなのがあるだけ。
何を祭っていた神殿かは分からないが・・・海のど真ん中にあることを考えたら海関連の神様なのは確実だろう。
流石に逃げ出す前に神様の像とか神具扱いしていた重要な物は持ち出したのかな?
「ここって海の神様の神殿だろ?
なのに海に飲まれるなんて、神様の信頼駄々下がりしたんじゃないのか?」
ふと、清早に尋ねる。
人間の信仰なんて精霊に聞いても認識していない可能性が高そうだが。
『まあ、神殿って言っても祭っている神が注意を払っているとは限らないからね~。
昔は神の愛し子が神殿長をしていてその頃は海流からも守ってくれていたんだろうけど、時の流れとともに人が変わって見放された後は、勝手にしろってことで放置されてたんじゃない?』
ぽわんと横に浮かんでいた清早が答える。
少なくとも神の怒りで沈んだという訳ではないみたいだが、神様が守ってくれなきゃダメな場所だったのに見放されたから沈没したってことかね?
「ふ~ん。
ちなみに、精霊って神様に仕えているのか?」
神様の方が強そうな印象があるが、蒼流みたいな高位精霊だとやれることが突き抜けている感じだから、神様とどう違うのかイマイチ分からない。
『俺たち精霊は自然現象の力が凝った存在。
人間とは興味があったら仲良くする場合もあるけど、基本的に関係がない。
神っていうのは概念の根源が顕現化したみたいな存在?
基本的に暗黒界の様なこの世界に有害な世界がこちらを侵食してこないように世界を守るのが役割だね。
沢山の人間が信仰してその概念を大切にすると多少は力が増えるから人間に干渉することもあるけど、気に入った人間が居なくなったら面倒になって神殿を顧みなくなるね。
精霊とは力のあり方が違うから、偶に暇つぶしに話すことはあってもあんまり関係は無いかな~』
清早が頭の後ろで腕を組んで宙に寝転がりながら答えた。
思わぬ情報に他の3人も足を止めて耳を傾けている。
「概念の根源、ねぇ。
じゃあ、もしかして国とか時代によって違う名前の神様も実は同じだったりするのか??」
学生時代に悪魔を撃退する為に神殿長が呼びかけていた神様が、信仰する人間が居なくなったら消えてしまうほど儚い存在だとは思えない。とは言え、数多にある国や時代の神様が全部実在したら神様同士の戦争で世界がとっくのとうに破滅してなきゃおかしいとも思っていたんだよね。
概念が大元で、勝手に人間が違う名前を付けているだけなのだと考えればある意味辻褄があう。
『おう!
まあ、物によっては宗教その物がでっち上げで、祭っている神が実在しないのもあるけどな』
あっさり清早が答えた。
「うわ~。
実在しない神様に祈っている神殿とかもあるんだ・・・。
まあ、宗教って人を動かしたりお金を集めるのに便利だからねぇ。
詐欺師が始めて大きくなっちゃった宗教とかもありそう」
シャルロが呟いた。
「嘘から出た真《まこと》ってやつで、でっち上げた宗教の概念に祈っていたら本物の神様に気に入られて神殿長になった人とかも居そう」
笑いながらケレナが付け加える。
確かに居そうだ。
今度シェイラにこの話を教えてやろう。
各種遺跡の神様が実在したかとか色々と研究が始まったら面白いかも。
「!!
地下室への階段があるぞ」
奥にあった扉を開けてみたアレクが声を上げる。
行ってみると、地下室と・・・裏口っぽい扉があった。
心眼《サイト》で見ると鍵がかかっていたっぽいが、金属の方が木よりも海水に弱いのか、蝶番と鍵の部分は殆ど無くなっているみたいで扉がずれて外れかかっている。
まずはしっかりした石造りの階段を降りて行ってみると、そこそこ大きい部屋に辿り着いた。
棚がいくつもあり、それなりに壺とか金の装飾品とかが置いてある。
砂を被っていてあまり良く見えないが。
多少魔力が残っているので一部は魔具かも知れない。
「こんな不便な島にこれだけ大きな神殿を造ったわりに、宝物はショボいな」
かなりがら空きな棚を見ながら呟く。
「島が沈むことになった嵐の前に避難して持ち去ったか、沈没した後に何とか潜って持って行ったか・・・神殿長が神殿の宝物を盗むような人物だったから神に見捨てられたか、といったところかな?」
アレクが応じる。
それなりに深かったことを考えると、水精霊の加護でも持っていないとここまで潜って宝物を回収するのは厳しいだろう。
しかも態々潜って回収したんだったら魔具や金の装飾品を残していくのはおかしい。
「神殿長がネコババして神様に見捨てられたに一票!」
【後書き】
神殿の宝物を神殿長が私物化していたとしても船が無ければ持ち出せなかったでしょうから、他にもネコババに加担した人はいたんでしょうねぇ・・・。
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