シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

689 星暦556年 緑の月 21日 久しぶりに船探し

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「・・・久しぶりに、気分転換も兼ねて沈没船探しでもやらないか?
心当たりがあるなら普通にどこかの遺跡探しでも良いが」
朝食の後に工房でまったりお茶を飲みながら次に何を開発しようかと話をしていたら、アレクが思いがけない提案をしてきた。

結局、王宮での大騒ぎは自分の悪事が見つかりそうになったアファル王国のお偉いさんが、証拠隠滅する時間を稼ぐために騒ぎを起こそうと引き起こした騒動だった事が判明した。

通信室に襲撃があり、暗号用魔術回路が盗まれればそれを探すために情報部や警備担当が掛かりきりになるだろうと思って怪しい傭兵隊に依頼を出したらしいのだが、自分を含めた全員が王宮から締め出されるというのは想定していなかったらしい。

自分の悪事を隠す為に何の関係も無い通信室の職員も殺させたのだから、酷いものだ。
これで予定通り隠蔽工作が成功したら許し難い事だったのだが・・・国にとっては幸いに、そしてお偉いさんに取っては不幸にも、凄腕の傭兵が捕まったお陰でお偉いさんの情報がバレた。
態と傭兵たちが全滅になるように脱出関連には間違った情報を与えていたらしいのだが、どうやら一人が依頼達成の為に早期に別行動していて生き残っちゃったんだよね~。

ちなみに、そのお偉いさんの悪事がバレそうだと知ったのは、こっそり隠して設置した通信用魔具からの盗聴結果らしい。
改めて調査したところ、王宮のあちこちに仕込まれていた盗聴用の通信用魔具のかなりの部分は国内の貴族や豪商等の情報収集の一環だったらしい。

ウォレン爺が頭を抱えていた。
ちょっと笑えるけど。

そんでもって、王宮のあちこちにある隠し通路を削減するのが決まったは良いが、下手に職人を入れてそこから情報が洩れたら困る・・・という事で、土竜《ジャイアント・モール》の使い魔が居てパストン島開拓時に土木作業を手伝ったという情報を思い出したジジイの余計な告げ口のせいで、そちらまで俺がやることになってしまった。

まあ、しっかりきっちり隠し通路を塞ぐのではなく、単に出入口の近辺2メタメートル程度を比較的軽い(それでも簡単には削れない)岩で塞ぐだけなんで、極端には時間が掛からなかったけどね。

俺への支払いは良いにしても、アスカへの報酬の一部として珍しい岩や宝石が欲しいと伝えたら何やら色々と変なものが家に運び込まれたが・・・まあ、アスカが喜んでいたので良いんだろう。

土竜《ジャイアント・モール》なんだからどんな岩も宝石も人間よりよっぽど良く知っているだろうと思うのだが、魔力が薄い場所なんかはあまり遊びに行かないので、そう言うところの岩というのはアスカ的には珍味らしい。

しっかし。
俺って真剣にマジで王宮の情報を知りすぎて、そのうち消されそうな気がする。
ウォレン爺や学院長がくたばったりしたら用心しておかないとヤバいかもな。

まあ、既にジジイなウォレン・ガスラートはまだしも学院長はまだ暫く元気にやっているだろうから、ヤバくなる頃には王宮の上層部も忘れている可能性もあるが。

一応行方をくらます準備をしておく方が良いかも・・・。
下手に他国へ逃げようとしたら追っ手を掛けられるかも知れないから、国内で新しい名前と身分でやり直せるよう、準備をしておくか。
とは言え、魔術師としてやり直すんじゃあ直ぐにばれるだろう。
金を貯めておいて、ちょっと体の不自由な元兵士っぽいふりでもしておいてほとぼりが冷めたら他国に逃げて魔術師としてやり直すか?

結婚して家族が増えていたらシェイラとか子供のことをどうするかという問題もあるが。
長あたりにでも、相談しておくかなぁ。

今だったら長もそれなりに俺と馴染みがあって建設的な関係を築けているが、長が代替わりした後は盗賊《シーフ》ギルドとの関係だって後釜が誰かでどうなるかは分かったもんじゃない。

逃亡生活には金が掛かる。
そのためにも頑張ろう・・・と思っていたのだが、沈没船探しねぇ。

まあ、ここのところ色々とあったし、気分転換に良いかも知れないな。


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